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研究概要

本研究の内容は、大きく「古環境復元」と「現代の塩害・砂漠化」に分けられます。古環境復元では、粘土板の科学分析等を通じて、紀元前2000年前後の水環境・土壌塩化に焦点をあてます。土壌物理学の分野で流布している「メソポタミア文明塩害滅亡論」は、メソポタミアの歴史学的見地に立てば、史料の裏づけを欠く推論にすぎません。しかし史料に書かれていることがすべてであるとも限りません。このプロジェクトでは、当時の灌漑農業に使われた水の塩分濃度を分析するために、粘土板文書の素材(粘土)を「日付入り土壌サンプル」としてとらえます。そして粘土に含まれるプロキシ(珪藻)を調べて古代の河川・運河の水質変化をたどります。あわせて、物理・化学分析によって、粘土の由来を明らかにします。
また現代の塩害・砂漠化について、過去10〜30年間に溯る衛星画像の分析をおこない、イラク南部の塩害の状況を検証します。イラクでは、特に過去10年程の間に生じた水環境変化が激しく、南部の多くの地域で塩害が悪化しています。それがどのような条件下でどれくらいの速度で進むかを、現在進行形で分析することにより、古代の塩害シミュレーションに連動させます。自然ならびに人為の環境変化がどのように社会全体に影響を及ぼすかについて、本研究は過去のモデルをリアルに構築することを目指します。それは単なる過去の歴史ではなく、地球規模の人口増加と温暖化に直面する私たちにとって、現代の「縮図」ともいえるものです。持続可能な社会のあり方を見出すために、人類の過去の歩みに真摯に向き合い、同じ轍を踏まないよう努力することが求められています。



 研究代表者 渡辺千香子(大阪学院大学 国際学部 准教授) 
 所属機関の所在地および名称  〒564-8511大阪府吹田市岸部南二丁目36-1
 大阪学院大学 渡辺千香子研究室
 研究課題
   平成22年度〜平成25年度 イラクの塩害と砂漠化の環境史
(研究課題番号:23310190) 
   平成26年度〜 粘土板等土製品の分析から復元するイラクの環境史
(研究課題番号:26283012)