[KTIB-802.1] U章 情報技術とその進歩 A.情報と情報処理の概要(コンピュータの仕事は何か) 情報内容――媒体から独立 情報の表現手段――媒体に依存 1.アナログ情報とディジタル情報――媒体による情報の表現形式の種別 a.アナログ情報:連続的に変化する物理量で表現される情報 水量、圧力、温度、速度、 音波、色彩、明暗、 電流、電圧、磁力、 図形、文字(紙上に描かれた図形としての)、映像 〈日常生活、ビジネスに直接必要な情報の形式〉 ――媒体に依存し、媒体のアナログ的性質を活かしている。 b.ディジタル情報: 数字、2進法数字(0と1)、10進法数字(0〜9)、BitとByte、 アルファベット、カタカナ、ひらがな、漢字、 光の有無、電流のプラスとマイナス、電圧の有無、 磁力のNとSなど 〈何らかの「約束」により、符号によって継続的に表現される情報  「情報」を有効に使うために人間が作りだした形式〉 ――媒体から独立(エラー発生を防止)、媒体の性質をディジタル的に活かす。 媒体使用量 AP アナログ:大 ディジタル:小 最近の技術進歩により、ディジタル方式によって媒体使用量を大幅に節約できるようになった。 c.アナログ情報のディジタル化: すべての情報はビット列の並びで表現できる。 数字・文字のディジタル表現――短いビット列 画像・映像のディジタル表現――大量のビット列 注意点: (i)アナログ情報のディジタル表現(AD変換)およびその逆(DA変換)には必ず誤差をともなう。しかしビット列を増大させることにより、誤差をいくらでも小さくすることができる。 (ii)ディジタル情報は、誤差ゼロで変換・伝達できる(ダビング)。――アナログ情報はダビングにより誤差・歪みが累積する。 (iii)ディジタル情報には、コンピュータによる複雑な処理を加えることができる。アナログ情報のままでは、コンピュータ処理は不可能である。 2.情報のディジタル表現 │情報(人間にとって意味がわかる)│情報のディジタル表現(一見意味は無い) │ │数値(数、量、金額) │数字(0〜9)による数値の表現 │ │文字、記号 │文字、記号のビット列(0と1の並び)による表│ │ │現(例:モールス信号、ASCIIコード) │ │単語、文章、新聞記事、書物など │文字の並び │ │音声、音波 │音(空気の振動)の強弱を示すビット列の並び │ │黒白画像 │明暗の度合を示すビット列の2次元の並び │ │カラー画像 │色の3要素(色調、明度、彩度)を示すビット列│ │ │の2次元の並び │ │黒白映像、動画 │各時点の映像(すなわちモノクロ画像)を示すビット│ │ │列の並びの時間的系列 │ │カラー映像(画像) │各時点のカラー映像(すなわちカラー画像)を示│ │ │すビット列の並びの時間系列 │ アナログ情報とディジタル情報の比較 │ アナログ情報 │ ディジタル情報 │ │人間の視覚・聴覚で理解しやすい(図形的│人間には分かりにくい(0と1の連続だか│ │だから) │ら) │ │コンピュータで扱うのは困難。 │コンピュータによる処理ができる。 │ │コピーをとると誤差が生ずる(ゼロックス│コピー作成時に誤りを生ずる(0→1ある│ │コピー、遠隔地へのコピーすなわち通信、│いは1→0)ことがある。しかし誤りのチ│ │アナログテープによるダビング)。一旦生│ェック、修正ができる。 │ │じた誤差は回復できない(ノイズ、雑 │ │ │音)。 │ │ 3.情報「処理」の形式 a.一般の情報処理 (人間、動物、機械) 自動車の運転 書物を読む、テレビを見る 電話をかける 機械を操作する 会計計算 (入力と出力、途中で処理)(生物における刺激と反応) ――個人の情報活動は社会システムの中の情報活動の一部(社会経済の神経網) b.ディジタル情報処理の基本形式  与えられたディジタル情報(入力)から新しいディジタル情報(出力)を作り出すこと、すなわちディジタル情報の変形・変換。 ┌────────┐ ┌─────┐ ┌────────┐ │入力(ビット列)├───┤情報処理 ├──┤出力(ビット列)│ └────────┘ └─────┘ └────────┘    情報処理の例:(必ず入力と出力がある) ┌─────────┬────────┬──────┬────────────┐ │ 項目 │ 入力 │ 処理主体 │ 出力 │ ├─────────┼────────┼──────┼────────────┤ │数値計算(かけ算)│2×3 │CPU │6 │ ├─────────┼────────┼──────┼────────────┤ │タイプライター │キー入力 │タイプライ │タイプ印字 │ │ │ │ター機 │ │ ├─────────┼────────┼──────┼────────────┤ │ワードプロセッサー│キー入力(変換キー│PC │タイプ印字(漢字を含む)│ │ │を含む) │ │ │ ├─────────┼────────┼──────┼────────────┤ │ゲーム機 │キー入力 │ゲーム │画像・音声出力 │ ├─────────┼────────┼──────┼────────────┤ │自動車 │ハンドル・アクセル│自動車 │エンジンと車輪の動き(方│ │ │・ブレーキ操作 │ │向と速度) │ ├─────────┼────────┼──────┼────────────┤ │ピアノ演奏 │楽譜 │人間 │鍵盤入力 │ ├─────────┼────────┼──────┼────────────┤ │ピアノ │鍵盤入力 │ピアノ │ピアノ音の出力 │ └─────────┴────────┴──────┴────────────┘ 例)ファクシミリ(コピー)         (人間)(アナログ紙面) (アナログ紙面)(人間)     ↓ ↑              ディジタル  →  ディジタル 例)ワープロ ┌────┐ │ディスプ│  ← (目)←   頭の中の文字 ┌──┐ │レー │ ┌──┐   ↑              →(キー)→│CPU│→├────┤→│紙 │→ 読む   紙の上の文字(原稿) └──┘ │プリンタ│ └──┘          指、手 入力 出力└────┘     (頭の中) B.大規模集積回路(LSI)による情報処理 1.演算処理装置(中央処理装置、情報処理装置、ビット処理装置)(CPU、MPU) 電圧の有無(0と1)で電流を制御するスイッチ(そろばんの玉の位置を電気的に表現する)。複数個のスイッチから「素子」を作り、多数の素子(数百個ないし数百万個)を集めて接続し、ビット列の処理・変換をおこなう。すなわち、CPUは電圧の有無(0と1)で作用するスイッチの集合体である。 単純なCPU(たとえば加算だけができる電卓、炊飯器用マイクロコンピュータ、専用CPU)は数千個あるいは数万個の素子で構成され、複雑な作業を行うCPU(たとえばパソコン用、汎用CPU)は数百万個の素子によって構成されるCPUを持つ。 a.ビット列処理の例      2×3=6 の掛算 ┌────────┬────────────┐ │ 十進法 │ ビット表現 │ ├────────┼────────────┤ │   2 │      10 │ │   3 │      11 │ │   6 │     110 │ └────────┴────────────┘ ┌────────┐ │ 乗数レジスタ │ │ (メモリ) 10 │ 10 ┌───────┐ └────────┘ ┌─────────┐ 110 │積レジスタ │ │  掛算用LSI │ │(アキュムレー│ ┌────────┐ └─────────┘ │タ)(メモリ) │ │ 被乗数レジスタ│ 11 │110 │ │ (メモリ) 11 │ └───────┘ └────────┘ b.実際に使われる演算処理装置       大規模集積回路(LSI)       多種類のビット列変換をおこなうことができる。         例:ワープロの「かな漢字変換」、多量の数値計算       ソフトウェアの使用により、さらに能率を上げている。        (階層構造、モジュール化)      ・動物の情報処理との比較:                    昆 虫(生まれたまま――遺伝情報のみ)        多階層の情報処理――  ほ乳類(3階層――遺伝情報、運動・感覚情報、後天的学習)  人 間(4階層――遺伝情報、運動・感覚情報、後天的学習、社会的知能・ネットワーク) ・電卓          機械語:ビット処理          算数語:キーを押す 2.主記憶装置 大量のビット列を記憶し、処理装置(CPU、MPU)の要求に応じて内容を転送する。多量のメモリーの任意の部分を高速で取り出すことができる(RAM)。多数のスイッチ素子を総合して作る。 素子の「発熱」問題(人間の「頭と顔は冬期はだかでも風邪をひかない」) a.主記憶装置の種類 コアメモリ(磁気記憶)(〜1970ごろまで) IC、LSI(1970−) b.DRAM(Dynamic Ram、ダイナミック・ラム):記憶維持に電力を必要とする。 Static RAM(Static Ram、スタティック・ラム):電力を必要としない。 ROM(Read-only Memory、ロム):一度記憶したら消えない。書き換えできない。 EPROM(イープロム):書き換えできるROM。 3.半導体、集積回路IC(大規模集積回路LSI)の発展 最初の素子(電源開閉スイッチ)は真空管であった。 1950年代にゲルマニウム、シリコンを主体とする電気の半導体(電気の導体と不導体の中間の物質)を使用して、高速スイッチを安価にかつ小型に実現できることが発見された。――トランジスタの発明 トランジスタの利点 ゲルマニウム・ダイオード   消費電力が低い(省エネルギー)   故障率が低い(高信頼性) 素子1個の体積が小さい(小型化、コンパクト化) 1970年代初頭に多数のトランジスタ(当初は10〜50個程度)を1枚の半導体(シリコンチップ)上に作り、それらをチップ上で回路結合した集積回路(IC)が作られた。 1975年中葉以降、写真焼付技術を応用して集積回路は小型化・高密度化され、現在においてもなお技術進歩が続いている。1997年の段階では、64メガビット(百万個の素子)を持つ指先程度の大きさの大規模集積回路(LSI)が広く使用されており、250メガビットのLSIも生産されはじめている。 コンピュータの発展は半導体の進歩によるところが大きい。過去10年の間に同一の情報処理の仕事を行うための速度は数千倍になり、価格は数百分の一になった。   処理装置と素子 ┌─────────────────────┬───────┬────────┐ │ │1単位の装置の│1単位の装置に │ │ │サイズ(mm) │入る素子数 │ ├─────────────────────┼───────┼────────┤ │真空管(1945−1950) │ 30 x 30 x 50│   1 │ ├─────────────────────┼───────┼────────┤ │半導体トランジスタ(1950−1960) │ 5 x 5 x 10│   1 │ ├─────────────────────┼───────┼────────┤ │集積回路(IC)(1960−1970) │10 x 10 x 50 │ 1000(=1K) │ │大規模集積回路(LSI)(1970−1980) │ 3 x 5 x 10 │ 16K │ │           (1980−1985) │ 3 x 5 x 10 │ 256K │ │           (1985−1989) │ 3 x 5 x 10 │ 1000K(=1M) │ │           (1989−1992) │ 3 x 5 x 10 │ 4M │ │           (1992−1995) │ 3 x 5 x 10 │ 16M │ │           (1996− ) │ 3 x 5 x 10 │ 64M │ └─────────────────────┴───────┴────────┘ C.コンピュータ・システムの概要 1.コンピュータの機能    計算のためのコンピュータ(高速電子そろばん)――当初の役割    「情報処理」のための機械――現在の役割(中国語の「電脳」)    ――すべての情報はディジタル化してビット列で表せるから 2.コンピュータの種類      専用コンピュータ(CPUのみ)      汎用コンピュータ(CPUと付属装置・プログラム)       (大きい順から) スーパー・コンピュータ(天気予報、数学計算) 汎用コンピュータ(一般事務、銀行、科学技術計算) オフィス・コンピュータ(同上、中小企業) ワークステーション(WS、設計、技術計算) パーソナルコンピュータ(PC、個人用の小型モデル)    両端分離の傾向(ダウンサイジング) 3.コンピュータの主要構成要素 CPU(中央演算処理装置)――ビット列の変換を行う 記憶媒体(ビット列のデータ及びプログラムを蓄積する) 内部記憶(DRAM、CPUと同程度のスピードで動く高速記憶) 外部記憶(磁気ディスク、磁気テープ、光ディスク、磁気カード、他) 入力装置(入力情報をビット列に変換してCPUに伝える) 出力装置(CPUからのビット列を出力情報に変換し、印刷物・映像などの形で出力する) 4.CPU CPUの素子――電圧の有無(0と1)で作用する一種のスイッチ。多数のスイッチ(数百個ないし数百万個)を接続し、必要なビット列の変換を行う。 5.記憶媒体 ビット列の変換に必要なデータあるいは作業手順(プログラム・ソフトウェア)を記憶し、必要に応じてCPUに情報を与える。またCPUからの情報を蓄積する。 6.入出力装置 キーボード、ディスプレー [KTIB-802.2] D.コンピュータの歴史 1.過去の「コンピュータ」 そろばん 手回し計算機 電動計算機 電磁リレー計算機 2.世界最初のコンピュータ a.1945年にジョン・フォン・ノイマン(アメリカ)が提唱した方式に基づく。 b.1945年ペンシルベニア大学(アメリカ)においてJ.W.モークリー及びJ.P.エッカート両教授によって作られたENIAC(エニアック)が世界最初のコンピュータ 真空管約2万本を使用 総重量約30トン、長さ約30メートル ENIACはアメリカ陸軍の弾道計算用に開発された――人間が7時間を要する計算を約3秒で実行 (ただしENIACはプログラム呼出し能力を欠き、異なる計算問題に対してはすべて配線の変更が必要であった。) (専用コンピュータ) 3.第1世代コンピュータ a.ノイマンの提唱(ノイマン型コンピュータ)――記憶装置を使用し、プログラム(計算手順)と計算用のデータを記憶させ、それをCPUが順次に内部記憶装置に呼び出して計算をおこなう(プログラム内臓型コンピュータ)。 b.2進法すなわちビット列の採用 c.1959年レミントン・ランド社が世界最初の商用コンピュータ、UNIVAC-1を作成 機械言語、アセンブラー言語 4.第2世代コンピュータ(1960年代) 真空管に代わってトランジスタを使用 トランジスタ――シリコンを素材とする半導体の性質を利用して電流の開閉をおこなうスイッチ操作を実現 CPUの小型化・軽量化を実現 真空管と比べて大幅に寿命を延した(故障素子のとりかえ作業の節約) IBM社によるIBM 708、IBM 7090 などの汎用計算機の作成 科学技術計算用のプログラム言語FORTRAN、および事務計算用言語COBOLの開発と使用(高級言語) 第2世代コンピュータは今日の汎用コンピュータの原型となった。 5.第3世代および第 3.5世代コンピュータ(1970年代) a.CPUの素子が多数集積され、小型化・軽量化が進んだ(ICの発明) b.IBM 360コンピュータ(第3世代) ――TSSの使用、最初の汎用大型コンピュータ   端末による遠隔操作(最初はタイプライタ・プリント型) c.ICの集積度をさらに高めた大規模集積回路(LSI)の出現――第 3.5世代コンピュータ d.1970年IBM 370シリーズコンピュータ 以降、LSIの集積度が逐次増大し、現在においては数百万個の素子を集積したCPUが作られている。コンピュータの能力が向上し、小型化が進んでいる。(しかし基本様式は変わらず。)(研究計算、銀行コンピュータ、汎用) e.1997年のパーソナルコンピュータ(30万円)の性能は、1980年代の汎用コンピュータ(数億円)を大幅に超える性能を持っている。 6.汎用コンピュータ(第4世代コンピュータ) 大型の集積回路(LSI)を複数個使用 a.主メモリーとして8MB(100万バイト=800万ビット)以上のLSI多数個を使用 b.TSS(時分割)により数人ないし数百人の同時使用が可能 端末・パソコンおよび通信回線を利用して遠隔地からの使用が可能 インテリジェント端末化 c.プリンター、磁気テープ、磁気ディスクなどの多数の入出力機器を同時に使用 d.第4世代の汎用計算機(メインフレイマー)は大企業の経営管理、大規模工場の作業管理、銀行のテラー業務、航空機や列車の予約・運行管理、大都市の交通制御、大学・研究所等における研究開発用としてひろく使われていた。小売価格は小型のものでも1億円以上である。 e.しかし、最近において小型機が優勢となり、大型汎用機の生産は停滞している。 7.スーパーコンピュータ a.数十個以上のCPUを同時並行稼働させ、メインフレイマーの100〜1000倍以上のデータ処理能力を実現する特別の計算機 b.アメリカのクレイ社が初めてスーパーコンピュータを開発し、世界をリードした(1976年) c.1982年以降アメリカのコントロール・データ社(CDC、最近スーパーコンピュータ市場から撤退)および日本の富士通、日本電気、日立製作所が開発に成功した。 d.大規模計算に使用、天気予報、大規模シュミレーション、大規模科学技術計算(スーパーコンピュータは日米間の貿易交渉の1項目) 8.ミニコンピュータ、オフィスコンピュータ、ワークステーション 小規模、低価格の汎用計算機 中小企業、商店、小研究所、小規模実験室等のため 価格は 150万円以上、1億円程度まで 9.パーソナルコンピュータ ごく小規模・低価格の個人用コンピュータ a.小型CPU(マイクロプロセッサー)1個、磁気ディスク、ディスプレイ、プリンターにより構成 b.オフィスにおける個人レベルの業務用、事務処理用および家庭における使用を目的とする、大学生にも普及中。 c.文書作成(ワードプロセッサーの代用)、資料整理、小規模計算、会計計算、通信(パソコン通信、インターネット)、ゲーム用などに使用 d.デスクトップ、ラップトップ、ブック型 e.価格は10万円以上、80万円程度まで パソコンは現在すでにコンピュータの主力となっている(低コスト、大衆性、大量生産の利益) 10.コンピュータの多様化 a.スーパー、汎用、オフィス、WS、PC(DB、AIなどの応用) ――両端分離(スーパー・コンピュータとPC)の傾向 b.分散化、ネットワーク化(LAN、WAN) 柔軟かつ安価に作業ができる。 通信技術との融合。 c.ソフト比重の増大 汎用コンピュータについては総コストの80%以上、PCについては約半分。 11.ソフトウェア(アプリケーション・プログラム、AP) ソフトウェアは特定の目的のためにコンピュータを動作させるための手順(命令)の集り a.初期の計算機は物理的な配線によって計算の手順を実現する回路をつくった。計算機が発達するにともない、CPUのスイッチ機能を制御する手順(プログラム)を別につくり、それをビット列データとして計算機に読み込ませて目的とする計算をおこなうようになった。 b.この方法により、同じCPU(ハードウェア)を繰り返して使うことが可能になり、また複数の目的のために使うことが可能になった。このため、情報処理能力が飛躍的に増大した(二段構えの情報処理)。 c.現段階においては複数個のレベルのソフトウェアが存在する(CPUを直接動かすための機械語から人間に近い高級言語まで)。 PC   アセンブリー言語     プログラム言語(C)  人間が直接に使う使用法(ワープロ) 標準化の問題 d.高級言語で書かれたプログラムは、別の計算機(翻訳機)によって機械語にまで順次翻訳され、計算機に読み込まれて実行される。 e.ハ−ドウェアは、大量生産が可能であるが、ソフトウェアは、目的によって内容が異なるので、人間の手で少しずつ手作りしなければならない。したがって、ソフトウェアの費用が高くなる傾向がある。ただし、一旦完成されたソフトウェアは、コピーによって大量生産できる(ゲームソフト、PC用のソフト)。 ――ソフトウェアの総費用、平均費用、限界費用 f.現在時点で汎用大型コンピュータについては、ソフトウェアとハ−ドウェアのコストの比は8対2であり、パーソナルコンピュータについては6対4程度である。 12.オペレーティング・システム(OS) a.コンピュータ(とくにPC)使用のための基本ソフト(不可欠要素) b.現在はMicrosoft社(米)が90%以上のシェアを保有(事実上の独占) c.OSの役割 (i)ハードウェア(周辺機器)の制御 (ii)ハードウェアとAPの仲介(APIの提供) (iii)ユーザ・インターフェース、デスクトップの提供、AP開始用アイコンの提供 (iv)AP間連携サービス (v)諸ユーティリティ ユーザ管理(パスワード) ファイル管理 インターネット・アクセス(メール、外部ファイルの管理・ブラウザ) 対ウィルス防御 ――基本的役割((i)と(ii))と応用・周辺の役割が混在 13.コンピュータネットワーク 通信回線(多くの場合有線、しかし無線回線も使用される)によってコンピュータと端末、あるいはコンピュータ間でデータ(ビット列)を送受信し、互いに協力して仕事を行うためのシステム a.当初は汎用大型機を多数の人間で共用するためのTSS(時分割)システム、すなわち端末と汎用機との結合として発達した。 b.最近においてはコンピュータ同士の結合を含む、より広汎なネットワークが成立している。ネットワーク用回線としては、当初は既設の電話回線が、最近では同軸ケーブル・光ファイバを使うLAN、WANが多く用いられた。 コンピュータネットワークは急速に発達した。 c.多量のデータを送信するためには、同軸ケーブル、光ファイバー、高周波無線などが使用される。 最近においては、音声・データをすべてビット列に変えて送るネットワーク(ディジタル・ネットワーク)が普及しつつある。 d.パソコン通信 LAN、MAN、WAN(インターネット) コンピュータ・ウィルスの問題 14.インターネット ネットワークの「ネットワーク」 ――標準手法(TCP/IP)により世界各国のネットワークを結合した巨大ネットワーク ――バケツリレー方式による情報伝達(パケット通信) a.Eメール(安価な通信費) b.WWWによる情報入手 (ブラウザ・閲覧用ソフト使用)0 ――情報入手が容易になった(世界のどこからでも瞬時に入手) ――ビジネス・生活様式を一変させる可能性がある。 c.米国が世界の「インターネット・ハブ」になった ――「創業者」特権 (コンピュータ・ネットワーク)    ┌──────────┐          ┌──────────┐   │大型コンピュータ ├──────────┤ワークステーション │ └────┬─────┘ └────┬─────┘ │ │ │ │ │ │ │ │ ┌──┐ ┌┴─┐ ┌──┐ │ │端末│ │端末│ │端末│ ┌────┴─────┐ └──┘ │(PC)│ │(PC)│ │大型コンピュータ │ └──┘ └──┘ └──────────┘  ┌───────┐ (LAN) │外部接続ゲート│ イーサネット └┬──────┘ ● │● ───┬────────┬──────┬───────┬────┴─┬───── │ │ │ │ │ ┌──┴──┐ ┌─┴┐ ┌─┴┐ ┌─┴┐ ┌─┴┐ │サーバPC│ │PC│ │PC│ │PC│ │PC│ └─────┘ └──┘ └──┘ └──┘ └──┘ (インターネットとそのユーザ) ┌───┐ ┌───┐ │ユーザ│ │ユーザ│ └───┘ └───┘ ┌────┐ ┌────┐ │LAN │ │LAN │ └────┘ └────┘ ┌───────────┐ │ │ │インターネット │ │ │ └───────────┘ ┌────┐ ┌──────┐ │ユーザ │ │パソコン通信│ └────┘ └──────┘ ┌────────┐ ┌────┐ │ISP: インター │ │ユーザ │ │ネット・サービス│ │ │ │・プロバイダー │ └────┘ └────────┘ ┌───┐ │ユーザ│ └───┘ (インターネットの「内部」) ┌───┐ │LAN│ ┌─────────┐ ┌─────────┐ └───┘ │基幹 │ │基幹 │ │バックボーン(日)├────────┤バックボーン(米)│ └─┬────┬──┘ └─┬─────┬─┘ │ │ │ │ ┌─┴─┐┌─┴─┐ ┌─┴─┐ ┌─┴─┐ │LAN││LAN│ │LAN├─┤LAN│ └───┘└───┘ └─┬─┘ └───┘ │ ┌───┐ ┌─┴─┐ │LAN│ │LAN│ └───┘ └───┘ ――インターネットは、基幹バックボーンとユーザのLAN(企業・学校など)が一体となって諸データ(メール、ファイルなど)を宛先に届ける(バケツリレー方式)。 (WWWの仕組み) ┌────┐ │WWW │ │サーバ1│ ┌────┐ ├────┤ │WWW │ │リンク │ │サーバ2│ └────┘ ├────┤ │リンク │ └────┘ ┌───────┐ ┌────┐ │インターネット│ │WWW │ │ │ │サーバ3│ ├───────┤ │ │ │LAN │ ├────┤ └───────┘ │リンク │ └────┘ ┌───┐ │ユーザ│ └───┘ リンク:関連情報の所在(サーバID)を持っている。 [KTIB-802.3] E.パーソナル・コンピュータ(パソコン、PC)の構造と機能 1.まえがき  本節では、本文の理解を容易にするため、パソコンの構造や機能について、簡単に解説する。  多くのユーザにとって、パソコン・ハードウェアはまとまった単体であり、ソフトウェア(プログラム)をこれに付け加えればさまざまの仕事に使用できる。しかしながら、前号第Y節で述べたように、パソコンは、ハードウェアもソフトウェアも「部品の連合体」であり、まとまった単一の製品ではない。それぞれの部品メーカーは、部品間のインターフェースや知的財産権による保護に制約され、またそれを利用しながら、パソコンというシステムの中ですぐれた製品を供給しようと努力している。すなわち、パソコンは多数の部品が機械的、論理的、また階層構造的に組み合わされて機能するシステムであり、パソコン産業を経済的、制度的、法律的な側面から考察するときには、システム構成要素の相互関連が重要である。  通常の経済分析においては、多数の部品から構成される製品でもこれを一括して取り扱うだけで済み、本補論に述べるような製品の内部構造に関する知識は必要とならない。しかし、前号までの説明で明らかになったように、パソコン産業の場合には、製品の構成や部品間の関連を知らなければ、産業構造や企業間競争の分析はできない。(電気通信、LANなどのネットワーク産業についても同じである。)本補論においては、本文の議論に必要な限りにおいて、パソコンの内部構成やそれぞれの構成要素の相互関連を解説する。パソコンの構成や機能について漠然とした知識だけを持っておられる読者は、本補論によって、本文の議論をより正確に理解されるよう希望する。 2.ハードウェアの「水平」構造 a.内部装置と外部装置――パソコン内部における情報移動  図1は、パソコン・ハードウェアの主要な構成要素を分解して平面上に置き並べてみたものである。図の中央の水平点線から上の部分、すなわちCPU、メモリ、レジスタ、BIOSの入ったROM、そしてこれらを接続するバスは内部装置と呼ばれ、通常パソコンの箱(パソコン本体)の中に入っている。これに対し、点線より下に描かれた要素は周辺機器と呼ばれ、本体の外側にある(HDDやFDDは箱の内部に入っていることもある)。  パソコンの仕事とは、CPUが決められた手順にしたがってメモリ中に準備された命令をレジスタに入れて実行することである。1つの命令の実行とは、その命令の手順にしたがって、同じくメモリに保存されているデータをレジスタ上で加工することである。また、CPUはメモリとの間の命令・データの授受を一時中止し、周辺機器との間でデータを移動させることがある。このような命令実行が多数回高速に繰り返されてパソコン全体の仕事が進行する。図1に示されているように、CPUとメモリ・周辺機器との間の命令・データの移動は、「バス」と呼ばれるパソコン内部の「情報伝達ハイウェイ」を通じておこなわれる。(乗物のバスと同じく、大量のデータを一度に運ぶことができる情報の通路である。)  パソコンの仕事がたとえば文書作成であるときには、まずHDDあるいはFDDからワードプロセッサー・プログラムをメモリに読み込み、次に読み込んだプログラムから前述のように命令を1つ1つレジスタに取り出して作業をおこなう。途中でキーボードから文字が打ち込まれれば、それをまずメモリの指示された位置に保存し、同時にディスプレーに表示する。この種の作業を多数回くり返して文書の作成・編集という仕事が進行する。最後に、メモリ中の文書をHDDあるいはFDDに保存して作業が完了する。 b.BIOSとバス  図1が示すように、「バス」は内部装置間の情報の通路である。本体と周辺機器とのデータの移動においては、BIOS(基本入出力システム)というプログラムにしたがい、内部装置と周辺機器の間でデータが受け渡される。したがって、周辺機器を接続するためのバス(入出力ポートを含む)と、バスを通るデータを制御するBIOSは、いわばパソコン中の情報交通の要所に位置しており、情報移動の急所を押さえている。 3.ハードウェア・ソフトウェアの全体構造  次に図2は、ハードウェア・ソフトウェアの双方にわたるパーソナル・コンピュータの構成要素を、図1よりも機能本位に(論理的に)並べたものである。パソコンの仕事は、ハードウェアがソフトウェアの指示にしたがうことによって進行する。図2では、作業の実際の担当者であるハードウェアが最下層に並べられている。このうち右側の2つ、すなわちCPUとメモリは、前述のように内部装置であり、左側は周辺機器である。これらのハードウェアは、図1で説明したように、バス・レジスタを通してデータを移動させる。周辺機器の場合には、BIOSによってデータ移動が制御されている。  ハードウェアの上部には、2層のソフトウェア、すなわちオペレーティング・システム(OS)と、アプリケーション・プログラム(AP)が示されている。OSもAPもそれぞれプログラムであり、物理的な製品ではない。これらは、実際にはメモリ中に電気的に記憶され、あるいはHDDやFDDなどの記憶装置に磁気記号として記憶される。ハードウェアは記憶装置に蓄えられているOSやAPの命令を読み出し、その指示にしたがって仕事をおこなうので、ハードウェアはあたかもOSやAPに従属し、その命令の下に働いているように見える。図2の上下関係は、この事実を強調したものである。 4.オペレーティング・システム(OS)  ソフトウェアは、OSとAPの2層に分かれる。まず、OSはハードウェアと直接に信号の授受をおこない、ハードウェアを制御する。ただし、周辺機器については、それぞれの機器の個性が強いので、BIOSの指示にしたがってデータ入出力を実行する。このようにOSは、一方では内部装置および周辺機器というハードウェアを制御するが、他方においては、その上部に位置するアプリケーション・プログラム(AP)の制御を受ける。すなわち、OSはAPの注文通りにハードウェアを動かすという仕事を担当する。この場合OSは、どのAPについても同一の仕方で仕事の注文(命令)を受け、かつハードウェアの仕事の結果や現状について同一の方式でAPに情報を返す。すなわちOSは、APに対し、標準化されたインターフェースをもって情報授受をおこなうのである。OSの役割は、(メーカーや製造年月によって)異なるハードウェアの特性を理解し、それらの差異を自己の中に吸収して、アプリケーション・プログラム(AP)に対してハードウェアの個性を見せず、APが標準化された約束のもとに情報授受をおこなうことを可能にする(すなわち、ハードウェア制御という面倒な仕事を肩代わりする)ことである。このように、パソコンの仕事はすべてOSを通して実行されるので、OSも(バス・BIOSと同様に)情報処理の急所を押さえている。 5.アプリケーション・プログラム  アプリケーション・プログラム(AP)は、パソコン上で仕事の目的に応じて具体的な作業を指令する。パソコンは情報処理のための汎用機器であるから、情報(文字や数字、図形やその他の概念など)を取り扱う仕事は、原則としてすべてパソコン上で実行することができる。それぞれの仕事の目的と手順に応じてAPが作られている。実際にわれわれは多種類の仕事を必要とするので、APの種類もそれに応じて多様である。また、同一種類の仕事(たとえば文書作成)についてもさまざまな工夫の余地があり、APの生産者(ソフトハウス)は、自己のアイディアを十分に使って優れたAPを供給するように努めている。  前述のように、実際に仕事を担当するハードウェアはすべてOSが面倒を見てくれるので、APの側では、ハードウェア制御に関することは一切忘れていてもよい。APの作成者は、OSに対して、たとえば「キーボードから打ち込まれた文字をメモリに移し、同時にディスプレーに表示せよ」「メモリ中の一連のデータ(たとえばひとまとまりの文章)をHDDに移動して保存せよ」などと命令することができる。オペレーティング・システムがハードウェアとAPの間に介在することにより、APの作成という仕事から、本来の仕事の内容に関係のないハードウェア固有の面倒な作業を省略することができるのである。  一般に、複雑に搦み合ったシステムを仕事の手順にしたがって論理的な構成要因に分離し、それぞれの要因に固有の仕事と、要因間の相互関連(インターフェース)に関する仕事を明確に分離して全体の能率を上げる仕方を「モジュール化」と呼ぶ。モジュール化はAPだけでなく、ハードウェアのメーカーにも利益をもたらす。たとえば、キーボードのメーカーは、実際にAPからどのような命令が来るかを一切考えることなく、BIOSから与えられる指示を実行する製品を作ればよい。パソコン全体の仕事のことは忘れて、BIOSの命令を忠実に実行し、使い勝手のよい、故障の起きないキーボードの生産に専念することができるのである。すなわち、モジュール化は、「分業の利益」を複雑なシステムについて実現するための手段である。 6.「パソコン産業を制するにはBIOSとバスを制せよ(?)」  図2を全体として見れば、最下段に並んでいるハードウェアと、最上段に並んでいる各種のAPが、OS、バス、BIOSによって結合されていることが分かる。したがって、パソコンの生産(ハードウェアとソフトウェアを含む)とその使用については、OS、バス、BIOSが決定的な重要性を持つことになる。またCPUはパソコンの頭脳部分であり、パソコンの仕事にとって最も大切である。すなわち、OS、バス、BIOS、CPUは、パソコンの仕様の決定要因である。これらの要素の仕様は、それぞれ知的財産権によって保護されている。  後に説明するように、パソコン産業の発展過程において、CPUとOSについては、それぞれインテルとマイクロソフトの独占供給体制が成立し、この体制自体への挑戦はほとんどなされなかった。これに対し、BIOSとバス様式の設定は、CPUやOSの新規設計よりもはるかに低いコストで実行できるので、パソコン仕様の主導権(パソコンに不可欠の要素について標準仕様を確立し、同時にこれについて自己の知的財産権を設定すること)をめぐる争いは、後に述べるようにBIOSとバスについておこなわれたのである。