TRIZ事例 (講演スライド)
溶接レス・パイプ構造体を実現するジョイント構造
 横内 稔 (株式会社 タカノ)
日本TRIZ協議会主催
第2回TRIZシンポジウム, 2006年 8月31日- 9月 2日, パナヒルズ大阪 (大阪府・吹田市)
掲載:2006.11. 29   著者の許可を得て掲載。無断転載禁止。

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編集ノート (中川徹、2006年11月15日)

ここに掲載しますのは、日本TRIZ協議会主催の第2回TRIZシンポジウムで発表されたもので、TRIZを適用して新製品を開発した優れた事例です。本件をはじめとして、同シンポジウムでの発表のうち数件を精選して、本『TRIZホームページ』に掲載いたします。編集者としての中川の個人の判断によって選択し、著作権者である著者の希望と許可に基づくものです。

TRIZシンポジウムの全体については、日本TRIZ協議会の公式ページでの報告を参照ください。また、中川個人の文責でのまとめとして、すでに英文で『Personal Report of The Second TRIZ Symposium in Japan, 2006』 として紹介、全発表をレビューして掲載しています (和文ではその概要のみを掲載)。そのレビューに記述した本発表関連部分を和訳して、本ページに掲載します。

発表のオリジナルな和文スライドをPDF 形式 で掲載します。また、同シンポジウムで同時投影された英文スライド (英訳担当: 中川 徹) もPDF 形式で英文ページに掲載しました。

このようなすばらしい事例をつくり上げ、発表し、またこのホームページへの掲載に同意いただきました著者に感謝します。

 


 

本発表の紹介とレビュー (中川 徹 (大阪学院大学)、2006年11月15日) : 

中川『Personal Report of The Second TRIZ Symposium in Japan, 2006』 (2006.11. 8掲載) より和訳

本シンポジウムの発表の中で最も優れたものの一つは、従業員65人の小規模な製造業メーカの若い社長が行ったものであった。横内稔 (株式会社タカノ) が「溶接レス・パイプ構造体を実現するジョイント構造」と題して、オーラル発表を行った。発表のスライドは近いうちに本ホームページに掲載する予定である。その発表は、自分達自身のアイデアに基づく新製品を開発した全プロセスについて述べており、長野工業高等専門学校およびTRIZのコンサルティング企業 (プラーナー社) の支援を受けたものである。かれらの開発プロセスは以下のようである。

(1) 種々の製品のアイデア出し
(2) アイデアの評価
(3) アイデアの決定: ステンレスパイプから溶接なしで作る構造体の開発
(4) 特許調査と市場調査
(5) 技術課題を明確化し、開発目標を設定する: 溶接レス構造の実現

(6) TRIZを使って技術課題を解決する:

a) 機能と属性の分析
b) 技術システムの進化のトレンドを使って解決策のアイデアを出す:  つぎのようなアイデアを得た: プレス成形ジョイント構造、発泡材構造、ウレタンゴム構造、熱硬化性接着剤構造、カシメ型ジョイント構造、パイプ端部バネ構造
c) 解決策アイデアを予備的に評価する:  カシメ型ジョイント構造を選択した。
d) 選択したアイデアに含まれる問題点を明確にする: 多くの異なる形状のジョイントが必要になる。
e) 選択したアイデアの問題点を解決する: TRIZの矛盾マトリックスを使い、分割の原理によって新しい「サイコロジョイント構造」のコンセプトを得た。
f) さらに解決すべき問題点: サイコロジョイントでは必要な部品の数が多くなりすぎる。
g) この問題点を解決する:  矛盾マトリックスを使い、「先取り作用」の原理をヒントにして、「タカナット (High-Nut)」のコンセプトを得た。

(7) 設計し、製造する
(8) 製品を評価する: CAE (3次元CAD) ツールを使って評価し、さらに公的機関 (長野県精密工業試験場) で実地テストをした。
(9) 開発した製品を顧客に提案する:

a) 新製品: 「タカノ サイコロジョイント」および「タカナット (高ナット)」

b) 顧客へのアッピール:  溶接なしだから環境にやさしくクリーン、現場で組み立て可能、多数回の分解リサイクルが可能。
c) 新製品のメリット: 高品質、30〜50%のコスト削減、80%以上の納期短縮が可能。
d) 特許: TRIZで生成したアイデアで、特許5件を取得した。
e) ビジネスの現状: 大手の顧客、共同開発の企業を得た。政府機関から研究開発資金の助成を受けた。
f) 将来:

(10) 結論:  困難な技術的課題を解決するのにTRIZが役立った。(本件の) TRIZを全面的に使った製品開発プロセスは、中小企業が商品開発型企業に転身していくのに大いに有用であると考える。

-- 新製品を開発していった実際のプロセスが、この発表のスライドにいきいきと、詳細に記述されている。著者たちが、明確なロジックをもって一歩一歩進んでいったこと、そのプロセスがきちんと発表されていることが大変印象的である。このプロジェクトが実施されたのは、3-4年前のことであり、それも首都圏/大都市圏でなく長野県で行われた。私たちは、この発表を聴いて、驚き、嬉しかった。TRIZが日本に着実に普及していっていることを実証する一つの事例だと思うからである。

 

スライド PDF 形式 (36スライド、4スライド/頁、714 KB)

 

 

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最終更新日 : 2006. 11.29.     連絡先: 中川 徹  nakagawa@utc.osaka-gu.ac.jp