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研究活動

大英博物館調査              実施:2012年3月9日〜3月17日



 

大英博物館での粘土板文書調査は、2008年の8 月に、金属顕微鏡を使って38 枚の粘土板表面の観察を行ない、欠損して内部の粘土が露呈している部分に、珪藻が存在することを確認したのが始まりである。同館での調査は当初より、調査の許可申請に時間と手間がかかり、2008年の時の調査も、顕微鏡観察のみ(採集などは一切行わない)との条件であれば、reading room での、粘土板の解読と同じであるとの解釈で、直前に許可が下りたものであった。


この時の調査で、粘土板文書上に珪藻が存在することが明らかになったわけであるが、顕微鏡の解像力の問題や観察方法の技術的課題によって、珪藻の種を明らかにすることは出来ず、あくまで存在が明らかになったに過ぎなかった。本来の目的である、古環境の復元のためには、種レベルでの同定を行う必要がある。そのための方法としては、SEM(走査型電子顕微鏡)による直接表面観察か、試料を採集しての破壊分析を行う必要がある。当初は非破壊分析としての低真空型のSEMを用いる予定であったが、粘土板を借り出すことが困難であったこと(一つの可能性として私がいつもお世話になっている大英自然史博物館のSEMを用いる可能性も考えられた)、BM科学部門のSEMを用いることが難しそうなこと、そして低真空SEMにおいても試料室内での粘土板の破壊などの事故があり得ることなどなどの課題があり、実現が出来なかった。


今年の3月の調査は、その点で2008年に確実に珪藻が観察されたタブレットから試料を採取し、日本側に持ち帰った。 今回は、本研究のために購入した金属顕微鏡での観察を行った。この顕微鏡は、小形で重心が低く、2008年のものよりも振動の影響が受けにくかった。また、顕微鏡観察は、非常に疲れるため、UCLのAnke Marshさんと共同で行った。最初に2008年の調査で珪藻が見つかった16個のタブレットをAnke さんと一緒に観察し、珪藻の見え方を確認した。これとは別に83個のタブレットを観察し24個から珪藻(およびその可能性のあるもの)を見いだした。中心類珪藻と思われたものは、極めて小形(10µ以下)で球状の鉱物との区別がつきにくかったため、’centric diatoms?’として扱った。現在、これらの試料を解析途中であるが、珪藻の存在量の少なさに苦労している。このことについては、次の機会に述べたい。

                                           (辻 彰洋)

   

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