「電波法の一部改正に伴う電波法施行規則、無線局免許手続規則及び無線従事者規則の各一部改正案」「電波法の一部改正にともなう関係省令の改正等」についての意見表明―― とくに「事業譲渡にともなう無線局免許承継・認定計画承継が周波数資源に実質的な私的所有権を成立させることを防止する必要」について 2000年8月29日 鬼木 甫 大阪学院大学 目次 I. まえがき II. 事業譲渡時の無線局免許承継・認定計画承継が周波数資源の使用権・所有権にもたらす効果 III. 周波数資源に「実質上の私的所有権」が部分的にでも形成されることを防止する必要について IV. 今回取ることが望まれる処置 付属資料 A. 米国において一部の周波数資源に「実質上の私的所有権」が成立する到った経過 B. 米国周波数資源管理制度の略年表 I. まえがき  電波は情報通信インフラの一つである。現在の携帯電話の成長やインターネットの普及から推測すると、二十一世紀のIT社会においては電波が最重要のインフラになる可能性もある。電波をできるだけ効率的に活用するための制度を構築し、政策を実施することが望まれる。 最近において広く認められているように、電波周波数を含む経済資源の効率的な活用は、競争市場のパワーに依存するところが大きい。とりわけ市場参入と事業経営の自由から生ずる技術・経営面の創意工夫は成長の牽引力である。最近多数の先進国において、電波周波数の管理に、オークションを含む「市場メカニズム」が導入されているのもこの理由による。筆者も、日本の情報通信の発展のためには、なるべく早期に何らかの方式のオークション等の導入が必要と考えている1。本年6月の電波法改正においてこの点が考慮されなかったのは残念なことである。 上記の点を前提した上で本稿においては、今回の電波法改正にともなう関係政省令等の改正等において、望ましい電波管理制度の実現のために必要と考える点について私見を表明する。具体的には、今回の電波法改正によって導入された「事業譲渡による無線局免許と認定計画の承継」が、周波数資源上に実質的な私的所有権を成立させる可能性をもたらすことを指摘し、将来における国民全体の利益のためにこれを防止する必要があることを主張し、そのために現在執るべき措置について述べる。 II. 事業譲渡時の無線局免許承継・認定計画承継が周波数資源の使用権・所有権にもたらす効果  まずこれまでの電波管理制度のうち、周波数資源の「使用権・所有権」に関する事項についてまとめておきたい。電波管理は、周波数使用免許(無線局免許)の交付や通信妨害の禁止(免許を有しない周波数への無断進入・使用の禁止)の形で実施されており、そこでは「使用権・所有権」の用語は使われていない。また免許は、使用対象である周波数だけでなく、使用当事者である免許人の資格・手続等についても定めている。しかしながら、本稿においては、免許の使用対象である電波周波数自体について、その使用や使用資格の継承から生ずる法律的・経済的事項を問題にするので、これらを「使用権・所有権」という用語で捉えることが便利かつ有効である。したがって以下の議論は、電波管理の内容全体のうち、「周波数資源の使用権・所有権」と名付けることができる事項にかかる部分についてのものである。  電波の「実質上の所有権」は、国あるいは政府当局が保有している。これを国有財産と呼ぶことは適切でないかもしれないが、電波は国有地(山林、道路など)、河川、湖沼などと同じく国が保有・管理する「スペース資源」である。この電波資源の一部が周波数ごとに区分され、周波数使用免許の形で(民間)事業者に割り当てられる。事業者が収入をともなう事業活動を行う場合には、(土地などと同じく)その周波数に経済価値を生ずる。しかしながら電波については、多くの場合事業者は手数料・使用料等の名目で、その使用から生ずる経済価値の一部のみを政府に支払うだけで済んでいる。経済価値が実際に支払われた金額を大幅に上回る場合には、事業者は政府から上記の意味で「恩恵」を受けることになる。  また周波数免許は、その期限終了後も特段の事情がない限り「更新」されるのが常である。これはある意味で当然の措置であって、周波数免許を受けた事業者は事業遂行のためにその周波数資源を活用するべく通信設備等への投資を行う。投資資本の回収期間と周波数免許の期間とは通常一致しないので、ある免許期間が終了した時点で、さらに使用可能な資本設備を事業者が保有しているケースが大部分である。もし周波数免許の更新が認められなければ、その事業者は従来の投資の一部を回収できないことになる。これはその事業者にとってはもとより、国民経済全体にとっても不利な事態であるから、これを避けるために、別に特段の理由が無いかぎり周波数使用免許は更新されるのが常態である。しかしながら、これが繰り返され、慣習化されると、一旦交付された周波数使用免許は、たとえ免許期間が形式的に決まっていても、実質的には将来に向かって無期限に継続するという期待を生ずることになる。これは上記「恩恵」を増大させる要因である。  政府当局は、これまでこの「恩恵」に基づいて周波数資源を効果的に管理することができた。更新を重ねた免許によって使用されている周波数でも、技術進歩や経済条件の変化によって必要が生ずれば、免許を返還させ(あるいは免許更新を認めず)、場合によっては他周波数の使用免許に切り換えて、同周波数を他の目的に転用することはそれほど困難ではなかった。事業者は上記「恩恵」から生ずる経済価値を期待し、たとえ免許が切り換えられても政府の要望に沿うことが有利だったからである。 政府当局によるこのような電波の管理体制は、もとより一部の事業者にのみ周波数割当という「恩恵」を与えている(希望するすべての事業者を平等に扱っていない)ことや、実際の経済価値をはるかに下回る代価で周波数資源の使用を認めていることからして、不公平・不公正の批判を免れない。またそれが新規参入の機会を実質上封ずることから、新規参入を目途とする技術的・経営的な創意工夫を生み出す動機を失わせ、その結果市場メカニズムの長所が発揮されず、長期的に国民にとって不利をもたらす。これらの点は、周波数資源オークションを含む市場メカニズムを導入するべきであるとする主たる理由である。しかしながら本稿の議論の目的はこの点にはないので、ここでは詳しい議論は省略する。  上記のような電波管理体制は、不公平・不公正・非効率の批判はあるにしても、対価を伴う周波数使用権の承継という「市場メカニズム」要素を完全に排除していたという意味で、それ自体としては完結されたシステムであった2。しかしながら「事業譲渡にともなう無線局免許承継・認定計画承継」を認めると、上記システムとは異質の「市場メカニズム」要因を導入することになる。つまりそれは、対価を伴う周波数使用権の承継を実質上容認し、長期的に周波数資源の使用権・所有権を変化させてしまう可能性を含んでいる。この点は、付属資料Aで説明する米国で生じた経過から類推されることであるが、その要点は以下のとおりである。  事業譲渡が行われる場合には、譲受人(法人を含む)は譲渡人(法人を含む)に事業体全体の代価を支払う(あるいは代価支払いに相当する株式等の移動が生ずる)。今回の電波法改正によって、譲渡人が周波数使用免許を保有している場合、譲受人が譲渡人から免許を承継することが可能になった3。その場合、双方が、免許の実質上の経済価値を考慮に入れることは当然である。同免許が事業継続のための必須要件である場合には、それは高額の経済価値を持つことになる。また、将来にわたって免許が更新されるであろうという「期待」からも、それに高額の価値が付されることが通常であろう4。しかしながら具体的に、周波数使用免許、つまり「相当の確率で将来無期限の期間にわたって周波数の使用権を(更新を重ねて)保有し続けることができると期待される状態」についてどれだけの価値が付され、譲渡事業体の代価のうちのどれだけの部分を占めることになるかは通常明らかにならない。周波数使用免許は、譲渡事業体の他の資産や構成要件と一体となって評価されるからである。  譲受人の立場から見ると、上記のようなプロセスで獲得した周波数使用免許は、多額の代価を払って獲得した一種の資産として考えられることになる。免許の当初保有者のように、政府当局の「恩恵」によって受けることができたとする要因は少なくなる。経済取引上保護されている「善意の第三者」と類似する状態になるのである。つまり譲受人の立場からすれば、将来無期限の期間にわたってその周波数を使用し続けることは当然の権利であり、事業譲受に際して支払った多額の代価に対する当然の報酬であると考えることになる。また通常の商慣習もこれを支持する5。このような事業譲渡が何度も繰り返されれば、この認識はますます強くなる。つまり、その周波数について実質上の「永久使用権」、すなわち「所有権」が成立することになる。  もとよりこのようにして成立した実質上の「所有権」は、例えば登記制度によって保護された「土地所有権」ほど強固なものではない。第一に、その周波数の使用目的は当初から定められており、完全な使用の自由は認められないかもしれない。また第二に、実質上はともかく形式上は、使用免許に期限が付されており、更新を許可するか否かの権限は、政府当局が保有しているからである。しかしながら、初期免許と比べて事業譲渡によって入手した周波数使用免許が、政府に対しより強い対抗力を保有することは疑いない。付属資料Aに詳しく説明されているように、米国においては、このようなプロセスで事業譲渡にともなう周波数使用権の譲渡(売買)が進行し、その結果いわば制度の裏口から「周波数取引市場」が成立したのである。1993年の周波数オークションの導入は、このようにして成立した周波数市場とその前提である周波数の所有権(永久使用権)を公式に追認したものであると考えることもできる。 III. 周波数資源に「実質上の私的所有権」が部分的にでも形成されることを防止する必要について それでは、上記のように一部の周波数資源について、それが譲渡事業体の代価の一部として実質上売買され、またそのことによって周波数資源に「実質上の私的所有権」が形成されることによって、どのような問題が生ずるのであろうか。その第1は、資産・所得の分配に関する不公正と、そこから生じ得る将来における株式市場等の不安定である。言うまでもなく、事業体が、当初その経済価値を支払うことなく入手した免許(周波数免許)を他に有償譲渡すれば、そこから「棚からぼた餅」的利益(Windfall profits)を生ずる。これが政府による電波管理の結果として生ずれば、不公正の批判を免れないであろう。また株式市場等はこの種の利潤機会を織り込んで作用するが、上記不公正の批判があり得ることは利潤機会の不確実性を意味するので、株価等の変動要因になり兼ねない。とりわけ近い将来の開始が予定されている第3世代移動電話用の周波数については、その資本価値総額は少なくとも千億円単位、おそらく兆円単位になるのではないかと予測され、金額面からしても問題は大きい。 次に第2の問題は、電波を使用する産業の長期的な効率性にかかわる。一言でいえばそれは、将来において技術進歩にともなって生ずる周波数資源の有効な利用のために必要な柔軟性が失われることである。これまですでに何度か経験したように、技術進歩によって周波数のより高度な利用が可能になった場合、旧来方式による周波数利用者を他に「移転」させる必要が生ずることがある。旧来の利用者が免許の当初保有者であり、政府の「恩恵」を強く受けている場合には、移転は支障なく行われるかもしれない。しかしながら旧来の利用者が多額の「代価」を支払ってその使用権を入手していた場合には、移転のために多額の補償を要求するであろう。一般にこのような場合の適正な補償金を決める基準は存在しないので、「ゴネ得」の余地も生じる。実際には、法外な補償金を支払うことには国民一般の反対があるだろうから、政府当局は旧来の使用者の「言い値」をすぐ飲むわけにはいかない。そこから生ずるのは、われわれが土地についてすでに何度も経験しているように、時間の浪費、人手の浪費、新しいプロジェクトの実現の遅延、そしてそこから生ずる多数のマイナス波及効果、当事者に対する国民からの不信などである。 このような周波数使用者の移転を必要とするかもしれない技術進歩の例は、すでに一部実現されているCDMA通信方式である。CDMA方式は広い周波数帯を多数のユーザが「共用」することによって効率を上げるので、その実現のためにはある程度一カ所にまとまった周波数資源が必要となる。現在の携帯電話のためのCDMA方式の実現のためには、幸いにも未使用のあるいは転用可能な周波数スペースが残っており、大きな支障なく実現された。しかしながらもしその一部が上述したように「実質上の所有権」をともなって使用されていたとすれば、結果は異なっていたかもしれない。また将来の周波数資源の利用方式として、CDMA方式をより拡張し、「多数の船舶が海洋上のスペースを衝突しないで効率的に使用することに類似する周波数利用方式」も提案されている6。 もとよりここで論じているのは、現在ではなく、将来のことである。技術進歩の方向とスピードは誰にも予想がつかず、どの時点でどの程度の周波数再分配・再割当の必要が出てくるかは誰にもわからない。しかし最近の急速な技術進歩から考えると、将来における周波数資源の柔軟な利用を保証するために、現在時点でその阻害要因を防止しておくことには、大きな意味があるものと考える7。 米国の場合には、周波数資源の管理に対する市場メカニズムの浸透が、数十年をかけて緩やかに進行した。米国の保有する周波数資源のかなりの部分、すなわち民間事業者によって通信・放送目的に使用される周波数資源の大部分について「流通市場」が成立したのちに最近の急速な技術進歩が始まったのである。上記の2個の問題のうちの第1(資産・所得の不公正な分配)については、長期間をかけて少しづつこれを「飲み込んで」きたと言うことができる。米国では、第3世代移動電話用の周波数についてはオークション方式で初期免許を発行した(PCS広帯域オークション)ので、第1の問題は生じなかったことになる。これと対比し、上記のように日本では、第3世代移動電話用の周波数について第1の問題が大規模の発生する可能性がある。 次に第2の問題については、米国でも解決されていない。周波数オークション制度が米国議会で審議されていた際に、上記第2の問題が議論になり、オークションによって周波数資源を完全に私有財産化することについて疑義を呈する専門家もいた。しかしながら、当時の米国議会では、オークションの導入自体への賛否が拮抗しており、上記のような「細かな」論点は主たる議論の対象とならなかった。また米国においては、初期免許以外の周波数資源について市場メカニズムがすでに成立していたため、後戻りは不可能ではないにしても困難であったと言うこともできる。将来、周波数利用のための技術進歩の如何によっては、米国でこれまで通信・放送用周波数を大部分私有財産化してしまったことが、大きなマイナス要因として作用する可能性も残っている。 翻って第2の問題に関する現在の日本の状態は、米国において周波数資源の私有財産化が進行し始めた時点の直前の状態に対応していると言ってよい。この意味で制度的に数十年の後発となった日本が、米国と同じ歴史を辿らなければならない理由は一つもない。米国の歴史を参考にしてその長所を取り入れながら欠点を避けること、すなわち後発の利益を生かすことが望ましい。 なお、誤解を防ぐために「オークションの導入」に関する筆者の意見を述べておきたい。当初に述べたように市場メカニズムのパワーを発揮させるため、筆者は何らかの形でのオークションの導入が日本のために必要であろうと考えている。しかしながら、上記第2の問題の点から、周波数の私的所有権と結びついた形での(つまり米国方式の)オークションの導入は、避けるべきであろうと考えている。第2の問題を避けながら、市場メカニズムのパワーを発揮させる方式は、「周波数使用権に関するオークション(リースオークション)」である。つまり5年なり、10年なりの期間を定め、その期間内の周波数の利用権をリースごとにオークションにかけるのである。 もとよりリースオークションは、オークションに敗れた場合投資回収が不可能になるというリスクから、事業者による投資意欲を減退させかねないという欠点を持っている。しかしながらこの欠点は、オークション方式に工夫を加えることによって、(完全に避けることは不可能であっても)かなりの程度まで緩和することができる。例えば周波数使用期間5年のリースオークションを、リース開始時の何年か前に実施する方式、あるいはリースオークションに際してその周波数の現使用者と新規参入者との間にハンディを設ける方式など、いろいろ考えられる。いずれにしても完全な方式は存在せず、相互に相矛盾する目的を妥協させる方式が選択されるべきであろう。これらに関するくわしい議論は本稿の主目的ではないので省略したい。 IV. 今回取ることが望まれる処置  前節に述べた2個の問題は、いずれも、事業譲渡に際して周波数使用権が高い経済価値を持って譲渡事業体の代価に含まれることから生ずる。そして周波数使用権が高い経済価値を持つのは、それが(事業体による投資の保護というその限りでは合理的な理由によって)将来無期限に更新されるであろうという期待を生ずるからである。したがって、当面の対策としては、そのような期待が生ずるのを防止することが考えられる。具体的には以下を提案したい。それは、事業譲渡が生じても、周波数使用免許を私的所有権を含む「市場メカニズム」の手に渡さず、(電波法変更前と同じように)政府の「恩恵」の状態に留めておくことである。このことによって、政府当局は、電波管理システムの変更・構築に関して、従前と同じく「フリーハンド」を保有し続けることができ、しばらく時間を稼ぎながら同制度の本格的な改正を立案することができる(小生の提案するリース・オークションへの移行も容易である)。 提案:「企業譲渡にともなう周波数使用免許・認定計画の承継が当該周波数に実質上の私的所有権を成立させることを防止する」ために、今回の「電波法の一部改正に伴う電波法施行規則、無線局免許手続規則及び無線従事者規則の各一部改正案」「電波法の一部改正にともなう関係省令の改正等」において、以下の措置をとること。 A. 「認定計画承継申請書(別表第5号の9)」の主文、あるいは記載事項として、下記の趣旨の文言を付け加える: 「認定開設者の地位を承継するに当たり、認定計画に含まれる電波周波数の使用については、譲受人が譲渡人に事業譲渡のための代価を支払ったか否かにかかわらず、また支払った場合は金額の多少にかかわらず、譲渡人が保有していたのと全く同一の資格・権利・義務を保有することになることを承知しています。すなわち本承継によって、譲受人は、譲渡人が保有していなかった周波数の使用権・保有権等を保有するものではなく、また譲渡人が保有していた義務を免れるものではないことを承知しています。とりわけ、将来において、技術進歩や経済環境の変化により、政府当局が周波数の分配(使用目的)を変更した際に、本認定の期限終了後において以降の認定計画の更新がなされない場合があり得ることを承知しています。」 B. 上記は事業譲渡によって生ずる認定計画承継に関する場合であるが、同様の措置が法人合併による認定計画の承継、および(今回省令改正として含まれていないようであるが)法人合併・事業承継によって生ずる周波数使用免許(無線局免許)の承継についても取られるべきである。 C. なお、上記のような承継時の書面上での確認に加え、本稿の実質的内容が広く公開され、なるべく多数の国民に知られるための措置をとることが望ましい。ほとんどすべての国民は、本件について直接的な利害関係を有せず(もとより納税者として間接的には利害を持つが)、本稿で述べた措置を支持するものと予測され、またそのような国民多数からの広い理解が、上記A.の内容の実現を保証する力になるからである。とりわけ前節に述べた問題1のうち株式市場等の不安定要因の発生防止については、なるべく早期に問題点と政府当局の対処策を明らかにしておく意義が大きい。 1 ただし筆者は、米国と同様なオークションの導入を主張しているのではない。本稿III節末尾を参照。 2 相続、法人合併に伴う免許の承継(周波数使用権の承継)は認められていたが、それは対価を伴うものではなかった。 3 事業譲渡による免許承継を認めることは一般に経済効率を増大させるので、歓迎されるべきことである。本稿で問題にするのは、いわばその「副作用」の防止である。 4 いずれにしても、周波数資源の経済価値(免許の価値)が譲渡事業の代価に加えられることになる。 5 外国の事業者(あるいは外国人が株式の過半を保有する事業者)が譲受人である場合、(国際商慣習等を理由として)「善意の第三者」の立場を強硬に主張することが予想される。 6 たとえば、Noam, Eli M. [1995], "Taking the Next Step Beyond Spectrum Auctions: Open Spectrum Access," IEEE Communications Magazine, December 1995, pp.66-73.. 7いずれにしても周波数資源には、土地をはじめとする「スペース資源」に共通する「近接使用から生ずる外部性」が存在する。周波数資源に実質上の私的所有権が作られることから生ずる不便は、空港・高速道路などの建設時に、私有地の存在のために用地手当が順調に進まないことから生ずる不便と類似している。 Hajime Oniki 09/01/00 - 10 - oniki@alum.mit.edu www.osaka-gu.ac.jp/php/oniki/ D:\AaE0-Adm\AA-Web\oniki\download1\200008a.doc