1997年  1月 3日:FCCは、NextWeve Telecom社に対し、同社が先の広帯域PCSのCブロックオークションで獲得した免許の交付を受けるためには、海外資本家による同社の複雑な所有関係を明らかにし、、海外資本による所有比率を通信法で定める25%以内に低めることが必要であるという決定を下した。とりわけ同社の転換社債や、外貨表示による約束手形は、実質的に海外資本の所有部分を形成するとの判断が、FCC無線局Michele Farquhar局長によって下された。  1月 4日:ワシントンで開かれたComNetコンファランスにおいて、FCCの委員が、今年度のテレコミュニケーション政策の問題について語った。主要なテーマの一つは、商業テレビ局のデジタルTVへの移行を、どのようなステップで実施するかである。   1月 9日:FCCは、新たに5GHz帯に300MHz分の周波数を設定し、これを「免許外NII (U-NII)」用途に向けることを明らかにした。これは、建物内小出力の広帯域近距離通信に使用するためのもので、正式の「周波数割り当て」ではないが、同目的のための通信機器の開発を呼び起こすことを目的としている。用途は無線LAN、 ビデオコンファランス、無線インターネット接続などである。本プロジェクトは、FCCの工営・技術案件ET96-102で検討されるもので、WINForum (Wireless Information Networks Forum)が1995年にFCCに提出したプランに基づくものである。  1月13日:上院商務・科学・交通委員会及び下院商務委員会は、あらたな第105期議会におけるテレコム分野の審議体制をスタートさせた。委員会スタッフのメンバーとしては、前期議会からの継続に加え、FCCスタッフからのメンバーも相当数加わっている。下院においては、新しく設置されることになった通信・貿易・消費者保護小委員会のスタッフメンバーが漸次任命されつつある。  1月14日:広帯域PCS免許D、E、Fブロックのオークションが、合計270ラウンド後に終了し、落札金額合計は25億ドルに達した。これらは、493個のBTAにつき、それぞれ3免許を入札するもので、合計1,479免許についてオークションが行われた。(なおFブロックの入札には、優遇措置ディスカウントが与えられるが、上記25億ドルの金額は同ディスカウント分をも含んでいる。)本オークションは、昨年8月26日に開始されたもので、入札金額の大きい順から、SprintCom社の160免許に対する5.45億ドル、AT&T Wireless PCS社の222免許に対する4.06億ドルがあげられる。  1月22日:上院商務科学交通委員会において、Conrad Burns議員が通信小委員長に選ばれた。  1月27日:FCCは、所属エコノミストによる論文 "Using Market-Based Spectrum Policy to Promote the Public Interest" を発表し、以下の点を強調した。(1)FCCは、周波数がその価値を最大限発揮できるように周波数を配分するべきである。(2)新しいサービスが出現した際に、FCCは、それに適応する地域と周波数帯域を選び、事業者が周波数の補足的な取引に従事する必要が生じないよう努めるべきである。(3)FCCは、電波妨害や健康上の悪影響を防止するために、必要な規制を最小限だけ行うべきである。(4)また、周波数をユーザに最大限利用させる方策を採るべきである。(5)FCCは、市場における競争推進を第一の目標とし、「市場の失敗」が生ずるときに限り市場に介入するべきである。その際は、「介入から得られる利益」と「介入が生む不確実性から生ずるコスト」を勘案するべきである。  2月 6日:クリントン大統領は議会に1998年度予算案を送付した。同案は、2002年までの5年間に、計360億ドルの周波数オークション収入を予定している。また1998年度予算案の中で、FCCは、現在の所在地から、3,000万ドルの予算で、ワシントン南西部のPortals地区に移転する予定が組まれている。(昨年度の大統領予算案にも同一案が組み込まれていたが、議会はこれを認めなかった。)  2月10日:下院商務委員会のエコノミストであるHarold Furchtgott-Roth氏が、次期FCC委員の一人(共和党)に任命されるであろうとの予測が表明されている。現在FCC委員には2人分の欠員があり、1人は共和党、1人は民主党席である。またJames H. Quello委員(民主党)のポジションも、同氏の任期が既に終了していることから実質的に空席である。同氏の後任としては、FCC 首席法務官であるWilliam Kennard氏の名前が最有力としてあげられている。     同日:大統領府は1993年包括財政調整法に基づき、4GHz帯で25MHz分の周波数を、政府使用から民間使用に移管することを表明した。ただしFCCは、同周波数部分の使用方式について正式な検討を開始していない。しかし隣接する25MHz分については、目的を限定しない無線サービス用として、オークションを開始する計画を持っている。     同日:FCC公衆通信局長Regina M. Keeney氏は、移動通信事業者からの問い合わせに答えて、1996年テレコミュニケーション法により、商業移動通信(CMRS)事業者との接続について、地域電話事業者(LEC)に規制が加えられていることを確認した。とりわけLECは、LECのネットワークから発せられた「呼」がCMRS網で終わる場合、CMRS事業者から接続料を徴収する権利を持っていないこと、またLECはCMRS事業者に対し一定の料金以内で接続サービスを提供する義務を負っていることを明らかにした。  2月13日:ワシントンで行われたコンファランスにおいて、FCCのスタッフ他のメンバーは、4GHz帯における周波数の新たなオークションの経済的効果について意見を交換した。一方において、この種のオークションは、「周波数過剰供給状態」を招来するという予測があり、他方においては、更に新しいサービスの供給を促進するという意見も出された。  2月17日:下院Edward J. Markey議員は、周波数オークションについて、「周波数の最高代価を提示した事業者」でなく、最低価格でサービスを提供するよう提示した事業者に周波数を割り当てるべきことを提案した。(最低価格周波数オークション)。本提案等を巡り、周波数オークションの目的が連邦政府収入の増大にあるか、あるいはその他の点にあるかについて、論争が行われている。他方、上院商務科学交通委員会John McCain委員長は、現在使用度の低い放送用周波数60〜69チャンネルの内の一部を、公共安全目的のために転用することを提案している。  2月20日:FCCは一般案件GN96-228で、新たにWireless Communications Service (WCS)を、2305〜2320および2345〜2360MHz帯に設置することを提案し、規則第27部を設置することを表明した。WCSは、主として電話用の無線アクセスとインターネットアクセスに使われる。FCC案によれば、WCS免許は、10MHzのA、Bブロック、および5MHzのC、Dブロックに分けてオークションに付せられる。この提案に対して、周波数の割り当てが必ずしも事業の成功に結びつくとは限らないという批判がある。     同日:FCCは企画・政策案件PP93-253および無線局案件WT97-82において、周波数オークションのための一般的な規則を提案した。同規則によって、将来の周波数オークション手続はより簡素化され、またこれまで問題となっている落札者による頭金等の未納や、落札者の破産時の対策が検討されている。また、個々の周波数オークションごとに規則を制定するのではなく、一般的に制定された規則を個々のケースに適用することによって、オークションのスピードアップが図られている。  2月28日:FCCは、無線局案件WT96-18において、新たに15,000個程度のページング免許をオークションによって発行する計画を明らかにした。本計画に含まれる地域においては、すでに500〜600程度のページング事業者が現存しており、FCCの今回の計画は、狭帯域PCSにおけるような競争的状況をページング市場においても作り出すためのものであるとしている。  3月 3日:非都市地域の電話会社の協議体は、FCCに対し、無線案件WT96-148 CMRS (商業移動無線サービス)において検討されている「PCS事業者による周波数の分割・再販売」に反対する訴えを、ワシントン連邦控訴裁判所に提出した。非都市地域電話会社の主張は、1934年通信法309条によって、FCCは非都市地域の電話会社に対し優遇措置を与えるよう規定されており、今回のFCCの決定はこの条項に反するとしている。  3月 7日:FCCのRegina M. Keeney公衆通信局長は、無線事業者と地域電話事業者(LECs)との接続条件について、無線事業者から出されている質問に答え、下記の点を明らかにした。(1)LECは、1996年テレコミュニケーション法によって、公衆網から発し、移動通信網で終わる「呼」について、LECが商業無線事業者(CMRS)から接続料金を徴収することは許されていないこと。(2)FCCは、LECに対し、CMRSからのトラフィックに対し、LEC網を開放するべきこと、また、従来の接続料に加えて、新たな接続料金を課することを許さないこと。(3)上記の根拠法規である通信法251条関連のFCC規則には、連邦第8控訴裁判所で一時停止命令(stay)が出されているが、同裁判所はCMRSとの接続に関して、1996年11月1日に同停止命令を解除していること。  3月13日:FCCは、公衆通信案件CC92-297 "LMDS" によって新たに規則を設定し、全国各BTAにおいて、27〜31GHz、1,150MHzおよび、150MHz帯で各1免許(計986免許)を、オークション方式によって供与することを決定した。LMDSは、広帯域無線サービスを供給するもので、帯域幅から言えば、これまでで最大規模である。本規則制定において問題となったのは、既存LECやケーブルテレビ事業者に免許申請資格を与えるか否かであり、FCCは、少なくとも3年間は上記事業者が免許申請資格を持たないものと決めた。その理由として、LECやケーブルテレビなどの地域独占事業者は、LMDS免許を入手する強い動機を持っており、広帯域アクセス市場に競争を導入するためには、これらの事業者に免許を与えないことが適切であると説明している。また、FCCは、LMDSサービスの定義を極力緩く解釈し、免許取得者には周波数の分割・再販売を認める。しかし、免許取得者は、10年以内に十分なサービスを供給することが要求される。     同日:FCCは、36.0〜51.4GHzの「ミリ波」周波数帯において、複数目的のための周波数配分基本計画を明らかにした。同計画は、国際局案件IB97-95において検討中のもので、周波数の詳細な使用目的や配分方式(オークションを含む)を規定するものではなく、それらのための基本計画段階であり、下記を含む。(1)非静止衛星MSS関係:37.5〜38.5、48.2〜49.2GHz。(2)静止衛星FSS 関係:40.5〜41.5、49.2〜50.2GHz。(3)商業無線サービス(CWS)関係:38.5〜40.5、46.9〜47.0GHz。  3月20日:FCCは、技術案件ET95-18非静止衛星サービス(MSS)について、2GHz帯に70MHz分の周波数を用意し、これを事業者に配分することを決定した。しかしながら、同周波数の配分方式等(オークションを採用するか否か)を含め、詳細に関する決定は延期された。事業者側では、オークション採用に反対するコメントが大部分である。  3月24日:上院商務・科学・交通委員会の通信小委員会における公聴会で、小委員会メンバーである議員は、PCS事業者の「ユニバーサル・サービス」義務の免除について、否定的な見解を示した。     同日:全国放送事業者協会(National Association of Broadcasters, NAB)は、Reed E. Hundt FCC委員長の求めに応じ、ディジタルTVの展開に関する計画書を提出した。同計画によれば、18〜24カ月内に、全米の31主要TV放送局がディジタル化され、米国の世帯の43%がディジタルTVを受信できるようになるとしている。本問題は、1987年以来、FCCによって、マスメディア局案件MM87-268(DTV)として検討されてきたが、最近FCCは、同案件検討のスピードを加速させている。  3月31日:地上移動通信協会(Land Mobile Communications Council, LMCC)は、FCCに対し、現在のTVチャンネルのうち、60〜69チャンネルを移動音声通信用に割り当てることを申請した。これは、マスメディア局案件MM87-268(DTV)に関するものである。     同日:FCC無線局は、3月31日に設定されていた広帯域PCSのCブロック免許料の分割納入期限を延期する措置を取った。また、同Fブロック免許料の納入期限についても同一であるとした。同様の措置は、分割納入分にかかる四半期ごとの利子支払いにも適用される。本件に関連し、FCC無線局Daniel B. Phythyon局長代理は、先にニューヨーク・タイムズ紙に掲載された記事「FCCは、Cブロック・オークションの総金額100億ドルを果たして納入させることができるであろうか?」を批判し、6事業者が1993年包括財政調整法で予定された76億ドルの目標額を上回る額をすでに国庫に納入している旨、強調した。  4月 3日:FCCは、検討中のマスメディア案件MM87-268(DTV)について決定を下し、(1)DTVのチャンネルの出力・妨害防止方法等の詳細を定め、(2)また、今後2年以内に全国の主要地域のTV局をディジタル化することとした。また、そのうち主要18放送局は、18カ月以内にディジタルTVの放送を開始することになる。  4月 7日:広帯域PCS免許のCブロック落札事業者であるPocket Communications社は、「合衆国破産法」下での債務者保護条項に訴えて、同社がFCCに対して負っている落札金額の支払い期限延期を求めることにした旨、表明した。同社は、FCCに加え、通信機器メーカーにも負債を負っており、PCS事業に関する資金市場が好転しないかぎり、FCC規則に規定された期限内の資金調達・事業発足は困難であるとしている。なお、同社は、Cブロック・オークションにおいて、金額的にトップから2番目の落札事業者である。     同日:上院商務科学交通委員会John McCain委員長は、「オークション制度の改善」のための立法措置を検討していることを明らかにした。     同日:Pocket Communications社は、広帯域PCSオークションのCブロック落札者として、落札金額を納入できないことから、ボルチモア市において破産を申告した。  4月14日:FCCが計画しているWCS用周波数免許のオークションについて、23事業者が登録し、保証金(up-front payments)は、計2.5億ドル弱に達した。WCS免許は、実質上内容・方式をほとんど特定しない通信サービスである。  4月25日:先般から継続されていたWCS免許のオークションが終了し、落札金額合計は1,360万ドルになった。落札事業者数は17、オークション・ラウンド数は29であった。本オークションは、議会が前年に成立させた「包括財政配分法」にしたがって実施されたものであるが、実際の落札額は、同法の中で予測された金額の数分の1に終わった。FCCは、本オークションの「失敗」を、議会による不適切な立法の結果であるとしている。     同日:司法省は、先般おこなわれたFCCによる広帯域PCS免許、D、E、Fブロックのオークションにおいて、参加事業者が「反競争的行動」をおこなったか否かについて、調査を開始することを表明した。  5月 1日:FCC無線局は、Cブロック・オークションの落札事業者2社について、落札金額の納入期限の延期を認めない旨の決定を下したと発表した。  5月12日:先にFCCが、広帯域PCSCブロックの落札者による落札金額の分割納入期限を期日を定めることなく延期した件に関し、MCI Communication社は、FCCが同金額の納付期限を5年間延長するべきであるとの意向を表明した。これに対し、Cook Inlet Region社は、FCCに対し、「MCI Communication社の提案は、数十億ドルに上る政府への納入金額を未払いのまま放置することになるので、公正原理に反する。この問題を解決するため、FCCは、組織的な検討案件を開き、解決策を探るべきである。FCCによるこれまでのような個別ケースごとの納入期限延長方式は、不適切かつ不公正であり、訴訟案件を増加させるだけのことである。」という申請をおこなった。     同日:クリントン大統領が議会に提出中の1998年度予算案審議の中で、ディジタルTVの導入と、TVチャンネル用周波数オークションによる収入見込みについて、論争が続いている。大統領は、2002年までにディジタルTV用周波数や、現存のテレビ60〜69チャンネルのオークションおよび電話番号使用権のオークション等から、合計360億ドルの収入見込みを予算案に折り込んでいる。これに対し、放送事業者は、反対を続けている。     同日:FCCは、広帯域PCSのCブロック・オークションに参加し、誤った入札金額を提示して罰金を科されていたMAP Wireless社と、Atlanta Trunking Associates社に対し、誤入力から生じる罰金を免除する旨の決定を下した。その理由として、FCCは、入札金額を記入するソフトウェア形式に予めゼロが設定されており、このため、両社が桁数を誤って入札金額を記入した可能性があることを指摘している。  5月15日:上院商務科学交通委員会John McCain委員長は、「1997年法律遵守・公的安全のためのテレコム強化法」(S.255)を提案し、現在使用中の放送チャンネル60〜69を、放送目的から警察・消防・救急等の公的目的に転用することを提案した。同日、本件に関する公聴会が開かれ、放送事業者側から、60〜69チャンネルの廃止は非都市地域のテレビ放送や、低出力のテレビ局に損害を与えるとする反対意見が寄せられた。しかし、これに対し、McCain委員長は、その事実は認めるものの、60〜69チャンネルが当初開設されたときに、放送事業者はこれらのチャンネルに優先権を持っていないことを承知していたはずであると指摘した。     同日:ワシントンで開かれた「無線再販事業者協会」コンファレンスにおいて、従来と異なり、大手金融業者の出席が見られた。出席者の意見の中に、無線サービスの「再販売」に関する規則が不明確なことから、同市場において多くの混乱が生じたことが指摘された。  5月16日:1998年度連邦政府予算に関する実質上の合意が上下両院と大統領府間で成立し、2002年までに均衡予算を実現する計画が同予算の中に折り込まれることになった。同合意は、5年間に263億ドルに上る周波数オークション収入を予定している。なお、同収入の予測について、大統領府の予算局は、350億ドルの数字を提示したが、これに対し、議会予算局(OMB)(CBO)は、それよりも90億ドル低い263億ドルを提示し、これが両院協議会によって採択されたものである。本予算案に関する協議が長引いた結果、上院McCain委員長が提案中の「FCCによる周波数オークションの改正・延長」法案の審議は延期されることになった。     同日:FCCの国際局は、広帯域PCSのCブロックの落札事業者に対し、現行の通信法310条(b)(4)による直接・間接保有制限25%を越える場合について「柔軟な」決定を下し、同制限を越える数社に対してもPCS免許の保有や入手を認めることを公表した。この決定は、去る2月1日にWTO条約が合意され、PCSを含むテレコム基本サービスの自由化方針が定まったことに対応するものである。  5月21日:下院は、1998年度予算基本方針(concurrent resolution H.Con.Res.84)を決議した。上院においても数日内に基本的に同一の「基本方針」が決議される見込みである。基本方針決議後、上下両院協議会において、決議内容の調整がはかられることになる。 両院の基本方針には、2002年までに263億ドルの周波数オークション収入が、また、同上院「基本方針」(案)には、2007年までの10年間に323億ドルのオークション収入が見込まれている。これに加え、John McCain議員の提案により、「もし実際のオークション収入が見込みを下回った場合、議会は(収入不足を放置することなく)支出を削減する。」旨の決議が折り込まれた。また、オークション収入が見込みを上回った場合には、これを赤字削減あるいは減税に回すことを決議した。さらに、周波数オークション収入に加え、周波数を無料で配分された「放送」事業者が同周波数を使用しない場合に、「不使用罰金」を科することも決議された。  5月23日:クリントン大統領は、空席(予定)FCC委員に、William E. Kennard氏(現FCC首席法務官)とHarold W. FurchtGott-Roth氏を指名した。同指名は、上院において検討・承認後発効する。  5月26日:英国では、新たに政権を担当する労働党の政策の一環として、周波数管理方式を改革する下記の方針を示した。(1)免許の代価として、免許管理のコストでなく、免許自体の持つ価値を徴収する。(2)選択的に周波数オークションを実施する。(3)免許所有者に対し、その所有権(tenure)を拡大・確定する。  6月16日:大統領府予算局(OMB)は、周波数等のオークションにおいて落札し、頭金等を含む周波数代価納入義務を生じた落札事業者が、同代価納入の義務や他の負債のために破産状態に陥り、「破産法」に基づく「財産保護」を申請した場合でも、FCCが破産事業者から他の債権者に優先して債権を取り立て、かつ、免許を取り消した上で、再オークションにかけることを可能にするための法律案を準備し、議会に提出した。これまでの周波数オークションにおいて、FCCは、落札者に対する債権者として「第一優先順位」を確保するための措置を講じていない。したがって、現状においては、落札者が「破産」した場合には、他の債権者と同一順位で債権を取り立てる他はないことになる。実際、Pocket社の場合に、同社がFCCに対して負う13.5億ドルの債務について、同社が破産に基づく「保護」を申請したため、FCCはこれを優先的に取り立てることができない。議会とりわけ上院商務委員会John McCain委員長は、上記大統領府からの提案を必ずしも歓迎していないと伝えられている。     同日:下院商務委員会は、「1997年包括財政調整法」を通過させ、本会議に送った。同法案には、FCCが今後5年間に260億ドルの周波数オークション収入を上げることが前提になっている。これより先、Reed E. Hundt FCC委員長は、同通信貿易消費者保護小委員会W. J. Tauzin委員長に手紙を送り、下院が意図しているオークション収入は実現できない可能性が強い旨を警告している。下院商務委員会においては、同オークションの細部や収入見込み等をめぐって多数の修正案が提案され、議論が錯綜している。     同日:1年前に実施された広帯域PCSのCブロック免許のオークションにおいて、落札総額は当初の予想の2倍に達し、102億ドルの巨額に及んだが、その後、多数の落札事業者が頭金の支払い、オークション代金の分割支払いや同利子支払い等について、困難に陥っている。FCCは、すでに上記利子分について、支払い期限の延長を表明した。FCCは、今回改めて、中小事業者がオークションに参加したCおよびFブロックの落札金額の納入方法について、これまでの経過を総括し、対策を講ずるため、検討集会(Public Forum)を開催することを表明した。この間、多数の中小事業者が支払い金額の減額、期限の延長等をFCCに請求しているが、これらの請求はいずれも許可されてはいない。  6月23日:「セルラー・テレコム産業協会」をはじめとする計8協会が、上下両院の予算委員会に対し、現在審議中の1998年度予算案中に含まれている「周波数使用料金」の導入に反対の意向を表明した。  6月26日:FCCの国際局は、先にOmnipoint社が提出した外国資本による所有比率に関する制限緩和の申請に対し、同申請の理由となったWTO合意がまだ実施に移されていないことを理由として、却下する決定を下した。  6月30日:上院商務科学交通委員会John McCain委員長は、「1997年包括財政調整法(S.947)」のうち、通信関係部分に修正条項を添付し、周波数オークション等からの5年間の収入見込みを201億ドルに減額させた。他方、下院においては、「同法(H.R.2015)」に対して予算委員会において修正が施され、同見込み額が205億ドルに減額された。     同日:Aerial Communications社は、フロリダ州タンパ市において交付された免許に基づき、同地域の2,760万人の人口をカバーする地域において、1.9GHzのPCS(GMS方式)の展開を完了し、サービスを開始した。     同日:FCCの無線局は、同案件WT97-82において、広帯域PCSのCブロックおよびFブロックの落札事業者(中小事業者)の直面する資金面の問題を解決するための検討を開始した。同案件に寄せられたコメントの中では、落札額の減額や納入期限の延長等の提案が多数を占めた。     同日:広帯域PCSのCおよびFブロック落札中小事業者の資金面の困難に関して開かれたフォーラムにおいて、参加者は下記の意見を述べた。(1)相当数の落札事業者が資金面の困難に再会しており、納入金額や納入期限に関して修正が施されなければ、代金の非納入・破産という事態が生じるであろう。(2)しかしながら、FCCがオークション終了後に事後的に規則を修正すれば、将来のオークション実施に対する信用を損なうであろう。(3)FCCは、いずれにしても落札事業者や他の事業者からの多数の訴訟が起きるのを避けることができないであろう。  7月14日:FCC無線局は、同局が導入を計画している「ユニバーサル免許システム(ULS)」の概要を発表した。ULSは、従来10種類の無線サービスに使用されていた60種類の免許証様式を単一の共通方式に改めるものであり、コンピュータ端末を使用した電子的手段で免許申請が提出できる。同システムには、申請内容のチェック機能も備わっており、不適切な記入に対しては、申請者の端末上に自動的に修正用リマークが出される仕組みになっている。     同日:また、FCCは、無線案件WT97-150において、将来の周波数オークションに際して「組合せ方式入札(combinatorial bidding)」を導入することの可否についてコメントを求めることを表明した。   7月24日:FCCは、新たな「GSTS(Global Stratospheric Telecommunications Service、成層圏通信サービス)」のために、47.2〜48.2GHzの周波数を割り当て、オークションを実施することを発表した。これは、FCCの技術案件ET94-124において検討されてきたものである。  7月28日:FCCは、先にオークションを実施したWCSサービスについて、落札者に126個の免許を交付した。これは2.3GHz帯でおこなわれる多様なサービスのための免許であるが、オークションにおいては、予想に反し、わずか1,360万ドルの落札金額となったものである。本オークションは、「1996年包括予算割当法」にしたがって実施されたもので、当初議会予算局は、本オークションから12億ドルの収入を見込んでいたものである。実際の収入はその1割強にとどまった。     同日:「1997年包括予算調整法」に関する上下両院の協議のうち、通信関係部分が合意に達した。(1)DTVの導入に関し、放送事業者は、現行のアナログ・テレビ1チャンネルに対して、DTV用1チャンネルを無料で与えられる。ただし、2006年までに、旧来のアナログ・チャンネルをFCCに返還する義務がある。(2)上記において、2006年の時点で、5%以上の視聴者が依然アナログ受信機のみを保有している状態であれば、FCCはいくつかの条件の下に返還期限の延長を許可することができる。(3)上記以外の周波数オークションに関しては、これまでの上下両院協議会の合意がそのまま持続する。(4)FCCは、今後オークションからの収入を管理し、その金額の詳細を議会に報告する義務を持つ。(5)その他、Reed E. Hundt FCC委員長が、上下両院の予算委員会に要請した「オークション落札事業者が頭金・周波数代金等の納入不足状態に陥った場合、破産法の規定にかかわらずFCCが免許を回収し、再オークションにかけることを認める条項」は、議会の容れるところとならなかった。また、USF(University Service Fund)資金を一般予算用に使用(一時流用)する件についても、「均衡予算の名目的達成」のための手段であるという理由で合意に至らなかった。  8月 4日:議会は、「1997年包括予算調整法(S.947)」を成立させた。同法の第III章(通信編)には、1997年から2004年までの期間に、FCCが周波数オークションによって357億ドルの収入を合衆国国庫にもたらす見込みであることが記されている。また、多数のテレコム関係議員の反対にもかかわらず、USF(University Service Fund)が、全体予算の収支を名目上黒字にするための「プール」として使用されることになった。上院商務科学交通委員会John McCain委員長は、これに強く反対し、翌年度の予算作成時に本条項を削除することを明言している。また、議会予算局は、FCCのオークションが2002年までに367.5億ドル、2007年までに計 406.5億ドルの収入をもたらすと予想し、その内訳予測分を下記のように述べた。(1)3GHz帯以上の周波数オークションから57億ドル。(2)3GHz以下の周波数帯における120MHz分4回のオークションから950億ドル(1999年度から開始)。(3)テレビUHFチャンネル60〜69(746〜806MHz)から21億ドル。(4)アナログ・テレビ・チャンネルの放送事業者からの返還分から40億ドル。(5)すでに法文化されているオークションから190億ドル。 なお、オークション落札事業者が破産した場合の同事業者の保有する免許に関するFCCの権利について、下院法務委員会委員長は、「FCCの問題は理解するが、これはたとえばオークションを『現金オークション』で実施する等の方策により解決されるべきことである。FCCによる周波数オークションだけの都合から破産法体系全体の筋を曲げるのは適切でない。」として、強く反対し、結局、議会も本件に関するFCCの要望を容れないことになった。     同日:FCCは、800MHz帯SMR用(タクシー、トラック通信用)と、28〜31GHz帯LMDS用(広帯域固定アクセス用)の周波数オークションを実施することを決定した。ただし、SMRオークションについては、オークションの対象となっている周波数の一部がすでに運輸目的に使用されており、既存事業者からFCCに対し、オークション実施再検討の要請が出ており、訴訟問題に発展することが予想されている。     同日:NextWave社は、FCCに対し、同社が広帯域PCS免許CおよびFブロックにおいて落札した金額について、今後10年間に分割して支払う提案をおこなった。  8月 5日:クリントン大統領が、「1997年均衡財政法」に署名し、1998年度の予算が成立した。  8月11日:クリントン大統領は、FCC委員として推薦していたWilliam E. Kennard氏を、FCC委員長として指名する意向を明らかにした。また、大統領は、Michael K. Powell氏(現司法省独占禁止部長)をFCC委員として指名したことを発表した。  8月18日:FCCの「PCS資金問題検討委員会」委員長は、広帯域PCSのCおよびFブロックのオークション落札者の取り扱いについて、「一部の免許保有者に免許の返還を認める。ただし、この場合、保証金の一部はFCCに没収し、また、頭金については、一部のみ支払うことを認める。免許を返還した落札者は、将来のオークションにおいて一定の制約を受け、また、前回オークションの結果交付された免許を入手することについても制約を受ける。」という措置をとる旨の提案をおこなった。  8月18日:PCIAおよびCTIAは、FCCに対し、CMRS事業者とLEC事業者との間の接続問題について検討を開始することを要請した。  8月20日:イリジウム社によるBig LEOが予定している低周回軌道66衛星のうち、22個が打ち上げられ、軌道上に乗ったことが発表された。同社は、1998年9月にサービスを開始する予定である。  8月22日:Reed E. Hundt FCC委員長は、「広帯域PCSのCおよびFブロックの落札者に対し、これらの中から破産事業者が続々と出てくる事態は避けるべきである。」とする意見を発表した。同事業者の処置については、FCC委員会内で意見が分かれ、2名が「事業者納付義務の再検討」に反対し、2名が決定を保留しており、FCC全体として具体的な方策が採用できない状態にある。  9月 8日:先に成立した「1997年均衡財政法」によって、「創始者優遇制度」が廃止されることになった。FCCは、同法の成立にしたがい、「創始者優遇制度」の適用を求める申請の受付を打ち切った。本制度は、1991年に開始され、PCS免許や「ディジタル衛星音声ラジオ放送(DSRS)」免許にも適用された。しかしながら、「創始者」の資格・認定をめぐって紛議が起こることが多く、裁判となるケースも度々であったので、本制度に関する批判が高まっていたものである。  9月 9日:Pocket Communications社のPCSのCブロック・オークション代金未払いによる破産の件に関し、司法省の係官は、FCCに代わって連邦破産裁判所に、同社の免許が破産法の一般規定に基づいて評価・処分・譲渡されることを差し止める申し立てをおこなった。  9月15日:広帯域PCSのC・Fブロックの落札代金の納入に関する問題は、依然継続しており、FCC委員内部の意見の相違から、かつ、また大部分のFCC委員が近日中に交代することから、本年3月にとられた「頭金を含む分割納入金とその利子の納入期日の『当分の間の、しかし期限を決めない』延期」措置から動いていない。FCCは、(1)規則の適用から生ずる多数の落札事業者の破産と、それにともなう免許の取消・再オークション、連邦政府への収入の減少と、(2)規則の「事後的変更」から生ずる権威の低下、将来のオークション参加者に対する悪影響というジレンマに立っている。議会予算局(CBO)は報告書を発表し、(1)規則適用とその結果生ずる事業者の破産、(2)落札金額納入方法の再検討、(3)事業者による免許・周波数の(一部)返還と再オークションのそれぞれのケースについて、影響を予測した。     同日:FCCは、特定用途移動通信(SMR)サービスのための800MHz帯周波数オークションに関し、今回均衡財政法の中で示された議会の意向にしたがい、オークション実施時の「最低入札額」あるいは「初期入札額」制度の設定について、コメントを募集する旨、発表した。これは従来のオークションの一部について、極端な低価格での落札の例があり、そのため国庫への収入金額が減少することから、議会がこれを防止する策を講ずる希望を表明したことによるものである。  9月18日:FCCは、近くオークションが予定されているLMDS(公衆通信案件CC92-97)について、「最近の広帯域PCSのCブロック・オークションの経験から、LMDSオークションについては、落札者の分割納入を認めないことにする。他方、この代償として落札額の割引を考慮し、極小企業に45%、小企業に35%、起業家型企業に25%の率で認めることとする。」旨を発表した。  9月22日:Reed E. Hundt FCC委員長は、議会に対し、「周波数オークションの落札企業が破産を宣告され、落札額の支払いを実行しない場合、FCCは同企業から免許を取り戻す権限を持つ。」ことを定める法律案を送付した。1997年財政調整法の規定によれば、FCCは、落札者がFCCに対し支払い義務を怠った場合、免許を取り消すことができる。しかしながら、同企業が破産を宣告されている場合、免許を含めて現状が凍結されるので、FCCは免許の取消、免許状の取り戻しができないことになっている。なお、同法案に対し、議会筋では、そのままでの通過は困難であろうという意見を述べている。  9月25日:FCCは広帯域PCSオークションCブロック落札者の一部による落札金額支払いの困難について、当面の決定を下した。本決定の内容は、オークション当初の規則を大幅に変更することなく、落札金額未納事業者の救済を計ったものである。すでに金額を納入している落札者や、オークション途中で入札を中止し、落札に至らなかった事業者は、今回のFCCの決定が「公平」であり、周波数の安売りに至らなかったことを評価している。他方、(本件に関し、FCC内で少数派の立場にあった)Reed E. Hundt FCC委員長や議会筋は、今回の救済策が不十分であるとして批判している。いずれにしても、本件は近く交代する新しいFCC委員によって、再度検討され、議会・裁判所も巻き込んだ案件にならざるを得ないとの予測が一般的である。     同日:NWRA(National Wireless Resellers Association、全国無線再販事業者協会)は、ワシントン地区の連邦控訴裁判所にFCCを相手取って訴えを起こし、PCS事業者を含む無線事業者が、同再販事業者からの接続要求に円滑に応えるよう命ずることを求めた。NWRAによれば、FCCは本問題について、一般案件GN93-252で検討を続けているが、実際面で進歩が見られず、再販事業者からの再三にわたる接続要求に無線事業者が対応していないとのことである。  9月30日:FCCは議会に対し、「周波数オークションに関する議会への報告書」を送付した(FCC [1997])。同報告書において、FCCはこれまでの周波数オークションが全体としては成功を収めたが、同時に若干の重大な問題点をも生じたことを述べ、問題点の是正法について意見を提出している。 (1)FCCは、まず、オークション落札者が落札金額支払い不能のため破産状態に陥った場合に、破産法の規定によって、FCCが同事業者の免許を無効にすることができない点を問題として挙げ、破産法の改正などの是正措置が必要であるとしている。 (2)また、同報告は、FCCが落札事業者に対する債権を従来よりもより柔軟に執行できることが望ましいとしている。 (3)上記以外にも、細かな点において、FCCはいくつかの是正措置が必要であるとしている。なお、本報告は無線局案件WT97-150で、1993年総合財政調整法の規定にしたがって検討されていたものである。 10月 6日:FCCは、39GHz帯の周波数計3GHzを使用して、電話、インターネット・アクセス、データ通信を含む広帯域無線地上通信の実現に向けた計画を発表した。同計画は技術案件(ET95-183)、および政策・企画案件(PP93-253)において検討されていたものである。同周波数帯の使用法については、大幅な自由が認められている。これまでMotorola社を含む3社が同周波数帯の利用について提案をおこなっている。 10月17日:FCCが先般、無線通信案件(WT97-82)において決定した事項の中に、「関連破産条項(close default)」に対する考慮がなされていることが明らかになった。同決定において、FCCは、ある一つのオークション・ブロック(たとえばCブロック)において落札金額の支払いができず、破産状態に陥った事業者が、他ブロック(たとえばDブロック)においても落札し、かつ落札金額を支払って入手した免許を自動的に失うことになるか否かについて、決定を将来に延期している。多数の関係者が本条項が実際上重要な問題であることを認めている。 10月27日:Mercury PCS社に対し、FCCは、広帯域PCSのCブロック・オークションにおける不法行為を理由として、規則にしたがい計65万ドルの罰金を科することを決定した。 11月 3日:General Wireless社は、広帯域PCSオークションのCブロック落札者として、ダラス市において連邦裁判所に対し破産を申告した。これはPocket Communications社に次ぐ、2番目の破産のケースである。同社はFCCに対し、合計9億5千万ドルの負債を負っている。 11月10日:FCCの新委員長として、William E. Kennard氏が上院の承認を得て就任した。同委員長は就任演説で、「競争・コミュニティ・常識(Competition, Community, and Common Sense)」を強調した。また、同時に、新しいFCC委員として、Michael K. Powell氏、Gloria Tristani氏が就任し、前委員会から留任となったSusan Ness氏と合わせてフルメンバー5人による新委員会が発足することになった。     同日:General Wireless社は、FCCを相手として、7億5,300万ドルの債務負担が不当であるとし、ダラス市の連邦破産裁判所に訴えた。     同日:上院において、広帯域PCSオークション・Cブロックの落札企業の関係者が本年度予算法を一部修正し、同落札事業者の落札金額納入期限を5年間延期することを認める法案を提出したが、上院議員の反対にあって否決され、同試みは失敗に終わった。     同日:Mercury PCS社は、同社が落札した32個のPCS免許を入手した。当社はFCCからの罰金措置に対し、裁判によって争うことを述べている。 11月24日:広帯域PCSオークションのCブロックの「破産」落札事業者(2社)の問題に関し、National Telecom PCS社は、FCCの無線技術案件(WT97-82)でコメントを述べ、「FCCは破産法の一項『破産の申請が政府機関による警察・規制の実施を中止あるいは停止する効力を持つものではない。』を引用し、FCCは落札金額未納の事業者からPCS免許を取り上げる法律的な根拠があり、その実施はFCC規則のごく一部を改正すればよい。」旨を主張した。 11月28日:FCCは、1998年における周波数オークションの計画を一部修正し、PCS広帯域オークションのCブロックの落札者によって一部返還された免許の再オークションを1998年に実施することを発表した。PCS再オークションに加え、PCS以外の若干のオークションも1998年における実施が決定された。 12月 8日:FCCは、800MHz帯におけるSMR(Specialized Mobile Radio)免許のオークションを終了し、計9,600万ドルの落札金額に達したことを報告した。 12月17日:FCCは、周波数オークションに関する規則の改正において、無線通信案件(WT97-82)および工学技術案件(ET94-32)で検討していたが、オークション実施時における「分割納入」の方式について規則改正を提案し、一般からのコメントを求めた。 12月22日:NTIA Larry Irving Jr.長官は、ワシントンにおけるコンファレンスで、「無線ローカル・アクセス(WLL、Wireless Local Loop)」技術の進展を評価し、将来の発展に期待を寄せる旨の発言をおこなった。 12月30日:FCCのA. Richard Metzger Jr.公衆通信局長官は、South Western Bell Telephone社等に同日送付したレターの中で、「LECが、自己のネットワークの中から発呼され、CMRS(Commercial Mobile Radio Services、商用移動通信事業)のネットワークに着信する通信を取り扱う目的だけのために設置した設備のコストを、CMRS事業者に請求することを認めない。」旨の決定をおこなったことを明らかにした。これは、LECとCMRS間の接続問題に関する決定の適用ケースの1つである。同接続問題については、1997年夏に連邦第8控訴裁判所(セントルイス)による「FCC接続規則の一時差し止め命令」が発せられたことに対応し、一般的な接続案件とは別に検討が進められていたものである。 1998年  1月 5日:FCC国際局は、Western Wireless社およびその子会社であるWestern PCS社に対し、1934年通信法310条(b)(4)項で制限されている25%の比率を超えて香港のHutchisonwhampoa社からの間接投資を受け入れることを認める旨、発表した。これは香港が昨年6月に、中国本土と一体化されたにもかかわらず、本土とは別にWTOによる「基本通信サービス自由化」の合意グループに入っていることを考慮したものであり、いわばWTO決定の先取りとも言うことができる。  1月 6日:FCCは技術案件(ET97-157)において、これまでテレビ60-69チャンネル用に使用されていた746-806MHz帯の周波数60MHzを他目的に転用することを決定したと発表した。同周波数のうち、24MHz分は固定および移動公共安全目的に割り当てられ、また、残る36MHzは、通信あるいは放送目的のためにオークションされることになる。本決定は、1997年均衡財政法の条項にしたがったものであり、また、FCCはすでに上記60-69チャンネル分の周波数を、新たなディジタルTV用に割り当てられるべき周波数から除外する措置を取っている。  1月12日:FCCは1997年9月に広帯域PCSのCブロック・オークションの落札事業者による落札金額の分割支払いに関する4方式を提示していたが、今回、同事業者に対し、4方式のうち1方式を選択するための決定期限を当初の1998年1月15日から同年2月26日に延期することを発表した。1997年9月における決定のうち、他の条項については変更がない。FCCは、今回の期限延長がFCCによる上記支払い方法の大幅見直しの可能性を示唆するものではないことを強調している。  1月16日:LECによるLMDS(広帯域無線アクセス・サービス)免許オークションへの参加を禁じた1997年3月のFCC決定(公衆通信案件CC92-297)に関するワシントン控訴裁判所における弁論において、同裁判所裁判官は、FCCの立場に理解を示す方向からの審理をおこなった。  2月 2日:来る2月18日から開始される予定のLMDS(広帯域ローカル・アクセス・サービス)用周波数のオークションについて、FCCは145事業者からの申込を許可した旨、発表した。     同日:AT&T Wireless Services社は、同社がこれまで取ってきた方針を受け継ぎ、今回バージニア州アーリントン市のTeleCorp社とPCS提供事業に関して提携を結んだことを発表した。TeleCorp社は、広帯域PCSサービス・Fブロックにおいて免許を取得している。今回の提携の結果、AT&T Wireless Services社は、約1,100万人の加入者候補人口を傘下に収めることになり、自身の取得した免許を含め、米国の大半の地域でセルラーあるいはPCSサービスを供給することになる。  2月 9日:ワシントンの連邦控訴裁判所は、FCCとLECとの間で争われていた「LMDS免許のための周波数オークション」にLECが参加することを禁じ、また「LECが3年間LMDS免許を取得することを禁ずる」件につき、FCCの決定を認める判決を下した。その結果、2月18日に予定されているLMDS周波数オークションは、予定通り実行される見通しとなった。     同日:PCIA(Personal Communications Industry Association、PCS産業協会)は、「アメリカにおける無線通信のアジェンダ」を発表し、6項目にわたって無線通信普及のために今後実施するべき運動方針を示した。それらは以下の通りである。 (1)無線サービスへの課税の改良、(2)商用移動通信事業者(CMRS)とLECとの間の接続ルール、(3)無線用アンテナ設置などのインフラ投資、(4)周波数割当の長期的方針、(5)相互運用性を確保するためのネットワーク間協力、(6)無線通信における国際貿易の推進。  2月24日:NTIA他主催のコンファレンスで、FCCのWilliam E. Kennard委員長が、通信・放送分野の当面の諸問題について意見を述べた。この中で同委員長は、無線通信分野の事業者も、通信の「ユニバーサル・サービス」の維持のために相応の負担を負うべきであると発言した。  2月27日:FCCは広帯域PCSのCブロック・オークションの落札者が落札金額の納入について選択できる内容と選択期限について、再度延長する決定をおこなった。新たな決定によれば、落札事業者は今後本件に関するFCC命令が合衆国広報(Federal Register)に発表された日の60日後までに自己の選択を届け出ればよいとすることに変更した。CブロックおよびFブロックの落札金額(の一部)の納入については、これを上記選択期限の少なくとも30日後に設定することを決定した。本件は、1997年9月末になされたFCC決定につき、反対意見が多数であったこと、FCC委員の大部分がこの間交代したことなどの理由により、決定が先送りにされていたものである。なお、本件は、無線案件WT97-82の中でなされたものである。  3月 9日:コネチカット州連邦地域裁判所は、同州のStratfordにNextel Communications社が建設を計画しているPCS用アンテナおよび関連施設について、同市の「都市計画委員会(Zoning Committee)」が、同社と契約した市民に対して都市計画の観点から、アンテナ建設と関連施設の設置を不許可にしていた件につき、同委員会の不許可処置が通信法332条(c)に違反しているという判決を下し、同委員会に対して建設を許可することを命じた。無線通信事業者によるアンテナおよび通信設備の建設について、同様の係争が米国各地で生じているが、裁判所の判決は一般に通信事業者の側を支持しており、地域の「都市計画委員会」を支持する判決は少ない。本判決も、通信事業者を支持する判決の一つであり、米国の司法側が地域の個別利害よりも無線通信インフラの建設を優先させていることを示すものである。     同日:「連邦国立公園委員会」は、国立公園内における無線通信用アンテナおよび関連施設の建設の許可規準等について一般からのコメントを求める通知を出した。国立公園の維持運営や公園施設の提供目的と、公園内に中継施設を含む無線通信施設を建設することから生ずる問題が議論され始めている。  3月16日:ウィスコンシン州のLindquist Machine社は、同社屋内において、「完全無線PCS電話システム」を設置した。同社は150人の社員を雇用しており、100人を超える規模の企業体として、完全無線の電話システムを最初に構築した会社であると報じられている。同システムは、WWCC(Wisconsin Wireless Communications社)によって供給されることになる。同社は、1996年の広帯域PCS免許オークションにおいて、CブロックおよびFブロック周波数の落札者となった。WWCCは、また、入札時にウィスコンシン州において「ONEIDAインディアン族」と協力したことで知られている。  3月22日:FCCは広帯域PCSオークションCブロック落札者への救済策について、新たな決定を発表した。今回の決定は、大要において1997年9月の決定、すなわち同ブロック落札者に対し4項目のうちの1項目を選択させることを継承している。しかしながら、今回は選択条件を緩和し、落札者が保有するすべての免許について共通の項目を選択する必要はなく、地域ごとの免許に応じて異なる項目を選択することができる(ただし、同一MTA内の免許については同一の項目を選択しなければならない)。今回の決定については、FCC委員会内でも異論があり、Susan Ness委員とMichael K. Powell委員は、委員会の意見の一部に反対意見を表明した。 FCCは、また、Cブロックの落札者で現在破産状態にあるPocket Communications社について、同社の再建策とそれにともなう同社保有のPCS免許の処置に関する案を発表した。同案の基本線は、新たな事業会社(NEWGSM社)を設立し、同社にFCCに対する落札金額を本来の条件よりも緩やかな条件で分割納入することを許すものである。 今回のFCCの決定・提案に対し、議会のリーダーであるThomas J. Bliley Jr.下院商務委員会委員長、John Dingell同委員会野党リーダー、および同通信貿易消費者保護小委員会W. J. Tauzin委員長は反対意見を表明した。その大要は、FCCが一般のCブロック債務者に対しては不十分な援助しか与えず、他方、Pocket Communications社に対しては過大な援助を与えているとするものである。  3月27日:LMDS周波数のオークションが128回の入札の後に終了した。落札金額合計は5億7,800万ドルであり、当初の予想金額を大幅に下回って、その数分の一に終わった。また、全体のオークションのうち、100個以上の免許に対して入札がまったくおこなわれず、また、200以上の免許については、当初FCCが設定した入札最低金額で落札された。同LMDSオークションにおいては、493個のBTAのそれぞれについて、2個の免許が提供された。これらの入札結果は、一般から「失望」ケースとして受け取られている。このような結果に終わった主な理由としては、第一にLMDSの内容がまだ具体化されず将来のビジネスの予想がつかないこと、第二に、広帯域Cブロック・オークションにおける過大落札額が落札事業者の支払い困難や破産を招き、投資家側に警戒ムードが広がったことが挙げられている。 9902aab4.rtf - 15 - ********** E-mail: oniki@iser.osaka-u.ac.jp Web: http://www.crcast.osaka-u.ac.jp/oniki/ 「米国の周波数オークション(1993年の「通信法」改正)」、『米国通信法研究会報告書』、通信機械工業会:米国通信法研究会、1999年2月、pp.127-272。