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パーソナル・コンピュータ産業(以下PC産業と略す)は、日米両国において、1980年代初頭から現在までの約10年間に急速な成長をとげた。本章の目的は、その経過を跡づけ、同産業を両国間で比較し、そこから将来における「マルチメディア産業」発展のために有用な知見を引き出すことである。
日米のPC産業には、1990年代初頭にいたるまでかなりの製品価格差・性能差があったが、両国のPC市場は言語障壁によって隔離されていた。しかしながら技術進歩の結果、1992年秋ごろから米国方式のPCを日本語で実用できるようになり、その結果、米国産のPCがわが国市場に流入した。これに対し、国内メーカーは、性能を大幅に向上させた新しい機種を発表し、従来機種よりもはるかに低い価格での販売を開始した。
本章では日米両国のPC産業の経過と両国の市場構造の差を明らかにすることにより、日米間に格差が生じた理由を考察する。現在すでに、オペレーティング・システム(Windows等)の普及によって国内と国外のPC市場は一体化され、世界規模の市場においてメーカー間の競争が進行しはじめている。したがって、過去10年間にわが国で生じた問題が、そのままの形でPC産業において生ずることはないであろう。しかしながら、将来の先端技術産業、とりわけ現在萌芽期にある「マルチメディア産業」において類似の事態がくり返されないとはかぎらない。本章の意図は、過去におけるPC産業の経過を振り返ることにより、将来のための有用な知見を得ることである。
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Hajime Oniki