TRIZフォーラム: 学会参加報告(18):
第3回 TRIZシンポジウムの紹介    
日本TRIZ協議会主催、
2007年 8月30日〜 9月 1日、東芝研修センター (横浜市港北区)
中川 徹 (大阪学院大学)
 2007年11月14日
  (詳細英文、概要和文) [掲載: 2007.11.18; 更新: 2007.12. 9; 12.23; 2008. 1. 7; 1.29; 2.27]

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編集ノート (中川徹、2007年11月14日)

英文のTRIZ Forumのページに下記の記事を掲載しました (2007.11.18)。

"Personal Report of The Third TRIZ Symposium in Japan, 2007" (Toru Nakagawa, Nov. 14, 2007)

この記事は、日本におけるTRIZの公的な活動を海外に積極的に紹介するために、敢えて中川個人の文責で記述したものです。第3回TRIZシンポジウムの客観的な事実と公的な報告 はすでに「日本TRIZ協議会の公式ページ」 に、和文および英文で掲載してあります。しかし、そのような公式報告では、どうしても決まりきったことしか記述されず、せっかくのシンポジウムがいきいきと伝わりません。特に、シンポジウムでの発表内容を分かりやすくメリハリを付けて紹介することはできません。それに対して、個人の文責で記述する場合には、自分の判断で大事だと思うことを記述できますから、もっと人間的に伝えることができます。このような「Personal Report」を書く趣旨については、一昨年の「第1回TRIZシンポジウムの紹介」について、その編集ノートで詳しく書きましたので参照下さい。

この英文記事はプリントするとA4で80頁近くになってしまいました。和訳する時間がありませんので、以下にはその目次およびまとめの部分の記述だけを訳して掲載しておきます。詳しくは英文ページをお読み下さい。私の紹介記事を読まれて、もしもっと違う観点から評価し、記述すべきだとお考えになりましたら、ぜひそのお考えをまとめていただき、本サイトに投稿ください。いろいろなご意見や感想を「TRIZフォーラム」の欄に掲載させていただき、観点の交流を深めたいと思っております。

なお、主催者の「日本TRIZ協議会」では、基調講演だけをその公式ページに掲載し、その他の発表は公式ページには発表しないことに決定しました。ただし、各発表の著者は著作権を持っておりますので、著者が希望して公表することを「日本TRIZ協議会」が妨げるものではありません。この規定に従い、本『TRIZホームページ』では、今後いくつかの発表を選択して和文および英文のページに掲載する予定にしております。本『TRIZホームページ』に掲載しました発表は、下記のリスト、および [より詳しくは] 英文の「Personal Report」の発表論文一覧表中 に逐次記述/リンクしていく予定です。

英文ページの目次

1. シンポジウムの概要
2. シンポジウムを組織する (少しの前史を含めて)
3. 基調講演
4. チュートリアルと特別講演
5. 企業における適用事例
6. 企業へのTRIZの導入
7. 大学におけるTRIZの活用
8. TRIZの方法論
9. 特許に関わる研究
10. 非技術分野への適用
11. まとめ
発表論文のリスト

「Personal Report of The Third TRIZ Symposium in Japan, 2007」 のまとめ

(1) 明らかに分かることは、日本においてTRIZの活動が、近年 (少なくとも最近の3-4年) 着実に成長していることであり、それは企業において顕著であり、大学においてもある程度そうである。この3回に渡るTRIZシンポジウムが、日本でTRIZに関わる人々を元気づけるのに大いに寄与してきたと、私は信じている。

(2) 日本におけるTRIZの現在の主要な焦点は、TRIZの本質を理解し、それを企業の現実の状況に適用していくことである。日本がこの10年間、TRIZを学び適用してきた経験の蓄積は、日本のTRIZに一定レベルの幅と、深さと、ボリュームと、持続性とを、もたらせてきている。

(3) プログラムを見れば分かるように、今回の発表の大部分が企業の人たちによって行われた。それでも、TRIZを使っている企業はまだ他にもいろいろあることが分かっている。そのような企業でのTRIZの活動や経験が、ぜひ、他の人たちにも公表され交流されるようになることを願っている。

(4) 今回のシンポジウムでの一つのユニークな特徴は、複数企業のメンバーからなるグループからの発表が数件行われたことである。特に注目されるケースは、日本VE協会の中の研究会による発表であり、TRIZとその技法との融合が「人」のレベルで行われていることを示している。宮城 (県) TRIZ協会は、地域レベルでTRIZを推進していく一つの有望なケースである。ボランティアのグループでの活動が、地域社会のさまざまなレベル/形での支援を受けて、同様に実施されていくことができるであろう。

(5) 日本のいくつかの大学でTRIZが教えられてきた。しかし、それらはまだなお極めて稀なケースである。TRIZについての研究とTRIZの教育とが大学においてもっと行われる必要がある。また、(小・中・高の) 学校や、その課外活動としては、日本ではTRIZの教育はまだ導入されていない。この点は日本で、学界や官庁および県や市などのレベルの行政関係の人々に全くTRIZが認知されていないという事実と関係している。われわれとしてはするべきことが一杯ある。

(6) 非技術分野にTRIZを拡張することは、日本においても徐々に進んでいる。優れた適用事例を必要としており、また、そのような試行をしようという (TRIZにとっては) 新しいタイプの人々を必要としている。

(7) 今回のシンポジウムに海外から10人以上の参加があり、その人たちが優れた発表をし、討論に参加してくれたことは、すばらしいことであった。シンポジウムを「基本的に国内向け (全国的)、かつ、部分的に (できるだけ多く) 国際的」にするというわれわれの戦略は、シンポジウム後のアンケートなどによると、これらの海外参加者から (そして国内参加者からも) 支持されているようである。われわれは今後も、英語と日本語のスライドを同時投影し、両言語の論文集を作っていくなどによって、言語の障壁を克服する努力を続けていくつもりである。(同時通訳のサービスはまだ提供することができない。) TRIZの世界的普及の観点からは、特にアジア諸国の人々による発表と参加が重要であろう。

(8) このシンポジウムにとっての一つの課題は、発表の (スライドでなく) 正式論文化 (和文 または/かつ 英文) と、スライドの英訳の件である。現在は、正式の論文はオプショナル (任意提出) であり、発表スライドの英語訳の作成もポスター発表の場合にはオプショナルである。これらのルールは、日本人著者に対する負担を考慮した上で決定したものである。これらの点に関しても、本シンポジウムが国際的な基準できちんと認知されるように、段階を追って前進していかなければならない。

『TRIZホームページ』掲載の発表論文の一覧  (2007.11.18、 中川 徹) (更新: 2007.12. 9; 2008. 1. 7)

TRIZ協議会 公式ページに掲載された基調講演 2件を含む。

[番号]
発表形態
著者 (所属) 題名 『TRIZホームページ』掲載
[11]
基調講演
Larry Ball (Honeywell, 米国) Hierarchical TRIZ Algorithms 和文ページ(2008. 2.27) ; 和文スライド (2007.10. 8) ; 解説つき和文スライド (2008. 2.27) 
英文ページ (2008. 2.27);英文スライド (2007.10. 8); 解説つき英文スライド (2008. 2.27)  
[28]
基調講演
Simon Dewulf (CREAX, ベルギー) Variation of System Properties for New or Improved Functions 和文スライド
英文スライド   (2007.10. 8)
[23]
一般発表
中川 徹、藤田 新 (大阪学院大学) オートロックドア方式のマンションで不審者の侵入を防ぐ方法 −身近な社会&技術問題へのTRIZ/USITの適用事例 -

和文ページ   和文スライド  和文論文
英文ページ   英文スライド   (2007. 9.13)

[41]
特別セッション
Kritaya Suparunpongs (SCG, タイ) ほか

ポジションペーパー: Introducing TRIZ into Thailand
討論の記録

英文ページ   発表スライド   英文討論記録 (2007.11.18)
[18]
ポスター発表
高原 利生 () 機能とプロセスオブジェクト概念を中心にした差異解消方法 その2 和文ページ  和文論文
英文ページ  英文論文 (2007.12. 9)
[5]
一般発表
古賀 陽介 (パナニックコミュニケーションズ) "TRIZ"の製造系への応用〜
プリンター完成工程における慢性不良撲滅の取組み
和文ページ  和文スライド
英文ページ  英文スライド 
(2007.12.23)
[17]
ポスター発表
庄内 亨 (日立製作所) 、 河辺 峻 (明星大学)、 濱中 直樹 (日立製作所) コンピュータ分野におけるTRIZ矛盾表の適用 −アーキテクチャ・方式・論理向きの矛盾表・発明原理− 和文ページ  和文スライド
和文論文
英文ページ  英文スライド (2008. 1. 7)
[19]
ポスター発表
Jae-Hoon Kim, Joon-Mo Seo, Young-Ju Kang, Byoung-Un Kang (LS Cable、韓国) 印刷可能な接着剤の物質特性改良 和文ページ  和文スライド
英文ページ  英文スライド 
英文論文 (2008. 1.29)
[8]
一般発表
深津 邦夫 (東芝ソシオシステムズ) 紙搬送機構設計のUSIT活用による技術伝承 和文ページ  和文スライド
英文ページ  英文スライド (2008. 1.29)
[37]
ポスター発表
石井力重(デュナミス/NEDO) 、 伊藤利憲 (宮城県産業技術総合センター) TRIZのユーザを増やすにはどうすればいいか?に挑む 〜宮城TRIZ研究会の独自開発ツール「智慧(ちえ)カード」〜 和文ページ; 和文スライド , 和文論文2008. 2. 8)
英文ページ
(2008. 2. 8)

 


編集ノート 追記 (中川 徹、2008年 1月 6日)

ここで、TRIZシンポジウムでの一般発表 (など) を本『TRIZホームページ』に掲載することについて、中川の考えを補足させていただきます。

TRIZシンポジウムの主催者である日本TRIZ協議会の公的な見解は、同協議会の公式ホームページに記述しているとおりです。すなわち、

お断り:  日本TRIZ協議会では、上記のように、基調講演の内容を本公式ホームページ内に公開しておりますが、その他の特別講演、チュートリアル、および一般発表 (オーラル発表とポスター発表を含む) の内容につきましては、公式ホームページで公開することをいたしません (第1回、第2回と同様)。ただし、各発表の著作権は著者にありますので、著者の判断で適切と考える雑誌やWebサイトに投稿・発表することを、日本TRIZ協議会が妨げるものではありません (第1回、第2回と同様)。(掲載: 2007. 10. 8)

なおこの決定のバックにはいろいろな理由がありますが、その主要なものはつぎの4点です。

(1) 発表原稿だけではシンポジウム不参加者にその内容が正しく伝わらないおそれがある。特にPowerPointの発表原稿ではそのリスクが大きい。(この点でWeb掲載を希望しない著者がある。)
(2) 企業活動の報告などの発表内容に関して、(予稿集以外の別の形で出すには)発表者個人だけでなく所属組織からの了解も必要となる。その発表許可が必ずしも申込み時に明確でなかった。(この点で発表を希望しない著者がある。)
(3) 参加費を払って参加している人と同じ文書情報を後日無料で公開すると、参加者が「損をする」、参加者の減少が起こる可能性がある。
(4) 日本TRIZ協議会では、一部の発表だけを選別して掲載することは困難がある。一律のルールにしようとすると、全部を掲載できなくて、結局全部掲載しないことにせざるをえない。

しかし、TRIZシンポジウムのProceedings は、基本的に参加者の数 (+α) だけしか印刷しません。参加者も日本語版か、英語版かのどちらかしか持っていません。後日 (例えば1、2年後) TRIZに興味を持った人が、シンポジウムのProceedingsを見つけてその論文を読めるのはよほどの幸運の人だけです。Webサイトに登録して後日でもきちんと読めるようにすることは、大事なことと、考えます。この観点から、上記の問題点について、一つずつ、少しずつ解決していくことが必要と、中川は考えています。

(1) について:  やはり各著者に努力いただく必要があります。スライドだけを読んでも、できるだけ正しく伝わるように作ること。論文概要を A4 1頁にしていますので、そこに分かりやすく書くこと。できる限り、正式の論文も作ること。英文でのスライドをできるだけ作ること。などです。-- また、これらが整っているものから、発表していくことが適当でしょう。

(2) について:  シンポジウムでの発表の時点で著者は組織に社外発表の意義を認めてもらい、許可を得ているわけですから、その後のWeb掲載についても意義を認めてもらうことが本筋であろうと思います。

(3) について:   この点は、ある程度のバランスが必要のようです。一つのやり方は、シンポジウム参加者 (あるいは、今後の日本TRIZ協会会員) に限定して、Web アクセスを可能にすることです。(欧州のETRIA はこの方式を採用して、2001年からのProceedingsの論文の全件を会員限定のWebサイトに登録しています。) もう一つは、時期を遅らせて掲載する、限定した数のものだけ掲載するなどで、公表することです。(米国のTRIZCON は、TRIZ Journal との間にこのような内規を持っています。) 『TRIZホームページ』でやっているのは、この後者の方式を採っているといえるでしょう。

(4) について:  一つのやり方は、あるルールを決めて、その (客観的に判定できる) 基準を満たしているものだけを全て掲載することです。(著者が掲載を希望する/しないというのも、客観的な基準の一例です。) 別のやり方は、内容的な面まで含めて個別に判断して選択的に掲載することです (これには、審査が必要ですが、できないことではありません)。さらにもう一つが、現在のように、公的ホームページには掲載しないと決めることです。

これらのことを考慮した上で、中川は『TRIZホームページ』に、「精選した少数の発表を時期を遅らせて掲載する」というやり方を採用してきているわけです。それは、『TRIZホームページ』が、日本TRIZ協議会/協会などの組織の「公式サイト」でなく、編集者が無形の社会的責任を負っている「公共サイト」だからできることであり、するべきことであると考えているのです。幸か不幸か、私の時間は限られていますから、比較的少数の発表しか掲載の作業をすることができません。それなら、掲載するものは、内容的に優れ、記述文書 (論文やスライドなど) が整っていて、著者の許可/協力が得られるものということになります。内容を判断しているのは私自身です。(もちろん、将来的には「少人数の編集グループを持った公共サイト」といったイメージも必要かもしれません。)

第3回TRIZシンポジウムの発表に関しても、あと数件のものを順次掲載するための準備をしております。どうぞ、ご期待、ご支援下さい。

 

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最終更新日 : 2008. 2.27.    連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp