日本比較生活文化学会(Popular Culture Association of Japan)

創刊にあたって

いよいよ比較生活文化学会の研究誌が発刊されることになって、喜びにたえない。本会は1983年5月に準備会を結成し、11月に第1回研究大会を開催、翌84年4月から正式に発足した。以後、研究大会は毎年催し、さまざまな形の地方研究大会は毎年催し、さまざまな形の地方研究会も開き、ニューズレターも4号まで出している。学会による共同研究の出版計 画も進んでいる。しかし会員の研究成果を盛った機関誌を刊行することが、学会の着実な発展の基盤とて不可欠だというのは、私の一貫した考えだった。それがようやく実現することになって、まことに嬉しい。

比較生活文化学会は、英語の呼称をPopular Culture Assosiation of Japanという。

「ポピュラー・カルチャー」という言葉は、映画・演芸から大衆文学まで、あるいはフォーク・カルチャーからマス・カルチャーまでを含む。幅広い内容を意味する。しかし私たちは、さらに風俗・習慣から日常の文化的営みまでも含む「生活文化」に、関心の対象を拡大し、しかも国際的視野でもって調査・検討する「比較」研究の態度を、重んじたいと思った。それが本会の名称の意味であるが、本誌はそういう野心的な意欲をもつ学会の研究誌として、ユニークな価値を主張しうるであろう。というよりそういう価値を誇りをもって主張しうるものとなるよう、努力しなければならないと思う。

私たちは、既成の学問の枠にせばめられる必要はまったくないと信ずる。大胆な発想を恐れず、自由な論述をくりひろげ、新鮮な学問の存在と興味をひろく世間に知らせたい。しかも同時に、着実を重んじ、綿密な思考をし、単なるレトリックに溺れることなく、今後の研究の発展に資するものともならなければならない。学問のダイナミズムとは、そういう重層的な意欲と研鑚の上に成り立つものであろう。

本会はまだまことに小さい組織で、経営も苦しく、本誌の発刊にいたるまでの事務局および編集委員会のご苦労はたいへんなものであったが、体裁も内容も、満足すべきものとはとてもいえない。本の実現をもたらせてくれた方々に心から感謝しながら、これからの一層の向上の努力を誓い、会員および読者諸員のますます暖かいご支援をお願いする次第である。

会長 亀井俊介

©日本比較生活文化学会 2005