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はじめに (中川 徹、2014年 8月 6日):
このページは、いろいろな問題を創造的に解決していくための心構えや考え方・諸方法、具体的な事例などを記述し、学生の皆さんと一般社会人の皆さんに読んでいただけるようにしたいと思っています。
そのようなことを発信する土台になっているのは、(もともとは技術分野のためにロシアで開発された)TRIZ(トリーズ)とそれから発展してきた「創造的な問題解決の方法」です。ただしこのページでは、技術や企業活動などの知識・経験をあまり前提としないで、もっと身近なこと、一般的なことを扱う予定です。学生の皆さんは、そのような前提知識がまだ少ないですし、一般の社会の皆さんは関心のある領域がもっと広くて異なっているからです。
(なお、本当は、社会人としての高度な問題、すなわち、(技術知識を主としない)社会的な重要な問題、ビジネスや人間関係などに関わる問題を、別の入口ページに独立できるとよいのですが、関連する記事や私自身の準備が十分でないので、ここに学生の皆さんと同じ入口ページにしています。それでも、「実践者の入口ページ]には社会・ビジネスに関わる高度な記事も掲載していますので、参考にしてください。)
本ページの構成の手がかりとして、いままでに『TRIZホームページ』に掲載してきました多数の記事のうち、本ページの趣旨に合い、推奨されるものを、とりあえず以下に列挙します。これらの他にも関連する記事は沢山ありますので、他の「入口ページ」の記事や、各記事内のリンクなどを参考にして参照ください。もちろん、教育をされる方にも参考になるでしょう。本ページの構成は、逐次改良していきます。
論文、解説、講義ノート、実践報告、適用事例、関連情報、質問、意見、などいろいろ、ご寄稿ください。
注: 各記事の性格を5色で区別しています。 (旧 or 詳細)。
なお、印は、この入口ページとして書き下ろした記事、特に推奨される記事です。
記事の末尾にあるのがリンクのマークです。日本語HTMLページ、日本語PDFページ、 英文ページ。
末尾の( )内の年月日は、そのページの作成掲載日、および更新掲載日です。印は、1年以内の新しい記事です。
学生と社会人の皆さんのためのページ
この入口ページの趣旨と内容
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(1) 問題に取り組む必要性と意義 (2) 創造性とひらめき (3) 創造的な問題解決の諸方法 (4) 問題とニーズをとらえる (5) 問題を分析し、理想を考える (6) 問題解決のアイデアを得て、実現を図る (7) いろいろな適用事例 (8) 身近な問題、社会の問題への取り組み (9) 学びの場と情報源 (10) その他 |
(D) 創造的な問題解決のための教育はどのように行われているのか? (E) 創造的な問題解決の方法の教科書、講義資料、解説、講演資料などがあるか? (G) 創造的問題解決のより高度な適用事例・成果事例はどんなものか? (H) 社会のさまざまな問題に対して、創造的な問題解決の方法はどのように展開しているのか? (I) 社会の問題に対する適用事例はあるか 社会問題 |
本ページの先頭 | A. 心構え | B.創造的問題解決 | C.方法 | D. 教育 | E. 教科書など | F. 学生の事例 | G.高度な適用事例 | H.社会の問題に | I. 社会の適用事例 | J.その他、参考 | K. 本サイトの活用法 | 英文ページ |
学生と社会人の皆さんに: 本ホームページの掲載記事から精選したものです。
(注: 各記事は、上記の(1)〜(10)に関連したことをいろいろな角度からいろいろなまとめ方で述べています。
以下には、上記とは少し違った分類で整理しています。
また、ほとんどすべての記事は、英訳あるいは英文での紹介をしています(各記事内のリンクを参照ください)。)
(A) どんな心構えが、なぜ必要なのか?
講義資料: 創造的な問題解決の思考法 -- 大学生活で何をしようとするのか? (中川 徹)(2000. 6.19)
大阪学院大学で新入生に5月に行った特別講義 3コマ(全学部対象、共通選択科目)。高校時代とは違って、自分の将来を自分の頭で考えていくことの大事さ、心構えなどを話しています。
教育実践報告: 1年次ゼミナールでショーン・コヴィー著『7つの習慣 ティーンズ』を学ぶ (中川 徹) (2010. 1. 3)
大阪学院大学の情報学部の1年生後期のゼミ (選択必修)の記録。「読み、書き、考え、発表する訓練」が全学統一テーマ。「7つの習慣」は、主体的に生きる人生のための心構えを教える。ゼミの説明、本の説明、そして添削によるレポート指導を説明している。この「7つの習慣」を学生も社会人もぜひ身につけるとよいと思います。
教育実践報告: 1年次ゼミナールでショーン・コヴィー著『7つの習慣 ティーンズ』を学ぶ (その4) : 学生レポート「ゼミで、学んだこと、考えたこと」とコメントの精選集 (2011年度) (学生9名と中川 徹) (2012. 3. 6)
大阪学院大学情報学部でのゼミの実践記録。前項の報告の続編の最終回。学生レポートを指導して、書き方の指導から、記述内容と考え方(人生への取り組み)にまで踏み込んでいる。
インタビュー: 初めての国際会議で英語で発表して (佐藤彩乃/中川 徹) (2011.12. 5)
2011年にアイルランドのダブリンで行われた ETRIA TFC 国際会議で、芝浦工業大学修士2年の佐藤彩乃さんが、英語で堂々としたよい発表をされた。そこで、会場でいろいろ話して感想などを聞いたものを、記事にしています。英語が必要だと実感した高校2年のときの体験、その後の学習、今回の学会発表をして感じたことなど、素直に話してくれていて、「心構え」という点で大いに参考になります。 --[本ページの最後尾に分類していたのですが、たまたま読み直してこの最初の項目に移動しました。(中川、2015. 2.10)]
(B) 創造的に問題を解決するとはどんなことか?
創造的な問題解決・課題達成のための一般的な方法論を確立しよう (中川 徹) (2013. 6.22)
第3回知識共創フォーラムでの発表。TRIZ (発明問題解決の理論)から出発して、USIT (統合的構造化思考法)に進み、さらにもっと一般的に、創造的な問題解決・課題達成のための方法を作り適用することを提唱している。考え、問題解決をするための方法として、広い考え方を提唱している。
創造的な問題解決・課題達成の一般的な方法論 (CrePS)−そのビジョン (中川 徹) (2013.10. 3; 10.25)
2013年10月末の日本創造学会、および ETRIA TFC2013での発表。表題のような一般的な方法論をCrePS(クレプス)と命名し、そのビジョンを述べている。現在の私(中川)の考えを最も大きなスコープで述べたもの。
(C) 創造的な問題解決のためにはどんな方法があるのか?
解説連載: 技術革新のための創造的問題解決技法!! TRIZ (中川 徹) (開始: 2006. 1.13; 最新: 2006.11. 1)
第1回: TRIZとは何か FAQ (中川 徹) (2006. 1.13)産官学連携のための月刊誌『InterLab』誌に、2006年〜2007年にわたって全22回の連載をした。
その連載の第1回で、「TRIZとは何か?」について、インタビュ形式で、基本的なことを解説したもの。最初に読んで全体を俯瞰するのによい。解説: 技術革新のための問題解決技法TRIZ/USIT 〜その思想・方法・知識ベース・ソフトツール 〜 (中川 徹) (2004. 3. 3)
知識創造支援システムシンポジウムでの発表。TRIZおよびそれを簡単にしたUSITについて、その全体像を初めての人にも分かるように解説したもの。私が1997年に初めてTIRZに接して、その約7年後に話したときの、最新のTRIZ紹介、私自身が消化したTRIZ紹介です。(これより前にもいくつものTRIZ紹介を書いていますが、現在の観点から見て、まずこの紹介を読んでいただくとよいかと思います。)(1時間の講演ですが、文章と図だけを載せていて、スライドを掲載していないことに気がつきました。後日スライドも掲載するようにしましょう。 〈2014. 9. 3))
技術革新のための問題解決技法TRIZ/USIT 〜その思想・方法・知識ベース・ソフトツール 〜 (中川 徹) (2005.11.30)
上記の発表を、正式論文として日本創造学会論文誌 2004年号に掲載したもの。
USIT 事例&解説: 額縁掛けの問題への解説 (中川 徹, Sickafus) (2001. 7.31; 8.23)
「額縁掛けの問題」は、Sickafus博士がそのUSIT教科書の一つの章(付録)で詳しく記述したものである。「二つのフックと一本の紐を使って、額縁を壁の釘に掛ける野が通常のやり方であるが、掛けてから後に傾くことがよくある。額縁が傾かない/傾きにくいように方法を改良せよ。」中川はこの例題を40枚のスライドで表現し、自分なりの観点を加えて、自分のUSITセミナーで説明した。この説明文をSickafus 博士に送ったところ、同博士からコメントが得られ、さらに中川の応答を加え、一連の議論として、『TRIZホームページ』に掲載した。この教科書問題は、USITにとっては、教育的にも技法研究のためにも重要なものになった。 ==> USIT 適用事例集 事例4 (中川 徹) (2015. 5.25)
構造化された問題解決方法論(ASIT、TRIZ、USIT その他) を基礎づける 一つの簡単な理論 (E. Sickafus; 訳 川面恵司、中川 徹) 和訳論文、英文論文 (2007. 6.24)
USITの開発者である Ed Sickafus (シカフス)博士の、日本TRIZシンポジウムでの基調講演の論文。ASITはTRIZをずっとっ簡略化したもので、USITの先駆をなす。TRIZやUSITなどの問題解決の方法論は、人に伝えるためにきちんと構造化して説明しているが、それらを習熟した人が実際に使うときには、もっともっと自由に、意識と無意識とを行き来して問題解決が行われるのだ、という。物理学者として、問題解決の方法を研究開発した博士の深い洞察を学べる貴重な講演。和訳のスライド、論文、中川の紹介を掲載している。
TRIZとは:その考え方と主な技法・ツール (澤口 学)(2013. 3.22)
日本規格協会の機関誌『標準化と品質管理』の2013年2月号のTRIZ特別企画の第2記事。TRIZの基本部分(古典的TRIZ とその更新)について解説している。特に、(1) 技術的矛盾の解決アプローチ(技術矛盾マトリックスと40の発明原理)、 (2) 物理的矛盾の解決アプローチ(物理的矛盾と分離の法則)、(3) 技術システム進化のパターン、 (4) 技術進化のポテンシャルレーダーチャート、 (5) マルチスクリーン法について述べる。各方法で知識ベースのごく簡単な説明(簡単な事例の列挙)をしているのが、初めての人には分かりやすいであろう。
ソフト「札寄せ用具」と ウェブサイト「第一考舎」の紹介 (片平彰裕) (2015. 1. 18)
このソフトは片平さんの自作で、Excelシート上で、情報・アイデアを記述した「札」を自由自在に動かし、連結の線を描き、囲んでグループ化できるものです。この図をPowerPointやWordで扱うこともでき、また、ワンクリックで図表示と通常のExcel文書との間の変換ができます。個人でのアイデア出しや考察に使え、会議でも使えます。非常に簡便で有能なソフトです。
さらに、片平さん自作のウェブサイト「第一考舎」では、考えを作り出す(「考作」)過程全体を考察し、そこで使われる/使うとよい諸方法を分かりやすく丁寧に説明しています。特徴的なのが、「札」をいろいろに動かして、視覚化して考える「札寄せ法」です。創造的な問題解決の方法論:TRIZ とその発展 〜技術革新のための科学的方法〜 (中川 徹) (2015. 4.12)
鳥取大学大学院(医学専攻科)での90分の講義スライドです。「発明の方法」、「研究の進め方」、あるいは「問題を創造的に解決するための考える方法」について、きちんと書いています。特別な予備知識は要りません。(1)まず、現在の科学技術が前提にしている考え方(「抽象化の4箱方式」)に限界があること、従来の「創造性の諸技法」が部分部分だけを見て全体を見失っていることを論じています。そして、(2)新しいアプローチとして、旧ソ連で開発されたTRIZ(トリーズ)、(3)それに影響を受けて米国で開発され日本で発展させたUSIT(ユーシット)を説明しています。(4)それらを土台にして、「6箱方式」という考え方が生まれ、それが「創造的な問題解決の一般的な方法論」(略称CrePS(クレプス))を構成したことを述べています。-- 私自身の18年間の理解の進展を、これらの4段階できちんと表現したものです。スライド57枚。
USITマニュアル (「6箱方式」による創造的な問題解決の一貫プロセス)(中川 徹) (2015. 5.25)
USITは、米国でEd SIckafusが開発し(1995年)、その後日本でTRIZと再統合しつつ発展させてきた「創造的な問題解決のための簡潔な一貫プロセス」です。現在では、 「創造的な問題解決・課題達成の一般的な方法論 (略称:CrePS)」を実践する、「6箱方式」による簡潔で一般的なプロセスと位置付けられています。今回「USITマニュアル」を作成し、実行プロセスに沿って、その使い方・考え方を説明しました(スライド形式、31枚)。また、既発表の多数の問題解決事例をこのプロセスに沿って記述し直し、「USIT適用事例集」を作りました。さらに、「USITオペレータ(アイデア生成法)の体系」と「USIT主要参考文献リスト」とをまとめた「USITプロセスの体系的資料」のページも作ってあります。
夢想ヒューリスティックスを用いた潜在意識問題解決 (Ed Sickafus、訳:高原利生・古謝秀明・中川 徹) (2015.7.29)
Ed Sickafus 博士はUSIT法の開発者ですが、この10年ほど、創造的なアイデアを得るための私たちの頭脳の働きを理解し活用することに焦点を置いてきています。昨年発表の本論文では、意識的な考察と、潜在意識による脳内処理との関係を考察しています。「あ、そうだ!」というアイデアは、すべて潜在意識からもたらされる。発明をするのは意識ではなく、潜在意識の方だ、といいます。そこで、意識から、潜在意識に適切に情報を渡すことが大事であるとし、わざと曖昧にした(概念を広くした)意識的考察により、潜在意識による発想を豊かにしようと提案します。著者はそれを「Hazy Heuristics」と呼びました。Hazyとは、曖昧な、ぼんやりしたという意味です。和訳では、「曖昧」には否定的なニュアンスがあるので避け、「直感」ではあまりにも短時間での処理のイメージがあるので避けて、「夢想」という語を選びました。
われわれが問題解決の方法を学び・使えるようにするために、意識的に「構造化、論理化」した方法を作ってきた。それは人間同士のコミュニケーション、文化の形成と教育のためだ。各個人がそのような方法を一旦十分に習得すれば、自分の中では、もっと潜在意識を活用したこのようなショートカットを使ってよい(使うのがよい)、と薦めています。(古来から言われている、「形に入って、形から離れよ」という達人の境地です。)出版案内: 創造的な問題解決のための一般的な方法論CrePS: TRIZを越えて: なに?なぜ?いかに?(中川 徹) (2016. 6.20)
米国でのTRIZ国際会議TRIZCON2016での発表と論文を英文・和文の両方で掲載しています。私がずっと提唱してきています「CrePS (創造的な問題解決の一般的方法論)」について、大局的な観点から、3つの基本的な質問に答えているものです。
(1) 何を?: CrePSは、創造的な問題解決/課題達成に関わる従来の諸方法を統合する一般的な方法論で、技術/非技術の広範な分野に適用するものです。「6箱方式」を新しい基本枠組みにします。
(2) なぜ?: 従来の多数の関連諸方法 (TRIZを含む) は、基本枠組みを持たず、ばらばらで、相互に競合し、社会のニーズに応えられませんでした。そこで、社会のニーズに応えて、さまざまな分野とテーマでの問題解決のための方法をつくり、そのような能力を育て、多くの実地の問題解決を行えるようにします。
(3) どのようにして?: 「6箱方式」とそれを実践する簡潔な一貫プロセス(USIT) をすでに確立しており、その原理と有効性は実証済みです。そこで、既存の諸方法の研究者や実践者と協力して、諸方法の「6箱方式」への位置づけを考え、一つ一つ統合することを試みます。6箱方式では、「現実の世界」と「思考の世界」を区別して考え、「現実の世界」で問題を定義し、「思考の世界」でその問題の解決策を考え出し、「現実の世界」に戻ってその解決策を実現する、というやり方をします。USITは「思考の世界」での活動、すなわち、問題を分析して解決策を考え出す過程をすでにずいぶん一般的に確立しています。そこで今後は、「現実の世界」での問題定義と解決策実現の過程について、従来の諸方法をその適用分野とテーマについて分類・類型化し、全体の枠組みに位置づけていくことが必要です。フォーラム: 学術界における「創造的な研究の方法」とは? 「創造的な問題解決の一般的方法論(CrePS)」は寄与しうるのか?(問題提起: 某先生、応答:中川 徹) (2016. 7.31)
最先端の創造的な学術研究において、その一般的なかつ汎用的な研究方法、「創造的な研究を行う方法」があるのか?が問題です。学術界で沢山の研究が行われ、創造性技法やTRIZなどとは関係なく、多くの成果を挙げている。しかしそこでは、「創造的な研究を行う方法」といったものの共通理解は知られていない、といい、CrePSが果たして意味があるのか?と問われています。
--- 学術界にTRIZなどがほとんど浸透していないことは残念なことです。ただ、学術界が「創造的な研究を行う方法」の一般的な理解を作れていないというのは、不思議なことです。学術界で何が必要かと考えると、6つの視野があります。
(a) 世界の諸研究分野、研究テーマの大きな将来の方向を考える 。
(b) 一つの研究分野で、どのような研究テーマを選択するべきかを考える。
(c) ある研究テーマで、何を本当に解明するべきか、解決するべきかを考える。
(d) ある研究テーマで、解明・解決を困難にしているのが何かを考え、それを打開することを考える。
(e) ある研究テーマの個別の課題において、研究や実験の方法、実験装置の設計などのやり方を考える。
(f) さらに細部の問題・課題において、それを個別に解決する。
CrePSの6箱方式は、この(d)(e)(f)に適した表現になっており、(a)(b)(c)でも少し表現を変えて対応できると、私は考えます。今後議論するべき、大事な大きなテーマです。
(D) 創造的な問題解決のための教育はどのように行われているのか?
「創造的な問題解決の思考法」の教育実践 (中川 徹)(2007. 1.11)
大阪学院大学の紀要の一つ『人文自然論叢』の 2007年3月号に掲載した詳しい報告。中川の大学での授業やゼミのやり方を書いている。教える側の人たちに参考になると思う。
学生プロジェクト教育への CAE・実製作と連動した TRIZの応用 (石濱正男) (2006.11.29)
神奈川工科大学での石濱教授の授業・演習およびプロジェクト活動の実践報告、成果報告。学生による自動車のエンジンの改良の試みなどが紹介されている。
講演: 創造的な能力は どのようにして育て発展させるとよいのか?(中川 徹)(2012.12.12)
マレーシア TRIZ 学会の基調講演に招かれ、さらにその後の パネル討論で表記のような課題が出された。それに答えるために作った4枚のスライドとその簡単な解説。「創造的な能力」というときに、ときとして「人と違う発想」「奇抜な発想」をすることが(創造性の専門家たちの間で)強調され過ぎることがあると、 私は思う。もっとしっかりした、広範囲で深い考察、忍耐強く考え改良していく面を、わたしは強調した。
講演スライド: 教育とTRIZ:新しい展望のために (中川 徹) (日本TRIZシンポ2010) (2010.12.30)
創造的な問題解決の方法論TRIZ/USIT: 研究・教育・普及活動のまとめ (中川 徹) (2012. 3.13) (2012. 3.23)
私が大阪学院大学の情報学部を定年退職するときに、14年間の活動(大学での研究と教育、および大学外での研究と普及の活動)をまとめて、『大阪学院大学 人文自然論叢』に掲載した報告・論文。「創造的な問題解決の方法論」というのが一貫したテーマであり、研究と教育と社会普及の活動を一体として行うことができたのは、実に幸せなことであり、大学はじめ沢山の人たちに感謝しています。
「レポートの作り方・書き方」研修セミナーを指導して (中川 徹)(2016.11.28)
和歌山県看護協会の認定看護管理者制度ファーストレベルコース(全体で150時間)の一部として行った研修です。50人の看護職の人たちに2日間(計12時間)の研修を指導しました。講義テキストは、「レポートの作り方・書き方 −内容の準備、構成、そして文章の心得−」(2010.10.10)と、「創造的な問題解決の考え方」のスライドです。グループ演習では、まず、学生レポートを使って、文章表現を推敲する演習をしました。次に、受講者が提出した事前レポート「所属する組織の現状と課題」を使い、5編ずつ、3回にわたって(計15編)演習しました。レポートを読み取り、グループで議論しながら、文章表現の検討、段落など構成のしかたの検討、問題の捉え方と解決への方向付けの検討、そして最後には、レポートの著者になり代わって問題提起とその解決のための(模擬)所内プレゼンテーションをしました。年1回で7年の蓄積があり、講義と演習が好評をいただきました。
(E) 創造的な問題解決の方法の教科書、講義資料、解説、講演資料などがあるか?
講義ノート: 創造的な問題解決の方法論 (中川 徹) (全14回) (2012. 1.22)
大阪学院大学情報学部で、2年生の後期に行ってきた90分授業全14回の講義ノート(配布資料)です。2年次後期配当の正規科目 (選択) 「科学情報方法論」という名称の授業で、2001年度に開始し(注:初回の講義資料は別に掲載しました)、2011年度まで続けましたが、ここに掲載したのは2010年度のものです。「創造的な問題解決の方法論」という大きなテーマで話し、その中でTRIZやUSITの方法や事例の中身を話し、最後にUSITとTRIZについてまとめて話しています。全体像をきちんと話した講義ノートです。全体の目次(詳細)あり。各講義はPDFファイル。
(2) 科学・技術の研究と学習の方法:「観察から」、「原理から」、「問題から」のアプローチ
(5) 「システム」とは:構成要素とその関係, 階層性, 技術システム
(6) 問題の分析(1) 問題 (困ること) の「原因」をつきとめる
(7) --- [番外編] レポート (論文) の作り方・書き方
(8) 問題の分析(2) 技術システムの機能と属性の分析 (前回の補足 )
(9) 問題の分析(3) 空間と時間の特性; 理想解からイメージする (前回の補足 )
(11) 解決策の生成法 (2) 「壁」を破る方法 (ブレイクスルー)
解説連載: USIT入門: 創造的な問題解決のやさしい方法 (中川 徹) (全5回、完結) (2007年、最新: 2007.12. 9)
『機械設計』誌、2007年8月〜12月号)に連載したもの。初めから5回で終わる予定で構成している。USITは、TRIZの刺激を受けて米国で開発された。その後日本で受容・改良・発展してきている。創造的な問題解決のための、やさしい一貫プロセスである。
第2回 USITのやさしい適用事例 (2007. 8.17)
第3回 USITによる問題の定義と分析の方法 (2007.10.15)
解説: TRIZのエッセンス (50語による表現) (中川 徹) (2001. 5.22)
TRIZは多数の技法や知識ベースを持つ大きな体系をなしている。しかしそのエッセンスは、簡単で、容易に理解できるのだと考えた。そこでそのエッセンスを1枚のスライドで表してみたら、英文で50語になった。そのスライドを説明したのが、この解説である。2001年秋のヨーロッパでの学会に提出した論文の一つの章を抽出したもの。ぜひ読んでみてください。
講演: 技術革新のための問題解決の方法論 「TRIZ」 (中川 徹) (2012. 1. 9)
2011年12月に、奈良先端科学技術大学院大学の物質創成科学研究科のFD研修会に招かれて、先生方約100人に1時間講演したときのスライド。教育および科学研究を念頭に置いて、(広い意味での)TRIZの紹介をしている。
TRIZ/USIT/CrePS 解説: 創造的な問題解決の一般的方法: 「6箱方式」(中川 徹) (2015. 1. 8)
横浜のYSFH高校で希望者約12人の生徒(主に1年生)に60分で話したものです。「裁縫で針より短くなった糸を止める問題」の事例を使って小演習をし、創造的な問題解決の方法の全体像をできるだけ分かりやすく話しました。スライド20枚のやさしい入門資料として、お薦めします。
出版紹介: 『トリーズの発明原理40』(高木芳徳著)の出版にあたって(高木芳徳; 中川 徹) (2015. 1. 8)
(株)ディスカヴァリー・トゥエンティワンから、2014年8月末に刊行されました。本体部分の構成、発明原理のまとめ方、一つ一つの原理の説明、例の取り上げ方など 全体としても、細部についても 非常によく配慮されていて、素晴らしい本です (Amazon.co.jpで工学/発明・特許分野のベストセラーになっています)。この本の表紙とサンプルページを掲載しました。ただし、 この本の先頭部分(本の帯、「はじめに」など)のジャーナリスティックなキャッチフレーズには、TRIZの歴史に関わる複数の間違い、誤解の記述があり、本紹介記事の中川のメールで指摘・訂正しています。
USIT プロセスの全体資料 (索引) (「6箱方式」による創造的な問題解決の一貫プロセス) (中川 徹) (2015. 5.25)、 (2015. 6.26)
USITは、米国でEd SIckafusが開発し(1995年)、その後日本でTRIZと再統合しつつ発展させてきた「創造的な問題解決のための簡潔な一貫プロセス」です。現在では、 「創造的な問題解決・課題達成の一般的な方法論 (略称:CrePS)」を実践する、「6箱方式」による簡潔で一般的なプロセスと位置付けられています。
本ページは、USITプロセスの全体的な資料をまとめた索引で、USIT マニュアル、USITオペレータ体系、USIT適用事例集、USIT主要参考文献から構成しています。USITマニュアル (「6箱方式」による創造的な問題解決の一貫プロセス)(中川 徹) (2015. 5.25)、 (2015. 6.26)
スライド 31枚で、「6箱方式」を基本パラダイムとするUSITのやり方・考え方を説明しています。適用事例(額縁掛けの問題)と説明を組にして、プロセスを追って分かりやすく説明しました。 別ページで掲載しています多数の「USIT適用事例」は、この「USITマニュアル」に対応させて記述しています。
札寄せ用具と図的思考: 札寄せ用具の開発の意図、操作法、使い方、使用実践例、図的思考の有効性(片平 彰裕(第一考舎)、中川 徹 (大阪学院大学)) (2016. 7.31)
片平彰裕が開発した「札寄せ用具」と、それを用いた「札寄せ法」と呼ぶ図的思考法(図的表現を活用して思考を支援する方法)について、片平・中川の両名でまとめたものです。「札寄せ用具」の最新版は片平の第一考舎サイトから無償でダウンロードできます。
第1部: 札寄せ用具の開発の意図、操作法、使い方(片平 彰裕)(2016. 7.31)
「札寄せ用具」は、マイクロソフト社製表計算ソフトウェア Excelのワークシートに図形を描画することを主要機能とした画像作成ソフトウェアであり、描画による思考支援を使用目的としている。多様な描画機能ではなく、簡便で軽快な操作を優先している
操作方法を、簡単な使用例のイラストを使って明快に説明している。「札」(語句や文を書き込んだ四角形)、「枠」(複数の札などを囲むための、表題つきの丸四角形の囲い)、「線/矢線」の作り方と操作のしかた。「セル」(Excelのワークシートの升目で、本来の記述単位)と「札」「枠」との相互変換。その他、Excelの他の図形処理機能の活用法など。またこれらを使う基本的な方法を簡単に図で説明している。第2部: 「札寄せ用具」の使用実践例: 片平が行っている札寄せ法 (片平 彰裕) (2016. 7.31)
「札寄せ用具」が支援するのは、「札」に記入した情報とその間の関係を図的な配置で表して、その配置をさまざまに変化させることで、気づきを得、考えを進める/まとめる方法である。そのような方法は(総称して「札寄せ法」と呼んでいるが)、既にさまざまなやり方で行われており、特別な技法というよりも、基本的なやり方を習得すれば、各人が目的や状況に合わせて自然に工夫し、自分の方法として発展させることができる思考方法である。
片平の一つの使用法は、個人用として、考えの整理や気づきの促進のために使う。その手順を説明し、特に札をいろいろに並べ替えて考える際の複数の観点を説明している。事例として、(社会心理学の)受講時の学習内容の整理メモの図、さらに、「札寄せ法とは何か」について自分の考えを整理するための図を示した。
もう一つの使用法は、会議の場で、発言を記録しつつ表示し、各発言同士の関連が分かるようにして、会議での意思疎通と共通理解の形成を容易にすることである。実施例を4件示しており、それぞれの使用目的を、考えのすり合わせ、原因の抽出、理解の促進、説明文のアイデア出し、として特徴づけている。第3部: 「札寄せ用具」の使用実践例: 中川が行っている「見える化」のための札寄せ法(中川 徹)(2016. 9.29)
問題がある程度はっきりし、(自分または他の人(たち)が書いた)文章/文書があるときに、その論旨を札寄せ法によって一層明確にし、きちんと「見える化」した図を作り、沢山の人たちと理解を共有できるようにする実践法を述べています。最初にその考え方を説明し、ついで、半頁(論文概要など)〜20頁(一つの記事・論文、本の一章など)の文章を「見える化」する具体的なプロセスを書きました。
具体的な実践例は、本ホームページに掲載済みのものから選び、Sickafusの論文要旨、藤田孝典著『下流老人』の5つの章(はじめに、下流化の事例、近未来の下流化のリスク、人々の意識の問題、著者の提言)、吉川洋講演録(財政再建と日本経済)を取り上げました。それぞれの「見える化」の作業のしかた、表現上の工夫、仕上げた図(詳細図)と求められて簡略化した図、などを説明しています。これらが、社会問題のような輻輳したテーマで、特に有効であることを例証しています。解説: ビジネスとマネジメントのためのTRIZによるブレークスルー思考 (Valeri Souchkov (オランダ); 和訳:中川 徹)(2016.11.23)
ビジネスとマネジメントの分野での問題解決や将来予測に、TRIZの考え方が有効に使えることを、分かりやすく説明しています。ビジネスマン、一般社会人(そして技術分野の人)への優れた入門記事(20頁)です。
TRIZはもともと技術の分野で、多数の発明が実はより少数の考え方(「発明原理」)で説明でき、技術システムの発展がいくつかの「進化のトレンド」として理解できることを示し、また矛盾を解決する「ブレークスルー思考」の方法を創ってきました。ビジネスやマネジメントの分野で扱う社会システムでも、これらの(発明)原理や進化のトレンドは、少しの違い・調整で同様に使えることが分かってきました。さらに、問題解決のためのブレークスルー思考の方法は分野が違っても基本的に同様に使えるのです。本稿では特に、輻輳したビジネスの問題において問題状況を「根本矛盾分析(RCA+)」で図的に表現し、各矛盾を「プラスの効果 対 マイナスの効果」の対として捉えて、(発明)原理や進化のトレンドを参照して解決する方法が説明されています。また、進化のトレンドを手掛かりにして、将来を予測しつつ、その中に新しいアイデアを創り込んでいく「ロードマッピング」の方法を説明しています。著者たちがRCA+を実用し成功したプロジェクトは1000件以上になったと言います。研究ノート: 創造的問題解決の新しいパラダイム「6箱方式」: 既発表論文を6箱方式で表現する (1) 中川 徹による論文18編 (2000−2016) (中川 徹) (2016.12.27)
「6箱方式」は創造的問題解決の新しいパラダイムであり、私はそれをTRIZとUSIT研究の中で2004年に見出し、2012年以来もっと一般化した文脈の中で活発に推進してきています。6箱方式を例証する目的で、最近まで私は、何らかの問題を6箱方式に従って解決する「新しい事例」を作ることを試みてきましたが、それはゆっくりとしか進みませんでした。しかしいま、私が気づいたのは、「真剣な知的活動成果のほとんどすべてを、6箱方式で表現できる」ということです。そこで私は、私の既発表論文(英文&和文)から、2000〜2016年の毎年1編(秋の国際/国内学会)を選んで、それぞれスライド1枚の「6箱方式」で記述しました。それらを論文概要と並べて掲載しました。6箱方式は(特許記述の標準書式と同様に)知的活動成果を記述するテンプレートの役割を果しています。「6箱方式」の考え方、「6箱方式」での概要記述のしかた、さらに、私の研究の経緯などを、ご理解いただけるでしょう。
(F) 学生による適用事例や成果事例はあるか?
解説連載: 技術革新のための創造的問題解決技法!! TRIZ (中川 徹)(開始: 2006. 1.13; 最終: 2007.12. )
オプトロニクス社の産学連携誌 『InterLab』 (2007年11月休刊)に2006年1月から22回にわたって連載した解説。その中に下記の事例紹介がある。
第5回: TRIZ/USITのやさしい適用事例 (1) 裁縫で短くなった糸を止める方法 (2006. 5. 9)
大阪学院大学情報学部の下田翼君の卒業研究を、中川が記述しなおしたもの。この事例を随分詳しく説明している。ここの説明は比較的初期のものであり、下田君(と中川)の試行錯誤の過程をも記述している。(この事例はその後たびたび説明しており、徐々にエッセンスが明確化・強調されてきているが、個々の記述は初期のもので、考える過程の事例としては分かりやすいと思う。 ==> USIT 適用事例集 事例1 (中川 徹) (2015. 5.25)
第6回: TRIZ/USITのやさしい適用事例 (2) 書店で万引きを防ぐ方法 (2006. 6. 6)
同じく、林尚也君の卒業研究を記述しなおしたものである。特に問題を分析するやり方を参考になるであろう。
第13回 TRIZ/USITのやさしい適用事例(3)ホッチキスの針をむしゃげなくする方法 (2007. 1. 7)
同じく、神谷和明君の卒業研究に基づいている。最初は、ホッチキスの横方向のガタが問題を起こしている原因であろうと想定していた。しかし、ある時に、多数の紙を止めようとしていたら、ホッチキスの針が詰まって動かなくなった。こじ開けてみると針がM字型になっていた。どうしてだろう?と考えて、根本の原因はガタとは別のところにあると気が付いた。また、解決策を考えるときに、「アルトシュラーの賢い小人たちの方法(SLP)」を使った。 ==> USIT 適用事例集 事例2 (中川 徹) (2015. 5.25)
オートロックドア方式のマンションで不審者の侵入を防ぐ方法 −身近な社会&技術問題へのTRIZ/USITの適用事例 (中川 徹、藤田 新) (2007. 9.13)
大阪学院大学情報学部の藤田新君の卒業研究を中川が発展させて記述したもの。マンションの入り口がオートロックのドアになっているけれども、不審者が住人の後について容易に入ることができる(住人がそれを咎めることが難しい)。この問題は、単純な技術の問題でなく、住人の心理の問題、社会ルールの問題のようにも見える。この問題の原因-結果の関係を図示することにより、根本原因は「二つの異なるグループ(個人でもよい)がほぼ同時に入って来た場合の、ドアの前での認証のルールが確立できていないことにある」と理解した。この理解に基づき、(簡潔な、だれでも守れる)ルールを作り、それを保証する技術を提案した。日本TRIZシンポジウムで発表した。人の心理と社会ルールの問題を扱った(簡単だが)貴重な事例。
コード・ケーブルを絡まなくする方法:諸事例の体系的分類による考察 (中川 徹、伊藤智之、塚本真庸) (2009.11.23)
大阪学院大学情報学部の伊藤智之君と塚本真庸君の卒業研究を中川が発展させたもの。コードやケーブルが複雑に絡まっているのはよく見かける。この解決策を作ろうとしたが、容易でない。そこで、世の中で使われているさまざまな方法やツールを集めて、それらを体系的に整理して理解することを目指した。その整理において、(多数の危機とコード・ケーブルからなる)システムを、単純なものから複雑のものへと構成していく観点を用いた。このそれぞれのレベルで、いろいろな方法があり、いろいろな問題・矛盾があることを理解した。日本TRIZシンポジウムで発表した。
TRIZ式問題探索によるチャイルドシート改良概念設計 (石濱正男 、濱田 南) (紹介: 中川 徹) ( 2010. 9.23)
神奈川工科大学の石濱研究室の修士1年生の濱田南さんが、日本TRIZシンポジウムで発表したものです。彼女の非常にいきいきした発表で、「あなたにとって最も良かった発表』の賞を得ました。クルマのチャイルドシートの通常時の便利さ・快適さと、衝突のときの安全性との矛盾を考え、TRIZのいくつかの発明原理を参考にして、いろいろな案を構成しています。
さまざまな筆記具: 身のまわりのものから技術の発展のしかたを学ぶ (中谷くるみ、中川徹)(2010.11.12)
大阪学院大学情報学部の2年生前期のゼミナールでのグループ研究の成果です。特別な技術の知識を使わないで、身の回りのものから考えていくやり方をしています。さまざまな筆記具というテーマで、いろいろなものを集めてきて、それらのしくみ(機能と原理)を考え、改良・発展のねらいを考えています。また、用途と方法との関係などを整理しています。大学2年生の中谷さんが、日本TRIZシンポジウムで発表し、私がイタリアでのTRIZ国際会議で発表し、大変好評でした。「TRIZの重要な考え方である、技術の発展というのを、こんなに分かりやすく学べるのだ」と、大学の先生たちや企業の技術者たちが感心してくれました。
身近な問題解決:草取りの方法と道具の考察 (三宅貴久、中川 徹) (2011.11.18)
大阪学院大学情報学部の三宅貴久君の卒業研究をまとめて、日本と海外の学会で発表したものです。ここでも一つの方法を考案するというよりも、世の中で使われているいろいろな方法を整理して考えることを重点に置いています。雑草を取るといっても、いろいろは状況があり、目的が違い、目標が違い、それによって適した方法が違い、適した道具が違います。それらを整理したうえで、例えば、地面のすぐ下(1センチ程度)のところを削る「草削り」のやり方の推奨などをしています。
発表スライド: 『学生による学生のための TRIZホームページ』 〜身近な問題解決で学ぶTRIZ/USITの理解〜」 (肥田真幸ら、中川 徹) (2007. 1. 7)
大阪学院大学情報学部の中川のゼミで、学生諸君〈2006年卒業の4名)が作ったホームページについて、肥田真幸君が日本TRIZシンポジウムで報告したものです。技術者用に作られた既存のホームページではなかなか伝わらないものを、学生自身の言葉で、学生にむけてホームページを作っています。
『学生による学生のためのTRIZホームページ』(作成: 肥田真幸、下田 翼、林 尚也、大森瑞生) (2006. 3.17)
大阪学院大学情報学部の中川ゼミで学生たちが作ったホームページです。この『TRIZホームページ』とは区別して公開しています。その後少し更新されましたが、更新が途切れてしまっています。卒業前の学生たち4人の座談会が興味深いものです。
紹介: 『学生のための学生によるTRIZホームページ』 (紹介: 中川 徹) (2006. 3.17)
上記のホームページの中川による紹介です。
(G) 創造的問題解決のより高度な適用事例・成果事例はどんなものか?
USIT 事例&解説: 額縁掛けの問題への解説 (中川 徹, Sickafus) (2001. 7.31; 8.23)
「額縁掛けの問題」は、Sickafus博士がそのUSIT教科書の一つの章(付録)で詳しく記述したものである。「二つのフックと一本の紐を使って、額縁を壁の釘に掛ける野が通常のやり方であるが、掛けてから後に傾くことがよくある。額縁が傾かない/傾きにくいように方法を改良せよ。」中川はこの例題を40枚のスライドで表現し、自分なりの観点を加えて、自分のUSITセミナーで説明した。この説明文をSickafus 博士に送ったところ、同博士からコメントが得られ、さらに中川の応答を加え、一連の議論として、『TRIZホームページ』に掲載した。この教科書問題は、USITにとっては、教育的にも技法研究のためにも重要なものになった。 ==> USIT 適用事例集 事例4 (中川 徹) (2015. 5.25)
物理的矛盾の解決: 超節水型トイレ(H.S. Lee, K-W. Lee; 訳: 福澤英司, 中川 徹)(2004. 1. 8)
水洗トイレで便を流すのに多量の水を使っている。それは便器の後ろのパイプがS字状に上がっているからである。これは臭気を防ぐために必要なのだか、便を流すときには邪魔である(本当は無い方がよい)。「存在する必要があり、一方無い方がよい」というのを、TRIZでいう「物理的矛盾」の典型例として捉え、TRIZの「分離原理」の考え方を使って鮮やかに解決した。非常にわかりやすいよい事例である。 ==> USIT 適用事例集 事例3 (中川 徹) (2015. 5.25)
解説連載: 技術革新のための創造的問題解決技法!! TRIZ (中川 徹) (開始: 2006. 1.13)
第22回 (最終回) TRIZ/USITの導入・適用・推進のしかた(2) 最新の適用事例に学ぶ (2007.11.18)
『InterLab』誌の解説連載の最終回にまとめとして書いたものである。
USIT適用事例: 二人の子供を安全に乗せられる自転車 (須藤 哲也、坂田 寛、長谷川 圭一、日野 桂、加藤 明、中川 徹) (2009. 1.29; 5. 7)
技術者を対象にした、USITの2日間トレーニングセミナーでの成果を発展させたもの。現在の主流は、前座席の子どもをハンドルのフォーク軸の上においている。ハンドルを操作すると子供も回転するから、ハンドルが重たい。子ども座席は自転車の本体に取り付けられているのが良い。それはどのようにすればできるのか?親の前の本体に子ども座席を固定し、それでいて親が容易にハンドル操作ができる配置とは?これを解決した方法を示した。、
折り畳み傘へのUSITの適用([MPUF USIT/TRIZ研究会] 中村公一、山田悦男、瀧本稔、枷場博文、中山憲卓、牧野泰丈、三原祐治)。(紹介: 中川 徹) (2009. 5. 7)
多企業の技術者たちが自由意思で集まっている研究会のワーキンググループでの成果である。折り畳み傘を、手を濡らさずに簡単に畳める方式を作れないだろうか?USITでのいろいろな考察法を使って考えている。その図表現が魅力の発表である。
実践の場でどのように初心者をTRIZへ導くか(久永 滋) (2015. 3.27)
デンソーでは、10年前からTRIZを導入し、「実践主義」でいままでに250件のテーマに適用してきました。ほとんどが初心者のチームをTRIZ推進者がリードするに当たって、初心者のニーズと指向にマッチしたアプローチとツールを採用しないと、うまくいかないことが多いことを経験しました。そこで、従来事例250件を整理して、初心者の3つのニーズ(多くのアイデアがほしい、決定打を出したい、根本から見直したい) と、2つの指向(制約の外へ、制約の中で)を分類しました。各カテゴリで、しばしば使う TRIZの方法でうまくいったものと、うまくいかなかったものを、初心者の指向から考察・整理し、これらの3×2の場合での推奨する方法をまとめていいます。-- 深い考察を持った発表です。著者は最後に、「TRIZ実践の成功は、技術的成果だけでなく技術者の満足度も深く関係する。それには、コンサルティングよりコーチングが効果的」と言っています。
USIT適用事例集 (中川 徹) (2015. 5.25)、 (2015. 6.26)
いろいろな適用事例を集めて、「USIT適用事例集」を作りました。一つ一つの事例を「USITマニュアル」に対応したプロセスで改めて記述し、全体として多様な応用を持った一貫プロセスとしてUSITを理解できるようにしました。事例ごとに独立のHTMLページを作り、スライド4枚(タイトルと出典、概要と意義、目次、「6箱方式」によるまとめ)およびスライド全体のPDFファイルを掲載しました。
(H) 社会のさまざまな問題に対して、創造的な問題解決の方法はどのように展開しているのか?
ここには、学生よりも社会人の人たちを意識して、記事を集めています。
TRIZのユーザを増やすにはどうすればいいか?に挑む 〜宮城TRIZ研究会の独自開発ツール「智慧(ちえ)カード」〜 (石井力重、伊藤利憲) (2008. 2. 8)
TRIZの40の発明原理を、簡潔に平易にキーワードと図で表現したカードを作り、「智慧カード」と呼んでいる。、アイデア発想の場において、これをゲーム感覚でグループで使い、グループとアイデアだしを活性化させるやり方をいろいろと開発して、発表している。
TRIZ/USIT解説: TRIZで問題解決・課題達成!! -TRIZの全体像と活用法 (林利弘、澤口学、中川徹、有田節男、津波古和司、井上敬治、長谷川公彦、上村輝之) (2013. 2.20; 3.22; 5. 8; 5.19)
日本規格協会の機関誌『標準化と品質管理』の2013年2月号は、特別企画として表記のテーマでTRIZの記事8編(50ページ余)が掲載され、日本TRIZ協会が総力で執筆した。そのうちの特に2編の解説を下記に示す。
TRIZの位置づけ: 開発・設計プロセスにおける問題解決・課題達成の技術 (林 利弘) (2013. 2.20)
上記企画の先頭の記事。(製造業を中心とした)企業活動の主プロセスを「開発・設計プロセス」と考え、その中で必要となるさまざまな問題解決や課題達成のために、(個別の特定分野の技術とは区別して)技術分野を越えて汎用で必要・有用な技術について考察し、その中にTRIZを位置付けている。TRIZの位置づけに関する大事な解説。
解説: TRIZ:世界の潮流と日本の状況 (中川 徹) (2013. 3.22)
上記企画の3番目の記事。(TRIZの基本の知識があるとして)1990年代にTRIZが西側に伝えられて以後のTRIZの状況(理論・内容面、応用面、推進状況、普及状況など)を世界と日本について広く解説している。現在のTRIZの状況をするのに大事な解説である。
解説: TRIZの状況と情報源 (中川 徹) (2011. 8.22)
TRIZの世界と日本における発展・普及の状況を広く解説し、TRIZの情報源や適用・推進事例などを示した、TRIZの紹介の解説。TRIZの基本的な解説・紹介の後に読むことを想定した解説である。
イランにおけるTRIZの普及活動: TRIZの適用と推進による新しい国民的パラダイムへの転換(Mahmoud Karimi; 訳: 坂田寛) (紹介: 中川 徹) (2011. 9.19)
イランにおけるTRIZ普及の若いリーダKarimi氏を、日本TRIZシンポジウムの基調講演に招待したときの発表内容。イランでは、新聞のコラムや、テレビ(教育テレビ)のトークショウなどの定番プログラムをTRIZの若いリーダのグループが運用していて、創造的な技術開発の考え方の啓蒙活動をしていて、知識層の国民に随分広くTRIZが知られているという。素晴らしい活動は、本当に驚きであった。
マネジャの為のTRIZ〜科学的手法を活用したアプローチとマネジメント〜 (山口和也) (英訳: 小西慶久; 紹介: 中川 徹) (2010.12.30)
日本TRIZシンポジウム2010でのテーマ講演である。パナソニックコミュニケーション社で、科学的手法によるプロセス革新を主導した山口氏(定年退職後、MOST合同会社を興す)の力強い講演。その標語は、「科学的手法(QFD,TRIZ,品質工学他) とは儲ける道具であり! 経営そのものであり! マネジメントそのものである!」。著者は、実務者、マネジャ及び会社上層幹部迄を含んだ人々が、企業の組織的活動に欠くべからずものとしてTRIZを認知し、TRIZを使っていく環境を企業の中に作る必要があると説く。そして、これらの手法の思想や要点を順次述べて、手法間の連携を説明している (残念ながらこの短い文では紹介しきれない)。マネジャのためのTRIZ、ぶじねすのためのTRIZとして、力強く、深い洞察を持つ講演である。
TRIZをマインド分野に応用した実践的アプローチ 〜TRIZマインド研修の確立に向けて〜(山畳秀人、花岡幸枝) (2011. 9.25)
人間関係、心理関係の分野に、TRIZを導入して、研修に使っている活動の報告。自分の心の中の矛盾を理解し、それをTRIZの40の発明原理を参考にしながら解決していく。マインドカウンセリングや自己啓発に持ちいようとしている。非技術分野でのユニークで優れた実践である。
TRIZ解説: 「階層化TRIZアルゴリズム」とその発展 (Larry Ball、訳 中川)(2014. 6.30)
米国Honeywell社で独自の観点から TRIZを再編し普及させているLarry Ball の考えを簡潔に表現したもの。商品開発や問題解決のプロセスには考える順序がある、それは何をベースにして何を考えるのかの論理的な当然の順序であり、それは考察・決定の「階層」をなすのだという。一貫した商品開発プロセスを分かりやすく説明している。『TRIZ 実践と効用』第3巻の日本語版序言であり、この教科書の紹介として大事。
読者の声 (意見と応答): 問題解決よりも、問題定義と解決策実施が研究の焦点(Darrell Mann)/ 問題解決のための考える方法の確立が重要な土台(中川 徹)(2013.12.23)
中川の提唱している「創造的な問題解決・課題達成の一般的な方法論」(CrePS)のアプローチについて、Systematic Innovation (体系的革新)を掲げて研究・普及活動をしているDarrell Mann 氏からのコメメントと中川の応答。短いやり取りだが、(広義の)TRIZ研究の大きな方向付けの重要な議論を含む。
ビジネス・マネジメント系進化トレンドの適用方法と適用例 (TRIZを日常に持ち込む)(伊沢久隆、吉澤郁雄、他) (2015. 3.27)
日本TRIZ協会のB&M分科会では、「ヒット商品・サービス」システムの創出に有効だった、「進化トレンド」の方法をさらに便利にしようとしています。
(1)Darrell Mannの『体系的革新(B&M)』の教科書(和訳まだなし)の「進化トレンド」について、日本語での分かりやすい解説集を作った。
(2) ビジネス・マネジメントでよく用いられている他の技法との関連を明らかにした。野中のSECIモデル、バランススコアカードの4つの視点(財務、顧客、業務プロセス、学習と成長)、SWOT(強み/弱み/機会/脅威)分析、など。
(3) 進化トレンドの適用実例を作った(「事業再編により使われなくなった技術を使って、新しい技術サービスのビジネスモデルを提案する」問題)。32の進化トレンドで、3C (顧客、自社、競合他社)を検討するのが有効であった。世界構造の中の方法と粒度についてのノート (高原利生) (2015. 4.12)
著者高原さんが追求してきているテーマは、「世界を統一的に捉え、人間の生き方の土台を理解する。そのための論理的な方法を作り上げる」ことです。その論理の土台として、直接・間接に知覚できる「存在」(=「もの」と「観念])とその関係(=「相互関係」=「相互作用」=「運動」)を考え、技術・制度・個人を含む「世界」を記述するやり方を構築していっています。これらを考察・記述するに際して、根源的網羅的思考の方法(通常の「体系的思考」をさらに明確にしたもの)と矛盾の表現(通常の「問題」をさらに明確にしたもの)が必要であるとし、これらを含めて「弁証法」の論理を従来よりももっと拡張して捉えています。 これらの論理から、各人の「認識と行動」の土台になる、「判断のしかた」(考える範囲と解を出す方法)を考え、さらにその土台にある各人の「態度」についても、考察・記述しています。その考察の広さと深さは本当に驚くばかりです。 FIT2013で発表された8頁の論文です。
「札寄せ」しながら考える〜新幹線焼身自殺 [放火] 事件を例に (片平彰裕、中川 徹; 長谷川陽一、日野克重、高山直彦) (2015. 7. 7; 7. 8; 7.19)
片平彰裕さんの図で考えるツール「札寄せ用具」は便利なものです。いろいろな図を作って、例示するとよいと思ってきました。このたび、片平さんが「札寄せ用具」の改良版(2.0.6版)を公表され、「認知心理学の授業ノートの図」を例示されました。さらに、6月30日に起こった「新幹線焼身自殺 放火事件」について、片平さんが中川の簡単なメモを図示し、また、各種の報道を取り入れて作った図ができました。ショッキングな事件であり、現在の日本社会の問題が根底にあり、多面的に考えるべきことと思っております。-- 寄稿を募り、高山直彦さんから同事件の考察図式例をいただきましたので、追加掲載しています。
「札寄せ」しながら考える (2) 〜 (短い)文章全体を「札寄せ」で図示(見える化)する (中川 徹、片平彰裕) (2015. 7. 29)
「札寄せ」しながら考え、考えを図示する(見える化する)ことを、実際に試みました。今回、「比較的短い文について、自動的に札寄せの札にし、それを札寄せ法で分かりやすく表現する」方法を作り、その事例を作ってみせることを始めました。中川の提案に応じて、(その提案メールを題材にして) 片平が文章から札への変換および札寄せによる図示をしました。それらの記録をHTMLで説明し、Excelファイルを掲載していますので、逐次トレースできます。最初の手紙文と 後の図式を比較すると、作成者の返答・応答を書き加え整理するにつれて、論点が明確になっていくことがよくわかります。
「札寄せ」しながら考える(3) - Sickafusの「潜在意識問題解決」の論文を理解する(片平彰裕、中川 徹) (2015. 8.25; 9.17) (2015. 9.17)
最近のSickafus博士の論文(和訳版)の全体を、片平さんが「札寄せ」で図示したもの、および、同論文の「概要」だけを中川が「札寄せ」で図示したものを掲載しています。特に、概要のようなコンパクトな文章の場合には、文単位よりも少し細かい論理単位でラベル化して、論理関係を図示することが適切でした。図解の途中経過をありのままに記録しています。Sickafus博士の論文の概要が、図によってずっと明確になりました。図解作業の例として、お読みください。
基礎理論: 世界観、生き方、人類の未来のための根源的網羅思考と一体型矛盾(高原利生)(2016.10.19)
ここで最も注目されるのは、「矛盾」の概念、特に「一体型矛盾」というものです。その例として挙げているのは: 目的と手段。 認識と行動。 感情と論理。 内容と形式。 単一性と多様性。 集中と展開。 展開と深化。 分析と合成。 思考と学習。 謙虚さと批判。 愛と自由。-- その一つ一つが、非常に大きなテーマです。
(I) 社会の問題に対する適用事例はあるか
地域統合的エネルギー計画とシステム・モデルのフレームワーク作成方法論としてのOTSM-TRIZと クラシカルTRIZの可能性 (Atom Mirakyan, Nikolai Khomenko, Laurent Lelait, Igor Kaikov; 訳: 海野誠) (紹介: 中川 徹) (2010. 6. 9)
地域の統合的エネルギー計画という社会と技術と政治が関わる大きな問題に対して、TRIZ(とその発展)をベースにして、システムとして問題を整理し矛盾を見つけて解決していこうというアプローチ。ドイツで行われた研究であり、日本のTRIZシンポジウムで発表されたもの。大きなスケールの問題解決の技法と事例として重要。
提唱: TRIZについての「公共Webサイトのグローバルなネットワーク」を作ろう: グローバルなTRIZコミュニティを構築するための提案 (3) (中川 徹) (2010.10.27)
私がこの『TRIZホームページ』の運用を通じて得たビジョンを、世界に伝えよう・広めようとしたもの。(TRIZのようないろいろなテーマで)(個人や特定企業でなく)多くの人の考えを公共的な立場で掲載する「公共Webサイト]をいろいろな国に作ろう。それらは、自国の記事・論文を自国語とともに英語で発信しよう、そして世界の記事・論文の優れたものを自国語に訳して紹介しよう。これらの公共サイトの連携により、自律的でグローバルな知識共有のネットワークができる。
社会変革の一般的構造 (安平哲太郎) (2015. 2.10)
TRIZの本質は「矛盾を解決することによって理想性に向かうように変革する」指向です。TRIZは技術分野からスタートし、ソフト分野、人間関係やビジネス・社会の分野にも展開してきています。2010年に発表されたこの論文は、歴史的な「社会変革」を「社会の矛盾を解決する/した過程」として捉え、その過程を非常に一般的・概念的に明確にしようとしています。論文末尾の図に、全体過程の一般化した表現と、明治維新の過程を例示しており、明快で多くの示唆に富みます。(注:著者自身はTRIZに関与していませんが、大事な論文と思い、掲載しました。)
高齢者の新しいライフスタイルの提案のために(長谷川公彦、他) (2015. 3.27)
知財創造研究分科会が、数年の活動を一段落させて、今後の活動について「いつも気になっていること」というテーマで自由討論した結果生まれた、新しい活動テーマです。テーマの上位目的(ビジョン)として、「高齢者とその関係者が幸せな生活を送る」と設定し、目標(ゴール)として、「高齢者が自分の問題と他人の問題を解決する」としました。さらに具体的には、「定年を迎えた研究者・技術者が生きがいを持った生活を送りたい」という問題意識に対して、「自分のビジョンを実現する目的のために、自分の問題と他人の問題を解決する」という解決策を作り出していこうとしています。そのような「高齢者の新しいライフスタイル」を提案し、そのためのいろいろな考え方を整理し、実現のための環境を整える活動を提案していこうと考えています。TRIZによって「価値創造」を考察して行こうとしているのです。-- 日本社会にとって、また高齢になりつつある多くの技術者にとって、大事なテーマであり、アプローチです。今後の活動に注目ください。
「札寄せ」しながら考える (4) 〜 日本社会の貧困を考える: 高齢者、現役、若者、子ども(索引ページ)(中川 徹) (2015. 9.17) (2015.11.29)
非常に大きな、輻輳した、重要な社会的テーマについて、考察するシリーズを開始します。その趣旨は、 (1) 社会から求められているCrePSは、技術だけでない広い分野での、大きく輻輳した問題を扱える必要があり、そのための拡張を試みる。(2) そのような問題を扱うには、問題を「見える化」することが有用であり、片平彰裕さんの「札寄せ」ツールを活用する。(3)「現実の世界の問題」として、重要なこのテーマを選んだ。(4) 高齢者の貧困化は、若年層の低所得、現役層の逼迫、子どもの貧困などと連動して、日本の将来に重大な影響を及ぼすだろう。(5) 現在の日本の政治は貧しい。しっかりした論理を積み上げつつ、日本の将来を良くしていくための言論と行動が求められている。
「札寄せ」しながら考える (5) 〜 日本社会の貧困を考える [A] 高齢者の貧困化 (0) はじめに (中川 徹) (2015. 9.17) (2015.11.29)
原典として 『下流老人−一億総老後崩壊の衝撃』藤田孝典著(朝日新書520、2015年 6月30日刊)を選びました。その本文を抜書き・要約しつつ書き出し、私自身が理解するところに従って、「札寄せ」ツールを用いて、図示(「見える化」)しました。途中段階をも記録・例示しています。原著者は「日本に「下流老人」が大量に生まれており、「一億総老後崩壊」といった状況を生み出す危険性が今の日本にある。本書では、「生活保護基準相当で暮らす高齢者及びその恐れがある高齢者」を「下流老人」という。その実態や背景が驚くほど知られていない。本書でその全体像を伝え、多くの読者とともにその解決策を考えていきたい」と述べています。
各章ごとで仕上げた「見える化」図(簡略版、PDF)の全体をまとめたファイルを作りました。順次追加し更新します。(2015.10.18)(第1章) 下流老人とは何か (中川 徹) (2015. 9.17)
「下流老人」の特徴は、収入が著しく低い、十分な貯金がない、頼れる人間がいない(社会的孤立)の3点です。すべてのセーフティネットを失い、憲法が保証する「健康で文化的な生活」ができなくなっている状態といえます。「下流老人の増加」がもたらす4つの悪影響をも述べています。
(第2章) 下流老人の現実: 事例と背景 (中川 徹) (2015. 9.30)
「想定外」で下流老人になった人たちの事例4件を具体的に紹介しています。私はこれらの事例を「生活の質(安定性)の個人履歴」グラフという形で表現しました。著者は背景をつぎのようにまとめています。「高齢者になると、現役の頃よりも所得が激減する、「年金で足りない分は働いて何とかする」が成り立たない。しかし、支出は思ったほど減らない。「想定外」で多額の支出が発生するリスクが増える。貯蓄が足りない高齢者世帯が多い。高齢者の貧困は進行し続けており、すでに多くの人が下流老人になり始めている。個別の対処でなく、社会問題として根本から対策を立てる必要がある。」
(第3章) 誰もがなり得る下流老人−下流化のパターン (中川 徹) (2015.10.18)
高齢者が下流化する典型的なパターンを5つ挙げています。(1) 病気や事故による高額な医療費の支払い、(2)高齢者介護施設に入居できない、 (3) 子どもがワーキングプア(年収200万円以下)や引きこもりで親に寄り掛かる、(4) 増加する熟年離婚、(5) 認知症でも周りに頼れる家族がいない。 さらに、現役世代を考えると、その老後はもっと下流化リスクが高いといいます。平均年収が下がっており、老後に貰える年金がまったく足りず、さらに減る恐れがある。また、企業の福利厚生の多くがカットされており、特に非正規雇用が問題です。
(第4章) 「努力論」「自己責任論」があなたを殺す日 --- 意識と理解の問題 (中川 徹) (2015.11.27)
下流老人が多く生まれているのに、何も対策がなされていない理由を、国民全体の無自覚・無理解にあると、著者は指摘しています。わたしたちは、「自立した生活をする」という規範(道徳)を持っています。その結果、(いろいろな理由で)経済的に自立できなくなった人たちに対して、「努力が足りない。自己責任だ。援けを求めるのは甘えだ」と考えることが多いでしょう。その意識が、下流老人に対する蔑視になり、彼らを社会の片隅に追いやります。しかし、社会全体で見ると、資本主義の競争社会では、富める者と貧しい者ができるのは宿命です。ただし、もっと根源的な規範として「基本的人権」を見出したのが、世界の歴史です。日本国憲法は国民に「健康で文化的な最低限度の生活」を保証しています。だから、生活困窮者が国から援助を受けるのは、「甘え」でなく「権利」なのです。このような認識(意識変革)が、私たち一般国民にも、生活に困窮している当事者にも、行政にも必要なのです。限度のある財政予算の中で、高齢者だけでなく、いろいろな世代。状況にある困窮者をどのように救っていくかは、輻輳した大きな問題を総合的に考えねばなりません。(次章に続く)
(第5章) 制度疲労と無策が生む下流老人 -- 制度と政策の問題点 (中川 徹) (2015.12.19)
社会福祉に関連する現在の制度と政策の問題点について、著者は8つの面から検討しています。収入(年金)、貯蓄、医療、介護、住宅、人とのつながり、生活保護、労働環境。これらを踏まえて、著者のまとめは次のようです。
・ 下流老人を生み出しているのは、現在の社会システムであり、個人の能力不足や怠惰のせいではない。
・ 現在の「過度に経済優先、弱者切り捨て」の社会システムと政策を正さなければ、下流老人も日本の貧困問題も解決しない。
・ さらに、人間疎外(人権無視)にならされた、わたしたちの意識と感情を正す必要がある。(第6章) 自分でできる自己防衛策−対策と予防 (中川 徹) (2016. 1. 9)
下流老人の状況に陥ってしまった場合には、生活保護について正しく知ることがまず第一であり、生活保護の申請のしかた、受給の要件、支給される生活保護費の内容と額などを説明しています。無料あるいは低額で医療が受けられること、意識(気持ち)の持ち方についても述べています。
下流老人にならないための「予防」の方法については、まず「貯蓄しておきなさい」というのは当たり前ですが、お金よりも大事なのは、老後の人間関係だといいます。「人に救けてもらいやすい人」とそうでない人があるといい、前者の人は、早めに人に相談でき、プラス思考の人だといいます。また、日ごろから人間関係を豊かに持ち、助け合いの「場」を持っておくのがよいといいます。本章の結論は印象的です:「貧困高齢者にも、幸せな人は沢山いる。人とのつながり、人間関係を豊かに持っている人たちである。」(第7章) 政策の検討と提言 (中川 徹) (2016. 1. 9)
最終章で、著者の個人としての提言をまとめています。
(1) 国が、日本に貧困が広がり、進行しつつあることを認め、格差是正や貧困対策を本格的に打ち出すことが、何よりも必要である。
(2) 基本的人権の理念のもとに、「貧困対策基本法」を法制化し、国民の貧困化を予防し、貧困から救済するための方策を、国家の重要戦略として建てる。
(3) 政府や自治体はまず、生活困窮者に対して、「生活保護で救済できる」ことをきちんと知らせ、保護申請に来るように誘導する。
(4) 生活保護制度を「扶助項目ごとに分解」して、社会手当の形で、もっと受給しやすくする。(旧来の)生活保護の一部分を扶助することにより、生活を成り立たせ、資産のすべてを失わなくてもよいようにする。
(5) 家賃の(一部)補助を進める。高齢者や低所得者が楽になり、若者が家庭を持ちやすくなり、少子化対策に有効である。
(6) 国民年金保険料の減免措置があることを告知し、(無届の未納ではなく) 減免申請を薦める。
(7) 国民年金制度に代わる新しい制度を構築し、すべての人に老後の生活を(憲法が定める)最低限保証しなればならない。
(8) それは結局、生活保護制度の生活扶助に相当するから、国民年金制度を廃止し、新しい生活保護制度の生活扶助に一元化するとよい。
(9) 真に住みやすい社会を構築するために、富の再配分(税制)についても、国民がともに考え、行動していくことが必要である。(8) 『下流老人』全体のまとめ (中川 徹) (2016. 1. 28)
藤田孝典さん著の『下流老人』の本を、「見える化」した資料が完成しましたので、冊子(23頁)のPDFとして、公開します。
(I-2) 社会問題
社会問題: 「日本社会の貧困」を可視化しながら考える [A] 高齢者の貧困化 [1] 藤田孝典著『下流老人』の可視化とまとめ (中川 徹) (2016. 1.28; 3. 6; 3.30) (2016. 3.30))
藤田孝典さんの『下流老人』の本を、「見える化」した資料が完成しましたので、冊子(24頁)のPDFとして、公開します。著者は、「生活保護相当以下で暮らしている高齢者を「下流老人」と呼ぶと、現在6−7百万人が存在する。さらに、近年の非正規雇用の増大と収入低下により、現役層・若年層の貧困化が急激に進んでいて、近い将来、日本人のほとんどの老後生活がみじめなものになる危険がある。」と指摘しています。著者がNPO活動を通じて見ている個々の現状を記述し、そして個人、社会、政治をどうしていく必要があるのかを論じています。非常に深く、きちんと書いた本です。中川は、この本を精読し、その文意に沿って、論理的な関係を図的に表現しました。図は、個人で理解するにも、数人で議論するにも、役に立ちます。多くの方が、藤田さんの本を読み、「見える化」の図で考え、新しい行動に進まれることを願います。
社会問題: 『下流老人』(藤田孝典著)へのカストマーレビュー(中川 徹)と Amazonサイトの『下流老人』カストマーレビュー(82件)の考察 (中川 徹) (2016. 3.30) (2016. 4.29)
Amazonサイトでは、『下流老人』の本がベストセラーになっており、カストマーレビュー(読者からの書評)が82件寄せられ、高い評価のものと低い評価(星1)のものの両極に分かれ、議論が続いています。私はそれらを詳細に検討したうえで、自分の見解を投稿しました。また、本ページでは、主要な25件のレビューについて、その主張と私のコメントを、テーマ順に並べて記述しました。多くの論点を含んだ貴重な議論になっています。
社会問題: 「自由」 vs. 「愛」:人類文化を貫く主要矛盾 ―『下流老人』に対する人々の議論を踏まえ、その根底を考える― (中川 徹)(2016. 4.21) (2016. 4.29)
『下流老人』の本に対するカストマーレビューのさまざまな議論のずっと深くの根底に、社会的な思想や倫理の問題があると、私は考えました。大きな問題は、「自由」と「愛」の葛藤(矛盾)です。「自由」は「競争」の世界を生み、「愛」は「助け合い」として現れます。「自由」も「愛」も非常に大事な人類の目標(指導原理)ですが、両者ともに矛盾をはらみ、両者の関係も矛盾を持っています。両者を発展させつつ、その矛盾を解決しようとしてきたのが、人類の文化であると、私は認識しました。新しい認識の概要はつぎのようです。
(1) 人類の文化は、「自由」を第一原理とし、その伸長を主要目標とします。各人が、自分で判断し、行動し、「生きる」ことです。 「自由」は、(自然的、社会的な)「競争」に「勝つ」ことを目指します。一人の「自由」と他者の「自由」とは、必然的に衝突します(矛盾します)。
(2) 人類の文化は、「愛」を第二原理とし、その普遍化を主要目標とします。各人が、その子を愛し、家族を愛し、隣人を愛して、「助ける、守る」ことです。 「愛」は、「自由」を自制して、「自由」同士の衝突を無くすことを目指します。「愛」は、自分の周りの「身内」を助け・守るために、「外」からの攻撃に対抗する性質があります。それは、「身内」を一つの社会的主体と考えると、一つ上のレベルでの「自由」と「競争」を出現させます。
(3) 人類の文化は、「自由」と「愛」という、しばしば対立する(矛盾する)二つの原理を、どのように両立させ、使い分けつつ発展させていくかを、問い続けてきました。「自由」 vs. 「愛」 を、本稿で、「人類文化の主要矛盾」と名付けました。
(4) この「自由」と「愛」との両方を包含して動機づけ、その間の調整を行う指針として人類文化が獲得してきたのは、「倫理」でしょう。平たく言えば、「人の道」、「良心」です。「倫理」の根幹部はすでにDNAに埋め込まれていると考えられますが、当たり前すぎて、明示することが難しい面があります。「基本的人権」の概念は、この「倫理」(の一部)が明確化されたものといえます。
(5) 人類は、その文化の歴史の全体を通して、この「自由」 と 「愛」 という「主要原理」の伸展と、「自由」 vs. 「愛」という「主要矛盾」の解決に取り組んできたといえます。その中で、いろいろな社会システムが作られ、文化が発展してきました。ただ、「主要矛盾の解決」という問題は一層複雑化し、困難を生じている面があります。
(6) 困難の原因の第一は、社会システムが多数で、多層で、大規模で、相互に複雑に絡み合っていて、各社会システムにおける、「自由」「愛」「倫理」のあり方を明確化し、世界的に理解を共有することができていないことです。原因の第二は、それらのあり方が明確にされ、(社会的な)「倫理」が明確にされても、多くの個人や社会組織が自己の利害(「自由」)を主張して、「倫理」に反する行動をとり、それが社会的「勝者」になることです。そして、そのような行動や組織が、(小さいものから大きなものまで)世界中の至る所にあり、それらが歴史的な積み重ねを持っていることです。
(7) これらの困難に対処する考え方を、後続の論考で考察したいと考えています。救命延命医療から緩和医療へ(島田宗洋 (救世軍清瀬病院 病院長)) (2016. 7.31)
著者は、「振り返って見れば、わたしの医師としての半世紀の歩みは、救命延命医療の最先端である小児心臓外科から、緩和医療の最先端である終末期医療へと導かれておりました。」という。同病院は、「がん」だけでなく、その他すべての病気で、不治の終末期の緩和医療の病院(ホスピス)として運営されています。科学技術に頼った、行き過ぎた救命延命医療から、患者さんの人間存在を大事にし、死に向き合う緩和医療の重視に向かうことが必要だ。患者さんの生前の意思(リビング・ウイル)、あるいは次善の策として、患者さんとご家族と医療関係者が一堂に会して双方が納得するケアプランを作るのがよい。それが、患者さんの生命の質(QOL)と死に方の質(QOD)を高めることになる。と述べています。-- 超高齢化社会にあって大事な論点です。表面的なやり方の違いでなく、生命と死との深い認識・理解が伴うことが、きっと大事でしょう。
社会問題: 「日本社会の貧困」を可視化しながら考える [E] 経済と財政 [1] 吉川洋講演「財政再建と日本経済」の可視化とまとめ (中川 徹)(2016. 8.28)
日本社会の貧困とその救済(社会保障)を考えるとき、社会福祉を支える財政と経済の問題は必ず関係します。この吉川先生(東京大学大学院教授)の講演要旨は、全体的な観点で本質的なことを、分かりやすく述べられています。著者による要旨は以下のようです。
「日本の財政赤字の背景には社会保障費の急増があるので、財政再建のためには消費税増税、経済成長と共に、医療制度改革など、歳出の効率化が不可欠である。 更に、人口減少下ではイノベーションこそ経済成長の鍵なので、企業は高齢化を需要創出の機会と捉え、過剰な貯蓄を吐き出して活発に投資すべきである。」
この10頁の文を「見える化」して、5頁もの、さらに簡潔にした2頁ものを作りました。社会問題: 社会の貧困の問題にTRIZ/CrePSでアプローチする: 人々の議論の根底に、人類文化の主要矛盾「自由vs. 愛」を見出した (中川 徹) (2016. 9. 9)
日本TRIZシンポジウム2016での発表です。 (1) TRIZ/CrePSを社会問題に適用することを試み、日本社会の貧困(特に高齢者の貧困)をテーマに選びました。(2) 藤田孝典著『下流老人』をテキストにし、札寄せツールを使って問題を「見える化」しました。(3)また、同書に対する多数(82件)のカストマーレビューを検討し、国民の中の「勝ち負け」と「助け合い」に関する社会意識に未解決の問題があることを認識しました。(4)それを突き詰めて、「自由」(自分で判断し、行動して、「生きる」こと)と「愛」(子を愛し、家族を愛し、隣人を愛して、「助け、守る」こと)とは、人類文化の主要原理でありながら、それらが対立し、「自由」 vs.「愛」が、人類文化を貫く主要矛盾であることを認識しました。(5) 人類文化はこの主要矛盾を解決することを試みてきましたが、その矛盾はいまなおあらゆるところに存在し、新たに生まれ、ますます解決が困難になっている、と認識し、困難にさせている理由4項目を認識しました。(6) 今後これらの困難課題ごとに、主要矛盾のメカニズムを理解し、その解決の方向を考察していきたいと考えています。-- TRIZの矛盾の概念と、CrePSの問題解決プロセスが、本研究をガイドしています。
社会問題: 「下流老人」について思うこと: 厚生年金保険への未加入の問題など(諏訪頼一)(2016. 9.29)
著者は、司法書士としての経験をバックに一つの具体例を挙げて、話を進めています。ある財団法人で30年間事務職を務めた女性が、高齢で足腰が弱り、現在入院療養しているが、身寄りがない。そのため、この財団が、女性の療養費などの支援募金を会員に呼びかけている。この例では、女性は厚生年金を受けていない。職に就いたとき(1975年)では、従業員5人未満の職場では法律上厚生年金保険に加入しないでもよく、加入しなかった。1981年に法律が改正され、すべての法人事業主は従業員に厚生年金保険に加入させるべきこととなったが、不徹底で、この例でも加入しないままであった。このような厚生年金保険の加入漏れ(あるいは、企業による加入逃れ)が、高齢者の下流化の一つの大きな要因になっている。また、「通常の従業員の勤務時間の3/4未満の勤務時間のものは厚生年金保険の適用を除外する」という厚生省保健課長通知により、多数の非正規雇用従業員が厚生年金から除外されているのも問題である。また、住宅問題も大きな要因であり、空き家の廉価借り上げと廉価賃貸が有効な解決策であろう。・・・ -- 実務の経験から問題点を分かりやすく説明してあります。
解説: 「自由」vs「愛」: 人類文化を貫く未解決の「主要矛盾」(中川 徹) (2017. 1.13)
自己紹介から始めて、私の最近20年ばかりの研究の経過を説明し、昨年来明確になった標記の大問題を分かりやすく説明しました。理学部の化学を出て、後に情報分野に移った私が、「創造的問題解決の方法」(すなわち、研究開発の方法)を理解し、発展させてきた内容をまず紹介しています。そこで明確にした「6箱方式」という方法を、新しく社会分野の問題に適用しようとして、日本社会の貧困の問題を取り上げました。貧困の問題に対する人々の議論対立の根底には、「自由」の主張と「愛」の主張の対立があることに気がつきました。そして、「自由」vs「愛」は、実はもっともっと大きな、人類文化を貫く未解決の根本矛盾なのだ、と認識したのです。そして私はここに、「自由」vs「愛」という矛盾について、その骨格の理解を仮説として示しました。
この、「自由」vs「愛」という矛盾(対立)がある、という考え自体は、難しいことではありません。身近のことでも、社会のこと、国際政治のことでも、皆さんはすぐに例を挙げることができるでしょう。ただ、私たちはいままで(世界中で)「「自由」と「愛」は両方大事です。だから、両立させなさい。両立するはずのことです。」 とだけ教えられてきました。「両者に本質的な対立が内在する。それが人類文化に内在する根本の矛盾なのだ」とは誰も明確に言わなかったのです。この矛盾をきちんと理解することが、矛盾を解決して両立を図る基本のやりかたなのだ、というのが本稿の根底にある理解であり、技術分野でTRIZが実証してきたことです。社会思想:人類文化の主要矛盾「自由 vs 愛」を考察する (2) 個人における「自由 vs 愛」の矛盾・葛藤と「倫理」 (中川 徹) (2017. 9.28; 2018. 6.25)
2017年秋の3つの学会(日本創造学会、TRIZシンポ、ETRIA TFC)で発表したものです。「自由・愛・倫理」の内部構造を「見える化」して、昨年来の基本仮説を拡張・補強して、次のような理解を得ました。
(1) 「倫理」(とその深化)が人類文化の第0原理である。人間の内面において、欲・欲望を「悪の心」から「善の心」に向けさせる指針である。「何が善で、何が悪か」という「倫理の内容」は、後天的に社会から教えられ、歴史と社会によって異なる。しかし、「内心において善悪を判断する心の能力(=「良心」)」が人類には先天的に備わっていると考えられ、それが人類文化の根源的な拠り所である。「すべての人の本質的平等」、「基本的人権」の概念が歴史的に明確になってきた。第0原理の本質は、「すべての人に幸福追求の権利がある」という原理である。
(2) 第1原理「自由」は、「自分で判断し、行動して、生きる」ことであり、競争に勝つことを目指す。革新・創造をもたらすと共に、勝者の支配・保守を生む。第1原理の本質は、「自分(たち)の幸福・利益を追求する」原理である。
(3) 第2原理「愛」は、「各人が子・家族を愛し、隣人を愛して、助け守る」ことであり、「自由」を自制し、奉仕・協調を旨とする。(広い意味の)「身内」を守ろうとして、外部と対立を生む面がある。第2原理の本質は、「みんなの幸福・利益を追求する」原理である。ここで、「みんな」として意識されている範囲が問題であり、この範囲の普遍化が課題である。
(4) 「自由」同士、「愛」同士、そして「自由」と「愛」の間に、さまざまな矛盾が存在し、その多数の類型を整理して示した。
(5) 「倫理」(の理解)が不十分のとき、すなわち、動機に「悪の心」(利己的な心)が(強く)潜むとき、「自由」も「愛」も(その精神や効果が)本質的に損なわれ、「自由 vs 愛」の矛盾が強く現れる。だから、各個人の内面と行動においても、またさまざまな社会組織の行動や社会ルールにおいても、「倫理」を浸透させること、特にその中核である「すべての人の本質的な平等」の精神を浸透させることが、人類文化の主要矛盾「自由vs愛」を軽減・克服するための鍵である。
(6) 突き詰めると、「自分(たち)の幸福・利益を追求する」「自由」と、「みんなの幸福・利益を追及する」「愛」に対して、その両者を動機づけ、同時に両者を調整して両者間の矛盾(「人類文化の主要矛盾」)を解決するのは、「すべての人に幸福追求の権利がある」という「倫理」(第0原理)である。論文: 人類文化の主要矛盾「自由 vs 愛」を考察する (2) 個人における「自由 vs 愛」の矛盾・葛藤と「倫理」 (D: 拡張論文)(中川 徹) (2018. 6.25; 8.14)
昨秋の日本創造学会での発表論文を拡張したもの(執筆: 2018. 2.27) で、6.節考察を大幅に追加しています。 節見出しは: 6.1 創造的問題解決の方法論(TRIZ/CrePS) の寄与、 6.2 問題と事例検証、文献検証と、基本仮説の設定・検証、 6.3 基本仮説の構造と意義、 6.4 人類文化における「倫理」の共通基盤の可能性、 6.5 第1原理「自由」の意義と影響:革新性と保守性、 6.6 第2原理「愛」の意義と影響・限界:革新性と保守性、 6.7 第0原理「倫理」の社会的な役割、 6.8 人類文化の主要矛盾「自由 vs 愛」の解決を困難にしている要因。(全文を英訳掲載しています)
論文: 「自由」vs「愛」と「倫理」: 人類文化の主要矛盾とその解決の方向 (中川 徹) (2018. 8.14;11.11)
ICCI2018 (9月、大阪市) での発表論文の一部和訳版 (概要、7.考察、8.結論)です。この半年ばかりかけて学んだ倫理学の諸理論との対比・検討結果を、考察の節に書きました。いくつもの論点を明確にでき、私の基本仮説の新規性・妥当性・有効性について、さらに確信を深めました。考察の節見出しは:7.1 「倫理」の指令の真の根源は何か?、7.2 倫理の原理/規則の性格、7.3 現代倫理学、特に功利主義、に関するコメント、7.4 シジウィックの「実践理性の二元性」に代わる「自由」vs「愛」の矛盾、7.5 ロールズの『正義論』についての考察、7.6 自由、平等、博愛、 7.7 本研究における「善」と「幸福」の概念。本研究の第3年度の主論文と考えています。 (2018. 8.14)
ICCI2018の終了後に、英文論文の全文と発表スライドを掲載しました。また、和文ページには、発表スライドの和訳版を追加掲載しました。スライドの方が(論文の文章よりも)要点を明確・簡潔に書く必要があり、分かりやすいものと思います。(2018.11.11)
論文まとめ(社会問題): 人類文化の主要矛盾とその解決の方向: 「自由」vs「愛」 と 「倫理」 (中川 徹) (2018.12.13)
標記の大きなテーマ(大それた題目)での、現在の私の理解を、A4 1頁にまとめたものです。 PDF 。より詳しくは、以下の記事・論文を参照ください: [1] 東京大学YMCA会報(2016) 、[2] 『TRIZホームページ』初出論文 (2018) 、[3] ICCI2018国際会議発表論文(2018)
(J) その他、参考になることはあるか?
フォーラム: 福島原発事故: 東電原発事故の本質 ― JR福知山線事故との精神的類似性― (山口栄一) (2013. 9.20) (2013.10. 3)
福島の原発事故に関して、いくつかの「事故調」の報告が出されたが、民間から出された(あまり広く知られていない)報告の一つの報告者(同志社大学教授)による要点の紹介。原発事故が非常に大きな
論文: 日本における科学者の責任論の議論の系譜とその課題: 省察に注目した解決策の考察(大河雅奈) (2013. 8. 4)
著者は、北陸先端科学技術大学院大学の博士課程後期3年。原発事故の後で、科学者の責任、特に社会的責任の関する日本の文献200件以上を調査して、その議論の展開を整理した。これらの多くの議論が、散発的であり、積み上がっていっていないことを指摘している。科学者自身の「省察」(深く顧みて考えること)がやはり一番大事であると述べている。知識共創フォーラムでの発表論文。
フォーラム: 地震予知研究の紹介: 電磁気学的な現象を手掛かりとする地震の短期(直前)予知の研究についての紹介: 吉岡匠教授(北海道科学大学)の研究を中心にして (責任編集: 中川 徹) (2015. 3. 7)
本ホームページに、「地震予知研究」について今後継続的に紹介するフォーラムを始めます。その趣旨は:
(a) 地震の短期(直前)予知は、甚大な被害(特に人的被害)を軽減するために、渇望されていることです。
(b) 従来の地震学(と政府)は短期予知を不可能と考え、研究を回避していますが、それは、力学的な側面(変位、力、振動など)を主要な鍵と考えているからです。それなら、別の種類の信号を鍵にすればよい、電磁気学的な信号が一般的に優れている、とTRIZは教えます。
(c) 地震の電磁気学的な面は、研究されてきていますがまだまだ未知で、「眉唾もの」と批判されることがあります。しかし、新しい現象の発見、新しい現象を検出・観測する方法の発明、新しい現象のメカニズムの解明、新しい現象から有意味な情報を抽出し活用する方法の発明、などはすべて、相互に刺激しあって開発でき進歩するものです。各側面の研究開発を行うべきだと考えます。
(d) 昨年「日本地震予知学会」が設立され、短期予知研究、特に電磁気学的な面からの研究を推進しようとしています。
(e) 特に私は、吉岡匠教授の「発電機のオンライン監視システムが地震の前兆現象をキャッチしている」という研究を知り、まだあまり知られていませんが、有望・重要と判断しました。これを広く紹介して、その検証と開発の推進に寄与したいと考えました。
(f) フォーラムのこの親ページには、参照するとよい文献の紹介、掲載記事の索引、質問と討論の索引などを掲載していきます。フォーラム: 地震予知研究論文: 発電設備における異常予兆の早期発見についての最新状況報告 (地震直前(30分)の異常現象を検知)(吉岡 匠、河合洋明) (2015. 3. 7)
著者らは火力や原子力などの発電所で、発電機の運転状況をモニターし、運転・保守に役立てるためのソフトウエアを開発しています。その運転データを可視化することによって、地震の影響が明瞭に観測されたというのです。毎分のデータで、地震の横揺れによって発電機が瞬間的に飛び跳ね、地震後は(地震動ではなく)発電機の軸の納まりのずれのために無効電流が見られる。それ以外に、横揺れの約30分前から、データに異常が顕われ「発電機が唸っている」。その原因は、地震動ではなく、何らかの電磁気学的な要因と考えられる、といいます。3.11の東日本大震災の約1年前に発表されており、地震予知の可能性を明確に述べています。
「中川 徹のミッション・ステートメント」 と その心 (中川 徹)(2010. 1. 3)
大阪学院大学情報学部で、 ゼミナールIBで『7つの習慣 ティーンズ』を用いて、学生の レポート指導をしていたときに書いたもの。この本では、自分の「ミッションステートメント」(モットー・ありたい姿)を書くことを勧めている。学生を指導するからには、自分でも書く必要があると思った。5項目のミッションステートメントを書き、その「心」を記述して、学生たちと一緒の「レポート文集」に収め、本ホームページに掲載した。読んでいただけますと幸いです。
レポートの作り方・書き方−内容の準備、構成、そして文章の心得− (中川 徹) (2010.10.10)
大阪学院大学情報学部での講義の中の1コマで、「レポートの作り方・書き方」を話していた。和歌山県看護協会の研修担当者がその記事を読んだのがきっかけで、同協会で2日間(12時間)の研修(演習)を行った。その時に拡張した教材一式を、『大阪学院大学通信』に掲載し、本ホームページに再掲載した。3部構成の教材である。
英語で発信するために (中川 徹) (1999. 9.27)
この2頁ばかりのエッセイは、1997年に富士通研究所にいて国際交流関係の仕事をしていたときに、社内のあるホームページのために書いたものである。その後、この『TRIZホームページ』に再掲載した。英語で発信するための心構えや自己訓練について書いている。英語で世界に発信することは、私のいろいろな活動(例えば、この『TRIZホームページ』の英語版ページの継続的な発信)の一つの柱にしているものである。参考にしていただければ、幸いです。
ソフトウエア: 「ふだメモ」を作りました: Excel が要らない簡易「札寄せ法」ソフトウエア (片平 彰裕(第一考舎)) (2018. 8.14)
付箋紙のような「札」と、複数の札を囲む「枠」、札や枠を結ぶ「線」を、パソコンの画面に簡単に書き込み、それらを操作するためのソフトです。 紹介文 は分かりやすく、ソフトも単純明快です。ご活用ください。
フォーラム: 一心寺(大阪)に 高口恭行長老を訪ねて (高口恭行(一心寺)、中川 徹)(2018.10.19)
高口さんは、私の甲陽学院(中学・高校)の同級の親友で、京都大学で建築を修め、縁があって一心寺住職となり、奈良女子大学の教授と建築設計事務所の所長という三足の草鞋で大奮闘されました。今回の訪問で、高口さんの凄さ、素晴らしさを再認識し、その活動や成果、考えておられることを本サイトに紹介いただけるようお願いしました。 2002年に高口師の設計で建立されたお堂「三千佛堂」の内部の写真を紹介しています。「古くからの「一心寺境内」外側の公道に面して開け放たれていて、午前9時から午後4時までどなたの出入りも自由のお堂です。まさに「開かれたお寺」で、インドの神々の山ヒマラヤ連峰に聳え立つ正面壁画の阿弥陀仏、観音・勢至両菩薩像と対面ご参拝出来ます。・・・内陣が一番光り輝くお堂、高い天井から天空の光を頂くお堂、、、、この形を描き切るために、インドのお堂、トルコのお堂(イスラム風)、 ベニスのビザンチン様式(キリスト教風)などから、すべてに共通する雰囲気を抽出しました。(高口師)」 扉を一歩入って、まさに息をのみます。そして、一人静かに座っていると、心が洗われるのを感じます。
(K) このサイトの活用法
このサイト『TRIZホームページ』の活用法(中川 徹) (2015. 3.27 追加)
TRIZ を学ぶための情報源としては、本『TRIZホームページ』が最も豊富でかつ精選されたものになっております。ぜひご活用ください。活用法の詳しいことを「適用・推進の実践者の皆さんに」の入口ページ、特にその最初の項「(1)新着情報と本サイトの活用法(総合索引・検索など)」と「(2) TRIZ参考文献・リンク集・ソフトツール」に書いていますので、参考にしてください。
編集者より: 本サイト内の記事・ページの検索について (中川 徹) (2015. 3.27)
本ホームページ内で記事を探すには、次のような方法を使い分けてください。
(a) トップページ (最近6か月以内の新着情報)、
(b) 4つの入口ページ (子どものための、学生・社会人のための、技術者のための、実践者のための、精選記事集(テーマ分類、紹介文つき))、
(c) 総合索引のページ(カテゴリ別にした全ページの一覧)、
(d) 新着情報の総覧(すべてのページを掲載順に網羅。書誌情報と紹介文つき)、
(e) なんらかの関連ページからのリンク、
(f) サイト内検索のページ(任意のキーワード(複数可)で検索、日本語ページの検索と、英語ページの検索がある)。各ページの最下部の「(サイト内)リンク表」中の、(薄茶色のセル)「サイト内検索」からアクセスできる。日本国内 TRIZ関連サイト カタログ (中川 徹)(2018. 3.17)
できるだけ広く探索し、紹介しています。現在合計92サイトを掲載、そのうち約2/3が (2008年版以後の)新しいサイトです。
各サイトの性格に応じて、分類して並べました。 特に、(a) TRIZ関連情報発信サイト (25サイト)が重要です。
各サイトの構成と内容を読んだうえで、各サイトの特徴、注目される点などを、分かりやすく紹介しています。入門のためのサイトや記事、より深く学ぶためのサイトや記事、をいろいろ紹介しています。ご活用ください。
本ページの先頭 | A. 心構え | B.創造的問題解決 | C.方法 | D. 教育 | E. 教科書など | F. 学生の事例 | G.高度な適用事例 | H.社会の問題に | I. 社会の適用事例 | I2. 社会問題 | J.その他、参考 | K. 本サイトの活用法 | 英文ページ |
最終更新日 : 2020. 7.15 連絡先: 中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp
問い合わせ・ご意見・投稿などはE-mailにて下記にお寄せ下さい:
中川 徹 (Toru Nakagawa) (大阪学院大学 名誉教授)。 E-mail: nakagawa@ogu.ac.jp