日本におけるソフトウェア生産効率 『ネットワークインフラに関する競争環境の整備及びIT時代に対応した制度改革』産業構造審議会情報経済部会第1次提言(案)、平成12年8月、に対する意見表明 2000年9月18日 鬼木 甫 大阪学院大学 I. 概要  すでに広く理解されていることであるが、「ソフトウェア1」はIT革命・ネットワークサービス普及のための不可欠の要因であり、その重要性は、将来ハードウェアやインフラと比較して増大するものと予測される。しかしながら、日本におけるソフトウェアの生産効率は、ハードウェアと比較して極端に低い。これは、日本のIT革命・ネットワークサービス普及のために望ましくない事態である2。本稿は、主に輸出入統計によって日本のソフトウェア生産効率の現状を述べ(II節)、同効率向上のための手はじめの政策として、「日本のソフトウェア生産効率の決定要因に関する組織的調査」の必要性を指摘する(III節)3。 II. 日本の電子工業輸出入、ソフトウェア輸出入(1999年) (1) 1999年のハードウェア生産と輸出入 まず最初に、1999年におけるコンピュータ・半導体などのハードウェアの生産と輸出入の現状を概観しよう。コンピュータ・半導体は、表1に示されているように、電子工業製品に分類される。電子工業製品は、民生用電子機器(主に音響・映像機器)、産業用電子機器、電子部品・デバイスに三分される。コンピュータ本体とその周辺装置は、産業用電子機器の一部である。他方、半導体集積回路や液晶デバイスなどの部品は、電子部品・デバイスに分類されている。 1999年の国内総生産(GDP)に対する同年の電子工業生産額23兆円余の比率は5%弱である4。電子工業生産のうちで産業用電子機器はその約半分(48.6%)を占め、電子部品・デバイスは43%程度であり、残りの1割弱が民生用電子機器である。産業用電子機器は、コンピュータとその周辺装置のほか、通信機器・制御機器などを含む。1999年におけるコンピュータと周辺装置の生産額は共に約2兆円であり、両者合わせてGDPの1%弱になる。他方、電子部品・デバイスの生産高は計10兆円であるが、その中で半導体・集積回路の合計は3兆5000億円(GDPの0.7%程度)、液晶デバイスは1兆2000億円(GDPの0.25%)である。 次にコンピュータ・半導体の輸出入の状況を見よう。電子工業は全体として見れば輸出産業であり、表2が示すように1999年の輸出額は12兆円強で、同国内生産額の約半分に達し、日本の財貨・サービス輸出額の4分の1を占めている。その中で、デスクトップと携帯用を合計したコンピュータの輸出額3400億円は、同国内生産の15%強に留っているが、周辺装置の輸出1兆2000億円は、国内生産2兆円の半分を超えている。他方、電子部品・デバイスを全体としてみると、国内生産10兆円に対して輸出は8兆円にも達している。記憶素子・論理素子などの集積回路のついても、同様に輸出が多い。5 他方、電子工業生産の輸入を表3で見ると、全体として国内生産23兆円に対して、輸入は5.6兆円であり、これは輸出の約半分である。電子工業の各項目について輸出と輸入のパターンを見るため、1999年の電子工業純輸出(輸出マイナス輸入)を計算してみる(表4)と、輸入超過になっているのは有線通信機器(電話機・交換機・ルータ等)と、デスクトップコンピュータの2項目だけで、それ以外のすべての項目で輸出が輸入を超過している。また、特に純輸出が大きい項目は、コンピュータ周辺装置、通信・コンピュータ以外の産業用電子機器(たとえば制御用機器)、および半導体・集積回路以外の電子部品・デバイスである。 これらの結果から、日本経済における電子工業の生産は、デスクトップ・コンピュータの本体、通信機器を除く大部分の項目について輸出超過であり、生産効率が高いことが分かる。 (2) ソフトウェア生産と輸出入 次に、ソフトウェアの出荷と輸出入について説明する。日本のパソコン・ソフトウェアの出荷金額は1998年で5900億円台であり、これは同年のパーソナルコンピュータ・ハードウェアの生産額2,1兆円の約28%にあたる6。この数字は、ハードウェアへの支出に対するソフトウェアへの支出比率の増大というトレンドの同年におけるスナップショットであり、今後においてはソフトウェアへの支出の比重は一貫して高まることが予想されている。 次に、ソフトウェア(PC用パッケージソフトだけでなく、個別発注・製作分なども含む)の輸出・輸入額の年次経過を1994-1998年について見よう。表6から明らかなように、輸出と輸入の間には極端なアンバランスが存在する。1994年における日本のソフトウェア輸入は2600億円程度で、その大部分は米国からの輸入であった。1998年には、輸入金額が6000億円近くにまで増大しており、同じく米国からの輸入が大部分である。これに対し、日本からのソフトウェア輸出は、1994年において55億円、1998年でも88億円程度であり、輸入額の数十分の一というアンバランスが続いている。同表にはソフトウェアについて日本からの輸出を日本の輸入で割った輸出入比率が示されているが、日本は米国、欧州、アジア、その他の世界各地域に対して輸入超過になっており、1997−98年の対米国比率は最低の0.23%である。ヨーロッパとの輸出入比率は1994年の32%から1998年の4.6%に減少しており、アジアについても61%から30%に半減している。これらの数値は、日本のソフトウェア輸入が絶対値だけでなく相対比率においても増大していることを示している。 (3) 米国のコンピュータ・半導体産業  表7A・Bは米国のIT産業(コンピュータ・半導体産業を含む)の生産額(GDP)(付加価値額)を示している。71999年の(推定)生産額は7300億ドルである。IT産業がGDP合計中に占める比率は、1990年の5.8%から1999年の8.2%に到るまで一貫して増大している。このうち日本の電子工業に対応する項目はハードウェアと通信機器であるが、その1999年の合計額268,214百万ドルは、1990年の123,715百万ドルの2.17倍であり、また1999年のGDP合計の3.0%を占める。前述のように同期間における日本の電子工業生産額は、23兆円程度の水準で停滞していた。  なお同表は、コンピュータ・ハードウェアに対する同ソフトウェア生産額(付加価値)の増大傾向を示している。1990年のハードウェア生産額に対するソフトウェア生産額の比率は26.6%(=8.27/31.11)であったが、1996年においては35.0%(=11.08/31.62)になっており、6年間で平均8.4%(1年間で1.4%)の上昇スピードを示している。 III. 日本のソフトウェア生産効率 (1) 日本の比較優位・劣位の概観 日本のコンピュータ・半導体産業、あるいはそれらを含む電子工業は、全体としてみれば現在時点で十分な国際競争力を持っており、この地位は中期的には(たとえば5年ないし10年程度の期間は)安泰であろうと考えられる。しかしながら日本の比較優位・劣位の所在を詳細に点検すると、時間の経過にともなって全体としての日本の比較優位の程度が減少傾向にあることがわかる。 電子工業に関する日本の優位を低下させる外的要因は2つある。第一は、中進国からの追い上げである。電子工業、あるいはコンピュータ・半導体産業において日本が比較優位を持っている製品は、いずれもアジアを主とする中進国が得意とする製品でもある。これらの中進国が、日本より安価な労働力を使いつつ技術進歩と大量生産の利益を実現すれば、それは確実に日本製品の市場を侵食することになる。 第二の要因は、電子工業の製品に対する需要のシフトである。経済成長によって世界全体の平均所得が高まるとともに、単純な製品から複雑な製品へ、単品からシステムへ、ハードウェアからソフトウェアへと需要がシフトする傾向がある。ハードウェアは大量生産によって価格が低下するが、新製品が現れる余地はそれほど大きくない。これに対しソフトウェア製品・システム製品は、新工夫・新機軸によって作られる。製品を改良しグレードアップする機会、全く新しい製品を生み出す機会は、ハードウェアに比べてはるかに大きい。したがって電子産業全体について、単純な製品・ハードウェアに支出する金額に比較して、複雑な製品・システム製品・ソフトウェアに支出する金額が相対的に増大する傾向がある。 (2) ソフトウェア産業の生産効率  前節で述べたように、日本のソフトウェアの輸出は輸入に比べて1%程度(米国に対しては0.25%)というニアゼロ水準にあり、日本のソフトウェア生産性は極度に低い。ソフトウェア生産のための作業は、「組織的な情報処理手順の設計と記述」であり、緻密かつ几帳面でしかも工夫能力に富むという日本人の特性と合致している点がある。さらにたとえばPCソフトウェアの生産は、基礎的な知識さえあれば、PC1台と数万円程度のソフト作成用ソフトウェアのみで足り、能力と意欲だけで容易に参入できる。加えて、ソフトウェア生産については、公的規制などの制度的な阻害要因も存在しない。そのようなソフトウェアの生産性が日本で極端に低いのは、特異な現象と言わなければならない。 ソフトウェアは、PCをはじめとするハードウェアを有効に利用するため多数の用途に使われており、インターネットと結合してIT時代には、その可能性がどこまで増えるか想像できないくらいである。つまりソフトウェア生産によるビジネス・チャンスは無数に転がっており、将来それは増加の一途を辿るものと考えられる。 このように需要・供給の両面で条件が整っているソフトウェアの生産において日本が不振を極めているのは、日本社会に何らかの全般的・組織的な「原因」があって、日本でのソフトウェア生産効率の向上を妨げているのではないか、と考えられる。 ソフトウェアは、将来のネットワーク社会・IT社会で情報機器を有効に活用するための手段であること、そしてソフトウェアへの需要が相対的に増大し、支出金額も増大することを考えるとき、日本におけるソフトウェア生産の極度の不振は憂慮に耐えない。  日本におけるソフトウェア産業の不振という事実はすでに広く知られているが、この問題に対する一般の反応は表面的・類型的なレベルに留まっているように思われる。たとえば「日本はビジネスソフトウェアの生産は苦手だが、エンターテイメント分野のゲームやカラオケやアニメの生産では米国に勝っている。」として、そこで議論が終わってしまうことが多い。実は、この認識には誤りが含まれている。ゲーム機について日本の生産性が高いのは、ゲーム機というハードウェアについてであり、ゲーム用コンテンツ(この場合は本来のコンテンツとソフトウェアが一体化されている)については、ユーザとの関係からコンテンツのローカライゼーションの必要が強く、日本製の「ゲームソフト(上記の意味のコンテンツとソフトの双方)」の輸出力は必ずしも高くない8。 また、カラオケやアニメについて日本の生産性が高いのは、そこで使われているソフトウェアではなく、カラオケ用のコンテンツ(つまり音楽)やカラオケ・サービスの提供用ハードウェアである。アニメについては、そのためのソフトより、アニメの内容自体(コンテンツ)やそれを収めたパッケージである9。 日本における(本来の)ソフトウェアの生産性が低いことの原因として、専門家を含め多くの人がそれぞれ異なった意見を個人的に持っているように思われる。たとえば、「日本の企業では個人プレーが許されず、チームに入って仕事をしなければならないので、個人の能力に大きく依存するソフトウェアの開発が妨げられる。」「日本の企業では優秀なソフトウェアを開発しても、そこから生ずる利益を開発者(個人あるいはチーム)が受け取るシステムになっていない。」「ソフトウェア作成のためには英語を使わなければならず、日本人は本来的に不利な立場にある。」「日本の学校教育では暗記型学習が多いため、ソフトウェア開発に必要な創造的能力の形成が妨げられる。」「日本ではベンチャービジネスが育つ環境がないために、ソフトウェアを開発してもそれをビジネス化できない。」「日本人は物ごとを全体的にかつ情緒的に受け取るので、各部分ごとの論理構成が不可欠な作業になっているソフトウェアの生産は苦手である。」などである。これらの意見は、専門家による豊富な経験と深い洞察から得られたものかもしれないし、単に日常生活の偶発的な出来事からの思いつきにすぎないかもしれない。多くの場合、ソフトウェア生産の不振が問題になっても、この種の説明がなされてそれで議論が終わってしまうことが多い。 (3) ソフトウェア生産効率の決定要因に関する組織的調査の必要  上記のソフトウェア問題について筆者は、「ソフトウェア生産効率の決定要因に関する組織的調査」の実施を提案したい。  まず日本のソフトウェア生産性を増大させるためには、現在の低い生産性をもたらしている原因を明らかにする必要がある。原因が特定されなければ、対策を考えることはできない。もし「現在の学校教育のあり方」が問題であることが分かれば、ソフトウェア生産性増大に関する教育改革について提言ができる。もし「ソフトウェア作成労働者の処遇」が不適であることが分かれば、対策を作ることができる。原因の特定は、あらゆる対策に先行する。  次に、ソフトウェア生産性の決定要因は、多数に及び、因果関係(相関関係)も錯綜していることが推測される。ソフトウェア労働者個人の能力や意欲、目的とするソフトウェアの性質、ソフトウェア生産の環境や手段など、ソフトウェア生産性の決定には多数の要因が影響を与えている可能性がある。この種の複雑な関係は、断片的な経験を集積するだけでは明らかにならない。その実体は、周到に計画された標本調査と、(統計手法などを駆使した)科学的分析に拠らなければ明らかになし得ないだろう。 われわれ個人はソフトウェアにユーザとして日常生活で触れることが多いので、その際の経験からソフトウェア生産性の決定要因について理解できたような錯覚を生じやすいのではないだろうか。実際には、ソフトウェア生産性の決定要因は複雑・多様な要因を含み、一人あるいは少数の人間の経験を単に述べるだけでは意味のある結論が出せない種類のものではないかと考えられる。この種の分析を必要とする問題の例としては、(分野は異なるが)疫学調査・健康阻害要因の調査(たとえば「喫煙は肺がんの発生率を増加させるか」)が挙げられる。  現在の日本の「ソフトウェア生産性の問題」は、1980年代初頭のアメリカにおける「製造業の生産性の問題」と類似している。周知のように当時のアメリカでは、自国の製造業の不振と、日本の製造業の高い生産性による輸入増加が問題であった。アメリカ政府は多額の予算を割いて専門家を動員し、年月をかけて日本の製造業の実状(たとえばリーン生産システム)を調べ、そこから得られた知見と政策提言を「MIT Report (Made in America)」として1989年6月に発表した。 アメリカの多くの企業がこの提言を参考にして改革を実行し、その結果が1990年代のアメリカ製造業の再生とそれに続く同経済の繁栄の一因になったと報告されている10。日本においても、まず日本経済・日本社会の何がソフトウェア生産性の向上を妨げているかを見出し、次いで生産性向上のために何をすればよいかを国民に告げるべきではないだろうか。 IT革命が世界の大きな流れになる以前から、「ソフトウェアの生産は大切だが、日本はこれが苦手である。」との認識が拡がっていた。それにもかかわらず、「その原因を解明して対策を考える」試みは、行政分野でも研究分野でもあまり見られなかった。多くの当事者・専門家がこの問題を避けてきたように思われる。その理由は推測できないわけではない(たとえば「日夜苦労しているソフトウェア業界の非難と取られかねない。」など)。しかしながら、このような「逃げ」の姿勢では、問題の解決にはならない。またこの問題については、時間も味方してくれない。 もとより、「ソフトウェアの生産性」の問題に触れることが、そのまま日本のソフトウェア業界や大学のソフトウェア学科の非難を意味するものではない。(日本の米価が高いからといって農家を非難する声が大きいわけではないことと類似する。)経済専門家には明らかなことだが、問題は、当事者個人の資質・努力や企業の質よりも、国全体の比較優劣位の決定要因にかかわる。なるべく早期に、「ソフトウェア生産性」の問題が検討されるべきではないかと考える。 なお実際に「ソフトウェア生産効率の決定要因に関する組織的調査」を実施するためには相当額の予算が必要であろう。実施にあたっては「競争原理」が働くよう計画されることが望ましい。また蛇足かもしれないが、予算を出し放しにするのでなく、途中経過のモニタリング、最終結果の評価がおこなわれるシステムが必要と考える。さらに、大規模な調査をいきなり開始するのではなく、予備的な情報収集から手がけることが有効だろう。具体的には、まず「ソフトウェアの生産性決定要因の組織的調査プロジェクトのプロポーザル」と、「同上プロポーザルの初期審査と、採用プロジェクトの途中モニタリングと最終評価のためのシステムのプロポーザル」の公募を、政府予算で実施することが考えられる。 表1 電子工業生産(1999年) (金額:十億円) 品  目 1999年1月〜12月累計 金  額 金額構成比(%) 民生用電子機器 2,041 0.41% 8.71% 100.00% 産業用電子機器 11,389 2.29% 48.58% 100.00%   有線通信機器(電話機、交換機等) 1,934 0.39% 8.25% 16.98%   携帯電話 1,083 0.22% 4.62% 9.51%   電子計算機・パーソナルコンピュータ 2,239 0.45% 9.55% 19.66%   電子計算機・周辺装置 2,039 0.41% 8.70% 17.90%   その他 4,094 0.82% 17.47% 35.95% 電子部品・デバイス 10,012 2.01% 42.71% 100.00%   半導体素子 955 0.19% 4.07% 9.53%   集積回路・論理素子 1,755 0.35% 7.49% 17.53%   集積回路・記憶素子 885 0.18% 3.78% 8.84%   液晶デバイス 1,243 0.25% 5.30% 12.42%   その他 5,175 1.04% 22.07% 51.68% 電子工業合計  23,442 4.72% 100.00% 製造業国内総生産(1998年) 117,216 23.58%   国内総生産(1998年) 497,101 100.00%   注:(社)日本電子機械工業会ウェブサイト資料 (http://www.eiaj.or.jp/japanese/statistics/index.htm、2000年5月2日閲覧)より算出 表2 電子工業輸出(1999年) (金額:十億円) 品  目 1999年1月〜12月累計     金  額 金額構成比 民生用電子機器  1,426 2.78% 11.41% 100.00% 産業用電子機器  3,049 5.94% 24.38% 100.00%   有線通信機器(電話機、交換機等) 201 0.39% 1.61% 6.60%   移動電話 80 0.16% 0.64% 2.63%   電子計算機・携帯用 254 0.50% 2.03% 8.33%   電子計算機・その他 89 0.17% 0.71% 2.92%   周辺装置 1,233 2.40% 9.86% 40.43%   その他 1,191 2.32% 9.53% 39.08% 電子部品・デバイス  8,028 15.65% 64.21% 100.00%   半導体素子 490 0.96% 3.92% 6.11%   スマートカード(ICを自蔵するカード) 4 0.01% 0.04% 0.05%   モノリシック集積回路・モス型・記憶素子 650 1.27% 5.20% 8.10%   モノリシック集積回路・モス型・マイクロコンピュータ 447 0.87% 3.58% 5.57%   モノリシック集積回路・モス型・その他 619 1.21% 4.95% 7.71%   その他 5,817 11.34% 46.52% 72.46% 電子工業合計 23,442 4.72% 100.00% 製造業国内総生産(1998年) 117,216 23.58% 国内総生産(1998年) 497,101 100.00 注:(社)日本電子機械工業会ウェブサイト資料(http://www.eiaj.or.jp/japanese/statistics/index.htm、2000年5月2日閲覧)より算出 表3 電子工業輸入(1999年) (金額:十億円) 品  目 1999年1月〜12月累計    金  額 金額構成比(%) 民生用電子機器 427 0.99% 7.57% 100.00% 産業用電子機器  2,012 4.66% 35.67% 100.00%   有線通信機器 227 0.53% 4.03% 11.29%   移動電話 5 0.01% 0.09% 0.26%   電子計算機・携帯用 145 0.34% 2.58% 7.23%   電子計算機・その他 474 1.10% 8.40% 23.55%   周辺装置 665 1.54% 11.79% 33.05%   その他 495 1.15% 8.78% 24.63% 電子部品・デバイス  3,202 7.41% 56.77% 100.00%   半導体素子 99 0.23% 1.76% 3.10%   スマートカード(ICを自蔵するカード) 1 0.00% 0.02% 0.04%   モノリシック・モス型・記憶素子 548 1.27% 9.72% 17.12%   モノリシック・モス型・マイクロコンピュータ 257 0.60% 4.56% 8.03%   モノリシック・モス型・その他 234 0.54% 4.15% 7.31%   その他 2,062 4.77% 36.56% 64.40% 電子工業輸入合計 5,641 13.06% 100.00%   輸入(財貨・サービス)合計 43,183 100.00%     電子工業輸出合計 12,502 24.38% 100.00% 輸出(財貨・サービス)合計 51,284 100.00% 注:(社)日本電子機械工業会ウェブサイト (http://www.eiaj.or.jp/japanese/statistics/index.htm、2000年5月2日閲覧)より算出 表4 電子工業純輸出(輸出マイナス輸入)(1999年) (金額:十億円) 品  目 1999年1月〜12月累計     金  額 民生用電子機器 999 産業用電子機器  1,037   有線通信機器 -26   移動電話 75   電子計算機・携帯用 109   電子計算機・その他 -385   周辺装置 568   その他 696 電子部品・デバイス  4,826   半導体素子 391   スマートカード(ICを自蔵するカード) 3   モノリシック・モス型・記憶素子 102   モノリシック・モス型・マイクロコンピュータ 190   モノリシック・モス型・その他 385   その他 3,755 電子工業 6,862 輸出入(財貨・サービス)合計 8,101 表5 電子工業の生産・輸出・輸入(1990−1999)       (金額:十億円/年)   1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 電子工業の生産 23,010 24,168 21,189 19,713 20,555 21,776 23,301 24,776 22,488 22,598   電子機器 15,029 15,677 13,588 12,393 12,365 12,615 14,071 14,936 13,366 12,874     民生用 4,154 4,450 3,569 3,066 2,791 2,440 2,212 2,241 2,119 2,041     産業用 10,875 11,227 10,019 9,327 9,575 10,176 11,859 12,694 11,246 10,833   電子部品 7,981 8,491 7,601 7,320 8,190 9,161 9,230 9,841 9,122 9,724 電子工業の輸出 10,198 10,468 10,485 9,980 10,317 10,781 11,119 12,573 12,194 11,553   電子機器 5,778 5,946 5,693 4,971 4,498 4,080 4,119 4,961 4,834 4,339   民生用 2,658 2,741 2,302 1,793 1,584 1,358 1,373 1,502 1,645 1,543   産業用 3,120 3,204 3,390 3,178 2,913 2,723 2,746 3,460 3,188 2,796   電子部品 4,420 4,522 4,792 5,009 5,820 6,700 7,000 7,612 7,360 7,214 電子工業の輸入 1,917 1,996 1,968 2,100 2,634 3,870 5,167 5,573 5,228 5,507   電子機器 813 826 798 870 1,124 1,762 2,409 2,519 2,292 2,489   民生用 114 137 158 174 241 336 431 425 418 442   産業用 699 689 640 696 883 1,426 1,978 2,095 1,875 2,047   電子部品 1,104 1,170 1,171 1,230 1,510 2,104 2,758 3,054 2,936 3,018 電子工業の純輸出 (輸出マイナス輸入) 8,281 8,471 8,516 7,880 7,683 6,911 5,952 7,000 6,966 6,046   電子機器 4,965 5,120 4,895 4,101 3,374 2,318 1,710 2,442 2,542 1,850   民生用 2,544 2,605 2,145 1,618 1,344 1,021 942 1,077 1,228 1,101   産業用 2,422 2,515 2,751 2,483 2,030 1,297 769 1,365 1,314 750   電子部品 3,316 3,352 3,621 3,779 4,310 4,597 4,242 4,558 4,425 4,196 電子工業の輸出/国内生産比率  44.32% 43.31% 49.48% 50.63% 50.19% 49.51% 47.72% 50.75% 54.22% 51.12%   電子機器 38.45% 37.93% 41.90% 40.11% 36.37% 32.34% 29.28% 33.22% 36.17% 33.70%   民生用 63.98% 61.61% 64.52% 58.46% 56.78% 55.64% 62.07% 67.00% 77.64% 75.60%   産業用 28.69% 28.54% 33.84% 34.08% 30.43% 26.76% 23.16% 27.25% 28.35% 25.81%   電子部品 55.38% 53.26% 63.04% 68.43% 71.06% 73.14% 75.83% 77.35% 80.68% 74.18% 電子計算機および 周辺端末装置生産  5,814 6,083 5,417 4,812 5,123 5,196 5,963 6,500 5,826 5,471   電子計算機本体  2,666 2,937 2,580 2,319 2,389 2,631 3,299 3,620 3,129 3,051     大型コ大型コンピュータ 1,291 1,457 1,071 830 751 515 589 579 429 263     パーソナルコンピュータ 907 923 989 1,017 1,165 1,481 2,088 2,452 2,093 2,239     その他コンピュータ 468 557 520 472 472 636 594 589 607 549   周辺端末装置 3,149 3,146 2,837 2,493 2,734 2,565 2,663 2,880 2,697 2,420   パーソナルコンピュータ 国内出荷台数(千台)     1,759 2,153 3,005 5,118 6,809 7,042 7,016 9,215   パーソナルコンピュータ 平均価格(千円/台)     562 472 388 289 307 348 298 243 注:(社)日本電子工業振興協会ウェブサイト資料(http://www.jeida.or.jp/toukei/densiko/year/、2000年5月2日閲覧)から算出 表6 ソフトウェア輸出・輸入(1994-1998年) (単位:百万円)   1994 1995 1996 1997 1998 輸出              全地域 5,491 3,931 5,679 2,812 8,752     構成比・ベーシックソフト 49.6% 62.8% 53.3% 51.1% 29.2%     構成比・アプリケーションソフト 47.7% 26.2% 41.4% 43.9% 67.5%     構成比・カスタムソフト 2.7% 11.0% 5.4% 5.0% 3.3%   米国 1,824 813 1,394 913 1,251   欧州 1,109 896 857 373 1,358   アジア 2,075 1,805 3,020 1,355 5,631   その他 483 417 408 171 512 輸入              全地域 259,474 392,576 393,540 474,913 595,165     構成比・ベーシックソフト 73.3% 60.8% 63.5% 59.1% 56.4%     構成比・アプリケーションソフト 21.8% 30.6% 28.5% 34.9% 33.4%     構成比・カスタムソフト 4.8% 8.6% 8.0% 6.0% 10.2%   米国 243,615 351,348 344,978 391,302 544,051   欧州 3,440 9,533 24,037 35,850 29,368   アジア 3,387 19,806 11,654 44,439 18,776   その他 9,032 11,889 12,871 3,322 2,970 輸出入比率(%、輸出/輸入)             全地域 2.12% 1.00% 1.44% 0.59% 1.47%   米国 0.75% 0.23% 0.40% 0.23% 0.23%   欧州 32.24% 9.40% 3.57% 1.04% 4.62%   アジア 61.26% 9.11% 25.91% 3.05% 29.99%   その他 5.35% 3.51% 3.17% 5.15% 17.24% 注:(社)日本電子工業振興協会ウェブサイト資料(http://www.jeida.or.jp/japanese/statistics/software/、2000年5月2日閲覧)から算出 表7A 米国IT産業の国内生産(付加価値)  (金額:百万米ドル/年) 産業 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997* 1998* 1999* IT産業合計 GDP中のシェア(%) 330,076 341,916 367,851 396,793 436,258 482,832 543,495 596,645 663,578 729,002 5.8 5.8 5.9 6.1 6.3 6.6 7.1 7.3 7.8 8.2   ハードウェア 102,677 103,635 109,416 117,766 133,012 154,517 171,852 197,375 210,816 229,222 コンピュータ機器・部品生産 24,660 21,032 21,794 21,175 23,994 28,369 30,188 34,475 36,819 40,390 コンピュータ機器・部品卸小売 35,456 37,622 41,367 44,552 45,951 53,597 63,906 72,945 77,942 84,199 半導体 15,733 18,374 18,217 23,584 31,481 40,632 43,335 54,602 58,588 63,861 受動型電子部品 11,543 12,695 13,467 14,322 16,003 15,280 15,055 14,574 15,317 16,619 その他 15,285 13,912 14,572 14,132 15,582 16,641 19,368 20,779 22,150 24,153 ソフトウェア・情報サービス 59,661 64,027 73,435 79,475 90,834 104,466 132,032 150,034 172,956 199,282 ソフトウェア生産・販売 27,309 30,003 34,401 37,554 42,584 48,573 60,194 NA NA NA 情報サービス 32,352 34,024 39,033 41,921 48,249 55,894 71,838 NA NA NA 通信機器(映像・音響機器を含む 21,038 20,054 23,800 23,952 27,813 30,549 32,211 34,367 36,746 38,992 通信サービス 146,700 154,200 161,200 175,600 184,600 193,300 207,400 214,869 243,060 261,507   注:Statistical Abstract of the United States、1999(CD版)、No.917 Gross Domestic Income in Information Technologies (IT) Industriesより作成   *:推定値   NA:データなし 表7B 米国IT産業の国内生産(付加価値、比率) (%) 産業 1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997* 1998* 1999* IT産業合計  100.00 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00 100.00   ハードウェア 31.11 30.31 29.74 29.68 30.49 32.00 31.62 33.08 31.77 31.44     コンピュータ機器・部品生産 7.47 6.15 5.92 5.34 5.50 5.88 5.55 5.78 5.55 5.54     コンピュータ機器・部品卸小売 10.74 11.00 11.25 11.23 10.53 11.10 11.76 12.23 11.75 11.55     半導体 4.77 5.37 4.95 5.94 7.22 8.42 7.97 9.15 8.83 8.76     受動型電子部品 3.50 3.71 3.66 3.61 3.67 3.16 2.77 2.44 2.31 2.28     その他 4.63 4.07 3.96 3.56 3.57 3.45 3.56 3.48 3.34 3.31   ソフトウェア・情報サービス 18.07 18.73 19.96 20.03 20.82 21.64 24.29 25.15 26.06 27.34     ソフトウェア生産・販売 8.27 8.77 9.35 9.46 9.76 10.06 11.08 NA NA NA     情報サービス 9.80 9.95 10.61 10.56 11.06 11.58 13.22 NA NA NA   通信機器(映像・音響機器を含む) 6.37 5.87 6.47 6.04 6.38 6.33 5.93 5.76 5.54 5.35   通信サービス 44.44 45.10 43.82 44.25 42.31 40.03 38.16 36.01 36.63 35.87   注:Statistical Abstract of the United States、1999(CD版)、No.917 Gross Domestic Income in Information Technologies (IT) Industriesより作成   *:推定値   NA:データなし 1 本稿で「ソフトウェア」と呼ぶのは、「電子デジタル技術に基づいて作動するハードウェアの利用に必要・有用なプログラム(直接あるいは間接にハードウェアを駆使するための命令の体系)」のことであり、「コンテンツ(それ自体で意味を持つ情報内容)」は除外して考えている。 2 たとえば電子商取引の発展には、そのためのすぐれたソフトウェアが作成されることが前提条件になる。 3 本稿の内容は、鬼木甫「コンピュータ・半導体:オープン化に弱かった日本」、『日本経済の効率化と回復策−−なぜ日本は米国に遅れたのか』、大蔵省財政金融研究所(現在の同財務総合政策研究所)、「日本経済の効率性と回復策に関する研究会」報告書、第3章、pp.51-94、2000年6月(http://www.osaka-gu.ac.jp/php/oniki/jpn/publication/200006a.html)の一部(とくにI節、III節)を改訂したものである。 4国内総生産は付加価値の合計であり、表3.2の数値は(付加価値ではなく)売上高であることに注意されたい。ただし、民生用・産業用電子機器は耐久消費財あるいは投資財として最終需要に入るから、本文数値は国内総生産の需要面での比率を表していると言うこともできる。 5 PCの中核となるCPU・チップセットなどの論理素子集積回路(マイクロコンピュータ)は、周知のようにインテル、AMDなど米国メーカーからの輸入に頼っている。しかしながらこれらは、半導体製品全体の中で集積度が極端に高い例外的な存在で、より単純な論理素子の生産については日本メーカーが得意としており、生産・輸出金額も大きい。 6 コンピュータは当初ソフトウェアが無い形、すなわちハードウェアだけで稼働する形で供給された。大型機時代にソフトウェアが使用されるようになったが、初期においてはハードウェアと一体化(バンドル)して供給されていた。1970年代に、当時大型コンピュータを独占的に供給していたIBM社が(米)司法省から独占禁止法違反の訴追を受け、その結果同社はソフトウェアをハードウェアから分離(アンバンドル)して販売することに同意し、基本ソフト(オペレーティングシステム、OS)とアプリケーションソフトの分離も実現された。1970年代末にPCが出現したときにもこの形式が踏襲され、当初からPC用ソフトウェアはハードウェアと分離して、またOSとアプリケーションも分離して生産・供給された。その後、ハードウェアの価格は急速に下落し、ソフトウェアに対する支出の比重が高まってきた。 7 本表は前出の表と異なり、各産業の付加価値金額を示しており、したがって合計額に重複は含まれていない。 8 本パラグラフ後段の内容は、池尾和人慶応義塾大学経済学部教授に負っている。 9 しばらく前まで、「ソフトウェア」の用語が、ハードウェアを駆使する手段としての本来のソフトウェアと、ハードウェア上に格納され利用される「コンテンツ」の双方を意味するように使われていたことからこの種の誤解が生じたのではないかと推測する。 10依田直也立正大学経営学部大学院教授・(株)東レ経営研究所元代表取締役社長の報告による。 1 Hajime Oniki 09/20/00 - 17 - oniki@alum.mit.edu www.osaka-gu.ac.jp/php/oniki/ D:\AaE0-Adm\AA-Web\oniki\download1\200009b.rtf