TRIZ/CrePS 発表(社会問題)

社会の貧困の問題にTRIZ/CrePSでアプローチする:
人々の議論の根底に、人類文化の主要矛盾「自由vs. 愛」を見出した

中川 徹 (大阪学院大学 名誉教授 & クレプス研究所 代表)

第12回日本TRIZシンポジウム2016 発表
2016年9月1日〜 2日 早稲田大学西早稲田キャンパス (東京都新宿区)

掲載:2016. 9. 9

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編集ノート (中川 徹、2016年 9月 6日)

先週、9月1-2日に早稲田大学でTRIZシンポジウムが開かれ、141人の参加がありました。本件は、そのときの私の発表です。一般発表は、発表(質疑込み)25分、休憩5分でした。

この1年間の研究成果として、社会的問題へのTRIZ/CrePSの適用の試みを話しています。本ホームページで逐次発表してきたことです。発表論文の概要(1頁)(HTML と PDF)(発表申込時(5月)に提出し、最終スライド提出時(7月)に推敲提出)、および発表スライド(7月末提出、8月末推敲)(HTML と PDF)を掲載します。ほぼ対応する内容を英文ページにも掲載しています。

スライドの構成は次のようです:

タイトル: 社会の貧困の問題にTRIZ/CrePSでアプローチする: 人々の議論の根底に、人類文化の主要矛盾「自由vs. 愛」を見出した

(0) はじめに (趣旨とアウトライン

(1) 創造的な問題解決の一般的な方法論CrePS

(2) TRIZ/CrePS を 社会的問題に適用する: 「日本社会の貧困」をテーマに

(3)  『下流老人』(藤田孝典著)を「見える化」する

(4)  『下流老人』に対する読者の書評82件を検討する

(5) 「人々の意識の根底にある問題(矛盾)」に焦点を絞る

(6) 「自由」 vs. 「愛」 が「人類文化の主要矛盾」 であると認識した

(7) 「主要矛盾」の解決を困難にしているものは何か?

(8) 今後の研究課題

(9) 本研究のまとめ: CrePSの6箱方式での整理

 

企業の技術者の人たちは、TRIZの適用がいままで技術やビジネスの分野だけでしたから、本研究に戸惑った人が多かったかもしれません。そんな中で、会場係のアルバイトをしてくれていた、学部2年生の伊沢君が、「この発表に感激した」と言ってくれたので、びっくりしました。固定観念無しに、新鮮な気持ちで聞いてくれたからでしょう。

 

本ページの先頭 概要 概要PDF スライド先頭 発表スライドPDF    『下流老人』の「見える化」  自由 vs. 愛 論考   英文ページ 

 


 発表概要       PDF   (133 KB)

社会の貧困の問題にTRIZ/CrePSでアプローチする:
人々の議論の根底に、人類文化の主要矛盾「自由vs. 愛」を見出した

中川 徹 (大阪学院大学 & クレプス研究所) 

第12回日本TRIZシンポジウム2016 発表
2016年9月1日〜 2日 早稲田大学西早稲田キャンパス (東京都新宿区)

概要 

本研究は、輻輳した社会的な問題に、TRIZおよびCrePSの考え方を使ってアプローチした最初の報告である。技術分野で樹立されたTRIZを、広範な社会問題(特に「日本社会の貧困問題」)に新しく適用しようとした。まず問題状況を理解するために、藤田孝典著『下流老人』(2015)を原典に選び、片平彰裕作の「札寄せツール」を使って、本の論理を(親和図に似た表現で)図的に「見える化」した(24頁の冊子)。さらに、同書についてAmazonサイトに投稿された読者の書評82件を詳細に検討し、考察した。これらの結果、人々の議論の根底に、「競争社会における勝ち負けと助け合い」の考え方に葛藤・対立があることを認識した。

この認識を突き詰めて、「自由と愛」が「人類文化の主要原理」でありながら、同時に「自由 vs. 愛」が「人類文化の主要矛盾」である、ことを認識した。自由と愛の両者を包含し、動機づけ、調整するのは「倫理」である。人類文化が作り上げた大規模で多層な社会システムの各層で、「自由」と「愛」と「倫理」の関係の実状と望ましい姿を明確にすること、が今後の重要な研究課題であり、それによって貧困問題を含む社会問題に解決の指針を見出せるだろう、との方向づけを得た。

 

内容説明

社会問題は、技術課題に比べると、事柄がずっと輻輳していて、メカニズムが不明確なことが多い。そこにTRIZおよびCrePS(創造的な問題解決の一般的方法論)を適用するにあたって、以下の観点で進め、有効であった。

(1) 「日本社会の貧困」を全体テーマとしつつも、まず「高齢者の貧困」を焦点にした。CrePSの6箱方式の第1箱段階と認識し、現実の問題状況の理解から始めた。藤田著『下流老人』の本は問題状況を広く取り上げ、深く考察していて、有効であった。

(2) 第2箱で問題を明確化するために、『下流老人』の本を「札寄せツール」を使って「見える化」した。自分が理解したとともに、多数の人に見せて議論するにも有用であった。さらに、Amazonでの読者の書評が、賛否に大きく分かれ、多様な論点が上がっていたことも、どこが議論すべき問題の焦点かを理解するのに有効であった。多数の論点の中で、「人々の意識、一般国民の社会的意識の根底にあるもの」の不一致、葛藤が重要だと認識した。

(3) 第3箱の現在システムの分析の段階にあたり、上記の国民の社会意識の根底のメカニズムの解明を考えた。「競争社会での、勝ち負けと敗者自己責任論に対して、助け合い(社会保障)の必要」が中心の課題である。これを突き詰めて、人類文化の二つの指導原理、「自由」と「愛」との間に、本質的な矛盾があるという認識に達した。これは、TRIZ/CrePSでの、根本を洞察する考え方と矛盾概念によって導かれた。考察をさらに進め、「自由 vs. 愛」を「人類文化の主要矛盾」と認識した。また、「倫理」が、自由と愛の両者を含んで動機づけ、調整する(根底を支える)のだと認識した。

(4) さまざまなレベルの社会システム(個人レベル、グループ・団体、企業、地域、経済システム、国など)において、自由・愛・倫理の状況を調べてモデル化し、また、さまざまな歴史的経過を調べてこれら三者の関係の変化を考察することが、現在の課題である。「倫理に反した行動をしても、競争に勝った方が社会的勝者になる」という歴史の現実も考慮する必要がある。

(5) 上記の諸社会システムでのモデル化は、いろいろなレベルの社会システムにおける「望ましい自由・愛・倫理の関係のモデル」の考察に進む。例えば、企業は(従業員や社会との関係をも含めて)どのようにあるとよいのかを考察する。これは、6箱方式の第3箱の理想システムの理解に対応する。

(6) ついで、第4箱は、新しいシステムのための(変革)アイデアである。上記の理想のシステムのモデルが主導するが、本質的な考え方が求められる。

(7) 現在のシステムに変革のアイデアを組み込んでいく解決策案を作るのが、第5箱である。

現在上記 (3)まで到達し、大きな方向づけを得て、(4)〜(7)を今後の課題として進めている。

 


 発表スライド          PDF (28枚、743 KB)

 

 

 

 

(0) はじめに (趣旨とアウトライン)

  

 

   

 

   

 

(1) 創造的な問題解決の一般的な方法論CrePS

   

 

 

 

(2) TRIZ/CrePS を 社会的問題に適用する: 「日本社会の貧困」をテーマに

 

 

(3)  『下流老人』(藤田孝典著)を「見える化」する

 

 

 

 

 

 

 

   

 

(4)  『下流老人』に対する読者の書評82件を検討する

 

 

(5) 「人々の意識の根底にある問題(矛盾)」に焦点を絞る

 

(6) 「自由」 vs. 「愛」 が「人類文化の主要矛盾」 であると認識した

   

 

(7) 「主要矛盾」の解決を困難にしているものは何か?

 

 

(8) 今後の研究課題

 

 

(9) 本研究のまとめ: CrePSの6箱方式での整理

 

 

 

 

本ページの先頭 概要 概要PDF スライド先頭 発表スライドPDF    『下流老人』の「見える化」  自由 vs. 愛 論考   英文ページ 

 

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最終更新日:  2016. 9. 9    連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp