HOME 研究代表者ご挨拶 研究概要 プロジェクトメンバー 研究活動 お問い合わせ ニュースレター

研究活動

エール大学において粘土板の化学・物理的特性調査                           
                         実施:2011年10月31日〜11月2日




9月6日から15日まで、アメリカ、コネチカット州ニューヘイブ

 
     エール大学図書館
 
       図書館ロビー
ンにあるエール大学に、調査に行ってきました。調査に行ったのは、大阪学院大学の渡辺千香子先生、早稲田大学の内田悦生先生、そして内田研究室の井上慶太君と私の4人です。


エール大学には古代の文献として、粘土板が数多く収蔵されています。エール大学では、粘土板は文献として扱われるため、図書館に収蔵されており、エール大学のバビロニアン・コレクションは、およそ4万5千点にも及びます。その一部を図書館の一室で調査させていただきました。
私自身は一昨年もエール大学に調査に行っており、その際に、粘土板に使用されている粘土の起源が地域・年代ごとに異なるという結果を得ることができました。今回の調査では、その一昨年の結果をさらに明確にすること、そして、このプロジェクトの主題である、「メソポタミア文明は本当に塩害で滅んだのか」を岩石学的観点から明らかにすることを主要な目的として臨みました。


調査では貴重な文化財である粘土板を扱うため、身の引き締まる思いと、その貴重な文化財に直接触れることができるという喜び、今回の調査でどの様な結果が得られるのか楽しみな気持ち、そして、調査が休みの日にはニューヨークへ行くという固い決意、様々な思いを胸に調査に向かいました。
粘土板の調査が一番の目的ですが、調査の楽しみはそれだけではありません。その土地の食事や風土を楽しむことにもあります。


前回の調査の際にも食事を楽しむためにお店を探し回りましたが、今回見つけたお店も充実していました。また、高井先生に現地に住んでいる日本人の村田さん、星さんを紹介していただき、ロブスターを食べに連れて行っていただきました。調査の合間にフォスター先生にエール大学の学寮のひとつであるセイブルック・カレッジ構内を案内していただいたのですが、さすがはエール大学、寮も含め総石造りの素晴らしい大学でした。岩石学が専門の私にとって、大学の建物を見るだけでも学究心がそそられます。そして、楽しみにしていた日曜日は、たまたま同時多発テロ10周年目にあたる9月11日だったのですが、心配顔の内田先生と渡辺先生を振り切って、しっかりとニューヨーク観光もしてきました。
もちろん月曜日の朝は、時間通り真面目に調査に復帰しました。


今回も前回同様、粘土板の化学組成、帯磁率を測定しました。粘土板は非常に貴重な文化財のため、これらの測定は全て非破壊で行ないます。
化学組成分析は携帯型蛍光X線分析装置を使って2分、帯磁率に関しては即座に分析結果が出るという優れものです。これらを用いて、およそ150個の粘土板を分析してきました。
今回はこれらの測定に加え、非破壊で鉱物組成を測定できる秘密兵器(携帯型レーザーラマン分光装置)を持参しました。これによって新しい発見もあったのですが、納入されたのが調査出発の4日前ということもあり、今回はこの秘密兵器の威力を十分に発揮することができず、内田先生も頭を抱えていました。
 


帰国した現在も、エール大学の皆様に協力していただき、調査を進めています。これから大学で更なるデータの分析を行なっていきますので、是非楽しみに結果をお待ちいただければと思います。

                             (佐々木利基)

➔研究活動一覧へ戻る