TRIZ論文: TRIZ シンポジウム 2010 発表
TRIZの理想 ―TRIZという生き方?その2―
高原 利生 ( )
日本TRIZ協会主催 第6回日本TRIZシンポジウム、オーラル発表、
2010年9月 9-11日、神奈川工科大学、神奈川県厚木市
同 紹介: 中川 徹 (大阪学院大学) 2011年 4月14日 (英文)
掲載: 2011. 9.25

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編集ノート (中川 徹、2011年 9月24日)

本稿は、昨年の第6回日本TRIZシンポジウム (2010年9月9-11日) において、ポスター発表されたものです。この発表のスライドは、一般発表の一つとして、日本TRIZ協会の公式サイトでは「会員限定ページ」に3月から掲載されています。

このたび私は、昨年のTRIZシンポジウムの発表のうちのほぼ半数を精選して、本ホームページに和・英で個別ページを作り、著者の了解を得て発表スライドを本サイトに収録して、より広く読んでいただけるようにいたしました。また、昨年11月〜本年4月に順次掲載しました中川の「Personal Report of Japan TRIZ Symposium 2010」(英文) から関係紹介記事を抽出して英文ページに掲載いたします。

本ページはつぎのものを掲載しております。  (著者が 和文・英文のスライドだけでなく、Full Paper を和文・英文で記述していることに、この仕事に対する情熱が露れていると思います。)

和文ページ (このページです) 英文ページ
拡張概要のHTML 版
同 PDF版
概要のHTML版
同 PDF 版

発表スライドのPDF版

発表スライド (英文) のPDF版

論文 (full paper) のPDF版 論文 (full paper) (英文) のPDF版
-- 中川による紹介 ("Personal Report" より)  (英文)

高度に洗練された哲学的な論文です。技術分野だけでなく、人間や社会の世界をも含めたすべてのもの/ことを、体系的に説明/記述したいというのが、著者のねらいです。通常の「オブジェクト」の概念を拡張して、「認識可能なものすべて」を表すものとし、その結果、物質、システム、アイデアなどだけでなく、運動、変化、プロセスなどを「(拡張した)オブジェクト」と考えています。このように拡張した概念を使って、「TRIZの理想」(すなわち、差異解消のための理想の方法) を、問題状況から解決策への変換として形式的に記述することを試みています。理論的な思考のためには、列挙によるラジカルな思考 (すなわち、すべてのものを取り上げて、体系的に整理する思考) が重要であると、著者はいいます。実に精力的で高度な研究です。


[1] 拡張概要

TRIZの理想
―TRIZという生き方?その2―

高原 利生 ( )

日本TRIZ協会主催 第6回日本TRIZシンポジウム、オーラル発表、
2010年9月 9-11日、神奈川工科大学、神奈川県厚木市

概要

問題は、どう生きるかとTRIZをどうするかである。以前、TRIZには、技術、制度の全領域の全行為をカバーする統合的思想と方法の可能性があると述べた。これが出発点である。この可能性を検証し現実化しなければならない。本稿は、そのため、第一に、今までに欠けている領域の検討として、物々交換の誕生を例に、制度誕生以前の観念の領域でのオブジェクトの動きを探り、TRIZの全領域に対応する生きることの全体像を述べる。第二に、TRIZの理想の方法の一部として、解の実現方法を、方法の要素の組み合わせで構築する試みを述べる。最後にTRIZの理想の思想として本来、弁証法とTRIZの持っている根源的極限的網羅思考の活性化が必要であることを述べる。

内容説明

1.はじめに

第4回TRIZシンポジウムで、目的であるオブジェクトの変更は、二オブジェクト二属性以内の場合、オブジェクト数の変更、属性数の変更、一属性の変化、技術的矛盾と物理的矛盾の処理のいずれかであると述べた。

これは、TRIZ内の個々に行われている処理の統一ができること、TRIZがすべての変更の科学の形式的基礎であることを意味するように見える。これが問題の始まりである。この可能性を現実化したい。

2.物々交換と生きること

道具、言葉と並んで重要なのは、平和的な物々交換が普及したことである。物々交換には、自分の前にあるものが自分の共同体の所有であるという意識、相手の前にあるものが相手の共同体の所有であるという共同観念をお互いに持ち、自分の共同体の所有物を相手に与え、相手も同じことを同時にするという、相手のことを考えた共同観念の生成が必要である。共同観念は行動と相互作用しながらオブジェクト分割をしていく。これは、共同観念の生成の歴史と論理、制度の生成の歴史と論理である。

生きることの理想を考える。理想は、
     1. 正しい個人の認識、共同観念を生成し、
     2. 正しい議論ができ、
     3. 問題などの差異が解消できること
である。

3.TRIZの理想の方法

現実世界を認識し操作する理想の理論の要件は、認識可能なあらゆるものを対象とすることができ、それに対してあらゆる操作可能な変更の型を適用でき、適切な変更のための解を瞬時に得られることである。TRIZの現状の大勢は、技術上の問題解決の様々な方法の集合体である。技術、制度を対象にTRIZを理想化するための統一化再解釈を述べる。次の要素がある。

   1) 目的のオブジェクト変更の型への変換

目的をオブジェクト変更の型に変換する。

     P- O1 :              一オブジェクト一属性以内のオブジェクト変更の型へ変換
     P- O2(PC)- S :   物理的矛盾の処理
     P- O2(TC)- S :  事前の技術的矛盾の処理

   2) オブジェクト変更の型間の変換 

    O1- O1 :               法則による変換
    O1- O2 :               副作用が起こす変換
    O2- O2(TC)- S :    副作用対処のための技術的矛盾の処理

   3) オブジェクト変更の型から解への変換

   O1- S :                  1オブジェクト1属性1値以内の操作と変換
   O2- S :                  2オブジェクト2属性以内の操作と変換

     これらを組み合わせて以下の四つのパタンがある。

   1)  P- O1、(O1- O1)、O1- S
   2)  P- O1、(O1- O1)、O1- O2、O2- O2 (TC)、O2- S
   3)  P- O2 (PC)、O2- S
   4)  P- O2 (TC)、O2- S

     現実のTRIZは、一属性二値の処理を物理的矛盾として扱い、技術的矛盾は二属性の同時充足の一部を扱う。

4. TRIZの理想の思想

生きることにもTRIZにも弁証法の持っている活気を、生き方とTRIZに吹き込むことが必要である。
弁証法の活気とは第一に、弁証法は全てのオブジェクトが双方向に関連しあい運動し変化していると一瞬のうちにとらえる思想、視点、態度であると認識することである。
弁証法の活気の第二は、ある程度の時間をかけて認識、変更する対象空間内のオブジェクトとそれに関係するものの構造的網羅を行い、これらの根源的極限的な変更を可能にする理想的な根源的極限的網羅思考である。

 

拡張概要  PDF  和文   拡張概要英文


[2] 発表スライド と 論文:   

発表スライド 和文 (32 スライド、PDF 283 KB)   (本サイト内)    (公開、変更禁止、コピー禁止、印刷許可)

発表スライド 英文 (32 スライド、PDF 183 KB)   (本サイト内)    (公開、変更禁止、コピー禁止、印刷許可)

 

論文 和文 (8 頁、PDF 383 KB)   (本サイト内)    (公開、変更禁止、コピー禁止、印刷許可)

論文 英文 (10 頁、PDF 203 KB)   (本サイト内)    (公開、変更禁止、コピー禁止、印刷許可)

 


[3] 中川による紹介 (英文):

Personal Report of Japan TRIZ Symposium 2010,
Part H.  Applications to Soft & Non-technical Areas
中川 徹 (大阪学院大学)、2011年 3月30日 (掲載: 2011. 4.14)

==> 高原論文 英文ページ内 (英文)

紹介要点:  

高度に洗練された哲学的な論文です。技術分野だけでなく、人間や社会の世界をも含めたすべてのもの/ことを、体系的に説明/記述したいというのが、著者のねらいです。通常の「オブジェクト」の概念を拡張して、「認識可能なものすべて」を表すものとし、その結果、物質、システム、アイデアなどだけでなく、運動、変化、プロセスなどを「(拡張した)オブジェクト」と考えています。このように拡張した概念を使って、「TRIZの理想」(すなわち、差異解消のための理想の方法) を、問題状況から解決策への変換として形式的に記述することを試みています。理論的な思考のためには、列挙によるラジカルな思考 (すなわち、すべてのものを取り上げて、体系的に整理する思考) が重要であると、著者はいいます。実に精力的で高度な研究です。

 

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最終更新日 : 2011. 9.25   連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp