TRIZ論文: TRIZシンポジウム2007 論文
機能とプロセスオブジェクト概念を中心にした差異解消方法 その2

高原 利生 (所属なし)

日本TRIZ協議会主催 第3回TRIZシンポジウム、2007年8月30日〜9月1日、東芝研修センター (横浜市港北区)
掲載:2007.12. 9.    著者の許可を得て掲載。無断転載禁止。

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編集ノート (中川徹、2007年12月 8日)

本件は、今年8月末の 第3回TRIZシンポジウムにおいて、ポスター発表として発表されたものですが、論文集 (Proceedings) には、和文および英文の両方で正式の論文が収録されています。本サイトには、著者の快諾を得て、これらの正式論文を和文ページおよび英文ページのそれぞれで掲載いたします。

私は、TRIZシンポジウムの紹介 (「Personal Report」) を英文で書いた際に、著者の英文論文を読み、そのレビューをしてすでに本サイトの英文ページに掲載しています。そこにも書きましたように、いままで約5年ほど高原さんが書かれた論文 (TRIZジャーナルへの投稿論文およびTRIZシンポジウムでの発表) を読んできましたが、難解で、正直にいってぴんときませんでした。今回TRIZシンポジウムの後で英文論文を読み、その最初の部分に書かれていることの深い内容と、明快な記述に驚きました (論文の後半はまたどんどん難解になり、まだ理解が追いつきません)。Personal Report には、私が理解した範囲のものを、やさしく紹介したつもりです。

なお、後日に知ったことですが、私が理解でき、紹介した英文論文の冒頭部分は、実は和文論文では省略されていたのです。その理由は、その部分は高原さんが昨年に別の学会で発表されており、こちらの論文集の紙数制限のために和文論文では省略されたようです。その意味では、私が英文論文を主体に読んだのは幸運なことでした。高原さんのいままでの論文をこの『TRIZホームページ』上できちんと読めるようにしたいと思っております。

本ページは、以下のように構成しています。

(a) 中川による紹介:  「Personal Report of the Third TRIZ Symposium in Japan, 2007」(中川 徹) の関連部分を和訳した。
(b) 著者による論文概要 (和文) (HTML版) および PDF 版
(c) 正式論文 (和文)  論文目次  PDF (301 KB)
(d) 英文ページ  正式論文 (英文) PDF (270 KB)

 

本ページの先頭 紹介(中川) 論文概要 (和文) 論文 (和文) PDF 論文 (英文) PDF TRIZシンポジウム2007 Personal Report (中川) 英文ページ

 


本論文の紹介 (中川 徹、2007年12月 8日)

中川 徹: 「Personal Report of Japan TRIZ Symposium 2007」 (2007.11.18、『TRIZホームページ』掲載 (英文)) 中の関連部分を和訳して示す。

高原利生 [18] が、「機能とプロセスオブジェクト概念を中心にした差異解消方法 その2」と題するポスター発表を行った。この著者は、Larry Ball の教材『階層化TRIZアルゴリズム』の和訳を (私と一緒に) した。本発表は高度に理論的なものであるが、幸いなことに、著者の意図と論理を正式の論文の形で英文で読むことができる (シンポジウム論文集所収) [注: 日本語でも論文が和文論文集に収録されている]。論文の表題が示すように、この論文は昨年の第2回TRIZシンポジウムで発表された著者の前報を発展させたものである。著者の「原因-結果ダイアグラム」という表現法がより明瞭になってきて、私にもようやく理解できるようになってきた。

「原因-結果ダイアグラム」 (すなわち、通常のセンスでいう、オブジェクト-属性-機能の関係を表現した図式) の基本単位は、つぎの図で示すものである。この図が表現しているのは、「オブジェクト1がオブジェクト2に作用し、その結果として、オブジェクト2の作用前の属性あるいは状態が、作用後の属性あるいは状態に変化した」ことである。

著者はこれらの関係をできるだけ一般的で統一的に表現しようと試みており、時間的変化や空間的変化などの概念もこの中に含めようとしている。そのため、著者はオブジェクトが持つ性質を分類して、「属性」 (その値が変化しにくいもの) と「状態」 (その値が容易に変化するもの) との2種に分けている。著者はまた、「作用」と「運動」とをともに、「プロセス」という概念に含めている。これらの予備知識を持って見れば、以下に示す「原因-結果ダイアグラム」の3つの例を、あまり詳細な説明を受けないでも、あなたはきっとスムーズに理解できることであろう。

一つの例として、「人が額縁を紐で釘に懸ける」という行動 (作用)についての「原因-結果ダイアグラム」は、つぎのようである。

 

もう一つの例として、「靴のドライヤ」に対する「原因-結果ダイアグラム」を示そう。ドライヤで発生させた、熱く乾燥した空気が、靴を熱し、その温められた靴が、靴の水分 (湿気) を熱して、それを蒸発させ、それを動かして靴から離れさせる。図の点線の楕円で示しているように、著者はより高次の (粒度の高い) プロセスを認識し、空気のプロセス、靴のプロセス、および水のプロセスにまとめている。

「原因-結果ダイアグラム」の第3の例は、[TRIZの教科書問題の一つで] 「(金属の) キューブが容器の中で酸によって侵食されるが、容器自身も酸で侵食され、ときどき容器を取り替える必要がある」というケースである。注意したいのは、この図に「人」が含められ、「酸を容器に注ぎ、キューブを酸の中に入れ、容器を取り替える」という作用 (行動)を行っていることである。ともかくこの図をよく見てみると、いろいろなオブジェクト、それらの性質、そしていろいろなプロセスの間のさまざまな関係を理解することができるだろう。

この紹介に書いたものは、著者の論文のほんの最初の部分にしかすぎない。著者は (この後) つぎからつぎにさまざまな概念を導入している。「人がオブジェクトを操作する4類型」、「オブジェクトの変換の3つの原理」、などである。それらを使って、著者は「差異を解消する」一般的な構造を議論している。私は (この紹介では) これらすべての理論をスキップしておく。その理由は、論文に具体的な例が示されていないこともあって、私が著者の論理にまだよくついていけないからである。

*** [中川所感] TRIZシンポジウムで2005年、2006年、2007年と続けて発表されてきた著者の論文を読んで、この紹介に書いたように、著者の意図をようやく部分的に理解できてきた。上記の例を示すに際して、著者は、単に「プロセス」といわずに「プロセスオブジェクト」という用語を使う。私はまだこの用語の必要性を理解できない。なぜなら、著者は「オブジェクト」 (著者の用語では「システムオブジェクト」) をいつも長方形で示し、「プロセス」 (著者の用語は「プロセスオブジェクト」 ) を楕円で示して、使い分けているのだから。単に「オブジェクト」や「プロセス」と呼ぶ方が、ずっと理解しやすいだろう。ともかく、私はこの論文を『TRIZホームページ』に掲載するように、招請したいと思っている。[(2007.11.14追記) 論文を英語と日本語で掲載できることになりました。]

 


概要 (Extended Abstract)

機能とプロセスオブジェクト概念を中心にした差異解消方法 その2

高原 利生 (所属なし)

発表: 日本TRIZ協議会主催 第3回TRIZシンポジウム、
2007年8月30日〜9月1日、東芝研修センター (横浜市港北区)

概要

問題解決,新機能実現,理想化という差異解消の全体が,現実世界の認識,操作,変更の内容である.差異解消は,目的設定,オブジェクト操作で行われる.目的設定がオブジェクトの言葉で行われ,プロセスオブジェクトを含む全てのオブジェクト操作が,三種のオブジェクト変更の論理型毎に形式化して行われるととらえることにより,差異解消の全体が,統一したインプット−アウトプット関係によって行える.理想化に二つの分野がある.

 

内容説明

オブジェクトは,システムオブジェクト (存在) とプロセスオブジェクト (運動) からなり,認識できる全てを網羅する.プロセスオブジェクトの操作方法を明らかにした.

新しい機能の実現,問題解決,理想化の三つが現実世界を操作,変更する差異解消の目的の型を網羅するものである.

オブジェクトをプロセスオブジェクトを含めて理解し,プロセスオブジェクトの操作方法を明らかにしたことにより,差異解消におけるオブジェクトの目的設定,オブジェクト操作が統一したインプット,アウトプット関係によって行えることを示した.

 

論文概要 (和文) PDF 形式 ( 1頁、134 KB)    


論文 (和文) PDF 形式 ( 8頁、301 KB)    

目次

1. はじめに

2. 理論の要件と準備

2.1 認識と操作の理論の要件
2.2 オブジェクトと機能
2.3 オブジェクト操作,変更
       2.3.1 オブジェクト変換の原理
       2.3.2 人によるオブジェクト操作の原理
       2.3.3 まとめ

3. 差異,差異構造,オブジェクト操作

3.1 オブジェクト変更の三つの論理型と差異解消の三つの目的型
3.2 差異解消の構造

4. 結論

参考文献

 


英文ページ

論文 (英文) PDF形式 (16頁、270 KB)

 

 

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最終更新日 : 2007.12. 7.     連絡先: 中川 徹  nakagawa@utc.osaka-gu.ac.jp