提言:IT革命を実現させる電波政策を
――電波オークションによる「ラスト1マイル」への競争導入(項目概要)

提言

  1. (競争導入のためにオークション採用の検討開始を)
  2. (無線LANによる「ラスト1マイル」アクセスの実現を)
  3. (電波資源に関する情報公開)

目次

 I. 背景
 II. 通信・放送の融合と「レイヤー型水平競争」
 III. 電波周波数のオークションによる割当について
 IV. 「電波資源をオークションによって競争的に配分するべきである(提言1)」
 V. 「IPパケット通信用無線LANのための周波数帯」の配分と、オークションによる割当の提言(提言2)
 VI. 「電波資源を競争的に活用するために、政府当局は、現在電波管理を実施している当事者が保有している『無線免許内容を保有するデータベース』を一般に公開するべきである(提言3)」

I. 背景

A. 電波資源はIT社会の最重要資源の1つ

  1. 携帯電話の急速普及は、近い将来に実現すると予測される「電波に囲まれ、電波に支えられた生活と仕事」のはしり。

B. 電波資源の有効活用はIT革命成否の鍵

  1. そのためには公平・公正競争の導入が最有力手段。
  2. 事業者の新規参入、事業者間競争、電波利用のための研究開発・創意工夫の裾野の拡大が必要がある。

C. 日本では電波は政府当局の裁量によって割当てられてきた

  1. ごく最近になって「比較審査」が導入された。
  2. 電波利用料が実質価値をはるかに下回っている。
  3. 新規参入が実質上不可能。
  4. 研究開発・創意工夫が参入を認められた事業者に実質上限定されている。
  5. 日本の制度は、急速な技術進歩から生じた電波需要の増大、電波資源の不足という時代に取り残されている。

D. 米国をはじめとする諸外国(先進諸国)の過半では、競争導入を軸とする電波政策が進行中

  1. 米国:1993年の通信法改正以降、PCS、DBS、3Gなどのオークション。
  2. ヨーロッパ諸国:2000年から3Gオークション。
  3. 電波価格の高騰をはじめとするいくつかの問題はあるが、大勢はオークションが競争促進のためにプラスに働いたと判断(たとえば米:FCCのリポート)。

E. 日本は諸外国の経験を参考にしつつ「後発の利益」を生かしながら改革を進めるべき位置にある

II. 通信・放送の融合と「レイヤー型水平競争」

A. デジタル技術の進展とインターネットの普及により、すべてのハードウェア・インフラはIPのために作られ、すべてのサービス・コンテンツはIP上で供給される「レイヤー型水平競争」の状態に向かっている

  1. IP通信の他に類を見ない効率性と合理性(RFC他)に加え、"Winner takes all"の原理が作用。
  2. その結果、通信・放送サービスの相互参入が進行中。また中間分野の新サービス(IPTVなど)が出現。長期的に通信と放送は融合しつつある。
  3. 「大競争」の図(池田氏提供の分)

B. 上層のサービス・コンテンツレイヤーは「大競争」状態

  1. 価格低下と市場拡大と新サービスの出現が予測される。

C. 下層の帯域レイヤー(インフラ・機器レイヤー)では競争がまだ不充分

  1. とくに「公的スペース」を必須要件とするローカル・アクセス(「ラスト1マイル」)部分でボトルネック独占が残り、高価格の原因となっている。また広帯域アクセス手段(光ファイバ)の建設費が高い。

D. 電波資源は、広帯域ローカル・アクセスのための有効手段の1つ

  1. ローカル・アクセスの他の手段(共同溝、下水溝、架空スペース、光ファイバ)とともに、ローカル・アクセス用電波資源の供給に競争が導入されることが望ましい。

III. 電波周波数のオークションによる割当について

A. 政府による電波割当(裁量・比較審査)の欠点

  1. 新規参入が実質上困難。
  2. ビジネス上の創意工夫のインセンティブを失わせる。
  3. 研究開発のインセンティブを制約する(参入可能性がない場合)。
  4. 電波資源の不公正・不公平配分(富の一方的移転)。
  5. 既得権益の形成と腐敗・癒着の可能性。

B. 電波オークションの利点:

  1. オープンな市場の実現。
  2. 電波使用者側に競争を導入。
  3. 新規参入の可能性を開く。
  4. 公正・公平競争を促進。
  5. 電波供給者側の独占力を制約。

C. 電波オークションの欠点

  1. 電波使用者にとっては費用増大、ユーザ・サービス価格への(一部)転嫁。
  2. オークション時の不確実性・予測の誤り等による極端な高価格の発生の可能性。その結果としての混乱(格下げ、破産など)。
  3. オークションの実施コスト(制度面など)の発生。
  4. 実質上の「永久使用権」の成立による硬直性。 (将来の周波数転用が困難、ゴネ得)

D. 「保険付先行型リース・オークション(既存事業者保護のハンディ付)の内容

  1. リース・オークション:5−10年期限の周波数使用権をオークション(→転用の必要が発生した場合の柔軟性を保証)。
  2. 保険付リース:リース期間終了後の転用による以降のリース打ち切りの場合に、既存事業者に対して「リース打ち切り保険金」を支払う(保険金額は事業者が選定、保険料率は政府当局が設定)。
  3. 先行型オークション:オークション実施時点をリース開始の数年前に設定。
  4. ハンディキャップ付オークション:オークション落札価格について既存事業者に有利な(10−30%程度?)ハンディキャップ(discount)を設定する。
  5. 上記2項目(3.と4.)は、電波使用権の落札者による設備投資(sunk costになる)にインセンティブを与えるため、sunk costのリカバリーを一部保証するためのもの。(現状のように)全部を保証すると新規参入の機会を大きく減少させることになり、他方全く保証しないと設備投資のインセンティブを著しく減殺させることになる。結局両者の中間をとるのが最適方策である。
  6. 新規免許については当初から、既存免許については現行免許期限終了後からリース・オークションを適用。

E. 「同上リースオークション」の利点

  1. 1期間のみのリース料のオークションであるため、落札額が異常に高騰する可能性が低い。(→ユーザ価格上昇の波及効果が小さい。オークション金額が低いため、金融市場への攪乱度が小さい(格下げ、破産等を防止)。また、オークション時に事故・不正行為等が発生した際の被害が小さい。)
  2. 新規免許を受ける事業者(当初からリースオークション)と、旧来の既存事業者(原則として現行の免許期限終了時にリースオークション)との間の不公平が小さい。

IV. 「電波資源の配分をオークションによって競争的におこなうべきである(提言1)」

A. オークションの得失の比較

1.オークションには欠点もあるが、それはオークションがオープンな競争をもたらすことから得られる長期的な利点と比べればはるかに小さい。とりわけ、「リースオークション」の採用により、他国で採用されている(ストック)オークションの欠点を避けながら競争の利益を実現することができる。他方従来の閉鎖型システムによる電波割当では、競争や新規参入のもたらす利益がほとんど活用できない。IT革命を早期に実現するため、政府は下記の方策を採用するべきである。

B. 電波資源のリース・オークションによる割当を実現するための方策の検討を開始し、そのための法規定の改定・整備の原案を作成すること。

1.電波資源のオークションを実施する場合のオークション代金(周波数リース料)の取扱い、オークション実施機構と実施予算について検討を開始すること。 2.電波資源オークションの適用について、適用されるべき周波数帯、適用順序と適用時点を特定するための検討を開始すること。

C. この場合、下記の原則に従うことが望ましい。

1.同一事業にかかる新規免許のオークションは、既存免許の更新分のオークションに先立って実施する。 2.営利性の高い事業のためのオークションは、それが弱い(公益性が強い)事業のオークションに先立って実施する。 3.落札金額が低いと予測される周波数帯のオークションを、それが高いと予測される周波数帯のオークションに先立って実施する。とくに落札金額が低いものを実験的に早い時期に実施する。 4.同一事業・類似する事業のために使われる周波数は、なるべく近接した時点でオークションを実施する。

V. 「IPパケット通信用無線LANのための周波数帯」の配分と、オークションによる割当の提案(提言2)

A.日本におけるIT革命の早期実現にとって最大の課題は、安価な広帯域アクセス手段(「ラスト1マイル」)の実現にある。

  1. 最近になって光ファイバによるアクセス・サービスが開始されたが、有線設備であるため建設コストが高く、これが国内に広く普及するには、まだ相当の年月がかかるものと予測される。

B. このギャップを早期に埋め、IT社会の到来を加速させるために、規格IEEE802.11に依拠する無線LAN(●●小檜山様:これでよろしいですか?●●)の実現に向けて周波数帯を分配し、これを早期にリース・オークションによって割り当てることを提案する。

C. 上記のための周波数帯の候補として、本提言においては、470-770MHz帯のうちの一部(●●MHz程度)を考えている。

  1. 上記周波数帯は、現在ITUによる国際周波数配分表の第3地域(アジア・オセアニア)において固定・移動・放送目的に分配されており、また日本においては放送・陸上移動(密接に関係する携帯移動・固定業務を含む)用に分配されている。そして日本における実際の用途指定としては、テレビ(UHF)の13−62チャネルの50チャネル分として割り当てられている。
  2. しかるに、日本のどの地域においても、実際に視聴できるUHFテレビはたかだか数チャネルにすぎず、上記50チャネルの大部分は「空き」状態になっている。(地上波DTVの普及可能性については疑念が持たれている(→既Glocom提言:8/27/99)が、かりにDTVへの移行用チャネルの必要を考えても、上記周波数帯の過半は依然として空きのままで残ると判断せざるを得ない(●●池田様:これでよいですか?●●))。
  3. このような遊休資源を、(リースオークションという周波数転用の弾力性を保有する方式によって)IT社会実現のために活用することは、大きな意義を持っている。
  4. 上記が本周波数帯を無線LANによる広帯域アクセス手段として積極的に活用することを提案する理由である。

D. なお上記方策を実現するに当たって、無線LAN用周波数帯リースオークションへの参加資格として、以下の点を考慮するべきである。

  1. 無線LAN事業者は、インターネット関連業務のうちIP伝送のためのチャネル供給業務に専念し、IP自体の伝送およびこれに基づく諸サービス(ISP、ASP、ポータル・サービス、コンテンツ配付等)に従事することを原則禁止する(分離子会社に依る場合は可)。
  2. 同無線事業者は、そのサービスをすべて公開された卸価格、小売価格によって供給するものとする。契約相手による価格差別(随意契約を含む)は禁止する。
  3. 同無線事業者は、ユニバーサルサービス要件を満たさなければならない。つまり卸価格、小売価格のそれぞれについて、地域による差別を禁止する(実際にチャネル供給に関するユニバーサルサービスを実現するためには、たとえば都会地と非都会地のロールアウト義務など付加的な条件が必要)。(●●これらの点はなお検討必要?●●)
  4. (上記と関連して)「接続義務」は、同無線LAN事業者からサービスを購入する「IPパケット伝送サービス」の供給者に課する(インターネットの場合は事実上最初から義務化されている)のが合理的である。

VI. 「電波資源を競争的に活用するために、政府当局は、現在電波管理を実施している当事者が保有している『無線免許内容を保有するデータベース』を一般に公開するべきである(提言3)」

  1. 公開するべき項目は、
     a.無線局名(免許人名、事業者名)
     b.免許期間(更新履歴)
     c.電波使用目的
     d.電波使用条件(技術面)
       (1) 無線局所在地
       (2) 周波数帯・地域
       (3) 電波発射方向、強度、周波数帯
       (4) 電波発射時間帯
     e. 電波使用条件(業務面)
       (1)業務内容規定(目的、サービス規定)
       (2)業務実施記録(加入者数等、収入)
     f. 電波使用料、手数料支払額(履歴)
    などである。なお、電波は国民の共有資産であるから、その使用を認められている免許人については、固有名詞まで含め免許内容をすべて公開するべきである(免許申請内容の公開は不必要である)。
  2. 上記公開方式としては、広報目的のデータベース(インターネットWebでアクセスでき、データ内容の一括ダウンロードが可能であるもの)と、内容確認目的の公示手段(たとえば原簿あるいはそのコピーの閲覧)の2本建てとすることが望ましい。
  3. ただし、警察・公安・軍事・交通・エネルギーなどの目的に使用されている周波数帯であってその細目の公開がセキュリティを害すると判断されるものは、例外的に非公示・非公開とすることが望ましい。
  4. 当分の間、政府当局は、電波を使用する(潜在的)事業者によるビジネス創意を援助し、電波利用技術の(潜在的)開発者を援助し、かつ国民一般から電波資源利用政策について衆知を集めるため、電波資源の各周波数帯について「電波利用統計(仮称)」を整備・公開するべきである。