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研究活動

エール大学調査                 実施:2012年9月8日〜9月17日



 
       緑豊かなニューヘイブンの町

2012年9月8日から17日の計10日間、アメリカのコネチカット州ニューヘイブンにあるエール大学に、粘土板の非破壊調査を行いました。調査は、大阪学院大学の渡辺千香子先生、慶応義塾大学の井啓介先生、私の所属する研究室の内田悦生教授、そして内田研究室の同輩の松林拓人君と私の5人で行いました。


エール大学バビロニアンコレクションには古代遺産として、メソポタミアより出土した粘土板が数多く収蔵されており、大小様々におよそ4万5千点にも及びます。その一部をエール大学のフォスター教授の助けを頂き調査させていただきました。
内田研究室では地質学、岩石学を用い遺跡の研究を行なっています。その一環として粘土を成型し文字を刻み乾燥させることで作られた粘土板の化学組成、帯磁率を携帯型XRF装置(x線を用いた対象の元素濃度を測定する装置)と帯磁率計を用いて非破壊測定しました。この粘土板の調査は2009年、2011年に当研究室卒業生の佐々木利基さんが行い、粘土板に使用されている粘土の起源が地域・年代ごとに異なるという結果が過去の研究で明らかになっています。今回の調査では、粘土板の試料数を増やすことで、その結果をさらに明確にすることに重きを置いています。そして、このプロジェクトの主題である、「メソポタミア文明は本当に塩害で滅んだのか」を岩石学的観点から明らかにすることを主要な目的として臨みました。



 
      エール大学のアッシリア学セミナーの様子
粘土に文字を刻んで情報を記号として記録するという最も原始的な記録媒体である粘土板の情報を、文字を調査することでその情報を読み取るのではなく、その粘土板自体の化学組成や帯磁率を測定することで何らかの情報を引き出そうとするこの試みには、ある種の宿命を感じ、非常に興味深い印象を受けました。
現在では記録するためのメディアやアーカイブは多岐に渡ります。その情報は記号などといった形式的なものだけではなく、記録した媒体自体にも刻まれているのではないかという、記録することに対する本質的な部分への問いかけを、この研究は私達にしてきます。もしかしたら、これから先の未来の人々は現在では予想もつかない手段で私たちが記録したものを解析するかもしれません。その様なことを考えながら私は楽しみながら研究に取り組むことができました。


更に、この研究はアッシリア学を専門とする先生、地質学、岩石学を専門とする先生、生物学を専門とする先生など、実に多分野に渡る専門の先生方が手を取り合って進めています。この様な学問の分野を越えた研究に学生として取り組むことができて非常に大きな経験となりました。
最後になりましたが、一年間この研究に携わることができたことに対し、この場を借りて感謝の意を述べさせていただきます。ありがとうございました。        (渡辺亮太)

   
             エール大学における粘土板調査

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