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編集ノート (中川 徹、2013年 5月21日)
本稿は、昨年10月のETRIA TRIZ Future 2012 国際会議での発表論文です。学会で聞いて素晴らしいと思い、当初から和訳をしようと思っていたのですが、半年以上経過してしまいました。和訳とその掲載だけでなく、英語の原文での掲載をも許可いただきました著者に厚くお礼申し上げます。
英国の防衛産業の大企業 BAE Systems 社での14年間にわたるTRIZの普及活動を、初めて、そして詳細に公表したものです。驚くことには、TRIZの普及が1998年からきわめてスムーズに、広範で安定して継続発展していたということです。このような普及の状況は、米国の大企業でも、欧州の大企業でも、ましてや英国の大企業について、ほとんど学会などで公表されてきませんでしたので、全く驚きました。90年代にTRIZの普及が報告されていた多数の大企業で、その後学会報告がないものが多いので、米・欧の企業でのTRIZ普及があまり定着していないのではないだろうかと推測していましたが、本発表はそれを全く覆したものでした。他にもいろいろな企業で尽力している人たちがおり、公表していないけれども確実な成果を上げている企業があるのだと思われます。
TRIZの普及にあたって、BAE Systems の側の体制は非常に参考になります。適切な技法と適切な講師(コンサルタント)を選び、すでに確立してきた研修体制の中に取り入れて、全社的に必要とする人がだれでも研修を受けられるようにしている。また、初期にきちんとしたワークショップを自ら参加して行い、要所要所でその技法と研修の実際の成果をチェックしています。
コンサルタントのOxford Creativity
の側のやり方も興味深いものです。実践的な問題解決のワークショップを行っており、5日間コースであるが、1日コース×5として取っても良いように設計している。問題についての当初のアイデアをブレインストーミングで出して、それらの良い点、悪い点をみんなで議論してから、「BAD Solution」と呼んで横において、TRIZでのずっと良い解決策を求めようとしている。ワークショップのセッションは、楽しく熱狂的だという。TRIZの個々の技法は単純で直截的だ、それは考えることを刺激するものだ、と繰り返し述べている。技術部門のマネジャたちを説得するために努力し、初期に困難な問題解決にチャレンジすることが最も有効だという。その経験に基づいた本稿は、実に示唆に富んでいます。
和訳をHTML版で、英文原文をPDF 版で掲載します。たくさんの漫画のイラストが楽しい論文です。実は、もっと多くの漫画を含んだ発表スライドも入手し、掲載許可をもらっているのですが、この7月に韓国での学会で著者が基調講演をしますので、掲載はその後にいたします。
もくじ
1. BAE Systems におけるTRIZ (コンサルタントの話)
5. BAE Systemsのすべての人(10万人)に、Oxford TRIZを容易に一貫してすぐにアクセスできるようにする
6. 上層部と技術者たちにTRIZのユニークな力を認めさせ、望む者がだれでも定期的なTRIZトレーニングを受けられるように約束させること
8. 上層部と多数の技術者層に彼らのチャレンジにTRIZのユニークな力を認めさせる
9. 問題解決−時間の割り当てが十分でないことが多く、評価や理解がされていない。
10. TRIZの予期せぬ効用-- 楽しく、コミュニケーションに富み、効率的なチーム
11. TRIZは (一貫していて単純だが)すべての人ごとに違っている、それでも協同する文化を作り共通の言語を作る
12. いくつかの間違ったスタート、あるいは、それを正しくする教訓
本ページの先頭 | 論文先頭 | 1. BAE | 2. 大企業でのTRIZ | 3. チャレンジ | 5. アクセス | 6. マネジャ | 7. TRIZトレーニング | 8. ユニークな力 | |
9. 問題解決 | 11. 協同する文化 | 12. 間違ったスタート | 13. 好みのツール | 14. おわりに | 原論文 |
発表スライド(後日) | ETRIA TFC2012 参加速報(中川) |
英文ページ |
グローバル企業でTRIZを確立する
Pauline Marsh (BAE Systems, イギリス),
Karen Gadd (Oxford Creativity 、イギリス)
ETRIA TRIZ Future コンファレンス 2012、2012年10月24−26日、Lisbon、ポルトガル
訳: 中川 徹 (大阪学院大学)、2013年5月21日
本稿は、世界的企業BAE SystemsにおいてTRIZを確立した14年間の実践者たちの旅程の経験に基づいている。その実践者たちには、外部TRIZコンサルタントのKaren Gadd (カレン・ガッド) (Oxford Creativity (OC)) と、顧客の Pauline Marsh (ポーリーン・マーシュ) (BAE Systemsのディレクター) とを含む。TRIZが受容されたのには、実際に適用が成功した物語(すなわち、今ここに発表している事例報告)が最もクリティカルであったけれども、それとともに、間違ってスタートしたり、行き止まりになったり、予期しなかった効用を得たりということが、TRIZを提示し、実践し、採用するやり方をいろいろ変えた。
本論文ではうまく行ったこととうまく行かなかったことの両方を明らかにする。そしてTRIZが、イノベーションと問題解決より以上にもたらせた、成功と予期せぬ効用にとって鍵となったものが何だったかを、浮かび上がらせよう。
1. BAE Systems におけるTRIZ (コンサルタントの話)
その始まりはずいぶん昔、1998 年のことであった。エネルギッシュなBob Robinsonと寛い心のPauline MarshにTRIZをプレゼンテーションするのは、開いているドアを押しているようであった。彼らはTRIZに関して聞いたことすべてを好んだ。そして、数週間のうちにわれわれは最初の3日間TRIZ ワークショップを開いた。それはRaebok Footballスタジアムのディレクターボックスで行い、参加したのは、経営幹部、技術部門マネジャ、およびイノベーションの情熱家など、いろいろな人たちが混ざっていた。
それ以来、われわれは1000人以上のBAE Systems 技術者たちを訓練し、そして、多数の課題での問題解決セッションを実施した (セッションは2日間だけのこともあれば3箇月に及ぶこともある)。扱ったテーマには以下のものがある。
・ 次世代の潜水艦
・ 潜水艦に必要な機能の詳細
・ 兵器体系
・ エンジン・オイルからの船室の空気の汚れ、
・ 空中給油のためのドローグの再設計
・ 潜水艦からの避難システム
・ 航空機訓練システムの最適配置
・ 飛行計測システム
・ 飛行機の慣性
・ 滑走路の石ころなどからの防御
・ 遠隔地において空港の位置の判断
・ 空港の管理
・ 航空機の構成要素の設計
・ 英国空軍のための航空機メンテナンスの規制を変更・明確化することを英国政府に納得させること
・ プロセスおよび非TRIZ諸技法のためのイノベーションカルチュアの変革
など、など
2. 大企業にTRIZを導入する多くの方法
TRIZはさまざまに異なった風にみんなにやってくる。そして、TRIZに熱心な人たちはそれぞれに違ったやり方の、TRIZの教え方をし、問題解決のしかたをし、グローバル企業でTRIZを確立するしかたを持っている。本稿はBAE SystemsでのTRIZの14年間の話である。それは、しばしばBAE 内の有力なマネージャの熱意によって導かれ、Oxford Creativityに対して興味深い方向付けを与えてきた。
TRIZの基本的な真実の一つは、ほとんどの問題に対して可能で良い解決策は極めて多数あるということである。TRIZが大企業に受け入れられ組み込まれるようにするのは、まさにそのような問題の一例である。成功する方法は多数あり、このBAE Systemsの物語はその一つに過ぎない。
国際的で成功しているBAE Systemsは、自社について次のように記述している。
「防衛と安全保障のグローバル企業であり、世界中に約10万人の従業員を持つ。 弊社の広範な製品とサービスは、空・陸・海軍をカバーし、また、高度なエレクトロニクス、セキュリティ、情報技術、および支援サービスをも提供している。」
BAE Systemの大きい技術者層は、世界トップレベルの技術者たちを含み、TRIZによく応答し、非常に多くを達成した。 Oxford Creativityにとって、そのように賢明で積極的なBAE の人々(マネージャ、技術者、科学者、新卒者、ディレクターなどの人々)と一緒に働くのはいつも楽しいことであった。非常に広範囲の課題を扱い、その中には、次世代の潜水艦や、会社の将来に関わるトップマネジメントの問題から、より小さな挑戦(例えば、個々のコンポーネントの設計や内製/購買の比率の決定など)までに及んでいる。
Oxford Creativity社のTRIZ (略してOxford TRIZ) は、BAE Systemsのすべての人に14年以上にわたって利用可能であり、Oxford TRIZ ワークショップに登録しさえすれば、チーム全体でも個人でも利用可能であった。その結果、世界中からのBAE Systemsのさまざまな人たちが、毎年TRIZを学んだ。 その過程は興味深いものであり、そのすべてがうまく動くようになるには、大変多くの忍耐とTRIZの成功実績を要した。 そこには、打ち勝つべき障害や欠陥があり、いくつかの間違ったスタートやいくつかの驚きがあった。
あらゆる会社がユニークで、異なるアプローチを必要とするけれども、グローバルな企業にTRIZを導入するにあたっては、すべてに共通する多くの困難がある。われわれもまた、BAEでの当初において、以下のような普遍的な困難に出遭った。
3. チャレンジに立ち向かい、惰性を克服するには
TRIZを大企業に導入するのは大きな挑戦である。つぎの点に対する抵抗がある。
1. より有名でよく確立されているツールキットに新たに(TRIZを)追加すること
2. PR が少なく、少ししか知られていないロシアのツールキットを受け入れること
3. 適切な人々に会い、説得して、勢いを維持すること (人材開発や研修の部門は、最初はTRIZの力を理解しない)
4. Oxford TRIZ の実践で、実問題について、取るべき正しい方向を定義するのに時間を要すること。 これを達成するには、全員の解決策を厳密に共有する(また、TRIZで開発する)のがよい。チーム全体からのアイデアを得、上級のマネジャの「BAD Solution」だけではないこと [訳注:BAD Solution: 当初の思いつきの解決策のこと、8-9節参照]
5. 上層部と多数の技術者たちに、彼らの挑戦のためにTRIZがユニークな力を持っていることを認めさせ、望む者がだれでも定期的なTRIZトレーニングを受けることができるように約束させること
6. TRIZの助けで会社が問題解決できたことが示されたなら、TRIZをすべての人たちに容易に速やかにアクセスできるようにすること
これらのうちの最後の4つは克服されたが、初めの二つはもう少し困難で、より一般的、長期で、より問題が多い。
より有名でよく確立しているツールキットには、熱心なチャンピオンたちがいる。そしてときには、新たに任命されたマネージャが、その部門に、「われわれに必要なツールはケプナー-トリゴーだけだ」といったことを言い、すべての問題にそのようなRCAツールだけを使うようにすることがある。そのツールが問題を明らかにするだけの限定的なスコープしか持っていず、問題解決の中身を欠いているにもかかわらずである。
これらのマネジャたちは、やって来ては去っていくが、彼らがとどまっている間は、そのチーム全体に対してTRIZを止めることができる。
その間にも、TRIZの評判とアクセシビリティは成長し続けるだろう。そして、そのことにわれわれのOCアプローチと漫画と発表とがいささかなりの助けになったことと思う。
「もし初めにうまくいかなかったのら、…」 「TRIZを使おう。失敗することはないよ!」
4. だれが、なぜTRIZを使っているのか?
BAE Systems にTRIZをグローバルに採用するように説得するには、問題解決ツールとしてのTRIZの力を証明し、そして実際的にOxford Creativityがわずか5日間のトレーニングで技術者たちにその力を解放できることを実証することが必要であった。
優れた技術者たちには、TRIZは全世界の最良のものを提供する。 個々のツールは直截的であり、問題解決の過程が体系的で繰り返し使える。われわれがTRIZを使って速く活動するとき、われわれはすべての可能な解決策を発見することができ、われわれの脳を最も創造的に使い、維持できる。 それを5日間で教えるには、高い効率と有効性を必要とする。われわれはBAEのために特に設計した5日間トレーニングを開発した。
そのトレーニングは技術者たちのために設計したものであるが、出席した人みんなに有効なことが分かった。しかし言っておくべきことは、技術者たちこそTRIZを他の誰よりもよく理解することであり、それはTRIZが技術における成功から導かれているからである。 TRIZは技術者によって技術者のために開発された。そして、TRIZは何に対してもうまく働くけれども、技術の問題に対して最もうまく働くように見える。
しかしながら、TRIZについて初めて聞いたとき、ほとんどの技術者がそれに抵抗する。おそらく、本当であるには話がうますぎるように聞こえるからであろう。そしておそらくまた、それが彼らにとって新しいもので、自分たちが発明したものでなくて、彼らの問題へのアプローチ法に直感的に反しているからであろう。
不幸なことに、TRIZはまた、(素晴らしいものから取るに足りないものまでに広がる) 企業用のツールキットの中で、過密になっている市場のもう一つの部品に過ぎないとみなされている。新しいツールキットを採用することは、彼らの知力、会社の時間、お金、その他の逼迫したリソースを要求する。だからそれは、採用するものの効率性とパワーに対する信念を必要とする。シックス・シグマとリーン工学 (トヨタ生産方式)はともに、能率を向上させて、コスト節減を提供するように推進されてきたから、広く採用されてきた。TRIZは、同様に効率とコスト節減を提供するだけでなく、それに加えて、イノベーション、迅速な問題解決、および明快な思考を提供する。
BAE Systems 内で使われている他のすべてのツールキットに対して、TRIZがユニークな追加であることを、Oxford Creativityが実証できたことは、不可欠なことであった。TRIZがそれらすべてを補い、補完して、それらの本質的な欠陥を充足すること、すなわち、それらのすべてが持っている大きな穴 (適切な解決策コンセプトに導く問題解決法の欠損という穴)を充足すること、である。TRIZとリーン工学、TRIZとシステム工学、TRIZと制約理論、などなど…。これらのすべてについての論文を、要求に応じて提示し、われわれのコンサルタントたちが発表して、それらのツールキットにいかにTRIZが適合して補完するかを示した。
5. BAE Systemsのすべての人(10万人)に、Oxford TRIZを容易に一貫してすぐにアクセスできるようにする
TRIZをいかにしてすべての人に利用可能にするか、一つのソースから、なにも付け加えることなく (また、新しく複雑化したり、余分なコストをかけたり、問題を生じたりせずに)利用可能にするか、というチャレンジは、非常に簡単であった。それはTRIZによって答えられ、「あなたが持っているリソースを使え」であった。
BAE Systemsでのリソースは、Life Cycle Management System (LCMS) であり、BAE Systems のトレーニングのポータルサイトをXchangingが運営していた。 LCMSはどのツールをいつ使用すべきかを明確に位置付けていた。その中にTRIZは複数回現れ、特にイノベーション、問題解決、および新しいコンセプトが要求されるときに指定されていた。
Oxford TRIZワークショップはBAE Systemsの訓練制度上に登録されていた。 Xchangingは、Oxford TRIZワークショップの日時を公表し、参加登録や支払いなどを扱った。そしてまた、TRIZに対するグローバルで、非常に異った、不均一な需要について、記録し、充足することを保証していた。
Oxford Creativityは、ワークショップ自身のことはもちろん、その他のことすべて、部屋の予約から個々人の宿舎のことまでを扱った。
このシステムは永年の間かなりうまく機能した (最近、XchangingがBAE Systemsとの契約を失い、新しいものがその代りをしている)。したがって、一貫した成功の一つの大きな要素は、BAE Systems がOxford TRIZを、イノベーション、問題解決、コンセプト生成、などのための解決策として選んだことであった。 その結果、トレーニングに登録したり、問題解決を要求したりするのに、だれも「TRIZとは何か」について説明する必要がなかった。 TRIZトレーニングはだれにでも、全社的なトレーニング・ポータルを通じて利用可能であった。
大規模プロジェクトで、多数の人々を訓練し、多くの問題解決が必要な場合には、他のTRIZプロバイダたちも入札に招かれ、考慮された。 この14年間、Oxford Creativity がいつも選択された。一つの例外は、Oxford Creativity と Barrow Consultancy の両方に同じ問題が与えられて、平行に仕事をし、BAEが両社を比較するとともに、TRIZがどのような付加価値を与えるかを見ようとしたときである。
Oxford Creativity と TRIZがトップになり、より良い解決策、より速い結果、およびずっと低い予算 (OCだけでも5桁の額になったが)という結果になった。このプロジェクトは、100人以上の人々にTRIZの訓練をし、その後に彼らがTRIZのセッションを実施して、彼ら自身ができるだけ良い解決策を見つけることができるようにするものであった。 その結果は、イノベーティブで、役に立って、適切で、ときには革新的であった。
TRIZ 創造性ツール
6. 上層部と技術者たちにTRIZのユニークな力を認めさせ、望む者がだれでも定期的なTRIZトレーニングを受けられるように約束させること
予算を握っている人たち、意思決定者たち、そしてトレーニングを組織するべき人たちを説得することは、TRIZの場合には、例えばシックスシグマなどに比べてずっと困難な課題であった。後者の場合には、どんなシックスシグマの活動でもその結果として膨大な節約ができたと主張するようにみんなに薦めている。 TRIZは、(問題を解決すると必ずお金の節約になるのだが)このような文化を持っていない。これを定量化するには、きっとTRIZに携わる者すべてが何らかの開発をする必要があるだろう。
それでは、BAE SystemsでどのようにしてTRIZがうまくいったのか?たぶん以下のことが助けになっただろう。
・ OC TRIZは実践的な問題解決の訓練をし、理論的なTRIZの訓練をしなかった
・ ワークショップは定期的に実施され、OCが完全に組織していたので、BAE Systemsの誰にも負担をかけなかった (マーケティングと参加登録だけは例外であったが、それでもそのためのシステムは既に存在し単に組み込むだけでよかった)
・ TRIZワークショップは一貫していてフレキシブルであった (1 日間から5日間までどんな選択肢も可能で、それらがよく実施された)
・ Oxford TRIZは、各日にいくつかの大きな演習を用意し、すべての人がフルに参加することを要請した。演習は、3-5人のグループごとに、大きなA0のあらかじめ印刷したシートを使い、注意深く設計し組織したものであった。
・ TRIZの資料はすべて、明快で、面白く、使いやすいものであり、トレーニングの終了後も何年もデスクの上にあり、国際的なグループによって使われていた。
・ フィードバックはいつも熱心なものであった。
・ OCはフレキシブルで、短い予告でも対応できた。経験を積んだコンサルタントが12人いる。それで、急にサウジアラビアで仕事があったり (実際そこでたくさんのワークショップをした)、次の日に問題解決の仕事があっても、われわれはほとんどいつもそれを助けることができた。
・ TRIZのトレーニングは、特にチームが共同作業しているときには、問題解決の能力を向上させた。
・・・などなど。以下にさらに説明していこう。
7. TRIZトレーニング −実践的な問題解決のための訓練
Oxford Creativity は BAE Systems のために特化したTRIZトレーニングのワークショップを開発した。参加者たちにTRIZのすべてを教えようとするのではなく、TRIZのツールキットを用いてどのように問題を解決するかを教えるものである。そのトレーニングは、みんなのための問題解決に有効であり、速く、面白く、一貫したものであり、みんなにうまく働くように工夫してある。
それは5日間TRIZワークショップとして考案されていて、5つの1日ワークショップに分割してある。そこで参加者たちは、TRIZの5日間コースとして取ることができるとともに、1日コースを5つとしてもよいし、その間の任意の日数を取っても良い。参加者たちが他の仕事の約束にも対応できる適当なペースで、TRIZトレーニングを受けることができるように、フレキシブルに工夫してある。
TRIZワークショップはBAE内でいつもうまくいった。 それを継続発展させていくことに最も説得力を持ったのは、その成果の質が一貫しており、繰り返し使えるプロセスだという事実であった。
しかしながら、TRIZトレーニングがどんなによく受容され有用であったとしても、説得力があり、説得が成功する点で、問題解決に勝るものではない。
8. 上層部と多数の技術者層に彼らのチャレンジにTRIZのユニークな力を認めさせる
イギリスの諺に「プリンの良し悪しは、食べて初めて分かる」というのがある。同様に、「TRIZの良し悪しは、問題解決をして初めて分かる」と言えよう。Oxford Creativity が新しい関係を築きたいと望むときはいつでも、そのチームにとって一番難しい問題を解決するのを助けることを提案する。これによって初めて、彼らの考え方、彼らの問題解決能力、そして彼らの達成成果を、TRIZがどのようにして変えるのかを、人々に本当に確信させるのだということを、われわれが知ったからである。
絶望的だ。納期内にはとうてい解決しないよ! TRIZの方法。 ふむふむ... なるほど! 素晴らしい!TRIZでうまくいった! BAE Systems で Pauline Marshが、TRIZの問題解決をサンプリングするための、非常に巧妙で、速く、効率的な方法を発明した。すなわち、TRIZマスタークラスである。 (このクラスでの)TRIZトレーニングを終えて自分たちの部署に帰ってから、訓練された技術者たちが、自分たちにとって最もチャレンジングな問題をTRIZを使って解決することを試みる。そして、4〜5グループの問題解決者たちが、彼らの結果をOxford Creativity と BAE Systems の上層部とにプレゼンテーションするのである。これらのセッションには十分な時間を割り当て、彼らの成果を審査するだけでなく、問題解決過程を再現し、必要に応じてそれを改良し、拡張発展させる。これは非常な成功で、高い動機付けができ、困難で以前には「解決不能」であった問題を解決するのによく、そしてまた非常に面白いことがわかった。いくつかの問題がこのやり方で解決された。その中には、飛行計測システムの事例報告で記述されている問題を含んでいる。
他の多くの領域で、もっと伝統的で徹底したTRIZの方法を使い、OC のコンサルタントたちが指導し助力した、TRIZ問題解決の事例が多くある。このやり方で多数の問題が解決されたが、それに要した期間は数日から数か月にわたっている。
問題がどんなに重要で緊急のものであっても、問題解決に十分な時間を充てることは、贅沢なことだとみなされるのが常である。BAE Systemsもこの点では例外でなかった。しかし、一旦TRIZが有用なものとして受容され、時間効率が非常に高いことが示されたのちは、これを実現することもより容易になった。誰かに(特に技術者に)TRIZがうまく動くことを説得するための一つの重要な側面は、その単純なロジックを示すことである。各ツールは、それぞれに直截的なアルゴリズムを持っている。Oxford TRIZでは、すべてのものを単純かつ厳密にするように努力している。われわれの問題解決のフローチャートは、すべての人に、今どこに行こうとしているのか、今までどこを通ってきたのか、そしてどうしたら再びそこに行けるのかを (適切な足跡を残すことにより)理解できるように助ける。これは信用と自信を築き上げ、幸せで創造的なチームを作ることを助ける。
問題解決のプロセス 1) BAD Solution のプール セッションのルール/文化を設定する。すべてのアイデアを記録する (どんなに馬鹿げていても、実現不能でも、矛盾していても) 2) 問題を記述する
ここには解決策を書かない 3) 主たるアウトプット システムはこれを作るために存在する
4) 9画面文脈地図 ここに問題の原因を含めてもよい 5) 効用を定義するための理想の成果 6) 理想の検討 現在のシステムと望んでいるシステムを定義する 7) システム記述と機能分析 8) 問題リスト それぞれの問題に適した理想性の戦術を当てはめる 技術的矛盾
対立を解消する
物理的矛盾
反対の効用を提供する
トリミング
部品数を減らす
害
有害な作用を減らす
効用の増大
不十分なものを改良する
進化のトレンド
次世代のシステム
新システムの発明
理想の問題解決
効用、機能、リソース
9) 理想の戦術を適用し解決策を見出す 利用可能なリソースで 10) 解決策を9画面に位置付ける
上記のような簡単なプロセスの地図を使うことは、新しく来た人の出発を助ける。 一旦TRIZで問題を解決すると、いつも解決策を見つけようとする自信ができ始める。 TRIZの問題解決セッションは、鮮やかで、振り返ってみると自明な解決策を作り出すことができる。それらは、「これはいつもわれわれの鼻先にあった」「いつもこの可能性を持っていたのだが、見えなかったのだ」といった懐疑的なコメントを生み出す。 あまりスリリングでなく、それでも非常に良い解決策が作り出され、明確な勝者がいないときには、理想性のチェックのようなTRIZのツールが、それらの解決策をランク付けすることを助ける。
9. 問題解決−時間の割り当てが十分でないことが多く、評価や理解がされていない。
多くの大手企業では、実際の問題解決の段階に最低限の時間しか与えていない。それが会社の将来や会社の成果にクリティカルな重要性を持っているにもかかわらずである。 これは奇妙なことだ。しかし、TRIZのような体系的なアプローチを持たない場合には、まれに起こる、論理的で貴重な問題解決の時間は、短い時間だけ生産的であるように見える。そして、精神的なエネルギーの最初の噴出とアイデア・解決策の共有が終わってしまうと、あまり多くのものを生成しないように見える。 新しいTRIZのユーザからのコメントでよく聞かれるのは、「かってわれわれは半日頑張り、いくつかのかなり良い解決策を得てやめにしていた。しかしTRIZは、もっとずっと長い時間われわれを忙しく有効に働かせ、その結果われわれはずっと多くのずっと強い解決策を作り出した」ということである。
TRIZは、すべての人が実際の問題解決の時間を効果的に使い、チームメンバーがしっかり参画し、ずっと精神的に目覚めた状態に保つことを助ける。(これによって最良の思考力、創造性、知識と経験を刺激する。)また、TRIZを使って、イノベーションと問題解決時間への投資を、その全プロセスの詳細をたどって、監査し後づけることができる。そのような体系的な後付がなければ、問題解決の時間はつぎはぎになり、測定、使用、維持、評価、再体験が困難になる。またそれは、どうしても必要な将来のセッションの正当化を困難にする。これは特に、本当の成功がわかるのが後になってからであり、解決策の有効性がずっと後になってしか証明できない時には、大事なことである。 BAE では、解決された問題のいくつかは全くの機密に属し、それらを明らかにすることは (OC の中においてさえ)決してできず、またいくつかはずいぶん後年になってから初めて明らかにできる。OCが維持している完全な機密保持は、われわれの成功要因の一部である。われわれは正しいコンサルタントを持っていて、信用を得ている。
10. TRIZの予期せぬ効用-- 楽しく、コミュニケーションに富み、効率的なチーム
チーム育成の予期していなかった効用が、BAD SOLUTIONS というOxford TRIZの文化から生じた。(これは、矛盾を早期に見出し、全チームの参加を促し、アイデアを共有するのに必須である)。 Bad Solution のプールはまた、ブレインストーミングが問題解決法だと考えている人たちにTRIZを導入するときの困難を克服する。 自信を持っているマネジャたちに、ブレインストーミングよりもずっと多くをTRIZが提供できることを納得させることは、問題解決セッションを拡張し向上させるのに不可欠である。
ブレーンストーミングは素晴らしく、TRIZの問題解決の不可欠の第一段階である。しかしながら、それには落とし穴があり、解決策を生み出した者がその案に酔ってしまうようなことがあり、われわれを間違った方向に導くことがある。そのような状況は下記の漫画で救われたことがしばしばあった。
俺の車輪のデザインが最善だと決定したぞ!一番安定しているから。
問題解決のための一貫した方針を持つように会社を説得するのは難しいことである。BAE Systems のような大手企業にとって、問題解決は複雑で多様である。それは(問題を)分類しようという最も単純な試みをも拒絶する。なぜなら、問題解決はビジネスと意思決定のすべての領域で必要とされ、システムを作り使うすべての段階で必要とされるからである。
問題には、簡単なもの(容易に解決できるもの)から、非常に複雑なもの(革新的な解決策を必要とするもの)にまで跨り、そのうえ、さまざまに違う問題は、それらを正しい解決策に結び付けるのに、さまざまに異なる経験と知識を必要とするからである。
ブレインストーミング独自では、簡単な問題に対してはしばしばうまく働き、難しい問題に対してもときにはうまく働く。大企業におけるわれわれの挑戦は、TRIZが簡単な問題にも難しい問題にも一貫してうまく働くことを示すことである。その体系的なプロセスの第一ステップとして焦点を絞ったブレインストーミングを行い、それからもっと先に進んで、関連する強力な解決策の(すべてといわないまでも)大部分を発見することができるようにする。
TRIZは多くの様々なタイプの問題を解決するのを助けてくれる。なぜなら、問題のタイプに応じて、またその複雑さと困難さに応じて、さまざまなアプローチを提供するからである。したがって、大企業における(TRIZの)最初の実績は、できるだけ多くの、またできるだけ異なったタイプの問題を解決するのを助けたことを含むべきである。マネジャの戦略的な問題から、現場の問題まで、そしてその間のすべての問題も。 これはわれわれがBAE Systemsで、多くの異なる領域で、長年にわたってやってきたことである。
ブレインストーミングが適している問題もあるが、適さない問題もある。それの持つ危険は、頭の回転が速く自信過剰のマネジャたちが、彼らの劣った解決策をチームブレインストーミングで受け入れさせることがときとしてあることである。 Oxford TRIZセッションの文化は、これをユーモアとみんなの善意で壊すことを助ける。特に最初の段階で、すべてのチームメンバからすべてのアイデアを集め、それからみんなにそれらを褒めても批判してもよいようにする。これは公正さのためというのではなく、われわれが望むすべてのものを迅速に理解し、それを達成するベストの方法についてのみんなの最初のアイデアをとらえようという、TRIZのプロセスにとって不可欠だからである。(これらのアイデアはTRIZの問題解決プロセスの始まりでもある。)
Oxford TRIZでは、各人にその初期のアイデアを得て、それに誇りを持つように奨励するが、その一方でアイデアの共有を促進する。
それで、本当のあるいは想定した謙遜の精神で、これらの初期のアイデアをすべて、「BAD Solution」というラベルを貼り、「BAD Solution プール」に入れる。[訳注: 原文は「パーク ( 駐車場) であるが、訳文ではプール(溜めておく所)という語を使う。] その次のステップで、それぞれのアイデアについて何がよくて何が悪いかをみんなにオープンに言わせる。これは提案された解決策の中のすべての矛盾を明らかにする。(TRIZはどんな矛盾でも解決する、わずか40のやりかた(発明原理)を示している。)また、BAD Solutionの一つ一つについて、それがもたらす実際の効用を調べることにより、オープンで公正で論理的な賞賛と批判をすることを奨励する。そしてそれらの解決策を大雑把にランク付けして、TRIZプロセスのための出発点とし、われわれが何を求めようとしているのか、少なくともその目的を明確にすることを保証する。そのあとでTRIZプロセスにかけ、TRIZによってBEST Solutionに変換するのである。優れたTRIZセッションに参加すると、みんなの当初のBAD Solution をはじめにブレインストーミングで出し合うことは非常に楽しいものである。その間にわれわれは、その問題と背景について何を知っているのかを理解し、また何のためにこの問題を解こうとしているのかを定義することの共同作業ができる。ついで、われわれが本当に本当に望んでいるものが何なのか(理想の解決策は何なのか)を定義するために、焦点を絞った迅速な演習をブレインストーミングで行う。これはしばしば、みんなの脳力、エネルギー、情熱を解き放つ。これは要件についての理解を深め、望むものを実現する方法についての多数の良いアイデア(すなわちさらに多くのBAD Solution) を生成する。それでわれわれはみな、自分の脳をフル回転させ、創造的な才能を発揮し、自分たちの関連する知識にアクセスするチャンスを持つ。
これは解決策にジャンプして、「わかったぞ!」というあの満足を得る機会を否定するものではない。それはTRIZプロセスの最初から最後までいつでも受け入れられる。TRIZはいつも正しい方向をわれわれに指し示しており、よい解決策に近づくように後押ししているので、われわれはいつも正しい答えに向かって小さな(そしてずっと確実な)ジャンプをし続けているだろう。
「分かった!!」
11. TRIZは (一貫していて単純だが)すべての人ごとに違っている、それでも協同する文化を作り共通の言語を作る
TRIZはそれぞれに違ったものとしてみんなのところにやってくる。 ただ、TRIZの紛れもない事実は、他の解決策を使うことよりもむしろ、脳を刺激することにずっと多くかかわっているということである。 だから、オリジナルに考える人の前にTRIZを置けば、彼らの問題に対してずっとたくさんの解決策を直ちに出してくるだろう。 優れた脳を効果的に刺激すれば、奇跡のように見えるものを得るだろう。どんな脳でもTRIZで刺激すれば、素晴らしい何かが起こるだろう。
BAE SystemsでTRIZを推進した当初は、オリジナルに考える人たちの中にさえいくらかの抵抗があった。TRIZを聞いたことのあった少数の人たちもTRIZを複雑なツールキットで、習得・適用することが困難だと思って、躊躇した。これは思い違いである。TRIZの個々のツールは結構単純で直截的であり、ツールキットの全体を学ぶことも技術者たちにとって(あるいは誰にでも)難しいことではない、のだから。
TRIZはずいぶん大きく厳密なツールキットであるが、そのツールの多くが互いに重なり合っている。それはすべてのタイプの問題解決者たちに適するように、TRIZがデザインされているからである。TRIZの素晴らしいことの一つは、各人が自分向きのパーソナルなTRIZツールキットを作ってもよいように、TRIZが開発されていることである。自分の問題解決のスタイルに最もよく合うように作ればよいのである。
これはちょうど、設備の整ったジムで、さまざまなマシ−ンを持っているようなものである。それぞれの人は、それらのマシーンの一部だけを選び、自分に適したもの、自分で克服したいフィットネスの問題に応じたものだけを使えばよいのである。TRIZツールキットも同じことである。特定の目的に合ったツールもあり、さまざまな問題に多様なやり方で有効なツールもある。そして、各人は、自分に向いたツール(群)を見つけ、それらを活発に使うとよい。TRIZはまた、われわれがもっと明快に考えることを助ける。われわれがそのプロセスを辿っていくとき、TRIZがわれわれの心理的惰性を打ち壊していくことが、そのパワーの一端である。それはわれわれが自分たちの問題を完全に理解し、われわれが欲しいもののすべてとそれを実現する方法の両方を見ることを助ける。 このより広くより明快な考えが、すべての人に、問題に対する以前の部分的な見方から解放し、自分が思いついた当初の解決策への心酔を打ち破る。 これが実際の問題を適切に理解し、できるだけ多くの有効な回答を見つけようとする、コンセンサスを築きあげる。
12. いくつかの間違ったスタート、あるいは、それを正しくする教訓
BAE Systems との問題解決の初期のころに、われわれは熱心なTRIZ信奉者で、「TRIZの門番」になった人たちに出会った。彼らはTRIZを愛しているが、自分の組織内でTRIZが広く普及することを押しとどめてしまうことができる。
われわれはいつも、TRIZを単純で直截的で、学び理解するのが容易なものとして示したから、TRIZトレーニングが終わると、実際の問題解決を通じてTRIZの学習が継続された。われわれ (OC) は会社の問題を自分たちが解決したことは全くない。しかしわれわれはいつも、会社の人々がTRIZを使って自分たちで問題を解決することを助けてきた。
「門番」たちは、TRIZが難しく、それを習得するのが大変困難で、彼らのように問題解決ができるようになるには何年もかかるだろうと、強調することを好んだ。 彼らはTRIZのグル(頭領)と目されることを欲し、しばしば問題解決セッションの前に十分な準備をして、いつも (TRIZを使って得た) 彼らの解決策を提示する。それらの解決策は、他の人たちに恐れを感じさせ、たいていの場合に妥当なものであった。
しかしわれわれが見出したのは、問題の当事者にTRIZのスキルを与えた場合には、当事者たちが出してくる解決策は一般的に内部TRIZコンサルタントたち [すなわち、「門番」たち] のナイーブなアイデアよりも優れたものであった。
BAE でうまくいった一つの要素は、TRIZを知っていてTRIZを使うことに自信を持っている多人数のコミュニティがあったことが、「門番」がTRIZを「占有」すること、他の人たちに自分と同じやり方をさせようとすること、(そして、彼らだけがTRIZを使う能力を持っているのだと人々に感じさせること) を防ぐことができたことである。
グループブレインストーミング
私 私 私
私 私 私
私 私それは良いアイデアだ。だけどここには書かないでおこう。
ああそう、あなたが言いたかったのは、...
そうすると、あなたが本当に言いたいことは、...
われわれに分かったのは、そのような「門番」 はわれわれが創り出そうとしているイノベーションの文化を壊す可能性があることである。「TRIZは素晴らしい」というのはいいけれども、彼らのメッセージが「TRIZは難しい」「TRIZを習得するには何年もかかる」となると、それを克服するのは困難で、有害でさえある。
13. 好みのツールは人それぞれに異なる
TRIZの学習において、一つの大きな強みであり同時に問題であるのは、われわれがそれぞれ異なるツールを好み、それぞれに多少異なるツールキットを持っていることである。 TRIZのツールはすべて異なっているが、いくらかの重なり合いと重複がある。なぜなら、さまざまに異なるスタイルの問題解決に適するように設計されているからである。
われわれは大抵、ツール全体の80%程度しか必要とせず、使わないであろう。われわれに適さないものを排除するが、それでもTRIZツールキットの全体を保持している。どの20%を使わないかはそれぞれの人によって異なる。BAE Systemsでは、われわれが問題解決のために使うTRIZツールのすべてを教えている。(ただし、われわれはもはやARIZ と物資−場分析を教えていない。かってしばらく教えたが、有用さが示されなかった。)
われわれのチームは互いに他の人の好みのツールにもよく反応することがわかり、あなたの好みでないものを含めてすべてのツールを理解することが大事なことがわかった。
TRIZはみんなのための一つの完全なツールキットを提供する。学習スタイルや、好みや経験がさまざまに違っている人たちみんなのためである。 これを実現するために、このように広範囲のツールキットを用意し、すべての状況とアプローチに適するツールを持たせているのである。
そのツールキットの素晴らしい点は、すべての問題解決のタイプのためのツールを持っていて、われわれ一人一人が自分に最も適した自分用のツールキットを作ることを許していることである。しかしながら、すべてのツールを学んで使うようにし、TRIZチームで仕事をするときに効率よく共同作業ができるようにすること、あまりに多くのツールを排除しないことが、大事である。
少数のTRIZツールに精通し、それらだけを使うことには危険がある。実際、「TRIZ門番」の中には、自分の会社/部門のみんなが彼らが選択した特定のツールキットだけを使うように限定すべきだと、主張する人がいる。それは、サッカーで、3人の選手だけでプレーし、他のすべての有能なものたちをベンチに残しておくようなものだ。
その3人頑張れ! TRIZチーム
難問チーム0
0監督はわれわれ3人しか要らないと思っているようだぜ!ベンチに強いのがいることを知らないのかね?
タイム&スケール 矛盾マトリックス 理想 機能分析 12 サイズ・タイム・コスト 15 物理的矛盾 18 リソース 5 物資-場分析 4 発明原理 40 分離原理 3 Effects 11 発明標準解 76 賢い小人たち 7 理想の成果 1
14. おわりに
われわれは謙虚にかつ勤勉に活動を行い、TRIZを、個人で、チームで、部門で、そして全社で活発にしようと努めてきた。そのアプローチの主要点は、TRIZをみんなに役立つようにすることであり、みんなに利用可能にすることであった。
それをするにはいろいろな方法がある。本稿はそれがBAE Systemsでどのようにしてうまくいったかを記述している。それは一つのやり方にしか過ぎない。他の人達が他の会社で他のやり方で成功していることだろう。そしてTRIZのメッセージはおそらく、「われわれがそれぞれの成功を共有し、互いに他の人たちを励まそう」ということであろう。
本稿が、他のTRIZコンサルタントたちを励まし(われわれの道はときには険しいから)、また、大企業がTRIZをそのイノベーション文化に、その問題解決ツールキットに、そして技術者たちの開発プログラムの中に組み込むことを励ますものであることを願っている。それは易しいことではないし、たくさんの落とし穴があるが、それでも辛抱してやるに値することであることを示してきたつもりである。
私は大きな組織で重要な問題に取り組んで楽しく仕事をしてきた。TRIZをBAE Systemsで (そしてまたRolls-Roiceなどの他の企業で) 確立したことを非常に誇りに思っている。これが傲慢とは聞こえないことを、TRIZに対する私の感謝の表明と理解されることを願っている。TRIZが私にしてくれたこと、そしてあらゆる所でTRIZが技術者たちを助けてくれていることに感謝する。
本ページの先頭 | 論文先頭 | 1. BAE | 2. 大企業でのTRIZ | 3. チャレンジ | 5. アクセス | 6. マネジャ | 7. TRIZトレーニング | 8. ユニークな力 | |
9. 問題解決 | 11. 協同する文化 | 12. 間違ったスタート | 13. 好みのツール | 14. おわりに | 原論文 |
発表スライド(後日) | ETRIA TFC2012 参加速報(中川) |
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最終更新日 : 2013. 5.29 連絡先: 中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp