TRIZフォーラム: 読者の声

読者の声 (2017年 8月〜 10月)

水谷 忠資、池添 康正、萩野谷 興、片平 彰裕、日野 克重、小谷 洪司、高山 直彦、中川 徹

責任編集: 中川 徹(大阪学院大学)

海外からの読者の声は英文ページを参照ください

「読者の声の索引ページ」も参照下さい

掲載: 2017.11. 5;  更新: 2017.11.12

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  編集ノート (中川 徹、2017年11月 4日) 

読者の皆様から折に触れていただいた感想・ご意見を、まとめて掲載させていただいているページです。お寄せいただきました通信に心より感謝いたします。

簡単な表形式で紹介させていただきます。

2017. 7.18  --------------------- 『TRIZホームページ』更新 ------------------
     
2017. 9.28  --------------------- 『TRIZホームページ』更新 ------------------
2017. 9.30 水谷忠資 (名古屋外国語大学)

主要矛盾と倫理、倫理の構造について

2017. 9.30 中川 徹 返信: 「倫理」の内容の後天性と、先天的な「良心」の仮説
2017.10. 1 池添康正  短信: 「自由と愛」。  中川 返信。
2017.10. 3 萩野谷 興 (弁護士) 倫理と愛はどう違うか?倫理を実現する力の源は? 為政者と国民の区別
2017.10. 9 中川 徹 返信: 倫理と愛。 北朝鮮の問題
2017.10. 5 片平 彰裕 (第一考舎)

札寄せ用具 6.04版を公開。札を集めてラベルを付ける。

2017.10. 9 中川 徹 返信: 札寄せの有効性、詳細の図と簡潔な図。
2017.10.14 日野 克重 「自由・愛・倫理」の意図、TRIZとAI
2017.10.16 中川 徹 返信: 文の意味解析、特許の解析、ビッグデータへのTRIZのアプローチ
2017.10.18 日野 克重

「自由 vs 愛」についての感想

2017.11.4 中川 徹 応答: 人類文化の主要原理は指針・目標であるが、矛盾を含む
2017.10.17  --------------------- 『TRIZホームページ』更新 ------------------
2017.10.19 小谷 洪司(元 富士通研究所) 日本早期認知症学会のこと
2017.10.19 中川 徹 応答: 日本早期認知症学会のホームページを読んで
2017.10.21 山 直彦 Seryi の基調講演を読んで。山口栄一著の物理の発想のMindMap表現
2017.10.21 中川 徹

返信。 (追記:2017.11. 4)

2017.11.12 中川 徹 追記: 山口栄一教授の本と記事の紹介
注 (2017.11.12 中川 徹): A. Seryi教授の要請に応じて、高山さんと中川のメールを英訳して、英文ページに掲載しました。また、山口栄一先生の関連記事について、本ページ及び英文ページに簡単に紹介しました。
本ページの先頭   ホームページ更新(2017. 7.18)

ホームページ更新(2017. 9.28)

ホームページ更新(2017.10.17)    

「読者の声の索引ページ」

英文ページ

 

   『TRIZホームページ』更新(2017. 7.18付け) 

読者の声(2017年5月〜7月)、我が家のつばめたちの成長アルバム(誕生:2017年6月9日、巣立ち: 6月24日) (中川 徹)

誕生 4日目  両親がたまたま続けて

誕生 10日目 トンボがごちそう

誕生 14日目 精悍な顔に

誕生 15日目 巣立ち前日のデモ飛行

 


   『TRIZホームページ』更新(2017. 9.28 付け) 

論文:人類文化の主要矛盾「自由 vs 愛」を考察する (2) 個人における「自由 vs 愛」の矛盾・葛藤と「倫理」 (中川 徹)

 

  水谷忠資 さん (名古屋外国語大学)  ==> 中川 徹   2017. 9.30 

こんにちは。中川様の論文をご紹介していただきありがとうございます。 先生が自由と愛を「人類文化の主要矛盾」であると認識され、 その対立を調整する可能性を「倫理」に求められた、3者間の構造は 普遍的な仮説モデルのように思われます。

大脳生理学、伝統医学、宗教学、政治経済学、哲学などの学問の中にも 同じような内部構造を見つけることができるように感じます。

人類には先天的に備わっていると考えられる「良心」は、どのような イメージでとらえれば適切であり科学的なのでしょうか?倫理の構造は 深くて興味ある問題だと思います。

先生の一層のご活躍を祈念いたしております。 水谷忠資

  中川 徹  ==>  水谷忠資 さん  2017. 9.30

返信いただき、ありがとうございます。

「人類文化の主要矛盾」の中に、「倫理」を明確に位置づけたことが、今年の論文の成果と思っています。     

その「倫理(の内容)」が後天的であることは、認めざるを得ないことです。しかし、「後天的で社会から教え込まれただけだ」となると、善悪はすべて(社会によって違いますから)何の根拠も持たない。いま、世界の人類に共通の基盤を持たないことになります。

「良心」(内心において善悪を判別する心の能力)という概念を得、それが先天的だと考えることが、「倫理」を根源において人類共通のものとして支えると考えています。これが、本論文の重要な仮説です。  

これは言語習得能力からの類推です。日本人を両親に持つ赤ん坊が、もしアメリカでアメリカ人の家庭で育てられれば英語を話すようになり、韓国で韓国人の家庭で育てられれば韓国語を話すようになることは、誰でもが知っていることです。言語は後天的だが、言語習得能力は先天的だというのは、疑いがないことと思います。−−言語学や脳神経科学がどのように科学的に立証できているのかは、十分に勉強できていませんが。  

「良心」の概念の中で、「内心において」と書いているのが一つのポイントです。人間は、うわべでいうこと、実際にすることは、「内心」での善悪の判断とは異なりますから。

いろいろ議論していただけますと、幸いです。

  池添康正 さん ==> 中川 徹   2017.10. 1

ご無沙汰いたしてをります。ますますご活躍の様子、遠くから拝見してゐます。

TRIZの方法で「自由と愛」を論ずるとは、なんと壮大な企てでせう。 しかし、三鷹の教会時代から一貫した生き方をなさってゐるやうにも思は れます。

僕は相変はらず、聖書を読んで楽しんでゐます。 池添康正        (仮名遣いママ)

  中川 徹  ==>  池添康正 さん  2017.10.1

返信いただきありがとうございます。
50年近くお会いしていないように思いますが、それでも気持ちが通じあっていることはうれしいことですね。
どうぞお元気で。

  萩野谷 興 さん (弁護士) ==> 中川 徹   2017.10. 3

過日は、メールをお送りくださりありがとうございました。  感想を2つ。

(1)  「倫理」(第0原理)が「自由」(第1原理)と「愛」(第2原理)の両者を動機づけ、かつ、調整できるとの整理の仕方に興味を持ちました。

ひとつ、疑問に思ったことは、倫理(第0原理)が「すべてのひとに幸福追求の権利がある」との考えは、結局、愛(第2原理)と同じことではないかということです。
人は、なかなか他人の幸福の利益を願う生き物ではないという現実を踏まえるとき、倫理(第0原理)を現実化する力の源泉をどこに求めるのかも気になるところです。   
貴論文を読んでもいないのに勝手な感想を述べてしまいました。

(2) 追記の時事問題のご意見は、ほぼ同感です。 ただ、北朝鮮について、その国民と為政者とを区別して考える必要があるのではないかと思います。為政者の現在の言動は自己保身のためのものであって  国民全体の幸福を考えたものではないと思えるからです。                        

  中川 徹  ==>  萩野谷 興 さん  2017.10.9

メールをありがとうございました。
昨年YMCAの会報に書きましたものから、さらにかなり問題を明確にできて、学会(3つ)で発表し、HPにも載せました。

(1) 「幸福追求の権利」が   
           すべての人に例外なくある というのが 倫理(第0原理)
        自分がそれを追求しようというのが   自由(第1原理)   
           (自分が意識している)すべての人たちに それを及ぼそうとするのが  愛(第2原理)

