1995年  1月31日:前年12月5日に開始された広帯域MTAのPCS免許をめぐるオークションが、月末まで継続され、同日の第58ラウンド終了時点で、最高入札額合計は約44億ドルとなった。入札額は、1月初めから活発な伸びを示したが、月末に近づくにつれて、再度停滞状況を示し、当初FCCや政府当局が期待した100億ドル近くの水準にまでは到達しなかった。 [61/24]  2月23日:IBC社が、2月23〜24日の2日間にわたって、PCSを目指しているSMWR事業者向けに、「PCSセミナー」を開催した。主なポイントとして、次の点が述べられた。(1)PCSオークションは、従来の経験がなく、未知の事項が多いので、加入者予測や資金準備など周到な用意が必要である。とりわけ落札後の資金負担が大きい。しかし長期的には、PCSの将来は明るく、セルラーの月間利用料80ドルに比較してPCSの月間利用料が30ドル程度に抑えられれば、急速な伸びが期待できる。そのためには、LECとの接続のためのアクセス料金がポイントになる。  2月28日:広帯域MTAのPCS免許オークションは、2月6日の第65ラウンドからオークションの最終段階である「第3ステージ」に移行した。第3ステージにおいては、入札事業者は、入札を希望する免許のすべてについて、直前のラウンドの最高入札額を越える額の入札をしなければならず、そのため最高入札額合計は、急速に上昇した。2月28日の第93ラウンド終了時点で、最高入札額合計は、約66億ドルに到達している。 [61/5, 7-9]  3月 8日:PCSのSMWR事業者であるCommunications One社は、FCCに対し、広帯域MTAのA、Bブロック免許の交付を一時中止するよう要請を出した。同社の主張は、A、Bブロックの落札事業者がCブロックの事業者よりも早期に事業をスタートさせることにより、A、Bブロック落札者とCブロック落札者との間に不公平が生ずるとするものである。  3月13日:前年12月5日から続いていた広帯域MTAのPCS免許99個のオークションが、3月13日午後、第111ラウンドで終了した。合計落札額は、77億ドル余で、米国GDPの約1%にあたり、連邦政府が主催したオークションの中では、史上最大規模になった。大手事業者の3大コンソーシアムが圧倒的な力を発揮し、Wireless Co.(Sprint、TCI、Comcast、Cox)、AT&T Wireless PCS(AT&T、McCaw Cellular)、PCS Prime Co.(Bell系)の3グループで過半数を大きく上回る61免許を取得し、3大PCSネットワークの構築が予見される結果となった。  4月 1日:NTIAは、「米国周波数帯の必要性:予測と傾向」の報告書を発表し、ワイヤレス電気通信の成長にともない、必要となる周波数帯についての見通しを発表した。まず、NTIAは、地上の移動通信のために、今後10年間で200MHz程度の周波数が必要になると推計している。このうち、PCSについては、1998年までに850万人、2004年に3,500万人が加入するが、そのための周波数は、現在PCSサービスに割り当てられている140MHzでカバーできるとしている。  4月 5日:FCCは、2GHz帯のマイクロウェーブ事業者の移転期限についての決定を発表した。マイクロウェーブ事業者の多くは、2年間でPCS事業者と自主的な交渉をおこない、PCS事業者によるコスト負担のもとで移転することが定められている。2年間で交渉が合意しない場合、PCS事業者は、さらに1年間の交渉期限をFCCに要求することができ、さらにその後も合意に達しなかった場合は、マイクロウェーブ事業者にペナルティが科せられることになる。ただし、警察・消防のような公共・安全目的のマイクロウェーブ事業者は、自主的な交渉期間を3年、強制的交渉期限を2年としている。他方、PCS事業者側では、すべてのマイクロウェーブ事業者が移転する前にPCSサービスを開始する必要があり、さまざまな技術的方策を用いて両サービス間の干渉・妨害を避けることが考えられている。  5月 1日:FCCは、広帯域MTAのPCSブロックCのオークションについての訴訟問題が決着に至ったことを受け、本年8月2日からCブロック免許のオークションを開始することを発表した。     同日:ルイジアナ州の小規模セルラー事業者Radio Phone社は、Cブロックのオークションの開始を一時的に中止するようFCCに要請した。同社は、セルラーとPCSの兼業禁止のため、同社が新しいPCSに参入できない現行ルールに対して批判を加えている。  5月 5日:FCCは、PCSサービスの発展のためのいくつかの政策方針を発表した。代表的な方針として、(1)800〜900MHz帯のセルラー事業者に対し、PCS事業者に妥当な料金での再販売を義務づけること、(2)州規制委員会によるCMRSサービスに対する規制権限を再検討すること。  6月 5日:Reed E. Hundt FCC委員長は、ワシントン市でおこなわれた「ワイヤレス通信サミット」で演説し、PCSサービスの展開におけるFCCの役割として、第1に新規事業者の参入を可能にする周波数管理、第2に周波数オークションの実施とSMWR事業者の支援、第3に相互接続など公平な競争を促進するための規則制定が重要であるとした。また、FCCは、1995年中に次のようなスケジュールでオークションを実施する予定であると述べた。(1)8月2日PCSのCブロック、(2)10月〜11月PCS以外のサービスのための周波数オークション(IVDS、SMR、MMDS)、(3)12月PCSのD、E、Fブロックのオークション。 また下院商務委員会Thomas J. Bliley Jr.委員長も同コンファレンスで講演した。同委員長は、全体として1934年通信法の改正の必要を強調した。PCSオークションとの関係では、PCS免許の再販売の制度化は、周波数オークションに参加するだけで実際の通信システムの構築を怠った事業者を利する結果となることから、反対である旨を述べた。 さらにSMWR事業者の認定について、その必要を強調するグループと、同事業者は大企業の隠れ蓑にすぎないので、その優遇に反対するグループとの間に論争がおこなわれた。  6月 8日:PCS Prime Co.は、広帯域PCS免許を全米11都市で獲得したが、自社ネットワークをCDMA(Code Division Multiple Access)方式で建設することに決定した旨、発表した。他方、TDMA方式およびその一種であるGSM方式の通信は、補聴器の機能に障害を及ぼすとの批判が起きており、FCCに調査要請が出されている。  6月23日:FCCは、広帯域PCSのCブロック・オークションの開始を、8月2日から8月29日に延期することを発表した。これは6月12日に、連邦最高裁が、人種(逆)差別等に関して争われていた「Adarand Constructors社対Pena」のケースに判決を下したからである。判決(515 U.S. 200 (1995))は、「政府機関による人種区別・性別を理由とする優遇施策は、これを法律・規則条項等によって一律に適用するとき、(適法な手続き "Due Process of Law" を欠く不利益処分を禁じた)米国憲法修正第5条に違反することになる。」として同ケースに対する控訴審判決を破棄し、下級審に差し戻している(Supreme Court of U.S. [1995])。FCC規則によるSMWR事業者への援助は、同判決に抵触することになると判断され、Cブロック・オークション規則の書き直しが必要になった。  7月18日:FCCは、上記最高裁判決を考慮した上で、広帯域PCSのCブロック免許オークションのための規則改正案についてコメントを求めていたが、大多数のコメントが賛成の意向を表明したことから、同改正案を正式に決定した。この改正により、これまでマイノリティ企業、女性所有の企業に有利に設定されていた落札額の割引や分割納付が、企業所有者の人種や性別にかかわりなく、一定以下の年売上高の中小企業すべてに認められることになった。  7月27日:Omnipoint社が、ワシントン地区連邦控訴裁に提出した緊急申し立てに基づき、同控訴裁は8月29日に予定されていた広帯域PCSのCブロックのオークションを差し止める命令を下した。同社は、7月18日のFCC決定に対し、(1)新しい規則はSMWR事業者を隠れ蓑にした大企業のオークション参加を助長する、(2)FCCは、同変更を事前の予告なしにおこない、一般からのコメント募集を怠ることにより手続規定違反を冒しているという2つの理由から、異議を唱えている。FCCは、同命令を受けて、8月29日のオークション開始スケジュールを取り消した。Alfred C. Sikes FCC委員長は、「本件によって、Cブロックのオークションは少なくとも6カ月は遅れるであろう。」と述べている。Omnipoint社の今回の行動については、同社がすでに「創始者優遇措置」による免許をニューヨーク地区において取得していることから、同地区における自社の地位を固め、競争相手の事業開始を遅らせることにあると指摘する向きもある。 また、多数のSMWR事業者が、今回のCブロックのオークション延期に対して強い反対意向を表明している。  8月 4日:下院本会議は、「1934年通信法改正法案(H.R.1555)」を可決した。同法案にはPCS用アンテナ用地を確保する条項が盛り込まれており、PCSの業界団体であるPCIAなどの関係者は歓迎の意向を表明している。  8月 7日:通信機器メーカーNokia社は、ワシントン・ボルチモア地区で、本年12月からPCSサービスを開始するAmerican Personal Communications社との機器納入契約が成立したことを発表した。同社の製品は、GMS方式によるものである。また、Ericson社は、これまで続けてきたCDMA方式の実験を打ち切り、今後GSM方式によってPCS端末機を開発する方針を発表した。  8月10日:クリントン大統領は、連邦政府の公用地をセルラーおよびPCSの中継アンテナ用地として積極的に提供する考えがあることを明らかにした。また、米国郵便公社(USPS)は、全国の郵便局の屋上などの空きスペースを、PCS・セルラーのアンテナ用に提供する方針であることを表明した。  9月20日:フロリダ州オーランド市で、PCIA主催による同年次大会が同日から23日まで開催され、約1万5千人の関係者が集まった。PCSについては、ネットワーク間の相互接続問題、アンテナ用地取得問題、PCS事業者間の電波の相互干渉問題等が討論された。  9月29日:ワシントン連邦控訴裁は、Omnipoint社の要請により延期されていた広帯域PCSのCブロック免許オークションに関する審理をおこない、すでに出していた差し止め命令を撤回し、FCCにオークション開始を認めるとの判決を下した。FCCは、この判決を受けて、本年12月中にオークションを開始する方向で準備を始めた。 10月26日:FCCは最高裁に、Radio Phone社がシンシナティ連邦控訴裁に再度提出し、10月18日に認められた「Cブロックのオークションの一時差し止め命令」を無効化するべきであるとの申請を提出し、最高裁はこれを認めて、Cブロックのオークションの差し止め命令を取り消した。Radio Phone社の要求は、同一市場でのセルラー事業者とPCS事業者の兼営を禁じるFCC規則を批判するものであり、これが認められれば、すでに終了したA、Bブロックのオークションも無効化される可能性を持っている。その結果、Cブロックのオークションが12月11日にスケジュール通り開催される可能性が高くなった。 10月30日:CDMA規格を採用しているPCS Prime Co.グループは、同規格の初めての通話実験を実施した。CDMA方式は、技術が高度であることから開発がやや遅れぎみで、既存技術のTDMA(GSM)との争いが激化しており、多数の端末機メーカーを巻き込んでいる。 11月 9日:シンシナティ連邦控訴裁は、FCCに対し、セルラーとPCSの同一地域の兼業について、「公正な競争を実現するため再考を促す。」ことを勧告した。これに対し、FCCは、予定通り12月11日のオークション開始に向けて準備を進める旨、表明している。 11月15日:ワシントン・ボルチモア地区で、APC社が、米国最初のPCSサービスを開始した。APC社はSprintの傘下におかれているので、ワシントン周辺には "SprintSpectrum" の広告が広がっている。APC社は、Nokia製の端末を使用しており、双方向のページャー・サービスも供給している。APC社のPCS料金は、サービス・パッケージ方式になっており、一定時間以降は追加料金を支払う形になっている。月15分の「一定時間」の場合、月額15ドルの固定料金に毎分31セントの追加料金がかかる。また、月1,200分の「一定時間」の場合、月額150ドルの固定料金で、追加料金は毎分ピーク時25セント、オフ・ピーク時10セントである。 12月18日:広帯域PCSのCブロック免許のオークションが、当初の予定より8カ月遅れてようやくスタートした。同オークションは、全米493のBTAにおいて、それぞれ30MHzの周波数帯を争うものである。計254事業者が参加し、年末休暇に入る12月21日までに合計4ラウンドがおこなわれ、同時点での最高入札額合計は12億ドルを上回った。 12月27日:メリーランド州当局は、11月にワシントン・ボルチモア地区でPCSサービスを開始したAPCに対し、「PCSがボルチモア市内の公共輸送網管理のためのマイクロウェーブ通信を妨害している。」旨の書簡を送り、同州とAPCとの対立が発生した。PCIAは、翌年1月11日にマイクロウェーブ利用事業者の円滑な移転のための方策案をFCCに提出した。 1996年  1月11日:FCCは、商用移動無線サービス(CMRS)とローカル電話会社(LEC)の相互接続規則改正案を公表した。同案の主要なポイントは、PCSのスムーズな発展を阻害すると批判されているキャリア間の着信手数料(termination charge)を、当分の間無料にする(bill and keep)点にある。また、キャリア間の交渉に委ねられていた相互接続協定の内容をオープンにする規則も提案されている。  1月16日:AT&Tは、新しい移動電話システム "FreeWorks" を発表した。これは社内ではPBXあるいはダイヤルイン方式のコードレス内線電話として、社外ではセルラーあるいはPCSとして使用されるものである。1996年1月31日、年初1月5日から再開されたCブロックのオークションは、1月6日から米国東部を襲った大雪のため、1週間以上にわたって中断し、月末までに行われたラウンド数は13に留まった。第17ラウンド終了時点での最高入札額の合計は、45億ドルである。 [61/51&52, 62/3]  2月 8日:「1996年電気通信法」が議会で可決され、クリントン大統領の署名によって正式に成立した。PCS関連条項としては、これまで州や自治体に委ねられていたアンテナ建設の規制がFCCに集中されることになるため、サービスの早期展開を望むセルラー・PCS事業者にとって、障害の一つが取り除かれたことになる。FCCはアンテナ問題に関し、新法に沿った規則への改正義務を負っており、早急に改正案が提示される見込みである。  2月16日:FCCが1994年3月に発出したマイクロウェーブ事業者の強制移転規則を警察・消防・救急などの公共緊急無線に適用する件について争われていた訴訟で、ワシントン連邦控訴裁は、同命令の撤回を求めていた公共緊急無線団体の訴えを退ける判決を下した。PCIAは、この判決を歓迎し、PCSの展開のための「大きな勝利」と位置づけている。  2月28日:前年12月から継続したCブロックのオークションは、2月中にさらに20ラウンドが実施され、月末の最高入札額合計は、75億ドルとなり、前回のA、Bブロックの落札額合計に迫る勢いを示している。A、Bブロックは、それぞれ30MHzの帯域幅を与えられており、Cブロックは単独で30MHzであるため、今回Cブロックの価格はA、Bブロックの2倍近くに達していることになる。  3月 8日:ワシントンの連邦控訴裁で審理中のOmnipoint社対FCCのCブロック・オークション規則制定(案件PP93-253)に関する係争において、同控訴裁はFCCに勝訴の判決を下した。 TR (3/11/96)  3月20日:FCCが、PCSライセンスのD、E、Fブロック免許(それぞれ10MHz)を同時にオークションにかける方針を提案した。また、Fブロックについては、マイノリティおよび女性の優遇措置を撤回する方針を示した。 TR (3/25/96)  3月26日:テキサス州ダラスで、CTIAの年次大会「ワイヤレス1996」が開かれ、2万人近くのセルラー・PCS関係者が集まった。同大会において、Alfred C. Sikes FCC委員長は、PCS周波数の残る3ブロック(D、E、F)のオークションを本年7月から開始するための準備が進められていることを明らかにした。また、Cブロック入札額が予想をはるかに上回るレベルに達していることについて、支払い困難になった事業者に対しても支払い条件を緩和することはなく、「FCCは、支払い条件を守らない事業者からは直ちに免許を取り上げ、再オークションにかける方針である。」と述べた。 TR (4/1/96)  3月29日:Cブロックのオークションは、3月中に31ラウンドが実施され、3月29日の第68ラウンド時点の合計入札額は、95億ドルに上った。同入札では、Nextwave社が他社を圧倒して、36のBTAを入手し、36.3億ドルの入札額合計となった。  4月 1日:FCCは、1993年包括財政調整法の規定にしたがい、政府使用から民間使用に移管される周波数帯計235MHz(1995年2月に移管ずみの50MHzを含む)の概要を発表した。これは、1994年2月にNTIAが議会に報告した周波数計235MHzの民間利用計画と一致するものである。今回のFCC発表は、235MHz分を4グループに分けている。第1グループは1.4-1.7GHz帯、第2グループは2.3-2.4GHz、第3グループは3GHz帯、第4グループは4GHz帯である。     同日:上院商務委員会でおこなわれた公聴会において、PCS事業者が、2GHz帯のマイクロウェーブ事業者移転の状況について証言した。PCS事業者の多くは、マイクロウェーブ事業者が要求する移転条件が厳格に過ぎ、そのためPCS事業の展開が遅れていることを指摘している。  4月 8日:PCS Prime Co.社は、同社が獲得したVirginia地域のPCS免許の一部を、独立電話会社の合同企業体であるVirginia PCS Alliance社に1,600万ドルで譲渡することを発表した。さらに、Prime Co.社は、New Orleans地域のPCS免許をTelephone Electronics社に譲渡することを発表した。  4月17日:上院共和党院内総務Bob Dole議員は、上院本会議において、立法府は納税者である国民一般の利益を守るべきであり、近い将来のディジタル・テレビジョンに必要な周波数を放送事業者に対して無料で提供するべきではないと主張した。また、上院商務科学交通委員会通信小委員会Larry Pressler委員長は、近い将来において、「周波数基本法」を立案し、ディジタル・テレビジョンのための周波数管理を準備する計画であることを述べた。  4月22日:FCCが広帯域PCS免許のオークションに関して検討中の無線局案件WT96-59へのコメントの中で、セルラー事業者は、PCSオークションに関するセルラー事業者への参加制限を緩和するべきことを主張した。また、中小企業側では、現在進行中のCブロックのオークションと同様の優遇措置を適用するべきことを主張した。  4月25日:FCCは、2GHz帯のマイクロウェーブ事業者の移転について検討中の無線局案件WT95-157において、同事業者の移転に関する規則を改正して、同事業者とPCS事業者との協議を円滑化し、また、移転費用を各ブロックのPCS事業者が平等に負担できるようにした。  4月26日:現在進行中の広帯域PCSのCブロック・オークションは、なお若干の入札意欲が見られるものの、従来に比較して入札スピードが低下し、収束に向かいつつあると判断される。同日までの入札額合計は、102億ドルに達している。  5月 6日:約5カ月前に開始された広帯域PCS免許Cブロックのオークションは、184ラウンドをもって終了し、合計落札金額は102億ドルに上った。当初255事業者がオークションに参加したが、そのうち89事業者が免許を手に入れた。同事業者のうち、上位5事業者については事業の順調な発展が見込まれているが、その他の中小事業者については、落札金額が高かったこともあり、事業の将来見通しは必ずしも明るくないと言われている。  5月13日:上院商務科学交通委員会通信小委員会Larry Pressler委員長は、「周波数基本法」案を発表し、各方面からの検討に供した。同案は、下記条項を含む。(1)NTIAを廃止し、周波数の管理をFCCに一元化する。FCCは周波数管理について永久的な権限を与えられ、未配分周波数のすべてをオークション方式で配分する。(2)現在時点での周波数使用免許保持者の権利はそのまま認められる。FCCの管轄権限は、非排他的使用、公共安全目的の使用、ディジタル・TV、国際衛星用の周波数においては制限を受ける。(3)民間の無線免許保有者は、その周波数の使用目的について、(他使用者との混信・妨害を除いて)何らの制限も受けず、かつ、第三者に自由に転売できる。原則として5GHz以下の周波数の25%が民間使用に向けられる。(4)同基本法の目的は、「自由な周波数使用」にあり、現在のFCC等による使用目的制約を取り除く点にある。一言で言えば、本法案は、周波数を土地と同様に私有財産として取り扱うことになる。(5)現存の放送事業者は、ディジタル・TV(DTV)に移行するために、6MHzのチャンネルを有料で供給される。現放送事業者は、新ディジタル放送用チャンネルに移行してもよいし、従来のアナログ放送用周波数を保有してもよい。新周波数に移行し、アナログ周波数帯を政府に返還した場合には、新周波数の使用料は返還される。  5月20日:FCCは、広帯域Cブロック・オークション進行中に、コンピュータ入力を誤って本来の意図よりも一桁多い金額の入札をおこなったと称するMAP Wireless社に対し、規則を機械的に適用した場合の数分の1のペナルティのみを科するとの決定を下した。 他方、FCCは、同Cブロックの落札事業者の一つであるBDPCS社(韓国Samsung Electronics社、Dacom社などが主要出資者)に対し、落札額の5%の頭金(down payments)の免除申請を認めない旨の決定を下した。FCCによれば、上記の他にも、事務的な誤りあるいは資金力の不足等によって、オークション規則どおりの支払ができない落札者が出ているとのことである。なお、BDPCSは、Cブロック・オークションにおける第4番目の規模の落札事業者である。同社は、US West社が同社の資金供給の約束を果たさなかったことを頭金支払延期申請の理由にしているが、これに対し、US West社は、Reed E. Hundt FCC委員長に手紙を送り、同社がBDPCS社への資金供給を約束したことを否定したと報道されている。  6月 3日:FCCは、広帯域PCS免許Cブロック落札者のうち、(頭金未納入などの理由による)失格免許15個の再オークションを、本年7月に実施する予定であることを発表した。同再オークションの入札資格者は、元のCブロックのそれと同一であり、入札規則も基本的に同一であるとしている。  6月13日:Wireless Industry Conferenceにおいて、下院通信小委員会Michale G. Oxley副委員長は、周波数オークションの目的は、連邦財政収入を増大させる点にあるのではなく、周波数が市場原理にしたがって最も効率的に使用される点にあるとした。とりわけ、議会の予算関係議員はこの点に留意するべきであることを強調した。通信分野の議員・議会関係者は、共和党・民主党を通じ、この点に同意している。上院商務委員会Thomas J. Bliley Jr.委員長は、上院Pressler議員によって提案された「周波数基本法案」は、周波数資源の長期的な効率的使用という点から不備な点があるのではないかとの意見を表明した。  6月18日:上院商務科学交通委員会における公聴会において、Reed E. Hundt FCC委員長は、検討中のディジタル・TV(DTV)案件の一環として、現在使用度の低い周波数の中から60MHz程度の「ミニ・オークション」を検討していると述べた。  6月28日:上院商務科学交通委員会において、ディジタル・TV用周波数の割当方法について、委員間で意見が大きく分かれた。同委員会の中心となる、しかし少数派の議員は、FCCがディジタル・TV用の周波数を放送事業者に従来の方式で割り当てるのではなく、オークションを実施するべきことを強く主張している。これに対し、委員の多数は必ずしも賛成せず、FCCの提唱する方式、すなわち従来のアナログ放送と同一内容のディジタル放送を実現するために必要な周波数を無料で割り当てる方式を主張している。     同日:FCCは、広帯域PCS免許のオークションに関する従来からの規則を変更した。無線局案件WT96-59と、一般案件GN90-134において、FCCは、「認定事業者(旧SMWR事業者)」の範囲を縮小し、またセルラー事業者との兼業制限を緩める決定をおこなった。  6月29日:デンバー市のPCS事業者Mountain Solutions社は、FCCに対し、頭金未納入等の理由でFCCが再オークションを予定している18個の広帯域PCSCブロックの免許について、再オークションを一時中止する申請を提出した。同社は、前回のCブロック・オークションの最終入札で第二位の位置にあり、FCCはすでに制定ずみの規則を適用して、同社に免許を与えるべきであると主張している。  7月 7日:ワシントン地区控訴裁判所は、先にMountain Solutions社から提出されていたPCSのCブロック再オークションの一時差し止め請求を却下した。  7月15日:ワシントンで開かれた政府関係者と周波数事業者のコンファレンスで、防衛省の代表は、最近進行中の政府使用周波数の民間使用への移管は、防衛上の必要を阻害し、国家の安全を危うくする可能性があると主張した。  7月18日:FCCは、無線局WT Docket 96-148において、広帯域PCS免許の使用法に関する規則制定を提案した。同提案によれば、FCCは、PCS事業者に対し、自己の保有する免許の分割や、免許地域(の一部)におけるサービス資格の「再販売」、免許によって使用資格を得た「周波数」の分割と(一部の)再販売などを認めるものである。ただし、同再販売によって資格を入手する事業者の範囲には強い限定が課されており、非都市地域電話会社だけが資格を持つと定められている。  7月22日:広帯域PCS免許Cブロックのうち、免許未交付分18個についての「再オークション」が実施され、落札額合計は9億ドル余に達した。この金額は、前回第一回目のCブロック・オークションにおいて到達した同18ブロック分の落札額合計を3,000万ドル程度上回るものであった。  7月25日:FCCは、公開会合において、マスメディア局案件MM87-268で従来から検討中のディジタル・TV(DTVあるいはATV)の導入方式と、DTVに必要な周波数の放送事業者への割当方式について、規則提案をおこなった。FCCの提案では、DTVの各チャンネルについて、必要な「コア部分」のみ周波数を割り当てることになる。これに対し、放送事業者側では、コア部分だけでなく、チャンネル周波数のすべてをDTV用として割り当てるべきであるとしている。(チャンネルのコア部分とは、チャンネル7からチャンネル51までを指す。)また、FCCは、現在のチャンネル60〜69の周波数帯は、これを早期にFCCに戻し、教育放送目的のためにオークションにかけることを提案している。  8月12日:共和党Bob Dole大統領候補は、340億ドルに及ぶ放送用周波数のオークションによって、2002年までに連邦政府予算を均衡させることを提案した。しかし、Dole候補の提案には、放送用周波数オークションに関する詳細計画が欠けており、いずれにしても放送用周波数に関する現在の論争が続くものと見られている。  8月19日:民間の調査財団Reason Foundationは、周波数に関する調査結果と政策提案をおこなった。同提案によれば、30MHzから3GHzまでの周波数が、現在テレビ・ラジオ放送、移動通信サービスのために使用されている。これを整理して「所有権」を付し、使用目的を制限することなく民間事業者にオークション譲渡すれば、連邦政府には計1,000億〜3,000億ドルの収入が得られるものと予想される。また、周波数管理組織としてNTIAは廃止し、FCCを含む政府諸機関を横断的に組織する「指導委員会(steering committee)」を設置するべきであるとしている。また、同財団は、現在の周波数配分方式は、国際協定、政府使用、FCCによるサービス分類、FCCによるユーザ分類に加え、さまざまの技術面からの規制によって縛られているため、非効率的な使用に陥っているとしている。  8月29日:FCCは、広帯域PCSD、E、Fブロック免許のオークションを実施し、同日までの落札金額合計は3億7千万ドル余に上ったと発表した。D、E、Fブロックにわたる免許数の合計は1,479である。これらのオークションは、FCCの新規則下で実施され、オークション期間を短縮するため、電子入札方式が採用され、4ラウンドが終了した。入札事業者数は258事業者である。また、Fブロックは小企業用に用意されたが、これに対して114事業者が応札した。  9月 2日:MCIは、NextWave Telecom社から、10年の期間にわたり、推定10億ドル以上におよぶPCS容量を購入する契約を結んだと発表した。MCIは、購入したPCS容量をMCIブランドで販売する。他方、NextWave Telecom社は、PCSシステムの建設にあたってMCIから援助を受ける。NextWave社は、この契約の結果、同社が入手したロサンゼルス、ワシントンD.C.、ニューヨーク市等を含む主要地域において、1997年夏までに、新PCSサービスを開始する予定であると発表した。  9月16日:FCCは、PCSを含む通信機器から発生する電波が健康に与える障害を防止するために、「安全規準」を設定した。これに対し、PCSを主体とする事業者側は、規準が強すぎると非難し、他方、消費者団体側では、規準が弱すぎて身体に障害を与える可能性があると指摘している。  9月20日:進行中の広帯域PCSのD、E、Fブロック免許のオークションにおいて、入札金額合計値が10億ドルに到達した。  9月24日:広帯域PCS免許Cブロックにおいて落札した事業者のうち、5事業者について、FCCは、それらの応札資格を再検討する要請が出されており、同要請を検討中であるという理由で、第二頭金(落札額の5%)の納入期限猶予の措置を取った。上記5社とは、NextWave Personal Communications社、Pocket Communications社、PCS 2000 LP社、GWI PCS社、Meretel Communications社である。FCCは、同頭金部分については、最終期限が9月24日であるとし、同日までの納入がなされない場合、落札企業は「破産状態」にあるとみなされ、免許取消と罰金徴収の措置が発動されるとしている。  9月30日:FCCは、広帯域PCSCブロックの免許のうち、未交付分18個について、これを再オークションにかけるか、あるいは当初オークションにおける二位の入札事業者に与えるかの決定を近くおこなうことになると発表した。  9月30日:現在継続中の広帯域PCSD、E、Fブロックのオークションの入札額合計が、12億ドルに到達した。 10月 7日:AT&Tの子会社であるAT&T Wireless Services社は、新たに「デジタルPCS」の提供を開始することを発表した。同サービスは厳密な意味での1.9GHz帯のPCSではなく、800MHz帯のセルラー電話用周波数を使うデジタル移動電話サービスである。同社はTDMA技術を使用し、通常の電話サービスに加え、発信者番号表示、ボイスメール、ページング機能などをも含めたパッケージとして、月額25ドルで同サービスを提供すると表明している。AT&Tは、本サービスの提供開始の理由として、PCSが約束するハイレベルのサービス提供にはなお1両年を要するが、現在の技術でセルラー電話をデジタル化すれば、既に上記のようなサービスが安価に提供できることを示すことにあるとしている。2〜3年のうちに、同社のサービス領域は、PCSと併せて2,000万人以上の人口をカバーし、また、800MHzと1.9GHzの双方で作動する端末を供給して、両サービス間のローミングも、1分60セントで提供できるとしている。 10月14日:先に実施された広帯域PCS免許Cブロックのオークションでの落札事業者であるCalorina PSC社は、FCCに対し、5社に対して第二頭金の納入期限の猶予を認めた決定が公平原則に反するとして、Cブロックの落札事業者すべてに対して同様の措置を適用するよう申請を行った。 11月 4日:広帯域PCSのCブロックオークションで17個の免許を落札し、しかし頭金が期限内未納入であるBD PCS社に対し、FCCは規則に則して、同社に6,700万ドルの罰金を科する旨、決定したと発表した。 11月 7日:FCCは、広帯域PCSのCブロックオークションにおいて落札事業者から計640万ドルの頭金が未納のままになっていると発表した。これらの未納分に対応する免許について、FCCは近く再オークションを実行すると表明している。 11月11日:今回中間選挙の結果として、上下両院の通信関係委員会に相当の変動が生ずる事が明らかになった。先ず上院商務科学交通委員会Larry Pressler委員長の落選により、同委員長のポジションは、共和党John McCain議員によって継承されると予測されている。議会の選任順位によれば、本来はTed Stevens上院議員が同委員長となるべきであるが、Stevens議員は同時に空席となった予算配分委員会委員長を選択するものと見られている。Plessler委員長の落選には、同議員と対立するBel系地域電話会社の影響があったと理解されている。また、McCain上院議員は、放送事業者に対する周波数の「貸与」について、これが「事業者への無料贈与」であるという強い意見を持っていることで知られている。 他方下院においては、下院商務委員会Thomas J. Bliley Jr.委員長には変更ないが、通信小委員会Jack Fields委員長が引退した。 FCC委員の席にも空席が生じている。James H. Quello委員の任期は、すでに去る6月で終了しており、またLachelle B. Chong委員の任期は、1997年6月に終了する。他方Reed E. Hundt FCC委員長は、1997年までは在任する意向を非公式に表明している。しかしながら一部の報道によれば、Hundt現委員長は、ホワイトハウスのキャビネットからChristfer国務長官、Cantor商務省長官、Perry防衛庁官等が退任したことから、キャビネットメンバーへ移る意向を持っているとも伝えられている。 これらの変動にもかかわらず、合衆国全体のテレコム政策(PCSオークションを含む)には大きな変動は生じないとする観測が強い。     同日:FCCは、企画・政策案件PP93-253及び公衆通信案件CC 90-6において、セルラー電話事業未開始地域の免許をオークション方式によって発行する旨発表した。オークションは、PCSと同じく同時多ラウンド方式である。     同日:FCC無線局は、「セルラー及びPCSのための周波数割り当てに関する国際サーベイ」の論文を発表した。同論文は25カ国における最近の免許交付30件を調査した結果であり、テレコム市場を自由化した諸国において、オークション方式が次第に多く採用されており、それらの中でも米国のオークション方式が最良と考えられることを述べている。また同論文は、オークション方式普及の理由として、下記の6点を上げている。(1)意志決定プロセスの透明性、(2)広い範囲からの入札者の参加、(3)地域別の柔軟な免許交付、(4)同種免許の同時発行、(5)免許発行時に権利・義務が明確化されること、(6)免許交付数が多数に及ぶこと。またオークション普及の基本的な理由として、テレコム市場の自由化に伴って利害関係が複雑化し、オークション以外の方式で免許を交付することは困難を生じさせやすいことを指摘している。さらに米国においてオークション方式が成功した理由として、以下の3項目をあげている。(1)良質の法律と良質の規則が作用したこと、(2)金融市場が十分発達していたこと、(3)国際的な要因による介入・制限等(EU諸国において顕著)がなかったこと。 11月12日:PrimeCo Personal Communications社は、CDMA方式による最初のPCSサービスを開始した。同社のPCSは、米国フロリダ州、バージニア州等でまず開始され、その後、イリノイ、ルイジアナ、テキサス、ハワイ州で提供される予定である。同社は、Bell Atlantic社、NINEX社、US West社、Air Touch Communications社の子会社であり、米国で19の州にわたり5,800万人の人口をカバーする事業者である。 11月14日:OmuniPoint Communications社は、ニューヨーク市地域においてPCSサービスを開始した。同社はGSM方式を採用しており、4,000万人の人口をカバーしている。同社のサービスは、音声、ボイスメール、ファクシミリ、発信者番号表示、ページング、電子メール等を包含している。また、他地域のGSM方式を採用しているPCS事業者と、1年以内にローミング契約を結ぶ予定である。 11月18日:ワシントンの「国際戦略研究センター」主催のコンファランスで、FCCからの出席者が「周波数オークション」に関して意見を述べ、「FCCは、これまで、国内のPCS・DBS(Direct Broadcast Saterite)をはじめとする数種類のサービス免許について周波数オークションを実施し、その結果はおおむね成功であった。しかし国際戦略という点から見ると、周波数オークション方式を国際サービス分野、とりわけ "Little LEO" や "Big LEO" などにまで拡大するのは、米国の国益上からは問題がある。」と表明した。衛星通信事業者からは、周波数オークション方式が他国に拡大するのは望ましくないとの意見が出された。しかしながらこれに対し、衛星通信分野の専門家から、「周波数オークション方式は他国においても急速に採用されつつある。米国が国内サービスに同方式を導入しているのに、これを他国では、あるいは国際分野でのサービスでは採用するべきではないと主張する理由が見あたらない。」とする意見が出された。 12月19日:Sprint PCS社はSprint社、 Tele-Communications社、Cox Communications社及びComcast社によって保有されているが、国内65の市において米国で2番目のCDMA方式によるPCSサービスを開始したと表明した。 12月17日:FCCのWilliam Kennard首席法務官とMichele Farquhar無線局長は、広帯域PCSのCブロック免許条件の細目について、FCCの見解を発表した。(1)免許の第三者への譲渡に際しては、安全保障面の理由からFCCの認可が必要である。(2)免許保有者が、頭金や免許料金納入の「支払不能状態」になったとき、免許保有事業者への出資者は、事業者に代わって必要な金額を支払うことができる。しかしこのことによって、免許自体が自動的に出資者に移るわけではない。(3)免許保有者が「破産」したときには、免許自体は「破産法の規程に従って」裁判所が指定する管財人の管理下におかれることになる。もしその結果として免許が第三者に譲渡される場合には、譲渡を受ける事業者は「Cブロック・オークション」の参加資格を満たしていなければならない。 12月23日:下院商務委員会下の小委員会組織が変更され、従来の「通信小委員会」は廃止された。そのかわりに「通信商業消費者保護小委員会」が設置されることになり、W. J. Tauzin議員が同小委員会の委員長となった。 9902aab3.rtf - 11 - ********** E-mail: oniki@iser.osaka-u.ac.jp Web: http://www.crcast.osaka-u.ac.jp/oniki/ 「米国の周波数オークション(1993年の「通信法」改正)」、『米国通信法研究会報告書』、通信機械工業会:米国通信法研究会、1999年2月、pp.127-272。