研究活動
ウィーン大学共同研究 実施:2011年9月21日
ウィーン大学構内 |
ゼルツ教授は、メソポタミアのシュメール語文献学の世界的権威で、かれこれ20年来の知己です。私たちの研究プロジェクトについても、立ち上げる最初の頃から何かと相談にのってもらいました。今回は、初期王朝時代の文献の中から、特に畑の土壌の塩化に言及するテキストを、共同研究として発表することで合意しました。
古代シュメールの塩害について、メソポタミア学の文献学者たちが盛んに学説を発表した時期(1950年代末〜80年代半ば)の最後に、パウエルという研究者が出ました。彼は従来の「塩害説」に批判的な説を展開しましたが、その根拠のひとつに、初期王朝時代(紀元前3000年頃〜紀元前2350年頃)の文献記録がありました。そこには、塩化した畑にまず水を張り、その後なにかの草を植え、次に麦を栽培したと書かれています。これは古代のシュメール人が、既に「リーチング」の方法を知っていたという根拠になります。そこからパウエルは「古代人は塩害の進行をなすすべもなく放置し、シュメール文明の没落を招いた」とするいわゆる「メソポタミア文明塩害滅亡論」に異議を唱えました。
実は、パウエルが引用した文献は、当時、彼と書簡の交換をしてい
(渡辺千香子)
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