愛はその範囲を広げることを(原理的な理想として)目指すのですが、実際には段階的にしか広がらないという状況と思います。

(2)  国民と為政者を区別して考えるべきことは、どこでも同じですし、北朝鮮において特にそうだと思います。   

ただ、北朝鮮の国の大きな方針として、軍事を最優先にせざるを得ないというのは、他国を敵対関係として捉えていることの必然の選択であろうと思います。 経済が次の重要政策、国民の生活はその後に来るという選択は、軍事優先を前提とした当然のことでしょう。

政権/「王朝」の存続が別次元の最優先であることは問題ですが、歴史的な経過からのその政権が現在の唯一の体制であることは認めねばならないと思っています。   

米国を中心にして対北朝鮮の敵対関係を強める方向で進む限り、北朝鮮の現在の方針は一層強化されることになります。敵対関係を煽ることは簡単で、かっこいいことです。どんどん危険が大きくなる瀬戸際に進んで行きます。

それをどのようにして止められるのかが問題です。どのようにして敵対関係の意識を緩めるのかが、世界にとっての大きな課題であると思っています。  

とりいそぎ

  片平 彰裕 さん (第一考舎) ==> 中川 徹   2017.10. 5

札寄せ用具を6.04に更新しました。 6.04版では、札寄せ用具本体を最小化して表示できるようにしました。

なお今回は、実験的な試みとして、選択した複数の札・枠を 一か所に束ねる機能を追加しました。 操作説明書(PDF版)と操作法(HTML版)には、 書いてありませんが、札寄せ用具の右下 [A.Katahira] を 左クリックすると選択されている複数の札・枠を一か所に 束ねることが出来ます。 また、左下の [(C)2013] を左クリックすると、緑色の札を 作成できます。 この緑の札は、束ねた札の表札としての使用を意図しています。 KJ法では、集まったラベルを表札の下に隠して全体を束ねますが、 それに似たことが出来るようにしてみたということです。
実際に使うかどうかわからないので、この機能のためのボタンは 作らずに、しばらく試すことにしました。
以上よろしくお願いいたします。

  中川 徹  ==>  片平 彰裕 さん  2017.10.9

(1) 今年、創造学会、TRIZシンポ、ETRIA の順に Liberty, Love, Ethics  の発表をしました。同様の内容ですが、少しずつ調整しました。

その中で、札寄せで作った詳細図が考える上で最も大きな役割をしました。しかし、本当に説得力がある説明図は、ずっと簡略にしたものでした。エッセンスだけに簡略化した図が、本当に過不足なく適切に伝えられることを、再認識しました。 HPの更新案内に添付した図です。

(2) 6.04版、ありがとうございます。最小化は、便利なことがありますね。    

集約機能も面白いと思いました。一言アイデア。  (a) 集約したものであり、多数の札がその下にあることが、明示されているとよい。このために、各札の左上の角を、少しづつずらして札を重ねる。(下に隠れているものを)上に1ミリ、左に1ミリずらす。これで何枚が下に隠れているかがわかる。    (中略)

このような仕様でいかがでしょうか?作成の難しさを考慮していませんので、調整いただけるとよいと思います。 改良を続けてくださっていて、ありがとうございます。

  日野 克重 さん  ==> 中川 徹   2017.10.14

こんにちは。朝晩随分涼しくなりました。 いつもTRIZのお知らせありがとうございます。

「自由・愛・倫理」のご論稿について興味をもちましたが、そのテーマの意図 or 目的 (どんな問題あるいは不備を解決 or 改善しようとされたものなのか)がいまひとつよく分かりませんでした。それが分かればもう少し自分なりにも考えてみることができ るのですが。 どこかにそれが書いてあるところがあればそこを教えていただけませんでしょうか?  
#たとえば北朝鮮問題のようなことを考えるときの新たな視点を与えるというような 意図があるのでしょうか?

上記とは関係ありませんが、可能なら以下についてもご教示いただければ幸いです。
(Q1) TRIZには数学 or 算数に適用した事例はあるでしょうか? (そういう題材があるとさらに分かり易くなると思ったものですから)
(Q2) 今話題のAIについて TRIZ はどう見ているものでしょうか?   

以上火急の質問でもありませんので、そのうちお時間ができたときに簡単なヒントでもいただければありがたいと思います。もちろんお忙しい中読み捨てていただいても 結構です。
#特に後段の質問は何か月か前にもさせていただいたもので、しつこくて すみません。

  中川 徹  ==>  日野 克重 さん  2017.10.16

メールありがとうございます。

(1)「自由・愛・倫理」の論文は、この3年ばかり続けてきた研究の現段階での認識を示しています。そのモチーフを一番きちんと書いたものは、次の記事を見てください。    
    「自由」vs「愛」:人類文化を貫く未解決の「主要矛盾」、 東大YMCA会報(2016年12月)、『TRIZホームページ』掲載  (2017. 1.13) 

この「主要矛盾」の具体的な事例は至るところにあります。国際政治の問題もその事例が端的に顕われ、かつ重大な影響をもっている領域です。

(2) 数学への適用は、あまり例を知りません。

(3) TRIZ は、歴史的にAIをよく使ってきました。  

(a) 特に、自然言語処理、文・文書の意味解析。1985年頃から Minskのグループが先駆的に使い、90年代に米国でInvention Machine 社を興して、特許文書の意味解析を軸にしたTRIZのソフトを開発しています。これによって、TRIZは、科学技術情報を最新の形でかつ網羅的に 活用することが、他の「創造性技法」と異なる大きな特徴です。  

(b) これによって、最近の「ビッグデータ」に対するアプローチでも、TRIZは特徴のある寄与をしています。一般の多くのビッグデータ解析は、解析のモデルを持たずに、アドホックに、あるいは統計的に、大量データを扱おうとします。 一方、TRIZは、意味解析により、「何が、何を、どうする」という S-V-O の理解を持っていますから、大量の文書データ(特に特許データベース)を扱い、そこから意味のある情報を迅速に抽出することができます。   

上記の仕事の研究者・開発者には、Valeri Tsurikov、Darrell Mann、Simon Dewulf などがおります。彼らの最近の仕事を、『TRIZホームページ』で紹介したいと思っているところです。以前の記事には次のものがあります。   

「解説&マニュアル: TRIZソフトツールの仕組みと使い方・学び方 (TechOptimizer 2.5)」 (中川 徹) (1998.11. 2)
「TRIZ の現代化: 1985-2002年米国特許分析からの知見」、(D. Mann & S. DeWulf; 訳 中川 徹)  (2003. 4.16)

(c) もちろんこれら以外にも AIには沢山の分野・テーマがあります。TRIZはそれらの発展をいつもWatchし、吸収しながら、科学技術全体に寄与していこうとしています。

とりいそぎ
PS: 明日、「TRIZ for Science」に関する 英国のProfessorの基調講演を『TRIZホームページ』に掲載する予定です。

  日野 克重 さん  ==> 中川 徹   2017.10.18

ご多忙にもかかわらず、愚問に対して早速レスポンスいただきありがとうございま す。

(1) 自由 vs 愛について

・ ご提案の理論は、それが具体的問題に適用された例を見せていただいたとき、その 特色がより明確になるのかなと思いました。
・ なお、「自由・愛」の概念は、そもそも西洋風で、かつ既にかなりの正の価値を もった概念であることがやや気になりました。
・ これを単に「自・他」とすればより中立化されますが、そのとき、たとえばドーキ ンスの利己的遺伝子の理論は大変シンプルに利己(自由?)と利他(愛?)の関係を 説明するように思います。そういうものとの比較も見てみたい気がします。

(2) AI について

・ 囲碁将棋に限らず、現在の科学(数学も含めて)の大部分はAIで代えられると思 います。
・ それでも残るのはどの部分なのかを考えてしまいます。論理学の近辺でしょうか? TRIZもその近辺でしょうか?
・ それが分かれば、これから力を注ぐべき教育内容もより見えてきます。
・ かつて人間の洞察や補助線が幅を利かせた幾何学が、デカルトの代数によってずっ と平易なものになりましたが、これと同じことが今度は、代数式から AI (コン ピュータ) によって起きるだろうと推察します。  
#そういえば、比較的価値観が共有されている国内政治は早めにAIに任せた方が よいように思います(最適性、正当性、透明性などいろんな意味で)

(3) ミッションステートメントを拝見しました。我が身を振り返ると、その1だけはなん とか及第点がつけられるかなと思いますが、残りの2から5はダメです。中川さんの ような人ばかりだとこの世界はなんとよくなることかと思った次第です。

  中川 徹  ==>  日野 克重 さん  2017.11. 4

日野さんとのメールのやり取りを「読者の声」のページに掲載するべく編集していまして、一言だけ付け加えさせていただきます。

> 「自由・愛」の概念は、そもそも西洋風で、かつ既にかなりの正の価値を もった概念であることがやや気になりました。

たしかに、「自由」や「愛」ということばは、(私たち日本人にとっては)明治以後に西洋から導入されてきたもので、戦後日本にとってもまだなお「西洋風」な面があるように思います。しかし、その考え方は、どの時代でもどの社会でも、あった/あるのだと思います。「自由」に関連する言葉は、「独立」「わが道」「反抗」「自立」「自分のことは自分で決める」「自我」などでしょう。それぞれ、第一原理の「自由」の概念ほど包括的ではありませんが、すべての人の心の一部を占めているものです。「愛」に関連する言葉はもっと身近なように思います。「優しさ」「心の温かさ」「可愛がる」「慈しみ」「慈悲」などです。「愛」は、(程度の差はあっても)すべての人の心の中にある心情であると思います。日本人にとっては、「慈悲」という言葉が旧来からなじみがありますが、仏教と強く結びついた用語なので避けています。

「自由」や「愛」が、「既にかなりの正の価値を持った概念である」ことは、そのとおりです。「人類文化の主要原理」と呼んでいるのは、自然科学の原理などのような、「価値観を含まず、 どこでもいつでも成立する法則」を意味していません。人類文化が目指そうとしている、大きな(主要な)目標、指導原理、を意味しています。ですから、それは、(正の)価値を持った概念である、それを実現させることが望ましい目標である、と考えているものです。主要な目標を、「自由」特に「自由を伸張させること」と、「愛」特に「愛を普遍化させること」であると考えています。

ただし、「自由」が単純にいつも望ましい/正しい/正の価値を持ったものではない、沢山の矛盾を含んだものである、ということが私が言っていることです。また、通常「愛」は、(「自由」以上に)いつも望ましい/正しい/正の価値を持ったものと考えられることが多いですが、そうではない。「愛」にも、いろいろな矛盾があり、望ましくないことがある、と言っているのです。また、共に目指すべき目標である「自由」と「愛」の間にも、本質的な所で矛盾がある、というのが本研究の中心テーマです。

なお、「自己と他者の対立」の最も基本の形は、自己の幸福・利益の追求と、他者が他者自身の幸福・利益を追求することとの対立です。それは、自分にとっての「自由」と、他者自身にとっての「自由」との対立(すなわち、「自由」同士の対立)です。その対立は、よく知られている「競争」や「戦い」となって現れます。そのような対立を解決しようとするものの第一が「愛」です。それで解決する場合も多いのですが、解決しない場合も出てきます。その場合に、「自由」と「愛」との対立・矛盾が現れてきます。

「自由」と「愛」とのもっと根底に、人類文化は「倫理」を持っている、というのが、この研究の主張です。「倫理」は、「人の道」、「人としてのあるべき姿」「人倫」などです。ただここで、もっとよく使われる「道徳」や「社会ルール」という言葉を、私は避けています。なぜなら、「道徳」には、伝統的にその社会体制、社会的な掟、あるいは社会ルールに「従順であること」「服従すること」を第一とする考え方が強いからです。各時代の「社会体制」「社会ルール」は、その社会を作った「社会的勝者」で「社会を支配している層(階級)」に有利になるようにできています。そのような「社会ルール」を絶対視して、「従順」「服従」を強調することは、「人の道」とは外れたものになります。思考停止の「従順」「服従」は、「すべてのひとに幸福追求の権利がある」という考えに反します。それは「自由」にも「愛」にも反するものです。

「人の道」というとき、私たちは、(漠然としてはいるが)人類共通(普遍的)で不変のものがあるように思います。しかし、「善/悪」を指し示す基準としての「倫理」は、時代によって違っており、同時代でも国や社会によって違っている、ことを認めざるを得ません。「倫理」の(中身の)理解は、時代によって変化している、発展している。だからその発展の望ましい方向を見定めることが、大事なことです。私は、「倫理」を人類文化の第0原理であると捉え、特に「倫理を深化させること」が、人類文化の大きな目標であると、考えています。

「倫理」は人類文化の土台にあり、「自由」の原動力・動機・支えになり、「愛」の原動力・動機・支えにもなるものです。そして、「自由」のあり方を調整し、「愛」のあり方をも調整できる。だから、「倫理」は、「自由 vs 愛」という人類文化の主要矛盾を、調整し、解決することができる、大元の指針(原理)であると、考えています。それは、個人のレベルでの指針(原理)であるだけでなく、すべての社会組織・社会システムに対しても適切・有効な指針・原理でなければならない、と考えます。

このように考えると、「自由・愛・倫理」の全体をきちんと理解すること、多くの人々に理解が深まること、社会組織や社会システムにその考えが浸透して具体化されること、が非常に望ましいことです。それは、私の研究目標であるだけではありません。大きく言えば、人類文化の発展、人類文化の主要矛盾の解決のために必要なことです。

--- 書き始めると、止まらなくなりました。『TRIZホームページ』に掲載させていただきます。

 


   『TRIZホームページ』更新(2017.10.17 付け) 

科学機器の進化および科学への応用における発明の方法論 (Andrei A. Seryi (英国))

黄葉  (Lappeenranta, フィンランド) 中川 徹 (2017.10. 4)

  小谷 洪司 さん (元 富士通研究所)  ==> 中川 徹   2017.10.19

フィンランドの学会で発表とは頑張っていますね。

私は研究所にいた志村君(富士通FIMAT同期)のお手伝いで、日本早期認知症学会の 監査面のお手伝いをしてましたが、昨年75歳の定年で辞めました。 それまで参考にさせて頂きました。

志村君はお医者さんではないのですが、認知症が高齢化社会で大問題だと、 その早期発見と対処方法について、医師だけでなく、技術者、看護師および 家族を巻込んだ学会を引き受け、彼の人柄、情熱を傾け一生懸命やってます。 医師だけでは偏るからお前も手伝えと言われ、たまに彼に意見を出してきまし た。それが苦節10年ようやく彼の考えが皆さんに理解されつつあるところ まで来ました。

高齢者は4人に一人は認知症乃至その予備軍だと言われ、4百万人とも8百万人ともいわれています。 それだけに、医師だけの日本認知症学会とは別に、枠を拡げての活動に頭が下がります。 勿論志村君にも貴兄の論文は転送しましたがか忙しいらしく、まだ反応なし。

ありがとうございます。小谷

  中川 徹  ==>  小谷 洪司 さん  2017.10.19

メールをいただき、ありがとうございます。

「日本早期認知症学会」のことは、以前に小谷さんから「認知諸予防テキストブック」を送っていただいて知りました。初めの方を少し読んだだけで、そのままになっていて申し訳ないのですが、よい本ですね。  

「医師だけでなく、技術者、看護師および家族を巻込んだ学会」 というのは大事な考え方だと思います。 何か私のHPで紹介できることはないだろうかと思い、いま、同学会のHPを少し拝見しました。

「日本早期認知症学会」(Japan Society for Early Stage of Dementia)  HP:  http://www.jsed.jp/
本会は、早期認知症の診断および予防、治療の研究と実践の向上を目的として、会員への知識の普及と相互理解及び一般社会への啓発に寄与することを目指しています。

随分沢山の方、特に病院や大学の方々が理事や代議員をしておられ、しっかりした学会に発展しているのだなと思いました。  

志村さんがちょうどこの9月に理事長を退かれたのですね。75歳定年制というのは、学会の活性化にはいいことなのでしょうね。それでも、小谷さんも、志村さんも、私も、まだまだいろいろなことで社会や地域に寄与できることは一杯あるのだろうと思っています。志村さんは介護で忙しくしておられるのでしょうか。     とりいそぎ

 


  山直彦 さん  ==> 中川 徹   2017.10.21

いつも、興味深い記事、ありがとうございます。

今回の、Andrei Seryiの基調講演の内容は、私が昔から興味を持っていたものです。  実は、私は大学で物理を学んで途中で挫折しました。これは、物理学の様々な 法則、原理の発見を学んだときにつきまとう疑問、「なぜ、このような発想が出来たのか?」 と言うことです。数学的にも途中でサボったこともあってわからなくなったことも ありますが、この発想が思いつかないため自分の腹に法則や原理が落とし込めない ということが続いています。  

こんな中で、TRIZに出会った時に、「これを物理に応用したら、発想する助けに なるのではないか」と思ったことがあります。  

一方で、山口栄一著の「死ぬまでに学びたい5つの物理学」に書かれていた(添付 Mind Map参照)のですが、「知の創造」行為としての「創発」は、必ず「帰納」が最初にないと起こらない とあり、この「帰納」部分ではTRIZが有効と思います。但し、具現化のためには、 「演繹」と共にこの「創発」の部分でどうしたらいいのかわかりません。この部分を 埋める考え方や方向性を指南するものがあれば、科学の発展はもっとスピーディーに 進むのではないでしょうか。

  中川 徹  ==>  山直彦 さん  2017.10.21

メールありがとうございます。

Mind Mapの図は分かりやすいですね。  高山さんは、Mind Mapをよく活用されているのですね。

山口栄一先生の言っておられる「創発」と、 Seryi 講演の討論で言っている「概念駆動(による科学の革命)」 とは、確かに同じことを言っていると思います。  

このプロセスには、いくつもの指針がある、その表現はTRIZの40の発明原理や、あるいはもっと深いレベルでの考え方があるのだと思います。
(もちろんTRIZをはなれても、そのようなことはいろいろと考えられて来ているでしょう)   

まだ、その簡潔で要点を突いた表現・理論をよく知りません。 とりいそぎお礼まで。

追記(中川、2017.11.4)

「発想を得るためのプロセス」として、高山さんのメールでは(山口栄一先生の言葉として)「帰納」が前提に必要だとあります。中川の「6箱方式」考え方はもう少しはっきりしていて、第2箱の問題定義から、第3箱の「現在のシステムの理解と理想のシステムの理解」を得ることが、必要だと言っています。(それらの理解を得るための標準的な方法は随分よく知られています。)第3箱を得てから、第4箱の「新しいシステムのためのアイデア」を得る過程を、通常「アイデア生成」または「アイデア発想」と言っていますし、TRIZだけでなく、さまざまな方法が(その多くが第3箱の理解を飛ばした「近道指向」で)提案されています。しかし、「6箱方式」でのポイントは、「第3箱の理解をきちんと得たら、実は第4箱のアイデアは随分とスムーズに出てくるものだ」ということです。山口先生の「帰納」は、実際には第3箱での情報、すなわち 「現在のシステムの理解と理想のシステムの理解」を得ることであると、私は思います。

 追記 (中川 徹、 2017.11.12)   山口栄一教授の本と記事の紹介

Prof. A. Seryi (英国)からの要請に応じて、上記の高山さんと中川のメールのやり取りを英訳して、英文ページに掲載しました。

また、英文ページの読者に理解いただくために、山口栄一先生の関連記事で本ホームページに掲載していますものを簡単に紹介しています。

山口栄一 教授  京都大学大学院総合生存学館(思修館) 
山口栄一研究室ホームページ:  https://www.gsais.kyoto-u.ac.jp/staff/yamaguchi/j/index.html 
『死ぬまでに学びたい5つの物理学』、山口栄一著、筑摩書房(2015年)

「イノベーションの構造 −パラダイム破壊型イノベーションとは何か− (青色発光ダイオードの事例を分析する) 」、山口栄一、   (2014.12.10)

「東電原発事故の本質 ― JR福知山線事故との精神的類似性―」、山口栄一、   (2013. 9.20)
「FUKUSHIMA Report (2) The actual reason why this accident could not have been avoided」、山口栄一  (2013.10.3)

 

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最終更新日 : 2018. 3. 9      連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp