TRIZフォーラム:  Q&A by Sickafus (2) 
USITを学ぶには?
 質問:中川  徹 (大阪学院大学)
 返答:Ed Sickafus (Ntelleck, 米国)
 出典: SickafusのWeb サイト: www.u-sit.net
          Q&A03, Q&A04 [2001. 9. 7]
 和訳: 中川  徹 (大阪学院大学) 2001年 9月 8 日  [掲載: 2001. 9.26]
 

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編集ノート (中川  徹, 2001年9月 8日)

本件は, USIT法の開発者Ed Sickafus博士と 中川とのメールのやりとりを中心にしたもので, Sickafus博士のWebサイトに掲載されたものを, 許可を得て和訳・掲載するものです。先に掲載したQ&A02に引き続いた質疑で, USITの学び方について中川が質問し, Sickafus博士が答えています。

原題とその構成は以下のようです。

USIT Q&A03:   How can one self-learn USIT?   (質問: 中川  徹, 返答: Ed Sickafus)

USIT Q&A04:   How to Learn USIT?  What About E-Learning USIT?  (コメント: Matt Smith, 返答: Ed SIckafus;  コメント: 中川  徹, 返答: Ed Sickafus)

USITの学び方について, Sickafus博士の丁寧な回答・助言および和訳掲載の許可に感謝します。
本ページの先頭 Q&A03  USITの自習法
(中川, Sickafus)
Q&A04-1 E-Learning 
(Smith, Sickafus)
Q&A04-2 USITの学び方
(中川, Sickafus)
先行のQ&A Sickafus博士のWeb サイト



USIT Q&A03 (Ed Sickafus, www.u-sit.net, Sept, 2001) 

USITを自分で学ぶにはどうしたらよいか?

質問:  中川  徹

先のQ&A02は, マネジメントにどうアプローチするとよいかを議論したものとして, 有用だと思います。 Matt Smith氏はもうすでにUSITの専門家ですから。...  しかし, USITを学んでいる人たちの大部分はまだそのレベルには達していません。USITをどのようにして学ぶとよいかについて, もう少し助言をいただけないでしょうか? 初心者, 自分で学習している人, USITセミナーを受けた人, USITの実践を試みているがUSITについては企業内でほとんど一人である人, などのいろいろなレベルについて助言下さい。
返答:  Ed Sickafus

私自身がUSITを理解した大部分は, 自分で学び・演習して得たものです。私は同僚のDr. Stephanとは, [1994年に] イスラエルのオープン・ユニバーシティで開かれた, SIT法のトレーナー訓練コースで 1週間学びました。フォード社内で私がSIT研修プログラムを [1995年に] 開始して から, 私はその改良を始めて, それが後にUSITとなり, やがて, USITの教科書を [1997年に] 作ったのです。これらの経験と, USITを教えた経験とから, USITを自分で学ぶことに関しては, 私はつぎのようないくつかの考えを持っています。

自習は非常にうまくできます。

   長所:

  短所: この世の中の何事でも同じですが, 本当に習得しようと決意すれば, 習得できるものです。

私のUSIT教科書を読まれた読者なら, その教科書が自習のために構成されていることに気がつかれたでしょう。それは教え方についての単純なコンセプトに基づいて書かれています。それは, 私が物理学の学生として観察したもので, 「 (3段階の) 反復」 というものです。

物理学の教育について, 私の見方を簡単にまとめるとつぎのようです。大学 2年生の物理学の授業でわれわれが学んだのは, 力学, 熱力学, 電磁気学, そして現代物理学です。そのつぎの2年間, 学部の段階で, 力学, 熱力学, 電磁気学, そして現代物理学を学びました。それから, 大学院の授業では, 力学, 統計力学 (すなわち, 熱に関するさらに詳細), 電磁気学, そして量子力学を学びました。これらのすべてが博士の学位試験に集約されるわけで, そこでは, 大学2年生の物理学に対する理解をテストし, PhDの資質を持つかどうかを判定するのです。このような反復教育の考えを私の [USIT] 教科書に使いました。

 [教科書] 『統合的構造化発明思考 (USIT) - いかに発明するか?』では, 第 3章がUSIT方法論全体の概観を記しています。第 4章で方法論が反復され, そこでは, 方法論の例示として, 一つの例題を方法論の筋道に沿って展開しています。ついで, 第5章〜第11章で方法論を詳細に述べているのです。また, 教科書中の問題はいろいろの異なる完成度で [その解決法が] 記述されており, 自習する学生 (あるいはインストラクタ) にさらに発展させる素材を提供しています。

USITを自習する人たちに対して, 私はつぎのように薦めます。

初心者の人たちに:

実践者の人たちに:


USITインストラクタを志している人たちに:


ここで, 私の個人的な助言を付記することを, 許していただきたい。

この討論は, USITを自分で学ぶことに努力している孤立した人が, 疑問に対する答えをどうしたら得られるかという問題を派生した。このことに興味があるなら, つぎの Q&A04を参照ください。
 


USIT Q&A04  (Ed Sickafus, www.u-sit.net, Sept, 2001) 

Q&A04  USITを学ぶには?   USITのE-Learningはどうでしょうか?

Matt Smith (コメントと質問):

   中川教授へ:   あなたの質問 (Q&A03), 「自習している学生, あるいは, 会社で独りで学んでいる人が, USITを学ぶにはどうしたらよいか?」 というは, 非常に難しい問題です。私が受けたUSIT/TRIZのトレーニングの中で, USIT/TRIZのエキスパートと一緒に問題を解くのに使った時間が, 他よりも飛び抜けて大事であったと思っています。このような実地指導や相互作用無しで学習することは, 非常に難しいでしょう。

   Ed Sickafusへ:  エド, フォードでのユーザグループの経験がもっとも良いトレーニングになったと思います。オンラインのユーザグループについて, 試行したり考えたりしたことがありますか? マイクロソフトの Net Meetingなどのソフトウェアがあり, インタネットで接続してチャットとか共同スケッチングだとかができるので, 日本や世界中のどこででも, 孤立してUSITを実践しようとしている人たちのためのユーザグループが可能になります。

Ed Sickafus  (返答):

いいえ, NetMeeting についてはまだ経験がありません。しかしそれでも, このWebサイトに学習支援の機能を載せることを考えてきました。そのために, 設計問題の例題, リバース・エンジニアリングの例, パズル, エッセイ, 講義などを, 載せてきました。実際にUSITを自習している人たちのためのWebページを作ることに, どの程度の関心があるのだろうかと思っています。そのようなWebページは, フォードでのSITユーザグループ・ミーティングの長所のいくらかを実現できるでしょう。自習者が演習できる教材, 推薦文献, あるいは自習者が投稿したアイデアに対するオープンな討論などを載せることができるでしょう。自習者向けの質疑応答を組み込むことも可能でしょう。

   E-ユーザグループに:  これを読んでいる人で, 自習者のためのWeb ページに興味がある人は, 私にメールを下さい。

 

USITの学び方について (続):

中川  徹  (コメント) (部分引用):  「...  どんなことを学ぶのにも, 3種の主要な方法があると思います。

(a)  聞くことと, 直接のコミュニケーション/トレーニング
(b)  読むこと
(c)  自分で実践・適用および思考すること。
どんな学習者にも, これら 3種の主要な方法のすべてが望まれます。もし, どの一つの側面でも欠けていたり, 弱かったりすると, その学習者はそのテーマを効率的に習得することができなかったり, あるいはその真髄を理解できなかったりするでしょう。

非常に多数の, USITの講義を聞いた人たち, 教科書の読者たち, セミナーの修了者たち, 実践試行者たちが, まだUSIT方法論をマスターするに至らないのは, (c)の側面が弱いことがそのほとんどの場合でしょう。しかし, この面に関しては, 学習者自身の方にその学習の成果に責任があるといえるでしょう。...
 

 [注 (中川, 2001. 9.26):  私のメールは下記のように続いていました。この部分も引用してもらうように依頼したのですが, まだSickafus博士のサイトでは直っていません。中川の趣旨に誤解が生じないように, 『TRIZホームページ』では補足しておきます。]

そこで, (a) と (b) の側面に関して少しコメントしたいと思います。

[先程のQ&A03で] (a) の必要性をもう少し強調するのがよくないでしょうか。特に, 初期段階で学習の動機を得るためと, USITの思考法の真髄を理解するのに有効です。...

私はまた, USITの読み物に対しても需要が大きいと思っています。USIT法そのものの簡潔な全貌を20ページで書いていただけませんか? (われわれ日本人の読者には, 500ページ近くのUSITの密度の高い教科書は読むのが大変ですので。) また, USITの事例を公表することも努力して行かなければならないと思っています。...


Ed Sickafus (返答):

中川さんの出された観点はなかなか良いと思います。なにごとでも学習するのは, さまざまの形式のインフォメーションを必要とする複合したプロセスです。USITのように比較的新しいテーマでは, 利用可能な情報が限られていて, 学習をさらに困難にしています。

中川さんのコメントを読みながら, 私は自分のUSIT学習経験について考え始めました。それはどんな技術的なテーマを学ぶのにも一般的に適用できるものであり, 上記の (a) 〜 (c) の3種のカテゴリに含まれるものだと思います。

  1. 会話:  体系的な問題解決という分野に対する私の一般的な興味は, 何人かの同僚との会話の中から生まれてきたものです。これは学習過程としては予知できないパスであり, USITとかその他の問題解決方法論を知っている人たちと, 幸運にもめぐり会うかどうかに依存しています。

  2.  
  3. 読むこと:   何を学ぶにも, 読むことは極めて重要なパスです。しかしながら, USITに関しては限られた素材しかありません。2ヶ月前に, カリフォルニア大学の卒業生から電子メールを貰いました。彼は図書館にあったUSIT教科書で自習し, USITの講義やセミナーには一度も出たことがありません。私がSITを学び始めたときには, SITについて公表されているものは何もありませんでした。

  4.  
  5. 専門家によるセミナー:    セミナーはUSITに対する興味を引き起こすのに重要であると思いますが, 実際の学習にはおそらくあまり寄与しないでしょう。セミナーの長さは 1時間とかそこらであり, 大抵そのテーマの概要を与えるものです。しかしながら, もしあなたがそのテーマをすでに知っている場合には, セミナーは新しいアイデアを得る良いソースとなるでしょう。

  6.  
  7. 3日間のトレーニング:    これはUSITの実践者となるための鍵です。フォード自動車社でも, Ntelleckの顧客 [の会社] でも, このトレーニングは非常に成功して使われてきました。私が教える 3日間のコースでは, USITの理論と, 教科書的な演習, および, 受講者がその職場からクラスに持ち込んできた実世界の問題の解決とをミックスして教えています。

  8.  
  9. ユーザ・グループ:    3日間コースに引き続いたフォローアップの技術として, ユーザグループというのが大変大事です。3日間コースでUSITの理論の大部分といくつかの例題をカバーすることができますが, それだけでUSITの初心者を実践者にまですることはできません。それには, 方法論を適用することに時間を掛けなければならないのです。USITのクラスを新しく修了した人たちが, すぐにユーザグループに加入することができれば, USITに馴染んで速やかに便利に使いこなすのに最良の機会を得られるでしょう。

  10.  
  11. 自分での実践:   USITを学ぼうという決心が本当に試されるのは, 本当に自分で実践するかどうかです。実践してみると, その方法論の何を理解していて, なにを理解していないかが, 自分ですぐに分かります。そうすると, 質疑応答のセッションやその他の討論に参加したときに, 何を尋ねればよいのかが分かるようになるでしょう。

  12.  
  13. チームでの実践:   自分で実践した経験があれば, チームでの実践を成功させるのに必要な自信が得られます。チームでの実践はエキサイティングなもので, 取り上げた問題に対する新しい視野やアイデアがどんどん出来てきます。それはお互いの [USITの] 理解がチャレンジを受け, 非常にすばらしい学習の時間になります。

  14.  
  15. 学会発表と論文集:   初心者や全く知らなかった人たちにとって, これらが非常に重要な情報源です。初心者が, そのようなテーマについて専門家たちが議論している学会に参加するのは, 特に有益です。そのような会に出席したときに最も大事なのは, 発表を聞くことよりも, 廊下などで専門家とたちと一対一の議論をすることです。

  16.  
  17. USITを教え, セミナーをし, 説明すること:    「何事であれ, (聞き手の教育レベルに関係なしに) 他の人たちに説明することができなければ, 自分がそれを理解しているとは言えない」 というのが, 私の考えです。そして, その逆もまた正しいのです。すなわち, 「説明することに勝る学習なし」。


USITを学ぶ上記の 9つのパスは, ほとんど自明のことで, やや理想化されている。それじゃ, 本当のところはどうなんだろう? 実際, 1995年以来, フォード自動車社の技術者たちは上記の9つのパスのすべてにアクセスすることができた。その一方で, 世界中でほんの少数の, いまUSITを教えている自分たちは, これらのパスの多くが利用できない状況で, 教えるレベルにまで達したのである。唯一の教科書が出版されたのが1997年だから, その前に教えていた自分たちには教科書などはなかった。現在まで, USITに関しては少数の論文しか発表されていず, それらもやや特殊である。自分自身の学習と教育の経験から考えて, 私が言えるベストの助言はつぎのようである。

「USITに興味を持ちなさい, USITを知りなさい, USITの実践をやってみなさい。
どんなチャンスでも, 利用できるチャンスは何でも掴みなさい。」

 
 
本ページの先頭 Q&A03  USITの自習法
(中川, Sickafus)
Q&A04-1 E-Learning 
(Smith, Sickafus)
Q&A04-2 USITの学び方
(中川, Sickafus)
先行のQ&A Sickafus博士のWeb サイト

 
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最終更新日 : 2001. 9.26     連絡先: 中川 徹  nakagawa@utc.osaka-gu.ac.jp