ユビキタスのためのTRIZ マーケティング |
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掲載:2015. 2.10; 更新: 2015. 3.27 |
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編集ノート (中川 徹、2015年 2月 5日)
本稿は、昨年の第10回日本TRIZシンポジウム2014で発表されたものです。私は、このシンポジウムの参加報告({Personal Report」)
で、本発表をつぎのように紹介し、推奨マーク○ をつけました。
研修やコンサルティングにおけるユーザの顕在的/潜在的なニーズに応えるための、さまざまな試行・技法・ツールなど10事例を発表している。40の発明原理のスマホ版(1画面/原理)、IT/ソフト分野のための40の発明原理(スマホ版)、他の諸技法をTRIZの技法と関連づけ/意味づけて捉える(オズボーンのチェックリスト、NM法、ホンダのワイガヤ、目的展開、QCストーリなど)。TRIZは高価なものではない、いつでも、どこでも、だれでも使えるようにと、発表者が努力している。
本『TRIZホームページ』に掲載するにあたって、著者が発表時のトークを書き起こして提供くださいました。そこでご覧のように、スライドの画像とそのスライドの説明とを組にして掲載することができました。(スライドのより鮮明なPDF版は、日本TRIZ協会のサイトに1月19日に公開されましたので、そちらにリンクを張りました。)
掲載にあたって、説明つきのスライドを再度読み直して、素晴らしい発表であると再認識しました。上記Personal Reportでは簡単にしか紹介できませんでしたが、コンサルタントとして活躍している著者の沢山の工夫が非常に分かりやすく発表されています。著者がTRIZのワークショップを指導しながら、研修者から聞く「顕在ニーズ」と自分で深く考えた「潜在ニーズ」に対して、積み上げてきた解決策をいくつもの例で説明しています。
本ページでは、論文概要、スライドの画像とその説明(発表時のトーク)をHTMLで掲載し、スライドPDFのTRIZ協会へのリンク
を張ります。英文ページ
では、論文概要とスライドの画像(英訳は著者自身による)を掲載し、PDF
はTRIZ協会へのリンクにしています。
なお、著者のWebサイト(http://www.proengineer-institute.com/)
には、この発表で紹介している技法や事例の詳細が記述されていて、貴重です。是非ご覧ください。
本ページの先頭 | 概要 | スライド先頭 | 顕在ニーズへの解決策 | 潜在ニーズへの解決策 | まとめ | スライドPDF (TRIZ協会) |
TRIZシンポ2014Personal Report(中川) |
英文ページ |
発表論文概要 ==> PDF
ユビキタスのためのTRIZ マーケティング
- いつでも、どこでも、誰でも、TRIZ を利用できるように -粕谷茂 (ぷろえんじにあ)
2014年9月11-12日
第10回 日本TRIZシンポジウム、早稲田大学西早稲田キャンパス(東京都新宿区)
概要
9年前の第1回TRIZシンポジウムで、TRIZの課題についてアンケートが実施された。その結果、次のような課題 が抽出された。
1. TRIZのSWツールは高すぎる。
2. TRIZは、IT/SWやビジネス分野に使えない。
3. 教育や研究機関への広がりが小さい。また、筆者は、9年間、講演、セミナー、コンサルティングを行ってきました。そこで、収集した主要な意見は、 次の通りである。
<顕在ニーズ>
1. 従来のTRIZ事例は難解のため、分かり易い事例を示して欲しい
2. 特許にどう生かせばよいのか
<潜在ニーズ>
1. 「直感的に理解できる」(ユニバーサルデザイン原則)の実現
2. 抽象化スキルを磨くにはどうすればよいのか
3. 従来使ってきた科学的手法とどう違うのか
4. アイデア出し以外の利用法はないのか技術者が、TRIZに興味を持ち、いつでも、どこでも、誰でも利用できるように、TRIZの課題をどうブレークス ルーするか、ニーズ分析を基に試行してきた。本報告では、解決策として10事例を紹介する。その判断基準とし て、AIDMAの法則を活用した。
内容説明
発表内容は次のような項目である。 [注: これは発表スライドの目次になっています。(中川)]
2.1 TRIZシンポジウムアンケート結果からの顕在ニーズ
2.2 講演・セミナーアンケートからのニーズ
2.3 他の科学的手法からの潜在ニーズ3.1 矛盾マトリクス自動検索&分かり易い事例集
3.2 インターネットのDBをEffectsに変える活用法
3.3 IT & SW 事例集
3.4 特許出願へのTRIZの活用法4.1 イラストで40の発明原理を学ぶ
4.2 オズボーンのチェックリストと40の発明原理
4.3 NM法の中のリソース、Effects、SLP等
4.4 ホンダのワイガヤの真の意味
4.5 抽象化スキルを磨くには
4.6 9画面法で仕事のプロセスを視える化5.1 技術者へのアンケート結果のトレンド
5.2 結論
発表スライド と 発表トーク PDF (日本TRIZ協会サイト)
ユビキタスのためのTRIZ マーケティング
- いつでも、どこでも、誰でも、TRIZ を利用できるように -
粕谷茂 (ぷろえんじにあ)
2014年9月11-12日
第10回 日本TRIZシンポジウム、早稲田大学西早稲田キャンパス(東京都新宿区)
1. 背景と狙い
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(1) こんにちは、「ぷろえんじにあ」の粕谷です。ぷろえんじにあでは、このように、感動製品の定義をHPのタイトル名に掲げております。初めに、トピックスを一つだけ紹介させてください。ちょうど一年前から、熊坂さんが作られた「ものづくり革新ナビ」というサイトに、週一本のペースで記事を書いています。先週までで、合計60本になりました。興味のある方はチェックしてみてください。 今日は、ユビキタスのためのTRIZマーケティングというテーマで、技術者を対象に、TRIZをどうしたら使ってもらえるか、10年間実施してきた工夫例の一部を報告します。私は、皆さんが「えっ!」と思うような仕事を、いくつか引き受けてきました。例えば、防衛省の技幹への創造性教育や耳の聞こえない学生を対象にしたものづくり講座などです。特に、耳の聞こえない学生さんとコミュニケーションは大きな課題でした。結論はズバリ、「直感的に理解できる教材」です。これは、ユニバーサ性またはやユビキタス性です。 ところで、私は、ユビキタスというKWに23年前出会いました。ゼロックス・パークのマーク・ワイザーが作った資料とビデオからです。これは、鳥肌が立つ位の感動でした。 |
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(2) ここで、ユビキタスの定義を確認しておきます。主に、2つの意味があります。一つ目は、「いつでも、どこでも、誰でも」、二つ目は、「技術を意識させないで、自然な人間の交流やワークスタイルを実現すること」。その特徴は、この4つです。良い機会ですので、23年前のビデオをチョットだけ流してみます。これを見ると、スマホやiPadやTV会議システムまで考えられていました。マーク・ワイザーには、理想解が視えていたようです。アップルのジョブスやマイクロソフトのビルゲイツは、これらをヒントにMacやWindowsなどを事業化したのです。 |
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(3) 発表内容は、背景と狙い、顕在ニーズと潜在ニーズ、各々のニーズに対する解決策、まとめの順となります。 |
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(4) 背景は、第一回TRIZシンポジウムやセミナー等で貴重な提案を受けてきたことです。この他に、もう一つ気になっていることがあります。Google Trendsの「TRIZ」へのアクセス数が、10年間で約1/3になっていることです。韓国でさえ、落ち込みは顕著です。そこで、技術者が、TRIZに興味を持ち、いつでも、どこでも、誰でも利用できるようにしたい。TRIZの課題をどうブレークスルーするか、マーケティング・ドメインのニーズを基に、試してきました。なお、ここでは、このようなAIDMAの法則を判断基準として活用しました。 |
2. 顕在ニーズと潜在ニーズ
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(5) まず、第一回TRIZシンポジウムのアンケートの顕在ニーズに着目しました。つまり、TRIZのSWツールが高価であること、IT/SWやビジネス分野に使いづらいことにフォーカスしました。三番目の対応策は、大学で10年間、ワークショップをやって、この場でも3回ぐらい発表しましたので、割愛します。 |
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(6) 次に、セミナーアンケートの主な意見を顕在ニーズと潜在ニーズに分けてみました。顕在ニーズは、難解だから易しくして欲しい、特許にTRIZをどう生かせばよいのか。潜在ニーズは、直感的に理解できる方法、抽象化スキルの磨き方、他の手法との違い、アイデア出し以外の利用法などです。 |
