TRIZ/USIT/CrePS 講演

創造的な問題解決の方法論:TRIZ とその発展
〜技術革新のための科学的方法〜

中川 徹 (大阪学院大学名誉教授)

鳥取大学大学院医学専攻 革新的未来医療創造コース 「革新的未来医療創造特論」講義 (鳥取県米子市)、2015年 1月20日

掲載:2015. 4.12

Press the button for going to the English page.

大学生・社会人・技術者・実践者の皆さんに (中川 徹、2015年4月8日)

このページは、「発明の方法」、「研究の進め方」、あるいは「問題を創造的に解決するための考える方法」について、きちんと書いています。

大学院の人たちに90分で話した講義資料です。特別な予備知識は要りません。医学に限らず、理科系一般が対象です。

現在の科学技術が前提にしている考え方(「抽象化の4箱方式」)に限界があること、従来の「創造性の諸技法」が部分部分だけを見て全体を見失っていることを論じています。

新しいアプローチとして、旧ソ連で開発されたTRIZ(トリーズ)、そして、それに影響を受けて米国で開発され日本で発展させたUSIT(ユーシット)を説明しています。

それらを土台にして、「6箱方式」という考え方が生まれ、それが「創造的な問題解決の一般的な方法論」(略称CrePS(クレプス))を構成したことを述べています。

-- 私自身の18年間の理解の進展を、これらの4段階できちんと表現したものです。

編集ノート (中川 徹、2015年 4月 8日)

本稿は、表記のように1月20日に鳥取大学の医学の大学院に呼ばれて、90分の特別講義をしたときの資料です。もっと早くに掲載するとよかったのですが、スライドの英訳に手間取り、2ヶ月半遅れで、和英同時に掲載いたします。

昨年10月に、鳥取大学の上原一剛先生からメールをいただき、講義の依頼打診を受けました。上原先生は2000年に三菱総研主催の中川のUSITトレーニングを受けられ、当時は鳥取大学の工学部でしたが、最近医学部に移られたそうです。講義の趣旨については、同大学医学部附属病院 次世代高度医療推進センター長 難波栄二先生から、下記のような正式依頼をいただきました。

この度は、鳥取大学大学院医学専攻「革新的未来医療創造コース(以下、本コース)」の講義科目「革新的未来医療創造特論」における外部講師をお引き受け頂き、誠にありがとうございます。

本コースは、文部科学省「未来医療研究人材養成拠点形成事業」に採択された「革新的未来医療創造人材の養成」事業における中心的な取り組みとして開設されました。鳥取大学が独自に考案した『発明楽』の考え方を基盤として革新的な医薬品・医療機器などを発明し、日本や世界の人々および医療の発展に貢献する能力と心構えを持った人材を育てることを目的として、本年10月より開講した博士課程のコースです。

「革新的未来医療創造特論」は本コースに入学した学生が初めに履修する科目として設定され、『発明楽』に関する授業のほか、医学部附属病院で行われている先端医療研究の基礎的内容、また発明を通じて自身がいかにして社会に貢献できる人材となるかを考える講義などを行うことにしております。

今回、中川先生には『発明楽』に関連して、発明手法や問題を創造的に解決する方法など、先生がご専門の分野の内容について、大学院生を対象に講義をして頂きたく存じておりますが、今回はコースの初年度ということもあり、本コースに興味のある学生や教職員を広く募って実施したいと考えております。

このコースやセンターの趣旨などは、鳥取大学のホームページ に詳しく説明されています。
右の上のアイコンは、同センターの「革新的未来医療創造人材の養成」事業のホームページに行きます。

また、「発明楽(はつめいがく)」 というのは、同コースの植木賢(まさる)教授が考案・推進されているもので、小学生や中学生にも「発明」するための考え方を楽しく学べるようにしたものです。そのホームページには右の下のアイコンのような、かわいい小学4年生の女の子が活躍しています。これについては別ページで紹介したいと考えています。

 

上記のような大学院コースのための講義(90分)ですから、中身のあることをしっかり話したいが、要点を簡潔に、また例示しながら話すことが必要です。いままでいろいろな場で話してきたものを構成し直して、結局57枚のスライドにしましたその構成は、「創造的な問題解決の方法」の全体的な大きな発展を、私自身の理解に従って、4段階で表現しています。意のあるところを読み取っていただければ幸いです。(なお、私の通常よりも枚数が多いので、このうちの約1/3は、Skipマークを付けて、あまり説明しないことにしました。)

和文ページには、、概要(1頁)のHTMLPDF、スライド(57枚)の画像HTML版とPDF版を掲載します。英文ページには、紹介およびスライドの画像HTML版とPDF版を掲載しています。

 

 

スライド  目次       タイトル 

0.  はじめに 

1.  創造的な問題解決の考え方(1)[現在での通常の理解] 科学技術の基本と多様な「創造性技法」 

2.  創造的な問題解決の考え方  (2) TRIZ (トリーズ、発明問題解決の理論) ゲンリッヒ・アルトシュラー (旧ソ連) 

3.  創造的な問題解決の考え方 (3) USIT   (ユーシット、統合的構造化発明思考法)   エド・シカフス (米国) ==>  中川 徹 

4. 創造的な問題解決の考え方  (4) CrePS 創造的な問題解決の一般的方法論 (クレプス)   中川 徹 

5.  創造的な問題解決の考え方  (5) その習得と実践のために    

 

本ページの先頭 編集ノート 目次 概要 概要PDF スライド先頭 0. はじめに 1. 科学技術の基本と創造性技法
2. TRIZ (発明問題解決の理論) 3. USIT (統合的構造化発明思考法) 4. CrePS (創造的問題解決の一般的方法論)

5. 実践のために

スライドPDF     英文ページ

 


 発表論文概要    ==> PDF

 

創造的な問題解決の方法論:TRIZ とその発展
〜技術革新のための科学的方法〜

 

中川 徹 (大阪学院大学名誉教授、『TRIZホームページ』編集者)

2015年 1月20日

鳥取大学大学院医学専攻 革新的未来医療創造コース 「革新的未来医療創造特論」講義

 

概要

科学技術の分野でも、社会的な分野でも、人類はさまざまな困難・問題に出遭い、それらを一つずつ乗り越えて、人類の文化を形成してきた。だから、私たちの身の回りにあるあらゆるものに、創造的な問題解決の成果が無数に織り込められている。
しかし、どのような(思考)方法とどのような実践プロセスを経てひとつ一つの創造的な問題解決が行われたのかは、十分に意識されず記録されていないから、「創造的な問題解決の方法」はまだまだ確立されていない。このような方法に関する従来の認識と、最近の新しい知見について述べる。

 

(1) 科学技術における問題解決の基本的なアプローチは、具体的な問題を抽象化・一般化した問題にし、一般化したレベルでの解決策を得て、具体的な解決策を考えるという、「(抽象化の)4箱方式」を基礎とする。科学技術の分野ごとに様々なモデル/理論/知識ベースが作られ、活用されている。
しかし、革新・発明を必要とするような問題は、これらの既存モデルには、乗りがたい。そのような問題の解決には、「ひらめき」が必要なのだと考えられている。その「ひらめき」を得る/容易にするために、さまざまな「創造性技法」が提唱され、百家争鳴の状況にある。それぞれの提唱技法が部分的であり、全体としての骨格を見いだせていない状況にある。

(2) ここに登場したのが、「TRIZ (トリーズ、発明問題解決の理論)」である。旧ソ連の民間でG.アルトシュラーらが開発し、冷戦終了後に世界に広まった。多数の特許の分析から、発明のアイデアのエッセンス(「40の発明原理」)、技術システムの進化のトレンド、機能目標を実現するための諸原理の索引などを抽出して、問題解決を効率化する膨大な知識ベースを作り上げた。また、矛盾を定式化して克服する技法などを作った。
これらの知識ベースや技法が、科学技術の全分野の知識を集めて作られているから、分野を越えて活用できる点で優れている。TRIZは上記の「4箱方式」をベースにしているが、複数のモデルを持ち、各モデルが問題の諸側面を部分的に扱うため、問題解決の全体プロセスが輻輳していることが難点である。

(3) 米国でE.シカフスが、(TRIZの影響を受けて)、創造的な問題解決の簡潔な一貫プロセスを作り、「USIT(ユーシット、統合的構造化発明思考法)」と呼んだ。
日本で中川らがこれを導入・発展させ、TRIZの解決策生成の諸方法をUSITに統合した。また、中川は、USITの全体プロセスを考察して、新たに「6箱方式」を提唱した。

(4) 中川は、「6箱方式」を基本的枠組みとして採用し、「創造的な問題解決の(一般的)方法論 (CrePS)」の構築を提唱している。これは「現実の世界」で問題を捉え(箱1→箱2)、ついで「思考の世界」で問題を分析し(→箱3)、解決策のアイデアを得(→箱4)、解決策コンセプトを作り(→箱5)、そして「現実の世界」に戻って具体的な(商品などの)解決策を実現する(→箱6)。この問題分析の段階(→箱3)で、現在のシステムの理解(構成要素、その属性、機能、空間・時間特性など) と、理想のシステムの理解(望ましい振舞いと望ましい属性など)の、両方を得ることが重要であり、それらが明確になると解決策のアイデア(箱4)がずっと容易に得られることが特徴である。
この一般的方法論は、TRIZ/USITをベースにして記述でき、従来のさまざまな技法/プロセスを取り込み・統合することができる。

  本講義は、以上の発展を述べ、特に身近な問題を例にして(3)(4)段階の方法を説明する。

   参考: 『TRIZホームページ』:  http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/

 


 発表スライド     PDF 

 

創造的な問題解決の方法論:TRIZ とその発展 〜技術革新のための科学的方法〜

中川 徹 (大阪学院大学  名誉教授)

 

 

 

0.  はじめに

 

 

1.  創造的な問題解決の考え方(1)[現在での通常の理解] 科学技術の基本と多様な「創造性技法」

 

 

 

 

 

 

2.  創造的な問題解決の考え方  (2) TRIZ (トリーズ、発明問題解決の理論) ゲンリッヒ・アルトシュラー (旧ソ連)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3.  創造的な問題解決の考え方 (3) USIT   (ユーシット、統合的構造化発明思考法)   エド・シカフス (米国) ==>  中川 徹

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4.  創造的な問題解決の考え方  (4) CrePS 創造的な問題解決の一般的方法論 (クレプス)   中川 徹

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5.  創造的な問題解決の考え方  (5) その習得と実践のために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本ページの先頭 編集ノート 目次 概要 概要PDF スライド先頭 0. はじめに 1. 科学技術の基本と創造性技法
2. TRIZ (発明問題解決の理論) 3. USIT (統合的構造化発明思考法) 4. CrePS (創造的問題解決の一般的方法論)

5. 実践のために

スライドPDF     英文ページ

 

総合目次  (A) Editorial (B) 参考文献・関連文献 リンク集 ニュース・活動 ソ フトツール (C) 論文・技術報告・解説 教材・講義ノート (D) フォーラム Generla Index 
ホー ムページ 新着情報   子ども・中高生ページ 学生・社会人
ページ
技術者入門
ページ
実践者
ページ

出版案内
『TRIZ 実践と効用』シリーズ

サイト内検索 Home Page

最終更新日 : 2015. 4.12    連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp