TRIZ論文: TRIZ シンポジウム2008 基調講演
技術者の問題解決と創造性の能力比較 -TRIZとLean/Six Sigmaの場合-
日本TRIZ協会主催 第4回TRIZシンポジウム、2008年9月10-12日、ラフォーレ琵琶湖、滋賀県守山市
Paul Filmore (Univ. of Plymouth, 英国);
スライド和訳: 森久 光雄 (京都大学 & 創造開発イニシアティブ)
紹介: 中川 徹 (大阪学院大学)、2008年10月26日; 和訳 2009年 5月 5日

[掲載:2009. 5. 7]

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編集ノート (中川徹、2009年 3月 6日)

本件は、昨年9月に日本TRIZ協会主催第4回日本TRIZシンポジウムにおいて発表されたもので、初日午後のオーラルセッションで発表されました。

そのテーマは「高効率な人々 (Highy Effective People)」および「高効率な技術者」という概念に関わっています。「高効率な技術者」とは、与えられた仕事に熟練して考えないでも高能率でこなすことでは、まったくありません。逆に、自分のいままでのマインドセット (TRIZでいう心理的惰性) を柔軟に壊して、創造的な問題解決をしていける人 (技術者) を意味します。著者は多数の文献から「高効率な人々」という概念を学び、それを適用して「高効率な技術者」という概念を作りました。そのように「高効率」であるには、どのような属性が必要か、それを育て、実際の場面で助けるのにどんな方法がありうるかを考えています。TRIZの多くのツールがそれを助けるというのが著者の大事な結論です。同様のことを、リーン工学 (トヨタ生産方式) とシックスシグマの実践者たちにアンケートして、これらの中にはまだまだ足りないものがあり、だからこれらにTRIZが入っていく余地があるのだと、結論づけています。

以前からご案内していますように、日本TRIZ協会は、一般発表の全件をその公式サイトに「TRIZ協会員限定」の形でPDF形式で掲載する (5〜6月予定) ことにしております。本『TRIZホームページ』は、各著者の希望&承認のもとに (また日本TRIZ協会の了解のもとに)、いくつかの発表を精選して、PDF 形式で公開掲載いたします。多くの読者の皆さんに読んでいただきたいと思っております。

本件の発表スライド (英・和) と英文論文を、PDF にして、和文ページおよび英文ページに掲載いたします。著者の希望により、印刷許可、コピー不可 (ダウンロード/保存不可)、改変禁止の扱いです。本『TRIZホームページ』の他のページと同様に、著者に著作権があり、本サイトが正式の承認を得て掲載しております。和訳スライドは、森久光雄さんが訳して下さったもので、TRIZシンポジウムでの著者発表の際に英和同時投影されたものです。訳者の森久さんに厚く感謝いたします。

また、本ぺージには、この発表についての中川の紹介を掲載し、より多くの読者の皆さんにこの発表を知っていただきたいと思います。紹介文は、中川が英文で2008年10月26日に掲載しました、Personal Report 「第4回TRIZシンポジウム2008の紹介」 から抜粋したものです。このたびそれを和訳し、ここに掲載しています。特に、この紹介の末尾の段落を参照下さい。

 

和文ページ (本ページ) 英文ページ
中川による紹介 (英文)中川による紹介
発表スライド (和訳: 森久光雄) PDF (34スライド、409 KB) (英文) 発表スライド PDF (34スライド)
  (英文) 論文 PDF 

  [1] Paul Filmore の発表スライド

和文発表スライド (森久光雄 訳) (34スライド、PDF 409 KB)    (公開、変更禁止、コピー不可、印刷許可)

英文発表スライド (34スライド、PDF 393 KB)    (公開、変更禁止、コピー不可、印刷許可)

英文論文 (8頁、PDF 378 KB)    (公開、変更禁止、コピー不可、印刷許可)

 


  [2] Paul Filmore の発表の紹介 (中川 徹)  

「Personal Report of The Fourth TRIZ Symposium in Japan, 2008」、中川 徹 (2008年10月26日) から抜粋。和訳: 中川 徹、2009年3月 6日。(掲載: 2009. 3. 9)

 

Paul Filmore (Univ. of Plymouth, 英国) [O-6 #35] が、オーラル発表をした。その題名は「技術者の問題解決と創造性の能力比較 -TRIZとLean/Six Sigmaの場合-」であった。この論文は、彼が昨年度の第3回TRIZシンポジウムで発表した論文「Developing Highly Effective Engineers」[中川の'Personal Report' を 参照]、およびTRIZCON2008での発表論文を、発展させたものである。

著者は多数の文献を調査し、また彼の教育経験に基づいて、(自分のマインドセット (心理的慣性)を打破して、創造的になれるような) 「高効率なエンジニア」であるための鍵となる属性を (2007年のTRIZシンポジウムの発表で) 同定している。右に示すスライドが、「高効率の人々」が示す8つの鍵となる特性/アプローチをまとめたものである。この表はまた、そのような鍵となる特性への参考文献を示している。[中川注: 表中の「Convey 2004」は「Covey 2004」の誤りである。]

*** [中川所感] ここの「高効率の人々」という概念、および彼らが示す特性が、多数の著者の仕事に基づき、非常に広いスコープで導かれてきたことが重要である。このスコープの広さ [すなわち、TRIZ云々より以前の、ずっと広い視野であること] が、この発表の意義を理解するのに本質的なことである。

 

ついで、著者はTRIZのツールを列挙し、それらのツールがどのようにわれわれを助けて、自分のマインドセットを破り、問題解決を容易にするのかを、説明している。この表は、われわれがTRIZをもっと理解し、また、新しい人々にTRIZについて説明するのに有用である。

 

 

上記の二つの表を結びつけて、著者は右図の表3を示している。高効率な人々が示す鍵となる特性とアプローチに対して、TRIZはこの表にまとめているようにさまざまなツールや方法を提供している。これら8つの鍵のすべてに対して、TRIZが非常に豊富な内容を持っていることに注目すべきである。TRIZの学習者としても実践者としても、われわれはこれらのTRIZツールをマスターし、これらのやり方での思考の能力を身につけるべきである。

 

 

本発表の後半は、TRIZに近接するいくつかの方法論に対して著者が行なったアンケート調査の結果の報告である。彼は質問状を英国および米国の製造業でのコンタクトパーソンに送り、その質問状を適当なリーン工学 (すなわち、トヨタ生産方式) およびシックスシグマの実践者に渡して記入してもらうように、依頼した。つぎに示すのが、質問状についての説明であり、著者のスライドからとったものである。

質問状は、リーン工学 または シックスシグマの実践者につぎの項目を同定するようにだけ依頼した。
(a) マインドセットを打破する可能性をもつツール (技法など)。すなわち、前掲の表2。
(b) それらのツールを、すでに同定してある「高効率な技術者の鍵となる属性」と、関係づけてください。(前出の表3に対応)
(c) 企業でのリーン工学/シックスシグマの普及・実装について、簡単に背景を述べてください。

このアンケートの結果に関して、私は、著者のアブストラクトの後半をここに引用しておきたい。

「その結果分かったことは、「高効率な技術者」に関係するツールセットとアプローチに関して、リーン-シックスシグマ [すなわち、両者を共に導入しているケース] が最も密接であり、リーン工学、ついでシックスシグマの順に密接度が下がっていく。リーン-シックスシグマの場合でさえ、問題のタイプに応じてTRIZが入ってゆく余地があることが分かり、そのための導入の薦めをここに記している。また、どの方法に対しても、TRIZツールのいくつかのものが、それらの方法の一般的な問題解決の段階で、支援することができることが分かった。この予備的な探索調査をまとめると、技術者たちに対し問題解決と創造性のポテンシャルを提供するという点では、TRIZが、リーン工学やシックスシグマよりもはるかに勝っているといえる。」

著者は結論のスライドを2枚示した。最初のスライドは、スペースを節約するためスキップして、結論の第2スライドをここに示す。この結論は、われわれがTRIZを学び、さらに推進することに対して、非常に元気づけてくれるメッセージである。

*** [中川所感] 誰か他の人の仕事の意義 [本当の価値] を理解することは、われわれにとって時間を要する。著者 Paul Filmore の3つの論文 [TRIZシンポ2007、TRIZCON2008、そしてTRIZシンポ2008] を読んで初めて、私はいま著者のアプローチの意義を理解したように思う。

著者の第2論文 (TRIZCON2008) の中で、私は Steven R. Coveyの著作"The 7 Habits of Highly Effective People"を知った。このS.R. ・コヴィーの『7つの習慣』のシリーズは非常なベストセラーである (日本語訳だけでさえ、ミリオンセラーである)ことを私は知った。私はこのコヴィーの本に非常に感銘を受けた。そこで私は実際に、(日本語で) スティーブン・コヴィーの元の本『7つの習慣-成功には原則があった』、ショーン・コヴィー (すなわち、スティーブン・コヴィーの長男) の『7つの習慣 ティーンズ』、および、日本の小学校の先生、渡辺 尚久の『7つの習慣 小学校実践記―ミッションが書けた!自分が変わった!! 』を読んだ。私はいま、大学1年生後期のゼミナールで、この『7つの習慣 ティーンズ』を教材にして授業を始めたところである。[(2009. 5. 5. 中川): このゼミは、それまでの「プロジェクトX + 日本語ライティング」のテーマを入れ替えたもので、より深い内容になり、学生にも受け入れられたと思う。]

 
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最終更新日 : 2009. 5. 7      連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp