情報経済論(鬼木)各章概要・項目 III. 情報技術の進歩と情報産業の発展 F. 電波資源の管理 1. 電波(周波数)資源の経済学的性質   ――電波オークション制度の得失――米国の現状 a.経済資源としての「電波」   1.再生産不可能な自然資源   2.「存在量(初期賦存量)」は有限      しかし資源を使用しても存在量は減少しない   3.同一資源の共用は原則として不可能      しかし技術進歩によって「共用許容度」が増大する   4.資源使用のために「開発」が必要      新周波数使用法の開発によって使用可能な実質的資源量が増大する   5.使用権(所有権)の確立(つまり不法使用の排除)が可能   6.電波の経済的性質は「土地」と酷似する      土地について言えることは電波についても言える   7.「電波」と「土地」との性質の対応(異同)      水利権(水道権)、漁業権、空路権とも一部類似      [土地] [電波] ( 1)土地(宅地等)開発(建物不動産と共に) 電波(使用技術)開発(機器端末と共に) ( 2)土地の立体的利用   電波の「共用」(ディジタル技術による) ( 3)所在場所が価値を決定   使用場所が価値を決定 ( 4)公共用地と私有地が混在    共通使用(放送)と個別使用(移動電話) が混在 ( 5)地域ごとに排他使用   到達地域内で排他使用 (10)目に見える               目に見えない  (11)一般的な生活・生産手段   専門家によるサービス生産手段 (12)転用に「数十年」かかる   転用に「数年」かかる (13)――   同一地点での重複使用(周波数別)が可能 (14)時分割(time sharing)使用が可能 時分割使用を積極的に活用 (15)私的所有権、賃貸・リース(譲渡可能) 公的使用権/免許制度(譲渡不可能) (16)市場価格成立(ただし規制による歪みあ 市場価格なし り) b.土地使用の歴史と電波使用の「歴史」   1.土地     a.農業社会の生産手段         大化改新時の公有・私有の争い         以後私有制度で安定(公用地も「私有の一形式」)     b.工業社会の生産手段、都市の生活手段、ビジネス(office)手段、交通・商業、       サービス店舗         昭和以降、「混雑(供給不足)」が発生           実質価格の継続的上昇         戦時中から土地売買・賃貸価格の抑制(土地価格の歪み発生)         「土地価格が高くなるのは困る」         「土地バブル」の発生と崩壊   2.電波     a.マルコーニから1990年ごろまで:         「公有」と「免許による私的使用」の制度           軍事使用との関係     b.1990年代:技術進歩による利用可能性の急速な増大         本格的な混雑発生の傾向[(潜在的)実質価格の継続的上昇]         米国(1993年〜):所有権公有のまま、使用権の販売(賃貸)を開始(電波           オークション)     c.将来:         すべての個人が、あらゆる地点・時間で電波を使用するようになる     d.問題点:         電波の経済価値の「発現」の圧力、公有では手に負えない(?)           →「電波バブル」、価格変動(NTT株式の例):混乱           「既得権」が増大中         均衡価格はすぐには分からないので、早くから「市場化」をすすめるのがよい           放送と電波           種別のメディアの不可欠手段           どうあるべきか、どうなるかの論議が必要 c.電波オークションの影響   1.電波を使用する産業への新規参入の可能性が増大[競争増大、産業発展]      (既得権と政治圧力が無くなる)   2.電波の有効利用度の増大       (最も必要とする事業者・ユーザに使われる)   3.所得(収入・支出)の再配分   a.政府収入(民間支出)の増大   b.電波使用産業における収支変動       生産要素の非弾力的供給主体の収入減(E.g.,テレビタレント)       サービスの非弾力的需要主体の支出増(E.g.,コマーシャル代(化粧品メーカー))       (同産業生産物(サービス)価格は上昇。しかし全部が転嫁されるのではない)       (一部転嫁。程度は「弾力性」に依存)