編集者より

私の研究のまとめ: 科学技術分野の創造的問題解決法から、社会的問題の根本を考え直す

  (参議院議員選挙を控えての所感)

中川 徹 (『TRIZホームページ』編集者、大阪学院大学 名誉教授)

2016年  6月27日
2016年  7月29日  編集後記(続) を追記

掲載:  2016. 6.28; 7.31;   英文ページ: 掲載: 2016. 8. 6

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 編集者より (中川 徹、 2016年 6月27日)   

私は、この6月24-27日の間に、従来から毎年年賀状をお出ししている方を中心に約250名の方々に、次のような書き出しの所感と資料を送らせていただきました。

「梅雨の折柄、ご無沙汰しておりますが、お元気にお過ごしでしょうか?

突然で恐縮ですが、最近考えていますことと、関連資料数編を同封にて送らせていただきます。

日本の将来を決める国政選挙にあたり、安倍首相の美辞麗句だけで現実を覆い隠している政治、非正規雇用と貧困の拡大、憲法改悪の方向など、阻止しなければいけない、という危機感を持っています。」

その資料5編と説明は、期せずして、私の永年の研究の最近での展開を伝え、同時に参議院議員選挙にあたっての私の所信の一端を述べるものとなりました。その内容はこの『TRIZホームページ』で詳しく、繰り返し述べてきたことですが、それを数ページに要約したことになりました。

TRIZ関係の皆様には、本ホームページとメールを活用していますので、年賀状などを省力化させていただき、上記資料もお送りしていない方が大半です。そこで、本ページに、上記の送り状と関連資料を再掲させていただき、ページの最後に編集後記を追記させていただきます。HTMLページとともに、PDFファイル を掲載しております。

(注: 簡単なレジメ1ページをご覧になりたい方は、「誰もがなりうる下流老人(近未来編)」の図(資料 [4])  をご覧ください。)

 編集ノート: 編集後記(2016年6月28日) と 編集後記(続)(2016年7月29日) に、参議院選挙の前と後での、私自身の所感を書いております。

本ページの先頭 ご挨拶(送り状) 添付資料一覧 [1] 『TRIZホームページ』 [2] 創造的な問題解決の方法論 CreOS [3] 『下流老人』の「見える化」図(冊子)

[4] 誰もがなりうる下流老人(図)

[5] 「自由 vs. 愛」: 人類文化の主要矛盾

編集後記

編集後記(続) 英文ページ

 


 ご挨拶 (送り状)      ==> PDF (p. 1)

梅雨の折柄、ご無沙汰しておりますが、お元気にお過ごしでしょうか?

突然で恐縮ですが、最近考えていますことと、関連資料数編を同封にて送らせていただきます。

日本の将来を決める国政選挙にあたり、安倍首相の美辞麗句だけで現実を覆い隠している政治、非正規雇用と貧困の拡大、憲法改悪の方向など、阻止しなければいけない、という危機感を持っています。

(1) 私は、物理化学の研究、情報科学の研究と教育、(技術分野での)創造的な問題解決の方法の研究と普及活動などをしてきました。その中で、1998年以来続けておりますのが、『TRIZホームページ』というWeb サイトです。資料[1] にそのトップページをお見せします。

最近、「創造的な問題解決の一般的な方法論(CrePS)」という概念と方法を創り,その確立に努力しています。資料[2]に、本年3月の国際会議での論文の要旨と、「6箱方式」の模式図を示しました。この方法は、技術分野だけでなく、人間や社会の問題に広く使えるものです。その目標とする応用領域とテーマを描いた図と、大きな目標の図も示しました。

(2) 実際にこの方法を社会問題の解決に適用できるようにしたいと考えて始めたのが、藤田孝典さんの『下流老人』の本を読んで、その論理を「見える化」することでした。資料[3]の冊子がその成果です。これをまとめるまでの私の考えは、冊子の表紙の下半分に書いています。

私たち今の高齢者は高度成長期を支え、「一億総中流」と言われたころの現役世代ですから、前や後の世代に比べて、経済的に恵まれた世代です。それなのに、いま、高齢者の2割以上が貧困の状態にあります。いまの現役世代、そして若者世代は、人口構成の変化とともに、非正規雇用の増加や日本経済の長期低迷の中でもっともっと厳しい状況にあり、その人たちの老後生活は貧困がずっと蔓延するだろうといいます。冊子11頁の図をさらに簡略にして資料[4]にしました。安倍首相はこのような現実を一切話しませんが、私はこの著者の考えに賛同します。

(3) この『下流老人』の本は、ベストセラーで、Amazonサイトには多数のカストマーレビュー(読者の書評)が掲載されています。高い評価も多いのですが、低い評価も多く、「貧しくなったのは自己責任だ。生活保護へのタカリを助長するな」といった意見が(ネット上で)多くの賛同を集めているのに驚きます。「競争に勝つ」ことを目指してきた人々とその社会が、「競争に負けた」人々に冷たく、(厳しい状況下で)「助け合い」をできなくなっています。

その根底には、「自由」と「愛」という人類文化の二つの主要原理の間の葛藤(対立、矛盾)があります。社会システムの至る所にその対立が不均衡のまま埋め込まれ、歴史の中で解決が図られながらも多くの新しい対立を生んでいます。それが社会福祉に対する人々のナイーブな意識に顕われているのだと、私は気づきました。これを論考としてまとめたのが、資料[5]です。

私たちは、「自由」と「愛」が均衡・両立することを願いますが、それは自然にできることではありません。ある人(あるいは、会社や国)の「自己の利害(=自由)」の主張は、「社会の均衡(=愛)」を破りますが、それが対立を生むとともに新しい発展(例えばイノベーション)の原動力になります。新しい社会的「勝者」は、自分の利害に沿った新しい社会システムを組み上げます。ですから、いつの時代でもその社会システムが理想的であるわけでなく、より高いレベルで変革(=自由)し、問題を調整・解決(=愛)していかねばなりません。-- 今後さらに論考を深めるつもりです。

   2016年 6月 中川 徹
   

277-0086  千葉県柏市永楽台3-1-13
Email:  nakagawa@ogu.ac.jp
http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/

添付資料一覧   ==> PDF  (資料[3]以外の全件)  PDF(資料[3] (冊子))

資料 [1]  『TRIZホームページ』のトップページ (1ページのみ) HTML 、PDF

資料 [2]    「創造的な問題解決のための一般的な方法論CrePS: TRIZを越えて: なに?なぜ?いかに?」(中川 徹) (TRIZCON2016 論文の概要と図3葉) HTML  (注: 原典ページ )

資料 [3]  「日本社会の貧困」を可視化しながら考える [A] 高齢者の貧困化 [1] 藤田孝典著『下流老人』の可視化とまとめ」 (中川 徹)  (24頁の冊子版) HTML  (注: 原典ページ )

資料 [4] (同上の13頁の簡略版) 「誰もがなりうる下流老人 (近未来編)」 HTML 

資料 [5] 論考: 「「自由」 vs. 「愛」: 人類文化を貫く主要矛盾 ― 『下流老人』に対する人々の議論を踏まえ、その根底を考える ―」 (中川 徹) (簡略版(はじめにとむすびのみ) HTML   (注: 原典ページ )


 添付資料1:  『TRIZホームページ』のトップページ (1ページのみ、PDF )

 

 


 添付資料2:                   ==> PDF

創造的な問題解決のための一般的な方法論CrePS:TRIZを越えて: なに?なぜ?いかに?

    中川  徹  (TRIZCON2016, 2016年3月3‐5日、ニューオーリンズ市、米国)

 

【概要】 本稿は、「創造的な問題解決のための一般的な方法論」(略称:CrePS) を確立することを提唱しており、3つの基本的な問いに答えている。

What?: CrePSは、創造的な問題解決/課題達成に関わる従来の諸方法を統合する一般的な方法論であり、技術/非技術の広範な分野と多様なテーマへの適用を目指す。「6箱方式」という問題解決の新しいパラダイムを基本枠組みとする。

Why? 従来の多数の関連諸方法 (TRIZを含む) が、有効な基本枠組みを見いだせなかったために、ばらばらで相互に競合し、社会全体からの大きなニーズ(さまざまな分野とテーマでの問題解決/課題達成を行う、そのための方法をつくる、そのような能力を育てる) に有効に応えられなかった。このニーズに応えることを可能にする。

How? 「6箱方式」では、「現実の世界」で問題を定義し、「思考の世界」でその問題の解決策を考え出し、「現実の世界」に戻ってその解決策を実現する、というやり方をする。この中心にある、問題を分析して解決策を考え出す過程に関しては、すでに (「6箱方式」を生み出した〉USIT法(統合的構造化発明思考法) が確立されており、諸方法をこの枠組みに吸収・統合できる。「現実の世界」での問題定義と解決策実現の過程については、従来の諸方法を適用分野とテーマについて分類・類型化することが、統合化の準備段階として必要である。今後諸方法の研究・推進者の協力により、CrePSを確立・普及・適用することを目指す。

 

図1. 「6箱方式」:創造的な問題解決(CrePS) の基本パラダイム

 

図2. 創造的な問題解決の方法論が目指す適用分野とテーマの例。
当初は中心にTRIZを置いて考えたが、より一般的な方法論CrePSに改めた

 


図3. 創造的な問題解決の方法論(CrePS) の目標


  添付資料 [3]  「日本社会の貧困」を可視化しながら考える [A] 高齢者の貧困化
    [1] 藤田孝典著『下流老人』の可視化とまとめ」 (中川 徹)  (24頁の冊子版)

PDF (24頁)  (注: 原典ページ )

 

  .....

 

  添付資料 [4] (同上の13頁の簡略版) 「誰もがなりうる下流老人 (近未来編)」   ==> PDF 

 

 


 

  添付資料 [5]  論考: 「「自由」 vs. 「愛」: 人類文化を貫く主要矛盾
      ― 『下流老人』に対する人々の議論を踏まえ、その根底を考える ―」 (中川 徹)

        (簡略版(はじめにとむすびのみ)

          ==>  PDF   (注: 原典ページ )

 

論考:

「自由」 vs. 「愛」: 人類文化を貫く主要矛盾

― 『下流老人』に対する人々の議論を踏まえ、その根底を考える −

中川 徹 (大阪学院大学 名誉教授

TRIZホームページ、論考、2016年 4月22日(和文掲載)、(4月29日英文掲載)

http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jpapers/2016Papers/Naka-Liberty-Love-2016/Naka-Liberty-Love-160419.html

0.  はじめに

本稿は、藤田孝典著『下流老人』(2015)を原典にして、その論旨を「見える化」しながら考えるという仕事から生まれたものです。直接には、Amazon.co.jpサイトに掲載されている、同書に対するカストマーレビュー(読者の書評)82件の議論を考察したことが契機になりました。興味深いことに、多数の読者が星5あるいは星4の高い評価をしている一方、また多数の読者が星1や星2という低い評価をしています。

著者の主張は、「現在高齢者の20%強(約6〜7百万人)が生活保護相当の貧困下にあり、将来の日本の貧困はさらに劇的に悪化するだろう。貧困は、個人の努力にも関わらす、社会システムが引き起こしている。憲法で「健康で文化的な最低限度の生活」を保証しているように、下流老人など生活困窮者を生活保護などで保護するべきである」というものです。

これに対する批判は、「身勝手な人生を送って貧困になったような人も、当人の責任でなく、社会のせいにしている。社会保障へのタカリを薦めており、放置すれば国が破たんする。福祉は性善説だけでなく、性悪説も考慮しないと、世間は納得しない。解決策は市場経済と民主主義を否定するもので、非リアルである。」などです。

わたしは、同書の「見える化」をし、多数の一般読者の書評を検討してコメントを書きました。その過程で、議論の根底の深くに、社会的思想、特に社会倫理に関わる重要な問題があり、それが社会の文化として十分に解明されていず、その結果社会の共通認識が得られていないことに気づきました。それは、競争社会と助け合いに関わること、勝ち負けと自己責任の世界における生活保障・福祉の問題です。これを突き詰めると、「自由」と「愛」という、人類文化における二つの重要な標語に到達します。

本稿は、「自由」と「愛」との間の矛盾が、人類の文化における「主要矛盾」であることを述べます。それは実は、「自由」と「自由」の間の矛盾と、「愛」と「愛」との間の矛盾をも含んでいるのです。また、個人のレベルから、グループや組織のレベル、企業や国のレベルへと、社会構造の階層を上がっていくにつれてより大きな困難な問題を含みます。そして、この「自由」と「愛」との矛盾を解決していこうと努力してきたのが人類の文化であったこと、それがまだ未成熟なのだということを述べます。

************  以下が本体部分の目次ですが、内容を省略します。      [詳細は、原典ページ参照  ]

1.  「自由」と「愛」: 両立するべき矛盾

2.  両立のための根底にある概念: 倫理と基本的人権

3.  「人類文化の主要矛盾」とその構造      

4.   競争と「勝ち負け」

5.  性善説ベースの解決策と性悪説ベースの解決策

*************  以下に、結論部分を書きます ************ 

6.  むすび

この論考はさらに続くのですが、本稿で述べたことを整理して、一つの区切りにします。

(1)  人類の文化は、「自由」を第一原理とし、その伸長を主要目標とします。各人が、自分で判断し、行動し、「生きる」ことです。
「自由」は、(自然的、社会的な)「競争」に「勝つ」ことを目指します。一人の「自由」と他者の「自由」とは、必然的に衝突します(矛盾します)。

(2)  人類の文化は、「愛」を第二原理とし、その普遍化を主要目標とします。各人が、その子を愛し、家族を愛して、「助ける、守る」ことです。
「愛」は、「自由」を自制して、「自由」同士の衝突を無くすことを目指します。「愛」は、自分の周りの「身内」を助け・守るために、「外」からの攻撃に対抗する性質があります。それは、「身内」を一つの社会的主体と考えると、一つ上のレベルでの「自由」と「競争」を出現させます。

(3)  人類の文化は、「自由」と「愛」という、しばしば対立する(矛盾する)二つの原理を、どのように両立させ、使い分けつつ発展させていくかを、問い続けてきました。「自由」 vs. 「愛」 を、本稿で、「人類文化の主要矛盾」と名付けました。

(4)  この「自由」と「愛」との両方を包含して動機づけ、その間の調整を行う指針として人類文化が獲得してきたのは、「倫理」でしょう。平たく言えば、「人の道」、「良心」です。「倫理」の根幹部はすでにDNAに埋め込まれていると考えられますが、当たり前すぎて、明示することが難しい面があります。「基本的人権」の概念は、この「倫理」が明確化されたものといえます。

(5)  人類は、その文化の歴史の全体を通して、この「自由」 と 「愛」 という「主要原理」の伸展と、「自由」 vs. 「愛」という「主要矛盾」の解決に取り組んできたといえます。その中で、いろいろな社会システムが作られ、文化が発展してきました。ただ、「主要矛盾の解決」という問題は一層複雑化し、困難を生じている面があります。

(6)  困難の原因の第一は、社会システムが多数で、多層で、大規模で、相互に複雑に絡み合っていて、各社会システムにおける、「自由」「愛」「倫理」のあり方を明確化し、世界的に理解することができていないことです。原因の第二は、それらのあり方が明確にされ、(社会的な)「倫理」が明確にされても、多くの個人や社会組織が自己の利害(「自由」)を主張して、「倫理」に反する行動をとり、それが社会的「勝者」になることです。そして、そのような行動や組織が、(小さいものから大きなものまで)世界中の至る所にあり、それらが歴史的な積み重ねを持っていることです。

(7)  以上のように、本稿は、人類の文化の根底にある「主要原理」と「主要矛盾」という概念を見出し、その骨格を描き出しました。

今後さらに、基本的ないくつかのレベルの社会システムについて、そこでの「自由」と「愛」と「倫理」の実情と理念を考察していきたいと考えています。

それが、当初から取り上げていた、社会の貧困の問題と、福祉の考え方を明確にし、社会を改革するための指針を明確にすることにつながると考えています。

 


 編集後記 (中川 徹、 2016年 6月28日) 

なお、本ホームページは公共的なサイトを目指しております関係上、社会的な問題に関連して政治的な主張を含む記事をどのように載せるか/載せないかについては、なかなかデリケートな面があります。明確に主張して、社会で多くの方に検討してもらうとよいことがあるときに、それを公表しないことは、ゼロの効果ではなく、マイナスの効果を持つとも言えます。

今年の正月に私は、「ご挨拶: 新年にあたって」 (2016. 1. 9) の一部に次のように書きました。

「この1年の日本の政治は、憲法に反する集団的自衛権容認の閣議決定と、戦争を可能にした安保関連法案の国会成立がありました。大多数の憲法学者たちが違憲だと意見表明したのに、自民党の総裁選では対立候補さえ立てられなかった。日本の議会制民主主義は、どうしてここまで安倍晋三政権の美辞麗句と虚言に満ちた独裁的なやり方をチェックできないのだろう、と憤慨する思いです。ただ、私自身が声を上げることも遅すぎたと反省しています。

そのような中で、わたしは、新幹線焼身自殺放火事件がきっかけになって、日本社会の貧困の問題をきちんと取り上げることを始めました。いままで技術分野を中心に考えてきましたが、「創造的な問題解決の方法・考え方」をもっと広い分野で、実際に適用することを試みていきたいと考えていたことと、重なったからです。片平さんの「札寄せツール」をフルに使わせていただき、藤田孝典さんの『下流老人』の本の内容を図的に「見える化」して表現しました。複雑な社会の問題をきちんと整理して表現し、多くの人々が理解し議論する土台を作ることは、こういう分野に素人の私ができる一つの寄与だと思うからです。今後も、現役と若者たちの貧困、そして子供たちの貧困について、同様の「見える化」をしていくつもりです。社会の富の格差を助長し、国民の貧困を拡大しつつある現政権の政策に対して、明確に反対し、新しいものを創る活動に寄与していきたいと思っています。  (以下略)」

半年前にこのようい書いたことを、ともかく地道にこの半年やってきました。『下流老人』の本の「見える化」から、さらに進んで、競争社会における助け合いのあり方について、社会の理解が作れていないのが問題なのだと理解しました。「自由 vs. 愛」が、「人類文化の根本矛盾」であり、人類の文化は、その矛盾の解決を試みてきたが、まだまだ解決できず困難を極めている、と理解しました (資料[5])。この理解は、人類文化の社会と歴史を考える上での、根本的な観点を提示していますから、非常に大きな含意を持っています。これを土台にして考察し、解明・提言していくべきことは、実にたくさんあります。

いま、7月10日の参議院議員選挙を控えて、「改憲勢力が2/3を占める勢いである」と報道されていることは、実に恐ろしいことだと、私は思います。安倍政権は、大量の金融出動をしたけれども、大企業とごく一部の富裕層が潤っただけで、国民の大部分の生活はより苦しくなり、中流層がどんどん下流化している。経済がよくなっているという政権の主張は虚言に過ぎない。財政の破たんの危機もじわじわと近づいている。それなのに、自民党・公明党が絶対多数を維持し、改憲勢力が参議院でも2/3を占める可能性があるという。それは、憲法の改悪の危険に直結している。戦争放棄の平和憲法を絶対に守らなければならない、と私は思う。

いまの安倍政権の下での言論の状況は、実に嘆かわしい。自民党の内部にどうして安倍批判が現れないのか。あの多数の議員、地方議員、各地の支持者の中にどうして本当の議論が生じないのか、と思います。お金をベースにした派閥ではなく、政策をきちんと議論し立案できる政治グループが与党にできないといけない。一方の野党では、意見の細分化でない、統合ができないといけない。日本の政治的な議論のしかた、要するに民主主義における国民の意思形成のしかたが、本当に未熟なのだと思います。そのような中で、テレビなどのマスコミでは、クイズやバラエティやお笑いなどが大半を占めている。私たち国民が、自分たちの将来のことを含めて、いまの社会のことそのあり方としての政治のことを考えていかねばならない、と切に思います。

-- 英国の国民投票で、自国の利害(「自由」)を主張して、欧州の平和的統合(「愛」)を目指すEUから離脱する案が勝利した。国民感情が一時的にそのような決定に動いたことを、離脱賛成派の中からも後悔している人たちが多いという。日本国民が今回の参議院議員選挙で、後悔しないで済むようにしたい。そう思って、私はこのページを作り、沢山の親戚、友人、知人、同志の人々に、資料をお送りした次第です。

なお、幸いなことに、いろいろな方から、いろいろな側面で、返信をいただいております。

特に、「欲を言えば、もっと簡単なレジメもできればいいなあと思った」というご意見がありました。

==> 1ページだけなら、「誰もがなりうる下流老人(近未来編)」の図(資料 [4])  をご覧ください。

今後、寄せていただいたご意見を「読者の声」に掲載させていただきたいと思っております。特に、違う側面からのご意見やご寄稿も、掲載させていただくことが、私的サイトでなく、「公共サイト」を目指す本ホームページの役割と思っております。

 


 編集後記(続) (中川 徹、 2016年 7月29日) 

7月11日の参議院選挙は、自民・公明与党の圧勝になり、その他の改憲推進・容認の諸派と合わせて、「改憲勢力」が2/3を超えた結果になりました。野党連合が1人区で1/3を少々超える当選者を出し、選挙共闘がある程度の成果を挙げた、と報道されました。私は、期日前投票をして、北欧に旅行中でしたが、インターネットで選挙速報やデータを見ておりました。

この状況は、非常に憂慮すべきことと考えております。国民の中に、日本の将来の方向付けに関係したいろいろなデータとその意味が、きちんと理解されるように伝えられていない。政府や経済界が流す情報が圧倒的に多くて、それが誠実なものでない(美辞麗句のスローガンと虚構と、経営層の利益を主体としたもの)ことは分かっていても、それに対抗できない。官庁にしても、大企業にしても、膨大な数の優秀な人材を使っており、「上」の意向に反するような方向での考察や提言がほとんどなされない。

政府の政策に対して、なんらかの改善策の提案(例えば、保育所の待機児童をゼロに、特別養護老人ホームを増設、など)があると、ほとんど必ず、「財源をどうするのだ?」ということで、頓挫するのが実情である。全体的な政策をそのままにして一部だけを変えようとしても改革できることはごく少しに限られてしまう。

やはり、よく考えた、大きな方向付けがまず必要なことだと思う。国民生活、教育、産業、経済、財政、安全保障、政治・外交などの広い面にわたって、よく考察し、よく練られた基本方針・基本政策が必要である。それは、「問題解決」の当然の段階として、問題意識、現状(状況)分析、現状のメカニズムの理解、理想・目標の認識、基本的な方向付けのビジョン、問題(困難点)の解決のアイデア、政策の基本方針(実施プロセスの計画も含む)、国民の理解獲得のための方針、政策実施の具体策、政策の効果・副作用の予測、国内的・国際的な動きに対する対応、実施段階での様々な困難克服と調整、などが必要である。これらの膨大なことが、きちんと検討・考察されて初めて、本当に国を動かせる、筋の通った基本政策ができる。

これらのものを作りあげること、それを国民に分かるように提示して、国民の理解を得、支持を得ることが、必要である。沢山の人が(官庁、自治体、企業、大学、民間、商店、個人などで)いろいろな項目をいろいろな面から考え、意見を持って/述べている。それらには、対立する意見もあるし、効果の期待できない/弊害のある案もあるだろう。それらの多様で膨大な意見を、うまく適切に汲み上げ、部分部分でまとまりを持ったものにするとともに、全体を組み上げることが必要である。全体構成において、総花的なものはうまくいかないことが多いだろう。重要なものを明示し、大きな方向を明示するものでなければならない。

こういった多面的で、膨大で、かつ筋の通った基本政策が、構築され、国民に分かるように提示されなければならない。それは、国として、まず政権側がしなければならないし、それに対抗する側もしなければならない。沢山の人々の寄与が必要であり、それをまとめ上げる組織的な働き、そしてリーダシップが必要である。

このような大きな方向付けの策定にも、それを人々に提示するにも、文章だけでなく、「見える化」の方法が有効だろうと思う。上記のような沢山のことを、「見える化」できるように、例示していくことが、いまの『TRIZホームページ』が寄与できる一つのやり方でないかと思う。

危機意識を持ち、問題意識と改革の情熱を持ち、悲観・諦観せず、将来を見据えて、しっかりと歩み続けたいと思う。

 
本ページの先頭 ご挨拶(送り状) 添付資料一覧 [1] 『TRIZホームページ』 [2] 創造的な問題解決の方法論 CreOS [3] 『下流老人』の「見える化」図(冊子)

[4] 誰もがなりうる下流老人(図)

[5] 「自由 vs. 愛」: 人類文化の主要矛盾

編集後記

編集後記(続) 英文ページ

 

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最終更新日 : 2017. 1.13    連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp