TRIZ事例 (講演スライド)
学生プロジェクト教育への CAE・実製作と連動した TRIZの応用
石濱 正男 (神奈川工科大学)
 日本TRIZ協議会主催
第2回TRIZシンポジウム, 2006年 8月31日- 9月 2日, パナヒルズ大阪 (大阪府・吹田市)
掲載:2006.11. 29   著者の許可を得て掲載。無断転載禁止。

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編集ノート (中川徹、2006年11月16日)

ここに掲載しますのは、日本TRIZ協議会主催の第2回TRIZシンポジウムで発表されたもので、大学でのプロジェクト教育 (PBL) の中にTRIZを取り入れて、技術開発のしかたを実地に学ばせた優れた事例です。同シンポジウムでの発表のうち数件を精選して、本『TRIZホームページ』に掲載しようとしておりますが、そのうちの第2のものです。編集者としての中川の個人の判断によって選択し、著作権者である著者の希望と許可に基づくものです。

TRIZシンポジウムの全体については、日本TRIZ協議会の公式ページでの報告を参照ください。また、中川個人の文責でのまとめとして、すでに英文で『Personal Report of The Second TRIZ Symposium in Japan, 2006』 として紹介、全発表をレビューして掲載しています (和文ではその概要のみを掲載)。そのレビューに記述した本発表関連部分を和訳して、本ページに掲載します。

英文での論文がProceedingsで発表されていますが、それをPDF形式で本ホームページの英文ページに掲載しました。発表の和文スライド、およびシンポジウムで同時投影された英文スライド (著者作成) を、PDF 形式でそれぞれ和文/英文ページに掲載しました。

このようなすばらしい事例をつくり上げ、発表し、またこのホームページへの掲載に同意いただきました著者に感謝します。


 

本発表の紹介とレビュー (中川 徹 (大阪学院大学)、2006年11月16日) : 

中川『Personal Report of The Second TRIZ Symposium in Japan, 2006』 (2006.11. 8掲載) より和訳

石濱正男 (神奈川工科大学) [6] が、「学生プロジェクト教育への CAE・実製作と連動した TRIZの応用」という題で、第1日にオーラル発表を行った。石濱教授は、同大学の自動車システム開発工学科に属しているが、元は日産自動車の技術者であった。神奈川工大は最近その教育方法を「Project-Based Learning (PBL)」重視に大きく方向転換したのだとのことである。本発表は、学生たちに発明の方法を教える試み、そしてPBL教育のカリキュラムの内容をTRIZを用いて強化しようという大学の努力を報告したものである。この発表では学生による事例研究が 2件詳細に報告されているが、ここにはその中の最初のものだけを紹介する。

神奈川工大は、この数年、「フォーミュラ SAE」世界大会に参加してきている。この大会は、アメリカの自動車技術者協会 (SAE) が主催して、毎年米国ミシガン州で開催しているもので、実体験に基づいた技術教育を奨励することをねらいとしている。下記の写真は、神奈川工大の学生たちのチームが同大会の制限規定に基づいて設計・開発した、「フォーミュラSAE レーシングカー」である。

神奈川工大は、この「フォーミュラSAEプロジェクト」のための特別な科目を創り上げている。それは、1年生から4年生までが縦割りで一緒に参加するもので、一連の講義、設計レビュー、設計および製作実習、世界大会のための遠征旅行などを含んだものである。大学キャンパスの中に小さなモデルコースを作り、自分達自身で設計したエンジンを乗せた車のテストをした。エンジンの性能に関する主要課題の一つが、空気吸入部の設計であった。下左の図が吸入部の従来の設計である。この設計には以下のような互いに矛盾する要求がある。

a) 空気吸入管は長くて真直ぐな必要がある。
b) コレクタは十分な体積を持っている必要がある。
c) コレクタは、各シリンダに同量の空気流を供給し、流れの乱れが最小限であることが必要である。
d) 各部品を作るのに簡単なツールで作れることが必要である。
e) 吸入システム全体が小さな空間に納まらなければならない。

  

学生たちはこれらの矛盾を解決するのに、TRIZの矛盾マトリックスを使い、「入れ子」、「曲面性」、「もう一つの次元」などの発明原理をヒントとして見出した。学生の一人が発明したデザインを、上図の右側に示す。この学生はこの吸入システムの性能を3次元シミュレーションで評価・確認した。この学生はまた、機械加工や溶接をこのプロジェクトのクラスで経験していたので、この発明が実現可能だとすぐに分かった、と著者はいう。本論文の「結論」は (英語論文から和訳すると) 以下のようである。

これらの二つの事例を通じて、学生に発明を教える上での重要な教訓が得られた。学生たちがもっているCAEソフトウェアを使う能力や製作の経験が、発明の学習に大きな効果を持つ。また、プロジェクト型授業はTRIZを教えるのによい環境である。

-- この発表は驚くべきものであった。学生たちはPBLにおいて自分たち自身の経験から多くのことを学んでいる。この教育での重点は、現在はプロジェクト型教育に置いており、TRIZを教えるという点ではまだ予備的な段階にある、と著者は述べている。

 

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最終更新日 : 2006. 11.29.     連絡先: 中川 徹  nakagawa@utc.osaka-gu.ac.jp