TRIZ解説: 
TRIZの歴史の概要

Valeri Souchkov (ICG Training & Consulting, オランダ)

2008年5月
訳: 中川 徹 (大阪学院大学)、2008年10月 8日

注: 原著者のWebページ (.pdf) は2015年7月に追記・更新された(URLは不変)。和訳はできていない。(中川、2022.11. 6)

掲載:2008.11.16    著者の許可を得て掲載。無断転載禁止。 更新: 2022.11. 6

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編集ノート (中川徹、2008年11月14日)

この記事は、TRIZが開発されてきた歴史の全貌を簡潔にまとめたものです。年表の形式で記述し、さまざまな技法の発展について、できるだけ広く、客観的に、また最近の状況まで記述しています。中級〜上級者向けの貴重な資料です。

もとの記事は、オランダのTRIZ推進者 (コンサルタント) Valeri Souchikov (バレリ・スーチコフ) 氏の会社のホームページに、今年5月に掲載されたものです。10月になってから掲載されているのに気がつき、素晴らしいと思いましたのですぐに和訳掲載の許可を願い出ました。同氏は、Yuri Salamatov のTRIZ教科書『TRIZ: The Right Solution at the Right Time』 の編集・出版者で、私は同書の和訳出版 (日経BP刊、中川 徹監訳、2000年) 以来、ETRIA 国際会議でも何回か会い、懇意にしてもらっていましたので、すぐにOK をいただきました。Valeri Souchkov 氏に厚く感謝いたします。

Valeri Souchkov氏:   email:   valeri@xtriz.com
ICG Training & Consulting社:   URL:  http://www.xtriz.com/

英文原文 (ICG Web サイト内):   URL:  http://www.xtriz.com/BriefHistoryOfTRIZ.pdf 

この記事に出てくるいろいろな技法/研究については、太字で識別しやすく表現されていますが、内容の説明がありません。このため、初心者の方には読みづらい (読んでもよく分からない) だろうと思います。一つ二つのTRIZ教科書を読んだ人には、これらの項目の主要なものが分かりますので、TRIZの発展の歴史が少しずつ分かってくることと思います。TRIZジャーナルなどを読んだり、国際会議に参加したりして、世界のTRIZの研究の潮流に関心がある読者の方 (上級者) には、非常に貴重な資料です。いままで、(ロシア出身の) TRIZエキスパートたちの頭の中にだけあり、きちんとは記録・表現されていなかったものが、ここに簡潔に分かりやすく提示されているのです。有効に学ばれるとよいと思います。

この資料を読んで最も印象深いのは、やはりTRIZの創始者Genrich Altshuller の洞察力と、ボトムアップに知識ベース、諸技法、諸概念を構築していくエネルギーとそのスケールの大きさです。いろいろな方法が、いま私たちが教科書で目にする形にまでできあがってくるのに、随分の年月と積み重ねを必要としたことが分かります。「40の発明原理」と「技術的矛盾を解決するためのマトリックス」が、特別な紆余曲折を経たのだというのも面白いことです。(古典的) TRIZの発展の中心が、物理的矛盾を解決するための技法プロセスとしてのARIZ、および発明標準解と技術進化の法則・トレンドとが統合された概念になっていったことが分かります。

1985年以後のTRIZの発展、特に1998年以降の西側諸国をも含めたTRIZの多様な発展はやはり注目されます。いま、多くの人たちがいろいろな方向にTRIZを発展させていっているのだ、というのがこの歴史年表が明確に示してくれていることです。

なお、TRIZをやさしくした諸方法 (SIT、ASIT、USIT) については、1998-2004年の項に1項目だけ記述されています。そして、「(ただし、簡略化のしすぎと、いくつかの主要なTRIZ概念を消してしまっているとして、TRIZコミュニティの大多数からはあまり支持されていない。) 」と評価しています。これは、ETRIA TFC や TRIZCON などの国際会議で、SIT/ASIT が発表されることがなく、USIT の開発者Sickafus の発表も1998-1999年だけであった、という状況を反映しています。USITについて中川がETRIAとTRIZCON で継続して発表し、またUSITが日本のTRIZシンポジウムでは毎年数件発表されているというのは、世界のTRIZから見ると特異的なことです。いろいろな技術や製品の発展の歴史において、「簡易版が最初は低く評価されていたのに、より多数のユーザのニーズに適切に応えて実力をつけ、やがて従来の重厚版をひっくり返すようになる」というのが、『革新のジレンマ』で明確にされた「破壊的技術」という認識です。(例えば、Darrell Mann の和訳書の p.269-274を参照下さい。) 重厚版TRIZをひっくり返す「破壊的技術」としての、次世代のTRIZを作るというのが中川の大きなモチーフです。

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TRIZの歴史の概要

Valeri Souchkov (ICG Consulting、オランダ)
初出:  ICG Trainng & Consuting 社 Webサイト、2008年5月
和訳: 中川 徹 (大阪学院大学)、2008年10月 8日

TRIZとSystematic Innovation(体系的革新)について真剣に学ぼうとする人はみな、遅かれ早かれ、TRIZの歴史が一体どういったものなのだろうかと思い始める。どうしてこんなに沢山のTRIZツールがあるのだろう、どれの後にどれが来たのだろう、どのようにしてTRIZが進化してきたのだろう、と。現在ある形でのTRIZは、50年以上にわたって、多数の人々が関わった、実に大規模な努力の結果として開発されたものである。そのため、TRIZに貢献したすべての人に言及することはもちろん、TRIZに含めるようにこれまでに提案されてきたすべてのツールについて言及することさえ、難し過ぎてできない状況である。それでもなお、そのような大規模な歴史研究がすでにVladimir Petrov [26、32] によって行なわれている。彼は、いくつかの主要なTRIZ技法の進化を詳細に示している (現在、この仕事はロシア語で行なわれている)。

私のこの記事は、TRIZの進化の包括的な全貌を与えようとしているのではない。そうではなく、TRIZの主要な改善および新しいTRIZツールや技法の開発をもたらした、重要な期日と出来事を書き出すことに焦点を合わせる。この記事のもとになる情報は、私の個人的な観察および個人的なコミュニケーション[49]、TRIZの文献、および V. Petrov のARIZの歴史に関する仕事 [32] から得たものである。

■ 1946-1950年

■ 1950-1954年

■ 1956年

■ 1956-1959年

■ 1963年

■ 1964年

■ 1964-1968年

■ 1969年

■ 1971年

■ 1974年

■ 1975年

■ 1977年

■ 1979年

■ 1982年

■ 1985年

■ 1986年

■ 1989年

■ 1990年

■  1990-1994年

■  1994-1998年

■  1998-2004年

■  2004-2008年

参考文献 (年代順、ただし、Webサイトはアルファベット順)

  1. G. Altshuller & R. Shapiro, “About Technical Creativity” in the journal Questions of Psychology, #6, 37-49. 1956 (ロシア語)。[和訳: 「発明的創造の心理学について」、黒澤愼輔訳、TRIZホームページ、2006年2月]
  2. G. Altshuller, How to Work on an Invention: About a Theory of Inventiveness. Azbuka Ratsionalizatora, Tambov, 1963 (ロシア語)。
  3. G. Altshuller, Algorithm of Invention. Moscow: Moscowskiy Rabochy. 1969, 1973 (ロシア語), 英訳: G.Altshuller, The Innovation Algorithm: TRIZ, systematic innovation, and Technical Creativity, Worchester, Massachusetts: Technical Innovation Center, 1999。和訳: 『超発明術TRIZシリーズ1, 入門編「原理と概念に見る全体像」 』、遠藤敬一・高田孝夫訳, 日経BP社, 1997年。
  4. Yu. Gorin, A Pointer to Physical Effects for Solving Inventive Problems, Baku, 1973 (ロシア語)
  5. B. Zlotin & S. Litvin, Creative Imagination Development, St. Petersburg, 1977 (ロシア語)
  6. G. Altshuller, Creativity as an Exact Science: Theory of Solving Inventive Problems, Sovetskoe Radio, Moscow, 1979 (ロシア語); 英訳: G. Altshuller, Creativity as an Exact Science: The Theory of the Solution of Inventive Problems, Gordon and Breach Science Publishers, 1984, 1988
  7. G. Altshuller, The Art of Inventing: And Suddenly the Inventor Appeared, Moscow, Detskaya Literatura, 1984 (ロシア語); 英訳: G. Altshuller, And Suddenly the Inventor Appeared, Technical Innovation Center, 1996)。和訳: 『超発明術TRIZシリーズ2, 導入編「やさしい事例に見る活用法」』、三菱総研IMプロジェクト推進室訳, 日経BP社, 1997年。
  8. G. Altshuller, Biological Effects as Analogy of Physical Effects, Baku, 1982 (ロシア語)
  9. G. Altshuller, Algorithm for Solving Inventive Problems ARIZ-85C, 1985 (ロシア語)
  10. G. Altshuller, Inventive Standards 76, 1985 (ロシア語)
  11. G. Altshuller, To find an Idea: Introduction to the Theory of Solving Inventive Problems, Nauka, Novosibirsk, 1986 (ロシア語)
  12. I. Vikentiev, A Spatial Geometrical Operator, St. Petersburg, 1987 (ロシア語)
  13. V. Gerasimov and S. Litvin, FCA (Function-Cost Analysis) and Methods of Technical Creativity, St. Petersburg, 1988 (ロシア語)
  14. Yu. Salamatov, “Achievements at Molecular Level: Chemistry helps with solving complex inventive problems”, in A Thread in a Labyrinth, Karelia, Petrozavodsk, 1988 (ロシア語)
  15. G. Altshuller, B. Zlotin, A. Zussman & V. Filatov, Search for New Ideas: From Insight to Technology, Kishinev, Karta Moldavenyaske, 1989 (ロシア語)
  16. S. Litvin & A. Lyubomirski, “About the Database of Technological Effects”, in the Journal of TRIZ, v. 1, #2, 1990, 22-27 (ロシア語)
  17. V. Tsourikov, “Mathematical Effects: a new Part of Information Collection in TRIZ”, in Journal of TRIZ, v.2, #1, 1991, 48-55 (ロシア語)
  18. N. Khomenko, TRIZ as a General Theory of Powerful Thinking (OTSM), collection of articles, 1992-2003, http://www.trizminsk.org/e/prs/kho.htm (ロシア語)
  19. V. Timokhov, Biological Effects: Help for a Biology Teacher, Riga, NTZ Progress, 1993 (ロシア語)
  20. G. Altshuller & I. Vertkin, How to Become a Genius: A Life Strategy of a Creative Person, Minsk, Belarus, 1994 (ロシア語)
  21. Yu. Murashkovsky, Biography of Arts: Foundations of a Theory of Arts Systems Evolution, Skandinavia, Petrozavodsk, 1997 (ロシア語)
  22. B. Zlotin, A. Zusman, G. Altshuller & V. Philatov, Tools of Classical TRIZ, Ideation International Inc., 1999。和訳: 『超発明術TRIZシリーズ6, 理論編「クラシカルTRIZの技法」』、監訳および解説: 産能大学TRIZ企画室, 日経BP社刊, 2000年 9月。
  23. S Kaplan, S. Visnepolschi, B. Zlotin & A. Zusman: New Tools for Failure and Risk Analysis: An Introduction to Anticipatory Failure Determination (AFD) and The Theory of Scenario Structuring, Ideation International Inc., 1999
  24. A. Gin, Principles of Pedagogical Technology, Vita Press, Moscow, 1999 (ロシア語)
  25. B. Zlotin and A. Zusman, Directed Evolution: Philosophy, Theory and Practice, Ideation International Inc., 2001
  26. V. Petrov, History of Developing Standards, Tel-Aviv, 2003 (ロシア語), http://www.trizland.ru/trizba/pdf-books/trizba-6-24.pdf
  27. D. Mann, S. Dewulf, B. Zlotin, A. Zusman, Matrix 2003, Ieper, Creax Press, 2003。和訳: 『TRIZ 実践と効用 (2) 新版矛盾マトリックス (Matrix 2003) (技術一般用)』、中川 徹訳, (株) 創造開発イニシアチブ刊, 2005年 4月。
  28. V. Souchkov, "Root Conflict Analysis (RCA+): Structuring and Visualization of Contradictions," in Proc. ETRIA TRIZ Future 2005 Conference, Graz, November 16-18, 2005, Leykam Buchverlag, 2005.
  29. D. Mann, Hands-on Systematic Innovation for Business and Management, Lazarus Press, 2004.
  30. V. Prushinskiy, G. Zainiev, & V. Gerasimov, Hybridization: the New Warfare in the Battle for the Market, Ideation International, Inc., 2005
  31. S. Litvin, “New TRIZ-based Tool: Function-Oriented Search (FOS)”, in the TRIZ Journal, August 2005, http://www.triz-journal.com/archives/2005/08/04.pdf
  32. V. Petrov, History of developing the Algorithm of Solving Inventive Problems: ARIZ, Tel-Aviv, 2006 (ロシア語).
  33. T. Sidorchuk, Thoughtivity for Kids: Developing Creativity, Imagination, Problem Solving and Language in Ages 3-8 Through TRIZ and Other Innovation Methods, Goal-QPC Inc., 2006
  34. A. Pinyayev, Functional Clues, in the TRIZ Journal, December 2006, http://www.trizjournal. com/archives/2006/12/08.pdf
  35. Webサイト: the Official Foundation of G.S. Altshuller, Russia, www.altshuller.ru (ロシア語)
  36. Webサイト: the TRIZ Journal, www.triz-journal.com
  37. Webサイト: Gen3 Partners, USA, www.gen3.com
  38. Webサイト: Creax, Belgium, www.creax.com
  39. Webサイト: Ideation International, USA, www.ideation-triz.com
  40. Webサイト: Invention Machine Corporation, www.invention-machine.com
  41. Webサイト: SIT, Israel, www.sitsite.com
  42. Webサイト: Systematic Innovation, Ltd, www.systematic-innovation.com
  43. Webサイト: ICG T&C, www.xtriz.com
  44. Webサイト: ASIT, www.start2think.com
  45. Wikipedia上:USIT, http://en.wikipedia.org/wiki/Unified_Structured_Inventive_Thinking
  46. Webサイト: 欧州 TRIZ 協会, www.etria.net
  47. Webサイト: 国際 TRIZ 協会, www.matriz.ru
  48. Webサイト: Altshuller Institute for TRIZ Studies, www.aitriz.org
  49. 私信 (1989-2008年): G. Altshuller, B. Zlotin, S. Litvin, V. Gerasimov, V. Tsourikov, N. Khomenko, V. Petrov.

 

著者紹介:

Valeri Souchkov(バレリ・スウチコフ)は、1988年にベラルーシのミンスクでInvention Machine Labsを共同創設して以来、多年にわたりTRIZと体系的革新 (Systematic Innovation) の経験を積んできた。 その時以来彼は、世界中の顧客のコンサルティングとトレーニングに関わってきている。2000年に、彼は欧州TRIZ 協会 (ETRIA、www.etria.net) を提唱かつ共同設立した。また、2003年以来ICG Training & Consulting社 (www.xtriz.com) を率いている。この会社は、オランダに拠点を置き、体系的革新の技法とツールを開発、使用、推進して、技術とビジネスの分野で企業および政府機関のために提供している。Souchkov氏はまた、Twente大学に招かれてTRIZと体系的革新について講義をしている。連絡先は、Valeri Souchkov: valeri@xtriz.com

 

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最終更新日 : 2008.11.16.   [追記: 2022.11. 6]    連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp