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「既得権の経済学――問題解決のためのメカニズム設計」(学会発表)日本経済学会2007年度春季大会(大阪学院大学)、2007年6月。

[アブストラクト]

本論文の目的は、「既得権(vested interest)問題」を経済理論の立場から分析し、これを合理的に解決・処理するための経済システム(本論文で「保険・補償システム」と呼ぶ)を設計・提案することである。 本論文で考察の対象とする「既得権」とは、当事者すなわち個人や団体にとってある特定の権利や地位がその当事者の利益と結合する形で成立し、これが法律的にあるいは各種の慣行・圧力などで守られ、存在し続ける場合である。 本論文は、このような「既得権問題」を、現行制度という制約を外した上で改めてミクロ経済理論の立場から考察し、社会あるいは組織全体の利益のために必要な既得権の調整を円滑に実現するための経済制度・システム(「保険・補償システム」)を設計・提案することを目的とする。ただし本論文では、既得権調整の必要が同保有者の一部のみに及ぶ場合を考察する。同必要が保有者全員あるいはその大部分に及ぶ場合は考察対象外である。

「保険・補償システム」の要点は以下のとおりである。 (1) 既得権を保有するそれぞれの個別主体は、それを失うことに同意できる最低限の「補償金額(既得権の供給価格)」を表明し、同金額と、別に与えられた「補償料率」(下記(4))の積に等しい「補償料」を毎期間支払う。 (2) 既得権の調整にあたる機関(電波・土地の場合は政府機関、企業内職位の場合は企業経営者、ここでは便宜上すべて「政府」と呼ぶ)は、個別主体から補償料を徴収する。 (3) 政府は各期ごとに何らかの規準にしたがって既得権を調整し、その結果既得権を失うことになる個別主体にあらかじめ表明された補償金額を支払う。その際、毎期の補償金支払額を最小化するように同調整内容を決定する。 (4) 政府は、補償料収入と補償金支払が長期的に均衡するように毎期の補償料率を設定する。本システムと通常の保険との差は、後者においては保険金支払が外的イベント(天災など)に基いておこなわれるのに対し、前者においては既得権調整という政府行動に基いておこなわれる点にある。また本システム下では、既得権保有者は、既得権を失う場合に受取る補償金額と、毎期政府に支払う補償料を勘案して行動する。したがって、既得権の固守(ごね得)などの事態が生ずる可能性は低い。

[キーワード]

既得権、調整、保険、補償金、保険・補償システム、埋没費用、経済の硬直性、電波資源、土地スペース、土地収用、職位、解雇

[要旨]
[発表用資料]
[全文(英文)]
[その他]

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Hajime Oniki
ECON, OGU
5/8/08
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