編集者より
ご挨拶: 新年にあたって

中川 徹 (『TRIZホームページ』編集者、大阪学院大学 名誉教授)

2017年 1月10日

掲載:  2017. 1.13

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  ご挨拶: 新年にあたって (中川 徹、2017年 1月10日)       

新年あけましておめでとうございます。皆さまのご健康とご活躍を祈念し、今年もどうぞよろしくお願いいたします。

TRIZ関係以外の方にお出しした私の年賀状を添付いたします。(TRIZ関連の方へはホームページとメルマガだけで失礼いたします)

 

 


下は拡大した写真です。10月24-27日に、ポーランドでETRIA(欧州TRIZ協会)主催のTRIZ Future Conference (TFC) 2016が開催され、出張・発表しました。27日に会場のWroclaw(ヴロツラフ)工科大学で撮影した黄葉と学生たちです。(2016.11.12 のトップページに掲載しました。)

 


 昨年の研究活動のまとめ

この1年、2016年は、私の研究活動の面では、大きな展開があった、実りの多い年でした。大きな項目を挙げると以下のようです。

(1)  「6箱方式」に基づく、「創造的問題解決の一般的方法論(CrePS)」 の概念を一層明確にした。

2015年の学会発表などをホームページに掲載: ICSI2015(香港)、TRIZシンポ2015、創造学会2015、ETRIA TFC 2015(ベルリン) 
USITの論文を発表(日本創造学会論文誌)(3月)
CrePSの論文発表 (TRIZCON2016) (3月)
CrePS「6箱方式」の講演 (日本創造学会クリエイティブサロン)(5月)
CrePS/USIT 3日間ワークショップ (台湾) (12月)
既発表論文 18編(中川、2000-2016)を6箱方式で記述 (12月)

(2) TRIZ/CrePSの適用分野の拡大を目指して、社会問題(日本社会の貧困)への適用を試みた。

(2a) 『下流老人』の「見える化」をして、日本社会の貧困問題を考察した。

『下流老人』の「見える化」のシリーズのホームページ連載を完結した。
『下流老人』の「見える化」 の冊子を作った (500部配布)(3月)
『下流老人』の本のカストマーレビューを検討した。
「財政再建と経済」(吉川洋講演)を「見える化」した

(2b) 「見える化」の方法を記述した

札寄せ用具と図的思考 開発意図と使い方 (片平 彰裕、中川 徹)(7月)
札寄せ実践法(片平 彰裕)(7月)、「見える化」実践法(中川)(9月)
「レポートの作り方、書き方」研修報告(11月)

(2c) 社会問題の根底の理解: 「自由」vs「愛」 が人類文化の主要矛盾

『下流老人』の「見える化」から、 「自由」vs「愛」 が人類文化の主要矛盾と認識した。仮説提示(4月)
CrePSの社会問題への適用:  「自由」vs「愛」 が人類文化の主要矛盾。TRIZシンポ2016 (9月)
CrePSの社会問題への適用:  「自由」vs「愛」 が人類文化の主要矛盾。ETRIA TFC2016 (10月)
解説:  「自由」vs「愛」 が人類文化の主要矛盾。 東大YMCA会報 (12月)

(3) 創造的問題解決の方法、普及・啓蒙活動の継続

『TRIZホームページ』の編集と公開 (和文&英文)、更新案内のメール配布(国内、海外)
研究のまとめ (CrePS、 下流老人、自由vs愛) 資料送付とホームページ掲載。参院選を前に/後記(6月/7月)
「読者の声」ページに多数の通信あり、応答、掲載
『TRIZ 実践と効用』シリーズの販売継続

(4) 読者の寄稿、論文紹介、討論など

「根源的網羅思考と一体型矛盾」 (高原利生) (寄稿)
「救命延命医療から緩和医療へ」 (島田宗洋)(寄稿)
「厚生年金保険の加入漏れ、など」(諏訪頼一)(寄稿)
「ビジネスとマネジメントのためのTRIZ」(Valeri Souchkov) 和訳掲載
学術界 における研究の方法、CrePSの意義 (討論)

今年2017年は、基本的にはこれらの成果と方向をベースに発展させることを考えています。上記の記事のそれぞれに、今後するべきことを書いており、それぞれ大きな課題があります。


 日本と世界の状況のついて思う

日本と世界の状況を見ますと、これから大きな混乱と激動の時代になるように思われます。

日本自身は、少子高齢化の進展の中で、一部富裕層が富む一方で、大部分の国民の年収が下がり貧困化が進んでいます。それがじわじわと確実に進んでいるのにもかかわらず、安倍政権は現実を語らず、美辞麗句を重ねています。それを国民が十分に批判できずに、参院選で自民・公明の改憲勢力が2/3を超えました。危惧すべき状況です。

世界は、中東での内戦やテロを震源として、英国のEU離脱をはじめとする欧州諸国内での右傾化、米国における国内不満を利用したトランプ新大統領の誕生があります。中国の覇権国家としての強大化、北朝鮮の無謀な核開発戦略、韓国の政情不安など、アジアでの問題も心配なことばかりです。このような世界情勢の中で、日本の進路決定を誤らないようにせねばなりません。

昨年7月29日に、参院選挙後の所感として書きました文を、ここに再掲させていただきます。

7月11日の参議院選挙は、自民・公明与党の圧勝になり、その他の改憲推進・容認の諸派と合わせて、「改憲勢力」が2/3を超えた結果になりました。野党連合が1人区で1/3を少々超える当選者を出し、選挙共闘がある程度の成果を挙げた、と報道されました。私は、期日前投票をして、北欧に旅行中でしたが、インターネットで選挙速報やデータを見ておりました。

この状況は、非常に憂慮すべきことと考えております。国民の中に、日本の将来の方向付けに関係したいろいろなデータとその意味が、きちんと理解されるように伝えられていない。政府や経済界が流す情報が圧倒的に多くて、それが誠実なものでない(美辞麗句のスローガンと虚構と、経営層の利益を主体としたもの)ことは分かっていても、それに対抗できない。官庁にしても、大企業にしても、膨大な数の優秀な人材を使っており、「上」の意向に反するような方向での考察や提言がほとんどなされない。

政府の政策に対して、なんらかの改善策の提案(例えば、保育所の待機児童をゼロに、特別養護老人ホームを増設、など)があると、ほとんど必ず、「財源をどうするのだ?」ということで、頓挫するのが実情である。全体的な政策をそのままにして一部だけを変えようとしても改革できることはごく少しに限られてしまう。

やはり、よく考えた、大きな方向付けがまず必要なことだと思う。国民生活、教育、産業、経済、財政、安全保障、政治・外交などの広い面にわたって、よく考察し、よく練られた基本方針・基本政策が必要である。それは、「問題解決」の当然の段階として、問題意識、現状(状況)分析、現状のメカニズムの理解、理想・目標の認識、基本的な方向付けのビジョン、問題(困難点)の解決のアイデア、政策の基本方針(実施プロセスの計画も含む)、国民の理解獲得のための方針、政策実施の具体策、政策の効果・副作用の予測、国内的・国際的な動きに対する対応、実施段階での様々な困難克服と調整、などが必要である。これらの膨大なことが、きちんと検討・考察されて初めて、本当に国を動かせる、筋の通った基本政策ができる。

これらのものを作りあげること、それを国民に分かるように提示して、国民の理解を得、支持を得ることが、必要である。沢山の人が(官庁、自治体、企業、大学、民間、商店、個人などで)いろいろな項目をいろいろな面から考え、意見を持って/述べている。それらには、対立する意見もあるし、効果の期待できない/弊害のある案もあるだろう。それらの多様で膨大な意見を、うまく適切に汲み上げ、部分部分でまとまりを持ったものにするとともに、全体を組み上げることが必要である。全体構成において、総花的なものはうまくいかないことが多いだろう。重要なものを明示し、大きな方向を明示するものでなければならない。

こういった多面的で、膨大で、かつ筋の通った基本政策が、構築され、国民に分かるように提示されなければならない。それは、国として、まず政権側がしなければならないし、それに対抗する側もしなければならない。沢山の人々の寄与が必要であり、それをまとめ上げる組織的な働き、そしてリーダシップが必要である。

このような大きな方向付けの策定にも、それを人々に提示するにも、文章だけでなく、「見える化」の方法が有効だろうと思う。上記のような沢山のことを、「見える化」できるように、例示していくことが、いまの『TRIZホームページ』が寄与できる一つのやり方でないかと思う。

危機意識を持ち、問題意識と改革の情熱を持ち、悲観・諦観せず、将来を見据えて、しっかりと歩み続けたいと思う。

 

76歳になりました。昨年の1月〜3月には左脚にしびれが出て歩くのに難渋しましたが、その後のリハビリで今は元気に歩いています。柔軟体操や運動を続けなければなりません。食事や睡眠ももちろん大事です。ともかく健康に注意して、気持ちをしっかり持っていきたいと思っています。

日本にとっても世界にとっても、今年も厳しい年になりそうですが、皆さまがご健康でご活躍され、ご多幸であることをお祈りいたします。

                                2017年 1月11日   中川 徹

 

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最終更新日 : 2017. 1.13   連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp