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2001年1月●日
提言概要
1.(競争導入のためにオークション採用の検討開始を)
2.(電波再配置システムのための検討開始を)
3.(電波資源に関する情報公開を)
電波は来たるべきIT社会の最重要資源の1つである。電波利用技術の進歩によって、現在われわれは、10年前には考えられなかったほどの利便を享受している。二十一世紀の生活とビジネスは、いわば電波に囲まれ、電波に支えられて営まれることになるだろう。電波資源を有効に活用できるか否かは、IT革命成否の1つの鍵であると言っても差し支えない。
政府の「IT戦略会議」は昨年末に、「超高速ネットワークインフラ整備」をはじめとするIT革命実現のための方策を発表したが[1]、その中でも「最後の1マイル」と呼ばれる超高速アクセス系の建設は最後まで残る難問である。電波は、容量、移動・ワイヤレス使用の可能性、建設費用などの点で、光ファイバと補完的なアクセス手段である。光ファイバーの加入者宅への普及には時間がかかるので、ADSLやケーブルテレビによるアクセスと並んで、電話線によるISDNの数百倍の速度のアクセスが可能な高速無線インターネットは、広帯域インターネットのインフラとしてはさしあたり最短距離にあり、その実現は必要な周波数が利用できるか否かにかかっている。
電波の利用が始まってから約100年になるが、これまでの電波資源は、たとえば江戸時代以前の日本や、開拓時代の米国における土地資源と同じく、新しいフロンティアが次々に開拓され、供給が需要を上回っていた。その時々の新技術によって、新たな電波資源の利用法がもたらされたのである。
電波管理の任にあたる政府当局は、有り余る電波を、混信や妨害が起きないように「周波数帯域」に区分し、これをユーザに割り当てる(無線局免許を発行する)だけで済んでいた。電波のユーザである企業等は、割り当てられた周波数帯を使い、免許期限が来ればこれを更新するだけでよかった。電波資源の供給が需要を上回っていたので、電波は、たとえば大洋を航海する船舶にとっての洋上スペースのように「自由財」であり、電波資源の実質価格はゼロで、電波を無料で利用することに何の差し支えもなかった。
しかしながら、最近の顕著な技術進歩によって電波の利用が増大した結果、電波の自由財時代は急速に終わり、今や電波は希少資源になりつつある。しかしながら電波利用の効率はまだ低く、利用拡大の余地も大きい。電波資源全体をかりに関東地方の土地スペースにたとえれば、利用に便利な都市部・平野部はすでに割当が終わっており、山岳・峡谷部でも悪条件を克服しながら利用が拡大中である。しかしながら、東京都区内や山手線の内側に当たる部分でも低利用の区画が残っている。古い平屋建がまばらに散在したり、広大な空き地もある、という状態である。しかし電波の遊休部分でもすでに柵囲いは済んであり、その意味で、制度的には余分の電波はほとんど無い状態である。
電波資源に対する需要は将来において確実に増加するから、現状のまま推移すれば、「電波が利用できないために、新しい技術やサービスが開発されてもその便益を享受できない。」状態、そしてさらに、「電波が利用できる見込みがつかないから、新しい技術やサービスの開発意欲自体が失われてしまう。」状態に立ち至ってしまう。われわれは、電波資源の配分について、従来の方策を根本的に検討する必要に迫られている。
電波資源が国民共有の資産であること、国民全体の便益のために効率的に利用されるべきことについては、国民の大多数が合意できるであろう。本提言は、この合意の上に、電波資源の利用にかかる現在の問題点を明らかにし、その改革の方向について提案を行うものである。
これまで日本では、電波の割当は政府当局の裁量に拠っていた。最近になってごく部分的に「比較審査」が導入されたが、潜在的にはともかく、表面的に無線局免許申請に競合が生じることはほとんどなかった。また電波利用料が徴収されていたが、多くは電波資源の実質価値をはるかに下回っており、それが電波資源の配分に影響することはなかった。電波が有り余る状態では、この方式が電波資源の利用効率を阻害することはなかった。
しかしながら、電波が希少化するにともない、非効率な使用が増大しつつある。最大の問題は、電波資源の供給に余裕があった時代の低効率の使用方式が、電波が稀少になっても使用効率を改良することなく、依然として同じ状態を続けていることにある。現在すでに、土地資源にたとえれば、「高層ビルの建ち並ぶビジネスセンターの谷間に田畑が残っている。」「山間僻地にデパート、スーパー、ショッピングモールが建設されている。」状態が、電波資源について生じている。移動電話を典型例とする新技術・新サービスが出現したとき、電波資源の「空地」がすでに少なかったため、政府当局は狭いスペースに新しい電波利用者を「押し込め」ることになった。その結果、新サービス用の周波数帯では高効率の電波利用(高層建築にあたる)が実現されたが、周囲の周波数帯では、古い方式の電波利用(旧方式の木造家屋にあたる)が続いている。
一言で述べれば、この状態は、旧来の電波割当方式が電波の使用者側に既得権を生じ、効率的な利用に必要な電波資源の割当と再配置がほとんど行われなかったことに起因する。電波の実質価格がゼロに近い間は、期限が来た無線局免許をそのまま更新することに何の問題もなかった。しかしながら更新を繰り返すうちに、申請内容の審査は空洞化し、電波が稀少化しはじめたときには、これが電波の使用者の既得権となってしまった。この状態に対し、政府当局は組織的な制度改革をおこなうことなく今日に至り、制度の矛盾は依然として拡大しつつある。
政府当局による旧来の割当方式は、非効率な電波資源利用だけでなく、ビジネス創造や新技術・新製品の開発の面でも、マイナスの効果をもたらしている。電波の割当が政府当局の裁量に拠っているため、新しいビジネス方式や新しい技術を開発しても、必要な電波の割当を受けることができないリスクが伴う。その結果、開発に着手する動機自体が失われてしまう。また、電波資源の割当の詳細に関する情報が非公開であるため、中小メーカー・ベンチャー型のメーカーは、どの電波資源について新製品の開発機会があるかについて判断がつかず、結局開発意欲自体が生じないことになってしまう。なおこれらの点は、電波という社会共有の資源を必須要件とするビジネスや製品の特殊事情である。この制約が存在しない一般の製造業・サービス業と比較して、新機軸・新技術の創出環境が異なることに注意されたい。
さらに、旧来の割当方式については、以下のような批判も加えられている。第1に、国民共有の電波という資産を、適正な対価を徴収することなく私企業に使用させていること、つまり富の一方的移転を伴う不公正・不公平な配分であることが批判されている。また第2に、旧来の方式は既得権益を発生させるので、腐敗・癒着など不祥事の温床になりやすい欠点を持っている。
技術の急速な進歩と電波資源の希少化の事実を、上記のような現制度の欠点と併せ考えれば、電波資源配分制度の改革の必要は誰の眼にも明らかであろう。
米国をはじめとする先進諸国の過半では、競争導入を軸とする電波資源配分制度の改革が進行中である。米国では1993年の通信法改正以来、パーソナル移動電話(PCS)、直接衛星放送(DBS)、次世代移動電話(3G)等に必要な電波の割当がオークションによって実施され、あるいは進行中である。またヨーロッパ諸国では、2000年中に次世代移動電話(3G)のオークションが実施された。米国およびヨーロッパ諸国では、オークション価格の高騰をはじめとするいくつかの問題はあるものの、オークションが競争を促進し、その前提条件である電波資源の割当に関する情報公開が新ビジネス・新技術の創出のためにプラスに働いたと判断している[2]。
日本は、これら諸外国の経験を参考にしつつ、「後発の利益」を生かしながら改革を進めるべき位置にある。
政府による電波資源の直接割当がもたらす現状について上記の諸欠点を是正し、電波資源の効率的使用と電波を使用するビジネスの成長を達成するためには、第1に電波資源の配分に「競争」を導入し、第2に電波資源のそれぞれの周波数帯の実質価値を明らかにし、第3に電波資源の利用状態についての情報が国民に公開される必要がある。
まず、「競争の導入」が電波の利用効率の増大と利用ビジネス成長のための必須の要件であることに異論は少ないであろう。これまでの多数の経験から明らかなように、経済活動から競争を排除し、新規参入を認めないことは、停滞と硬直性を生じるからである。電波資源の配分についても競争を導入すること、つまり電波資源の特定部分(周波数帯)の使用を求める者に対して、平等の機会を与え、公正競争によって結果を決めることが必要である。
電波資源の競争的配分がを直接に実現できるのは、現在使用されていない周波数帯の配分、すなわち初期無線局免許の発行である。新しい周波数帯のオークション配分は、最も望ましい結果をもたらす。その基本的視点は、電波資源を、「それに対して最高の価格を支払うことができる企業」、つまり「消費者・ユーザによって最も高く評価され、最大利益を実現できる企業」に配分することにある。オークションは競争的配分のための1つの手段であるが、初期免許のように供給量が固定され、かつ(政府によって)独占的に供給されている場合には、オークションは競争的配分を実現する唯一の手段である[3]。
電波オークションは、旧来の政府裁量や比較審査による割当方式と比較して、下記のような利点をもたらす。
1.電波資源の効率的な配分を実現する(国民全体が電波から得る便益を最大化する)。
2.電波を使用する産業への新規参入の可能性を広げ、競争を促進して消費者の利益を高める。
3.電波を使用する企業間で公平・公正競争を実現する。
4.富(電波資源)の一方的・不公正な移転を防ぎ、既得権の形成に伴う腐敗等の可能性を低める。
5.オークションの実施は、実施対象である電波資源の使用に関する情報公開を伴うので、事業者側の不確実性・リスクを減らし、ビジネス創意・技術開発の動機を高める。
なお電波資源をオークションによって配分する場合には、同資源の二次的な譲渡・売買(リセール)を認めるのが通例である。リセールを認めない場合には、当初の落札者が、(見込み違いなどの理由で)不必要になった電波をそのまま保有し続けなければならない。このような場合には、同落札者が他企業等に電波を譲渡して落札支払額の一部を回復し、譲渡を受けた企業がその電波を利用する途を開くことが、当事者にとっても、社会全体にとっても望ましい。さらに、電波資源に関する先物取引、オプション取引についても同様である。たとえば電波売却オプションにより、電波の当初落札者や二次的な購入者は、何らかの理由で入手した電波が不要になる事態に備えることができる。
もとより、電波資源のオークションによる配分については、政府の直接割当による配分と比較して短所・問題点も存在する。そのうち広く語られているのは、「オークションによって電波を使用する企業の費用が増大するので、これが消費者・ユーザに転嫁されるのではないか」と、「オークション時の不確実性や予測の誤り等からする落札価格の極端な高騰(Winner’s curse)」であろう。
オークション落札費用が価格に転嫁されるか否か、(転嫁されるとして)その程度は、さまざまの条件に依存する。携帯電話事業者が周波数をオークションで入手する場合を例にとって考えると、携帯電話の市場に電波を無料で割り当てられた既存事業者が居るか否か、同市場でどの程度まで(価格切り下げによるユーザ獲得などの)競争が行われているか、携帯電話のユーザが価格変動に対してどの程度敏感に反応するのか(需要の弾力性)などに依存する。また、オークション落札価格がどの程度に正確な将来予測に基づいて決められたのか、にも依存する。これらの点については、本提言の母体である「通信と放送」研究会で詳しく検討中である[4]。
ただしもちろん、オークション落札金額は政府収入の一部となり、政府の財政収入総額を一定とするならば、同金額の分だけ減税できることに注意されたい。つまり、オークション落札額の転嫁による消費者・ユーザの負担は、金額的には減税分として相殺されるのである。したがって、消費者・ユーザ相互間の負担の変動はあっても、全体としての純負担増はゼロであると結論できる。
次にWinner’s curseの問題については、昨年の英国・ドイツでの第3世代移動電話用電波オークションにおける高落札額が話題になった。ただし英国・ドイツ以外のヨーロッパ諸国では、落札額ははるかに低かった。ヨーロッパにおける第3世代移動電話免許のオークションは、2000年春に英国から始まって各国を一巡したが、オークションに参加する事業者の多くは同一資本系統に属しているので、当初の英国・ドイツのオークションで資金を使い果たしたものと説明されている。その結果、事業者については、国ごとの高・低落札額が平均されるが、それぞれの国においては、消費者・ユーザと事業者と政府間の「相対的負担」に差が生じたことになる。
いずれにしても、米国・ヨーロッパ諸国で実施された種類の電波オークションについては、さまざまな理由で落札価格が「異常に」高騰する可能性があること、そしてその結果消費者・ユーザによる表面上の負担が大きくなる場合があることは否定できない。
次に電波オークションの短所、あるいはそのために支払うべき費用として、オークションの実施費用を挙げなければならない。オークションを公正・円滑にかつ事故なく実施するためには、法制面・行政面で周到な準備が必要であり、そのために費用負担が発生する。しかしながら、この費用は、「オークションがもたらすのと同一程度に効率的な電波配分を政府の直接割当によって実現するための費用(社会主義的計画費用)」よりもはるかに低いので、オークションによる電波資源配分の効率化がもたらす利益と比較すれば、充分以上にお釣りが来る。
最後に、米国・ヨーロッパ型の電波オークションの重大な問題点を指摘しておきたい。それは、「電波の半ば無期限の使用を有償で認めることから生ずる硬直性」である。米国においても、ヨーロッパ諸国においても、オークションによって入手した電波使用権(免許)について、その期限終了後の更新については、更新時に再度オークションを実施することが明示されなかった[5]。そのため、当初のオークション時に、「オークションによって入手した免許は、オークションを経由しない更新が可能であり、これを繰り返すことによって半永久的な使用権が入手できる。」とする期待を生じさせ、このことが落札金額が高騰する原因の1つにもなった。
しかしながら、「電波の半永久的使用権が実質上成立すること」は、将来における電波資源の効率的利用について重大な障害をもたらす。電波資源は隣接する帯域間でプラスの外部性を持っている。そのため、将来新しい利用技術の出現に応じて一部の電波を「収用」し、再使用することが、国民全体にとって大きな便益をもたらす可能性が充分考えられるのである[6]。そのとき、電波の「半永久的使用権」が実質上成立していれば、土地資源について繰り返し経験したように、収用時の「ゴネ得」等のトラブルを防ぐことができない。米国・ヨーロッパ諸国においては、次世代移動電話等のための電波オークション制度の発足を急いだためもあって、この点に配慮する余裕が無かったものと推測される。
上記のように、オークションには欠点もあるが、総合的に考えればそれはオークションがもたらす利点と比べてはるかに小さい。オークションによる競争の利益が国民全体に及び、長期的には巨大なプラス効果として結実するからである。オークションの結果、国民は一時的に少し高い携帯電話料金を支払うことになるかもしれないが、それは減税等によって相殺される。そしてオークションがもたらす競争による価格低下や、新技術・新ビジネスの実現によるサービスの高度化による便益を手にすることができるのである。他方旧来の電波割当方式では、競争と新規参入のもたらす利益をほとんど活用できない。IT革命を早期に実現するため、われわれは政府が下記の方策を採用するべきことを提言する。
1. 将来における新たな無線局免許の発行においてオークション方式を採用するための検討を開始すること。
2.同検討に衆知を集めるため、組織的な「パブリックコメント」用プラットフォームを設立すること。
3.電波オークションのための法規定の改定・整備の原案を作成すること。
4.電波オークション代金収入の取扱いと、オークション実施機構・実施予算について検討を開始すること。
なお、具体的なオークションの方式やそれに伴う制度・手続については多数の選択肢がある。米国・ヨーロッパで採用された方式がベストであるとは限らない。これらの点について、本提言の母体である「通信と放送」研究会で研究・検討にあたっている[7]。
上記オークションの提案は、周波数使用のための初期免許についてのもの、つまり新たなフロンティアの開発によって利用可能になった周波数帯、あるいは何らかの理由で「空き地」状態になっている周波数帯についてのものである。しかしながら、前述のように現在の日本の電波資源については、高度利用と低効率利用が混在している。関東平野において、高層建築と木造平屋と空き地が混在している状態にあたる。電波資源全体のフロンティアは盡きかけており、その優良部分にはすでにフロンティアは無い。今後におけるIT社会の展開に伴って生ずる電波需要の増大をまかなうためには、空き地や平屋部分の高度利用化を図る他に途はない。これが「電波資源の再配置」の問題である。将来における技術進歩の方向と内容に依存するが、われわれ日本国民にとって、この問題が上記初期免許のための周波数配分よりも重要な意味を持つ可能性がある。
しかしながら電波資源の「再配置」は、極度に困難な問題である。それぞれの周波数帯について無線局免許が発行され、これに基づいたさまざまな営みが、経営体、設備投資、雇用、ノウハウ・熟練を伴って、毎日行われているからである。電波資源の再配置は、多くの場合他周波数帯への移転をともなう。土地資源の例で言えば、建築物・家屋の移転・移築である。そのためには「再配置費用」がかかり、これを無理に強行すれば、当事者にも国民全体にも大きな損失を生ずる。しかしながら、現状を放置して電波資源の効率化を図らなければ、長期的にIT革命の足を引っ張ることになる。
この問題について、本提言は、「再配置費用を最小限に抑えつつこれを逐次実現するための制度設計・システム設計の必要」を指摘する。緊急に必要な「再配置」の個別ケースについては別途考えることとして、ここでは長期的に再配置を進めるための方策が必要であることを強調したい。前記「通信と放送」研究会では、本問題の検討を開始している[8]。またこれとは別に、政府当局他の団体が、「電波資源再配置システム設計コンペ」を実施することも考えられよう。
以下においては、「電波資源の再配置のための制度・システム」について若干のポイントを論じておきたい。まず第1に、再配置は、土地の場合の建築物と同じく、そのために設置されている設備・機器の投資・更新のタイミングと密接に関わる。再配置の費用を抑えるためには、この点を考慮に入れたシステムでなければならない。
第2に、「再配置には時間がかかる」点である。既に設置された機器の更新はもとより、再配置先における投資計画、サービス設計などについて合理的な決定を行うためには、前もって充分な時間をとっておかなければならない。したがって、再配置のための制度・システムは、将来時点までカバーすることが必要である。
第3に、再配置を合理的に進めるためには、使用中のそれぞれの周波数帯の何らかの「評価」が必要である。国民全体にとって最も有利な再配置は、高評価の周波数帯よりも、低評価の周波数帯の再配置を先行させることである。現在のように、法定の電波使用料を徴収するだけでは、それぞれの周波数帯の評価はできない。したがって、「再配置のための制度・システム」は、何らかの方式による周波数帯の評価を含むものでなければならない。
第4に、これが最も重要な点であろうが、電波資源の再配置は、すでに周波数を使用している事業者の利害に直接関わることである。これまで「無料」に近い代価で電波を使用していた状態が失われることには、強い抵抗があるだろう。その上「移転費用」までかかるのは、二重の負担である。この点をどのように捌くことができるかが、「再配置のための制度・システム」の成否を決める要因である。ここでは、(土地の場合の賃貸料にあたる)「電波使用料」については、これを前記の「評価」水準まで段階的に近づけることが望ましいこと、また他方、「移転費用」については、電波資源の利用の効率化から得られる利益の中から支払うことができるはずである(そうでなければ再配置は効率化とならない)ことを指摘したい。これらを円滑に実現できる「再配置制度・システム」が望ましい。
現在の政府当局による電波資源の管理では、その使用状態の概略のみが公表されるだけで[9]、詳細(どの電波資源を、誰が、何の目的に、どの程度使っているか)については非公開になっている。電波資源は国民の共有資産であるから、それに関する情報は、原則として(公共的な理由で非公開が望ましいものを除いて)公開されるべきである。インターネットが普及した時代においては、国民の誰もが手軽にアクセス・ダウンロードできる形で公開するのが常識であろう。現在のように、政府当局による「情報秘匿」とも取られかねない状態は論外であり、早急に対処されるよう要望したい。
電波資源の効率的な利用は、IT革命の成否を長期的に決定する要因であるが、それを短期的に決定する要因ではない。今すぐにオークション導入や再配置の検討に踏み切らなくとも、急激な問題は生じない。したがって、「オークションの導入はまだその時期ではない。」として先延ばしにする動機は強い。しかしながら、90年代後半の金融問題について経験したように、長期的・構造的な問題への取り組みの先延ばしは、国力を弱め、将来世代の経済基盤を弱体化する。本提言は「オークション・再配置の検討」を主張している。検討自体を先延ばしにして、「電波資源の失われた十年」にならないことを望むものである。本件に関する権限と責任を持つ政府当局が、勇気と英知をもって事に当たられるよう要望する。
[1] IT戦略会議『IT基本戦略』2000年●月●日、http://www.
[2] たとえば米FCCのリポート
[3] 電波オークションは、電波資源の供給独占から生ずる問題(独占的高価格など)を解決する。しかしそれは、電波の使用企業がその生産物・サービス市場において独占力を発揮する(たとえば電波資源の供給量の大部分を入手することにより)ことを解決しない。この問題の解決には、別途措置(たとえばオークションで落札できる電波資源のシェアに制限を加える、など)が必要である。
[4] 『・・・』を参照(http://www.)
[5] 米国では、FCCに与えられたオークション実施権限を初期免許に限る旨が規定されたので、更新時のオークションは排除されている。
[6] 米国において、すでに第3世代移動電話用の電波「収用」の必要が、生じていると報告されている。
[7] その成果は、今後一両年にわたり、同会のWebページ(http://www.)上で逐一発表する予定である。
[8] http://www.
[9] 郵政省(現総務省)電気通信局編『周波数の割当原則』1999(http://www.)