TRIZ導入・適用事例:
アンリツにおけるTRIZ活動と適用事例
  片岡 敏光,名波 雅也 (アンリツ株式会社)
  第3回日本IMユーザグループミーティング, 発表, 
   2002年 8月28-30日, ラフォーレ修善寺 (静岡県田方郡修善寺町)
  2002年11月18日投稿受理    [掲載: 2002.11.19]
 

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編集ノート (中川  徹, 2002年11月19日)

本稿は, 表記のように 8月末の第3回日本IMユーザグループミーティングで発表されたものです。ここにはアンリツ株式会社における6年間のTRIZ導入の経過が述べられ, 2000年に社内TRIZ研究会が発足して以来, 社内トレーニングと事例適用が進んできている様子が記されています。特に今回発表された適用事例は, 社内ワークショップトレーニングでの問題解決事例とのことですが, 技術的な考え方がTRIZの適用によって大きく変わり, TechOptimizer の活用によって非常に多数のアイデアが出て, 網羅的な特許請求を行ったことを具体的に記しています。2年前にこれだけの実績を挙げていたことは注目すべきことです。

10月に社内発表がなされ, 一部推敲の上, 正式な発表な許可を得て, 投稿いただきました。形式は, 前回のR社掲載例に準じて用意いただいたものです。2スライド/頁のPDFファイルにしています。 ごく一部に文字が小さいところがありますが, 趣旨は読み取れるものと思います。また, 簡単な要約とコメントをつけていただきました。

この事例報告の本『TRIZホームページ』掲載を許可いただきました関係者の皆様に厚く感謝いたします。

   著者:  片岡 敏光 氏 (アンリツ株式会社):  E-mail:  Kataoka.Toshimitsu@bb.anritsu.co.jp
             名波 雅也 氏 (アンリツ株式会社):  E-mail: Nanami.Masaya@jj.anritsu.co.jp
   所属企業: アンリツ株式会社 (本社: 東京都港区)   Webサイト:  http://www.anritsu.co.jp/
   学会主催者:    (株) 三菱総合研究所 知識創造事業チーム  (リーダー: 堀田 政利 氏)  Webサイト: http://www.internetclub.ne.jp/IM/
  
このような企業の実践事例を皆様の企業/研究機関/大学などで参考にされると共に, 読者の皆さんからの実践報告を今後ともご投稿いただきたく, お願いいたします。



アンリツにおけるTRIZ活動と適用事例

片岡 敏光,名波 雅也 (アンリツ株式会社)

【要旨】

 普及活動

  アルトシューラーの著作「発明発想入門」(アグネ社)を、片岡は1974年頃個人的に入手し、旧ソ連では凄いことを行っているとの印象を受けた。しかし、KJ法やNM法ほどの関心を持つには到らなかった。「日経メカニカル」誌1996年4月1日号掲載のTRIZの記事を見て、当初の記憶が蘇り、発明発掘活動に使えるのではとの観点から、TRIZに関する情報収集、導入検討を始めた。一事業部の新製品検討会にTRIZを適用することを勧め、勉強会を2、3回開催したが、TRIZに対する理解不足で花開くまでに到らなかった。99年日本語ソフトが発売されてから本格的に導入を検討し、翌春早々、TRIZ説明会を開催したところ、110名を超える参加があり、85%以上の人がTRIZを使ってみたいとのアンケート結果が得られた。

 このアンケート結果を踏まえ、会社承認のもと、先駆的TRIZ推進者となる人を全社の技術者から募集し、TRIZ研究会を発足させ日本語版ソフトを購入した。三菱総合研究所から講師を招き、TRIZ研究会メンバー10名によるワークショップトレーニングから実質的な活動がスタートした。定例的なTRIZ研究会メンバーの情報交換、研修を主とした会合、各部門のプロジェクトが抱えている問題を機能モデルを作成しながら行うスポット検討会の2本立てで活動してきた。その検討テーマは10テーマを超える。

 02年に入ってから他社とのTRIZ活動情報交換の場を持ち、互いに啓発しあうということを試みている。より一層社内への普及を図るため、社内部門公開の折りに、TRIZ成果発表を行ったところ、各層から、もっと積極的に活動を推進すべしとの叱咤激励を頂き、意を強くしている次第である。

事例

 小型ガスセンサのドリフト改善の事例は、第1回ワークショップトレーニングの中から生まれた成果である。TRIZ研究会メンバーが、トレーニングテーマとして、半導体レーザモジュールの応用製品として研究開発しているガスセンサのドリフトを低減するという課題を採りあげた。 

 ガスセンサの構造を機能ブロック図を描きながら、講師や他のメンバーに問題点を説明するところからスタートした。当初、問題と思っていたレーザー光の干渉による悪影響のためドリフトが生じていると思い込むという心理的惰性の壁を打破できたのは、TRIZならではと感じている。トレーニング中であったため、「IM社TRIZソフトのPrincipleモジュール(技術矛盾と40の発明原理)、Predictionモジュール(物質-場モデルと標準解)、及び、Effectsモジュールをどのような順番で使用したかは明確でない。しかし、創出したコンセプトは、しっかりと記録されているので再現できた。この記録が残るということは、TRIZソフトの特筆すべき利点と言えよう。基本的なコンセプトは、トレーニング中の検討しはじめて間もなく出ており、長年の懸案事項であったドリフト低減という課題を解決できたことに加え、TRIZの問題解決のスピードアップ化を体験できた。ロードマップを作成して創出したコンセプトをそれぞれ評価し、特許出願するため戦略的に検討する段階で、また新たなコンセプトが生まれということが繰り返えされた。コンセプト総数は100を超える。最終的に出願するに到ったコンセプトに用いられている発明原理は、主だったものでも15以上あり、多面的に検討し特許網を張るべく戦略的に特許出願する場合のツールとしてTRIZに優る創造技法は無いと実感している。
 
 


    発表資料本体  (ここをクリック下さい)   PDFファイル 16頁(31スライド)  687KB
 

【著者コメント, 2002年 11月15日】

 TRIZの効果とオープンマインド

  「TRIZの素晴らしいところは何か」と問われたとき、どう答えるか。TRIZを社内に普及しようとするTRIZ推進者それぞれの胸中が、その答えに如実に表れると思います。ある人は、「普通の人も一流の人のように革新的に問題解決できるツール」と答え、他の人は、「問題解決のスピードアップ」と答えてくれました。知財担当者として私は、「アイデア出しの打出の小槌」の思いがします。今後、様々な分野での問題解決に使われると思われるTRIZの素晴らしさを実感し、伝えていくのは、TRIZホームページやTRIZ推進者が一同に会するIMユーザミーテングなど、オープンマインドで互いに研鑚しあう中から生まれてくると感じている次第です。
 
 


 
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最終更新日 : 2002.11.19      連絡先: 中川 徹  nakagawa@utc.osaka-gu.ac.jp