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(7) また、潜在ニーズを独自の視点でも探ってみました。このグラフは、日経ビズテックがアンケート調査したものです。横軸に手法の導入率、縦軸に効果をプロットしたものです。10年間、この位置づけはあまり変化していないかもしれません。ここで、何に着目したかというと、各々の手法の特長や本質です。それらをKWとして抽出しました。例えば、シネクティクスやNM法は「アナロジー」、トヨタ生産方式は「なぜなぜ分析」、ワークデザインは「目的展開」。つまり、これらをTRIZの学習や指導にどう生かすかを考えたわけです。 |
3. 顕在ニーズに対する解決策事例
(8) まず、顕在ニーズの対応策からお話します。価格を安く、分かり易くという要望に対して、矛盾マトリクス、40の発明原理、進化トレンド事例などを書籍化しました。その後、「ぷろえんじにあ」のHPに公開しています。矛盾マトリクスは、このように自動検索できます。40の発明原理は、身近なHW、SW、ビジネス事例を集めました。これはスマホサイズにしましたので、ブレストなどに活用できると思います。また、ぷろえんじにあの40の発明原理事例集は、Google検索でトップ表示されていますので、ある程度使われているのではないかと思います。
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(9) 次は、Effectsの使い方です。私は、TRIZと出会う前、アイデアに困り、切羽詰まった時、いくつかの方法で、ヒントを模索していました。例えば、知財部のデータベースをパラパラめくったり、書店や図書館にある書籍のタイトルや見出しをスキャンしたり、異分野の展示会の出品物のメカニズムを応用できないかと考えたりしていました。皆さんは、どうされていましたか。実は、これらがEffectsでした。今では、インターネットさえあれば、「Effects」環境がすぐ作れるとPRしています。課題のKWを機能・属性等のKWと併用することで欲しいアイデアに近づきます。例えば、Googleで検索する時、「空気 流量 増大させる 定理」と入力すると、「ベルヌーイの定理」が表示されます。これは絞り込まれた質の高いヒントになります。 |
(10) 次に、IT/SW事例の紹介です。最初は、「SEのスピード発想術」という本に掲載しました。出版契約満了のため、先月から「ぷろえんじにあ」HPにも公開中です。いくつか拡大してみます。例えば、「7.入れ子原理」は、ウェブリンクの階層。
(11) 「14.曲面原理」は、3Dプリンターで、自由に立体的な曲面が加工できるという事例。「19.周期的作用原理」は、アジャイル開発の事例。「40.複合材料原理」は、クラウドの事例です。
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(12) 次に、特許出願にどう生かせばよいかです。弁理士の西森さんが書かれた「良い特許明細書とは」の5か条は、非常に分かり易い。それと対比させて、TRIZをどう役立てるかを紹介しています。また、詳細事例として、田中耕一さんの特許と光触媒の特許も比較しています。 |
4. 潜在ニーズに対する解決策事例
(13) ここから、潜在ニーズへの対応策になります。40の発明原理を「直感的に理解できる」ようにできないかを長い間考えてきました。そこで、インパクトがあり、発明原理の意味も咀嚼されたイラストを栗原幸男さんが描いてくれました。耳の聞こえない学生だけでなく、TRIZは難しいと思っている人の誤解を解くツールにもなりました。例えば、「1.分割原理」は、「一刀分割試し切り」、「13.逆発想原理」は、「巡査の逆逮捕」。
(14) 「22.災い転じて福となす原理」は、「土砂降り後の虹」、「29.流体利用原理」は、「服地洗いの水流し」などです。
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(15) 次に、40の発明原理をオズボーンのチェックリストと併用できないかを考えました。対応表を作成し、これをTRIZだけのアイデア出しに詰ったときに提供しました。波及効果として、抽象化の訓練にもなったようです。 |
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(16) 対応表の後半は、このようになっています。 |
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(17) 次は、NM法とTRIZはどう違うのかを考えました。なぜ、NM法かと言うと、中山正和さんのお弟子さんたちと若い頃、一緒に仕事をしたことがあります。彼らの出すアイデアの多さと質の高さにびっくりしていました。そこで、そのノウハウを聴き出しました。種明かしをすれば、「抽象化能力の高さ」と「好奇心旺盛な質問力」でした。NM法は、アナロジー手法です。このようにTRIZツールと共通点や類似点があり、安価で、非常にシンプルで分かり易い。「例えば、××のように、KWとの関連で見つける」「そこで何が起きているのか」などの質問項目は、TRIZにも非常に効果的でした。 |
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(18) 次は、ホンダのワイガヤです。ワイガヤは英語にもなっています。なぜ、ワイガヤかと言うと、私のワイガヤについてのブログ記事閲覧ランキングが上位で、共感を得ていると感じたからです。その必要性が、イノベーションの見取図にあります。つまり、本質的目標である絶体価値達成の仕掛けの重要ツールとなっています。 |
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(19) では、ワイガヤとは何か。ホンダOBからのヒアリングで掘り下げてみました。具体的には、逐語記録を分析しました。定義、テーマ設定法、議論の仕方は、このようになっています。この中で、通常のブレストとの違いは何か。例えば、「ホンダは何のためにあるのか」のように、目的展開で本質を追求しています。つまり、ワイガヤ≒ブレスト+目的展開だった訳です。 |
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(20) 次は、「抽象化スキルをどう磨いたらよいか」というテーマです。多くの企業では、品質問題にはトップダウンで臨んでいます。そのため、なぜなぜ分析は多くの技術者が体験しています。しかし、セミナーでアンケートを取ると、目的展開ができる人は非常に少ない。ARIZでは使っていませんが、ダレル・マンの体系的技術革新の中には、Problem Explorerとして取り上げられています。開発業務の課題定義では、非常に重要なプロセスです。ルールは3つぐらい押さえればOKです。私のセミナーでは、抽象化思考を磨くため、ワークデザイン法のように、「目的展開」をTRIZの必須ツールとして訓練しています。 |
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(21) 次は、9画面法の応用例です。仕事のプロセスをシステムとして捉え、視える化できる方法を模索していました。古典的QCストーリーは、このように「テーマの設定」から「歯止め」の流れとなっています。これを、仕事のやり方と結果と課題に分けて、過去、現在、将来に分けて整理し直すと仕事のプロセスが非常に分かり易すく可視化できました。大きな開発テーマの場合、上位システムや下位システムに分けて整理します。結果として、仕事が立体的に把握できるようになりました。 |
5. まとめ
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(22) 最後に、技術者へのアンケートの結果のトレンドです。同じ条件のセミナーをピックアップしてプロットしたものです。このように、TRIZへの理解度は着実に向上しました。ただし、ここでは、大学生のデータは、条件が違うため、入れていません。 |
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(23) 今日のまとめです。「高価である」や「SWには使えない」の大きな問題点は、かなり払拭できたのではないかと思います。特に、分かり易くするためのイラスト版40の発明原理は、大学生の動機づけに非常に有効でした。他の手法との比較は、興味とニーズを喚起できました。目的展開は、抽象化の訓練やテーマの掘り下げに役立ちました。そして、SRストーリーのような9画面法を応用した仕事のやり方は、課題の可視化と共有化に有効でした。 |
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(24) 最後に、「いつでも、どこでも、誰でもTRIZ」。これがTRIZ導入の究極の理想解ではないでしょうか。今日はお疲れの時間帯ですが、ありがとうございました。 |
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最終更新日 : 2015. 3.27 連絡先: 中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp