Innovation 論文/解説、ソフトツール

ソフト「札寄せ用具」と ウェブサイト「第一考舎」の紹介

片平 彰裕、 2014年12月28日

主として、ウェブサイト「第一考舎」(片平彰裕) からの抜粋
http://members3.jcom.home.ne.jp/dai1kousha/

掲載:2015. 1. 18; 更新: 2015. 1.20

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編集ノート (中川 徹、2015年 1月12日)

本ページで紹介してもらっていますソフトとWebサイトを知ったのは、昨年12月 6日に開催された、日本創造学会の「第34回クリエイティブサロン」での、片平さん自身による紹介でした。

注: 日本創造学会は、創造性教育、創造性技法、創造的問題解決など、創造性の全分野を扱う学術団体です。1979年創立、1984年日本学術会議登録団体ですから、35年以上の歴史を持って、この分野をリードしてきました(TRIZはその分野の中の(比較的新しい)一つの技法・方法論ということになります)。その活動の最近の様子は、ホームページにいろいろ掲載されています。論文誌発行(年1回)、研究発表大会(毎年秋)、研究会開催(2ヶ月に1回程度)をしています。最近の研究会は、「クリエイティブサロン」という名称で、2ヶ月に1回、土曜の午後、講演とワークショップ(その夜に懇親会)をしており、会員(無料)だけでなく非会員(500円)のどなたでも参加できます。開催案内などは、学会ホームページの「ホーム」のTopics欄で参照できます。(学会のホームページはいろいろな変遷を経ているようですが、最近は、定期会報誌(2ヶ月に1回)も公開していますので、その活動の様子がよくわかります。-- 『TRIZホームページ』の読者のみなさんにも、日本創造学会の研究会などへの参加、ご入会をお薦めします。

紹介くださったのは、「札寄せ用具」という名前の自作ソフトでした。

MicrosoftのExcel上で、まず、いろいろな考え・情報などを短い文で1行ずつ記述する。
するとそれらが四角の「札」になり、その札をウインドウ上で自由自在に動かすことができる。
札と札を滑らかな線で結ぶことができる。
また、札や線の一群を囲んだものは、その集団のままで新しい一つの札であるとして扱うことができる。
札や線を追加していって、その図を印刷することができ、また、
最後に一見通常の(文章が並んだ形の)Excelファイルに戻して、そのまま格納することができる。
これらの機能は、Visual Basicを使って、Excelマクロの形で作成されており、Excel 2010(以上)であれば、簡単に使うことができる。
無料でダウンロードできる。 ・・・・というのです。

このソフトの簡便さは驚きでした。同様の目的で使えるソフトとして、私は、イギリスで開発された「Southbeach Modeller」を紹介いしました 。それは、「思考をモデルとして表現する」ためのソフトで、よく考察され、いろいろな機能を実装したものです。ただ、あまりにも機能が豊富で、使いこなすのにはそれなりに時間を掛けて習得しなければなりません。それに対して、片平さんのこの「札寄せ用具」は、まったく直観的で、やりたいことができる必要最小限の機能を提供しています。片平さんのソフトを使うと、自分のもやもやした考えを整理・発展させていくことができる、ということはよくわかりました。

その後私は、片平さんが作成されているWebサイト「第一考舎」 を読んで、さらにびっくりしました。片平さんは、「その人にとって役に立つ考えを思いつくこと」を「考作」と呼び、「考作」を容易にするための方法について、体系的に記述してあるのです。そのときの私の感想は、片平さんあてのメールにつぎのように書きました。

考えを作る「考作」ということについて、独自に非常によく全体的にまとめて記述されているのを知りました。その書き方が、初心者にわかるように、押しつけ的ではなく、それでいてはっきりとした立場で書いておられることがすばらしいと思いました。

これ以上のことは、私が書くべきことではありません。片平さん自身が書かれた(「第一考舎」からの抜粋の)以下の紹介文をお読みください。なお、読者の便を考えて、このHTML版では、章・節に番号をつけ、目次をつけました。片平さんの元の文書は、ペン字様のフォントYOzFontPを使っており、PDF版にしてあります。

なお、片平彰裕さんのプロフィルは、日本航空電子工業(株)を2011年定年退職。日本創造学会会員です。 

目次

A.ソフトウェア「札寄せ用具」

B.ウェブサイト「第一考舎」  

1. 「正門」 1.1  第一考舎とは  
1.2  第一考舎の構成
2. 「準備室とは」 2.1  考作とは
2.2  課題について
2.3  考作を助ける道具
2.4  自分の考作を進化させる
3.  「考作室とは」 3.1  考作を助ける道具
3.2  考式集
3.3  標準的な考作法
4.  「図考室とは」 4.1  図考室の構成
4.2  札寄せ用具
4.3  札寄せ法
              概要、個人用の札寄せ法、会議用の札寄せ法、
              KJ法と札寄せ法の違い
5.  「研究室とは」  

 

本ページの先頭 本文の先頭 札寄せ道具(説明) Webサイト 第一考舎(説明) 準備室 考作室 図考室 研究室 本文PDF 第一考舎サイト

札寄せ用ダウンロードのページ 

読者の声 (2014.12〜2015. 1)

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ソフト「札寄せ用具」と ウェブサイト「第一考舎」の紹介

片平 彰裕

2014年12月28日

A.ソフトウェア「札寄せ用具」

これは、ポストイットのような「札」と「枠」、「線」を、エクセルのシートに簡単に書き込むためのソフトです。

書き込んだ「札」と「枠」には文字を記入でき、それらをマウスで自由に動かせます。そして札に書いた文字はマイクロソフト・エクセルのセルに一括してコピーでき、その逆も出来ます。

文字を書き込んだポストイットを模造紙に貼り付けたり、動かすのと同じようなことを、パソコンで出来るのです。
データファイルとして使うのは、エクセルのファイルなので、作った「札」と「枠」、「線」をパワーポイントやワードに貼り付けることも簡単にできます。

元々は、「札寄せ法」という思考方法のために作ったソフトなので、「札寄せ用具」と名付けたのですが、様々な用途に利用することが出来ます。例えば、集めた情報を基に案を考える、自分の考えをまとめるなどの各種思考法のツールとして利用でき、文章の構成を行う「こざね法」をパソコンで行うこともできます。また画面をプロジェクタ等で大きく写して、会議での発言を整理することも有効です。

この「札寄せ用具」はウェブサイト「第一考舎」 の「図考室」から無料でダウンロードできます。

次の図は、札寄せ用具による作図の例です。このような札(四角形)、枠(丸角四角形)、線は、エクセルのシートで自由に動かすことが出来ます。


B.ウェブサイト「第一考舎」    

考作に関する個人的な研究結果や、考作を助ける道具について掲載しているウェブサイトです。  

以下に、現時点の内容をページごとに抜粋して記載します。


1. 「正門」

1.1  第一考舎とは  

この第一考舎は、考作に関する研究結果や、考作を助ける道具について掲載しているウェブサイトです。

▼ 考作

 

第一考舎では、「その人にとって役に立つ考えを思いつくこと」を考作と名づけています。

考作を言い換えると、問題に気づいても求める答えを、直ぐには思いつかないときに、「さぁ考えるぞ」と意識して考えることです。

▼ 第一考舎で扱う範囲

 第一考舎で扱うのは考作ですが、これは考えるという行為の一部分です。 考えるという行為は、大雑把に言えば考作と評価という二つの部分に分けられます。

 

一つ目は考作の段階であり「何を考えるのかを決めると頭に考えが浮かぶ」という段階です。

二つ目は評価・判断の段階であり「その思いついた考えが役に立つのかどうか、良いのかどうかといった評価、あるいはそれを他人に伝えるのかどうか、書くのかどうか、行動に移すかどうかといった評価・判断をする」段階です。  

評価でダメなら考作しなおすし、実行した結果を評価してダメなら考作しなおすことになります。  

このように考えるという行為には考作と評価・判断という二つの段階があり、更にその考えを実行する場合もありますが、第一考舎で扱うのは考作です。評価や実行に関しては、ほとんど触れません。  

また、人間は、五感の中で視覚の情報を最も多く利用しているので、考作の中でも、視覚を活用するために図を利用する方法を特に「図考」と名づけました。

▼ 第一考舎が目指すこと

 近年急速に進歩している脳科学などの最新の研究結果も取り入れて、「もっと上手く考作するにはどうしたら良いか」を、より理想に近づけることを目指しています。

 「考える」あるいは「心」といったことについては、古く紀元前から哲学の分野で主に論理的に考え抜くことによって研究されていました。

その後19世紀に心理学が誕生して科学的な実験や統計手法を利用して実証をしながら研究されるようになりました。

更に20世紀後半からは、認知心理学、認知科学、認知神経科学、情報工学、創造工学など様々な分野で研究されています。  

しかし、このような研究が行われているにもかかわらず、いまだに心がどのようにして生じているのかや、なぜ自分の考えを意識できるのかなど、基本的なことも分かっていないのが現状です。

とはいえ、心や考え、そして記憶などの働きに関係している脳の場所や、脳神経細胞間のつながり方などが、少しずつ分かってきているので、それらの研究結果も利用しながら、「もっと上手く考作するにはどうしたら良いか」を模索したいと考えています。

 

1.2  第一考舎の構成

第一考舎は、7つのページで構成しています。  

表玄関の「正門」と次の5つのページ、それに筆者に連絡文を送るための「連絡箱」です。

準備室   考作室や図考室に入る前の予備知識を集めた部屋です。

考作室   考作を助ける道具全般を探究する部屋です。

図考室   図を利用して考作を助ける方法を題材にする部屋です。ソフトウェアツールである「札寄せ用具」もダウンロードできます。

研究室   考作の原理探求や、考作を助ける方法の研究・開発、そして今までに先人が提案した様々な思考法は、なぜその方法で考えると答えを思いつきやすくなるのかなどを研究する部屋です。

資料室   参考にした書籍などを紹介する部屋です。


2. 「準備室とは」

 考作室や図考室に入る前の予備知識を集めた部屋です。  

2.1  考作とは

 一般に「考える」という言葉は、さまざまな意味に使われますが、その中には、「考案する」「発想する」「案出する」「着想する」などの意味もあり「思い付く」もその一つです。  

第一考舎では、「その人にとって役に立つ考えを思いつくこと」を考作と名づけているので、考作は上の意味での「考える」の更に特殊な場合を意味しています。  

そして考作は、考えを思いつくまでの過程であって、実行案として完成させるまでを扱っているのではありません。

2.2  課題について

 第一考舎では「考作をする題材」を「課題」と呼ぶことにしています。

課題は、

「〜を達成するにはどうしたらいいか」  
「〜の原因は何か」  
「〜を解決するにはどうしたらいいか」  
「〜がもっと上手くなるにはどうすればいいか」  
「今の状況はどういうことか理解する」  
「〜さんに、どうアドバイスすれば理解してもらえるか」  
「〜を修理するにはどうしたらいいか」  
・・・・・

といった様々なことであり、特別なものではなく、常日頃考える題材になっているものです。  

なお課題の表現は、何をしたいのかを明確にするために、できる限り「〜を〜する」の表現に書き換えています。

上記の例では、  

「〜を達成する方法を考え出す」  
「〜の原因を探す」  
「〜を解決する方法を考え出す」  
「〜がもっと上手くなる方法を考え出す」  
「今の状況を説明する」  
「〜さんに理解してもらうためのアドバイスの内容と仕方を考え出す」  
「〜を修理する方法を考え出す」

としています。

2.3  考作を助ける道具

他の人も同じかどうかはわかりませんが、私の場合は、考作の主要部である「頭の中で考えを作り出す過程」を意識して行うことが出来ません。

つまり、課題を意識した後は、無意識のうちに頭の中で考えが作り上げられて、その結果が自分の考えとしてフッと浮かんで来たかのように意識できるようになるのです。(詳しくは研究室を参照してください)

 このため、「頭の中で考えを作り出す過程」については、そのやり方を意識的に変えることが出来ません。

意識的にできるのは、

「課題を工夫すること」  
「考えるための予備知識を工夫すること」  
「出てきた考えをどのように扱うかを工夫すること」

です。  

第一考舎で紹介する「考作を助ける道具」とは、これらの工夫を組合わせたものです。  

それらは、使えば必ず考えを作り出せるという「考えの製造機」ではなく、考えができやすくなるように、頭の中を耕すような道具であったり、頭の中で出来た考えが外に出やすくなるように通路を広げるための道具であったりします。  

頭の中を耕すというのは、課題に関連するかもしれない記憶を引き出しやすくすることを意味します。  

考えが外に出やすくするというのは、無意識の内に作られた考えが意識上にフッと現れたときに安易に捨て去らないということです。  

これらの道具は「考えの製造機」ではないので、使って考えても考えが出ないこともあります。その場合は、何回かやってみたり、別の道具で考えてみる必要があります。

2.4  自分の考作を進化させる

 私は、「常に自分の考作を進化させていたい」と思っています。

つまり、昨日より今日、今日より明日の方が、考作が上手くなっていたい訳です。

自分がその時に望んでいるような考えを、より早く思いつくようになりたいのです。  

では、「もっと上手く考作をする」には、どうすれば良いのでしょう。  

私は、「もっと早く走るには」、「もっとピアノを上手く弾くには」、「もっと早く単語を覚えるには」、「もっと料理を上手く作るには」などと基本的には変わらないと考えています。  

 

それには先ず自分が、どうやっているのかを自覚することだと思います。

もしそのやり方に欠点が見つかれば、修正してもっと上手く行くやり方にするとか、他の人が提案している様々な方法と比較してみて、より良いと思うやり方を試してみます。

そして、そのやり方を上手くこなせていないと思えば、熟練度を上げるために練習します。  

私は、この「方法の選択・修正・習熟」を繰り返すことで、考作は上手くなるのだと考えています。  

また考える題材によって、考える方法の使い分けも必要だと思います。

これは、全ての課題に使える万能な方法はなく、その時の状況や目的に応じた様々な方法があるということです。  

「考作研究室」には、「自分のやり方を確認する」のに役立つ材料として、「ヒトはどんな仕組みで考えているのか」、「ヒトはなぜ何も思いつかないことがあるのか」、「ヒトはなぜ考え間違いをするのか」について、わかっていることを掲載します。  

そして、自分のやり方と比較するための材料として、世の中で提案されている方法や、私が行っている方法を「考作室」「図考室」に掲載します。


3.  「考作室とは」

 様々な課題を達成するための何かを思いつき易くするために、考作を助ける道具全般を探究するところです。

考作を助ける道具は、「課題の工夫」、「考えるための予備知識の工夫」、そして「出てきた考えをどのように扱うかの工夫」をするための方法です。(研究室の「考える仕組み」を参照してください。)

3.1  考作を助ける道具

1. 考式集

 先輩諸氏が公表された思考の方法つまり考作を助ける道具を分析すると、いくつかの基本的要素と言えるような、考え方があることがわかりました。

 それぞれの思考の方法は、基本的要素を全て含んでいるのではなく、それぞれの方法の目的にあったいくつかの基本的要素を持っています。  

これらの基本的要素を考式と名付けて、これらを紹介する考式集を用意しました。

2. 標準的な考作  

私が考える標準的な考作を紹介します。  

これはあくまで基本形であり実際に考作をするときは、その時の状況に合わせて、この方法を基に一部を省略したり、追加したり、考式を使う順番を入れ替えています。  

過去に先輩諸氏によって公表された思考の方法には、その作者自身が行っている方法を他の人にも使えるように手順化して公表したものも多くあります。

ところが、それを公表した本人は、その方法をそのまま使い続けるのではなく、改良を重ねたり、次々に別の方法を開発しているようです。

その理由は人の能力は固定したものではなく、時と共に進化し続けているので、それに合わせて思考の方法も変える必要があるからなのだと思います。

それは初めに公表した方法が、ダメになったのではなく、公表した人には合わなくなったということです。

ということで、人によっては初めに公表された方法が合う人もいれば、改良された方法の方が合う人もいるかもしれません。  

なお改良された思考法であっても、そこには考式が埋め込まれており、その考式の並べ方や重みの置き方を変えているように思えます。  

私も自分の能力や考える目的に合わせて、考作を助ける道具を改良していこうと思っています。(準備室の「自分の考策を進化させる」を参照してください。)

3.2  考式集

考作を助ける道具の基本的要素である考式を紹介します。

良い考えを思いつかないときに、この一覧の中で自分がやっていないと思う考式を意識的に使ってみると、効果が出るかもしれません。    

(この紹介文では、それぞれの考式の説明は省略しています)

1. 考える段階を分ける

課題に気づいたときに、「この課題の答えはなんだろうか」と考えるのが普通です。

それで良い考えを思いつかないときは、いくつかの段階に区切って考えるという考式がいろいろあります。

それは全てを考えるより、そこだけ考える方が考えやすいことがあるからです。

これには、認知心理学などで言われているような「注意には限られた容量がある」や「作動記憶で同時に保持出来る事柄は7±2個」ということが関係しているようにも思います。

以下の考式を全て使わなくても、一つだけを使って考えてみるのでも、いい考えを思いつくきっかけになることがあります。

これらは、主に「課題の工夫」と「出てきた考えをどのように扱うかの工夫」になっています。

* 課題を見直す段階を作る
* 手段でなく機能に視点を当てる段階を作る
* 課題を達成できていない原因を見極める段階を作る
* 現在の構造・機構・機能を明確にする段階を作る
* 矛盾を発見し矛盾を解消する
* 焦点を絞って考える
* 発案と評価を分ける
* 案を整理する段階を作る
* 案を育てる段階を作る

2. 良いヒントを使う

なかなか考えが浮かばないときに、ちょっとした事がヒントになって考えが先に進むことはよくあります。 しかし同じものを見ても時によっては、何のヒントにもならないこともあります。 その理由は、自分の内部の状態やヒントの捉え方など色々な要素が組み合わさって、ヒントとして活きたり活かせなかったりするのだと思います。

したがって、一つを使って上手くいかなくても色々試しているうちにいい考えが浮かぶ可能性があります。

これらは、主に「考えるための予備知識の工夫」になっています。

* 理想的に解決した状態を描いてみる
* 複雑な情報を分類してみる
* 考える視点を変えてみる
* 対象の進化の傾向を描いてみる
* 類似の機能を他の分野から探す
* まったく関係のないことからヒントを得る努力をする
* ヒント集を利用する

3. その他

* 思いついた事は書き出す
* 図や絵で分かりやすくする
* 手を使って情報を動かす
* 発案しやすい雰囲気を作る
* 充分考えたら、考えるのをやめてみる
* ヒントを何としても利用しようという強い気持ちを持つ
* 課題を解決しようという意欲を高める

3.3  標準的な考作法

私が考える標準的な考作の流れです。これは考作の流れの一例であると共に、考式の利用例でもあります。  

 

これは考作の流れの一例であると共に、考式の利用例でもあります。

実際に考作をするときは、その時の状況に合わせて、この方法を基に一部を省略したり、追加したり、考式を使う順番を入れ替えています。

後戻りもあります。例えば(3)や(4)の後に再度(1)や(2)に戻ることもあります。

(1) 課題を見直す

「課題を見直す段階を作る」という考式をそのまま使っています。

ここで課題についてあらためて見直すことで、課題に関連した知識が頭の中で活性化し、考作に利用しやすくなります。

また課題に関連した物事に気づきやすくもなります。  

この段階でも、課題を達成するための考えがポツポツと頭に浮かんで来るので、それを頭の中で良いとか駄目とか判断しないで書き留めます。

ここで「発案と評価を分ける」という考式も使っていて、評価は(5)以降までしません。

なお、見直しの結果によっては、課題を別の課題に変更することもあります。  

(2) 現状を見直す

(1)で見直した課題の現状がどうなっているのか、あらためて見直します。  

現状をどんな観点で見直すのかという、目の付け所は色々あります。

例えば、組織や物の構造であったり、組織や物の機能であったり、課題を達成できていない理由についてであったり等々です。

課題によって観点を選んだり、観点をいくつか変えて何回かやってみたりします  

この段階でも、課題を達成するための考えがポツポツと頭に浮かんでくるので、それを頭の中で良いとか駄目とか判断しないで書き留めます。

ここでも「発案と評価を分ける」という考式も使っていて、評価は(5)以降までしません。  

この段階で課題を変更して次項以下を行うこともあります。

(3) 発案に専念する

(1)(2)の段階で課題を達成するための考えが、頭に浮かんで来ている事が、結構あります。 それで課題を達成できるので、すぐに実行しようという思いが湧いてきますが、あえて、課題を達成するための考えを思いつくだけ沢山書き出す段階を作ります。  

思いついた案は、頭の中で良いとか駄目とか判断しないで、全て書き出します。

ここでも「発案と評価を分ける」という考式も使って、評価は(5)以降まで我慢します。  

(4) 思い付いたすべての案を分類し整理する

書き出した案を、分類して整理統合します。

ここでは、図考室にある「札寄せ法」が便利です。

この段階でも、案を思いつくことがあるので、それも頭の中で良いとか駄目とか判断しないで追加して整理しなおします。

(5)整理した案の長所短所を書き出す

整理統合した案について、それぞれを比較できるように長所短所を書き出します。

(6)案を育てる

整理した案の欠点を補うように案を組合わせたり、修正して実行案を作ります。

実行案は、一つとは限りません。考え方の違う案が複数できれば、それらをすべて実行案として残します。

考作はここまでです。この結果を役に立てるには、「評価」・「実行」が必要です。


4.  「図考室とは」

図を利用して考作を助けるための方法を探究するところです。  

私は「札寄せ法」と名づけたやり方で考えることが多いので、この図考室では、まず「札寄せ法」を紹介します。

4.1  図考室の構成

今は、「札寄せ法」と、札寄せ法の支援ツールである「札寄せ用具」のみを紹介しています。

札寄せ法  私が日頃使って効果を得ている方法です。  
                 私がどのようにやっているかを説明します。

4.2  札寄せ用具

「札寄せ法」の道具として、エクセルの図形「角丸四角形」「長方形」と「曲線コネクタ」を、利用しやすくするためのマクロソフトです。

Microsoft Excel2010とExcel2013で動作を確認しています。

Excel2002でも使用できますが、多少動作が違う部分があるようです。
なお、エクセルOnlineやエクセルRTでは、使用できません。

(実際のウェブサイト「第一考舎」の「図考室」では、この位置から無料で [札寄せ用具を] ダウンロードできます。)

4.3  札寄せ法

▼ 4.3.1  概要

「札寄せ法」とは、言葉を書き込んだ札を寄せたり遠ざけたりしながら考える方法です。  

言葉を書き込んだ紙切れやラベルなどを並べ替えて考える方法は、昔から色々と紹介されており、梅棹忠夫さんの「こざね法」や川喜田二郎さんの「KJ法」、中山正和さんの「NM法」、その他様々な技法でも提案されていますが、それぞれ使用目的や手順が違っています。

「札寄せ法」は、それらの方法にはとらわれずに私が実際に行っているやり方です。  

札寄せ法をやっていると、「KJ法ですね」と声を掛けられることがあります。

しかし、札寄せ法はKJ法とは別物です。違いについては、後述の「KJ法と札寄せ法の違い」をご覧ください。  

札寄せ法は、色々な情報を言葉で書き表して、それらを並べ替えることで視覚も利用して思考を助けます。色々な情報とは、自分が見たり聞いたり調べたことや、感じたこと思いついたことです。 頭の中の動きを、頭の外の札で操作するのではなく、頭の中の動きを助けるために、札を動かすことによって頭の外から内に刺激を与える方法です。  

個人用の札寄せ法では、この刺激によって、札を動かしている最中や、札寄せ法を終えて別のことをしているときに、頭に問題の解決策が浮かんだり、分からなかったことが理解できたりすることがよくあります。残念ながら、札寄せ法を終えると同時に、頭に自動的に解決策が浮かんだり理解できているということは、あまりありません。  

札寄せ法をやれば、いつも解決するというわけではないのですが、札寄せ法を別の観点でやったり、翌日にまたやってみるなど何回か繰り返していると、それによって頭の中にある知識や経験の記憶同士のつながりが少しずつ変化するので、いい考えが浮かぶことがあります。   

札寄せ法を、おおまかに分けると2通りの目的で使っています。  

 

ひとつは自分の考えを整理したり、集めた情報から何かを思いつき易くする、あるいは何かに気づきやすくするためであり、個人用として使います。  

もう一つは会議などの話し合いで、互いの意見を分かり易くするためです。

札としてポストイットや紙切れを使うこともできますが、「札寄せ用具」というソフトウェアを作ったので、最近はそれを使って札寄せをすることが多くなりました。

▼ 4.3.2  個人用の札寄せ法

私は色々な場面で考作をしますが、頭の中だけで考えていると、同じことが何度も頭に浮かんできて先に進めなくなったり、せっかく思いついたことを忘れてしまったり、何も思いつかなかったり、あるいは自分の考えがなかなかまとまらないことがあります。  

そんなときに、私は札寄せをすると活路が見えてくることがあります。  

札寄せ法の大まかな手順は次の通りです。

 

(1)今回の札寄せの目的を書き出す

今なぜ札寄せをするのか、頭の中にあるその目的は漠然としていて言葉になっていない場合もあります。それを言葉で表現して書き出すことによって、曖昧な部分が整理され、そして強く意識することになります。

(2)集めた情報などを札に書き込む

 自分が見たり聞いたり調べたことや、感じたこと思いついたことについて、一つの事柄を一枚の札に記入します。基本的には主語と述語、そしてそこに条件があるならその条件も同じ札に書きます。  

たとえば、次のような文があったとします。  

「札寄せ法をやれば、いつも解決するというわけではないのですが、別の観点でやったり、翌日にまたやってみるなど何回か繰り返していると、いい考えが浮かぶことがあります。」  

この文を札寄せ法の情報として札に書く場合は、次のように4枚の札に分けて書くことになります。

・「札寄せ法をやれば、いつも解決するというわけではない」
・「札寄せ法をやって解決しない時は、別の観点で札寄せ法をやると良い考えが浮かぶことがある」
・「札寄せ法をやって解決しない時は、翌日にまたやってみると、良い考えが浮かぶことがある」
・「札寄せ法をやって解決しない時は、何回か繰り返していると、良い考えが浮かぶことがある」

(3)札を並べ替える

全ての情報を札に書き出したら、平面上に札を並べます。この時は、特にきれいに並べる必要はありませんが、書いた文字が読めるようにします。

次に全ての札を一通り読んでみて、それらの札をどう並べれば納得のいく、あるいは気持ちのいい配置になるかを考えてみます。こう並べたら良いかもしれないという思いが表れたら、先ずはその思いの通りに、札を並べてみます。札を動かしている途中で、これではうまくいきそうもないと思えば、方針を切り替えて、別の並べ方にして見ます。  

それによって頭の中が変化します。なぜなら札を動かしている最中に、札の内容を読み取ったり、別の札と並んだ状態を眺めたりするからです。こういった刺激が良い案を誘発することがあります。この場合は、そのときの札の並び具合と、思いついた案とは直接は関係がないように思えることもあります。  

もし札を並べたときの全体像を納得のいく、あるいは気持ちのいい配置などのように事前に想像できないなら、全体像は考えずに、個々の札同士の相互関係で並べてみます。

この様に、全体像のことはしばらく忘れて、部分的に個々の札同士の関係だけで、札を並べてみると、その結果現れる全体像が重要なヒントになることもあります。  

札を並べ替えるときに、どのような観点の相互関係で並べるかは、色々あります。こんな分類ができるかもしれないと思うなら、その通りに分類してみます。そのような札寄せをしているときに、その並べ方で良かったと感じたり、並べ方に違和感を感じたりすることがあります。そのように良いと思ったり、違和感を感じることが、頭を刺激することになります。このように既に考えがあるなら、それを札で表してみることによって、頭の中を刺激するのが、札寄せ法の第一歩です。  

自分があらかじめ抱いていた並べ方を一通り試した後は、札同士を近づける観点を決めて並べ替えてみると効果があることもあります。

よく使うのは、次のようなものです。

1) 何について書かれているか

例えば機械について書かれている札を一か所に集め、人について書かれている札を別の場所に集めるというように、分類の枠を決める方法です。  

全ての札を見渡していると、「機械と人に分かれそうだな」などと何となく分類項目を一つ二つ思いつくことがあります。とりあえずその項目で分類している内に、「場所についての札も多いな」などと更に別の項目を思いついたり、分類した幾つかの札をまた分類したりして、徐々に札を分類する方法です。  

この方法では、いくつかの分類枠が決まってしまうと、その枠に札を振り分けることに意識が行き、札の言葉を十分読み取ることがおろそかになりがちという欠点があります。しかし、類似性で寄せる方法に比べて意外性は少ないけれど、速く分類できるので、この方法で目的を達成できるなら、その方が良いと思っています。

2) 時間の順序

例えば、実施する時間や、発生した順番で札を並べる方法です。  

時間的な要素を意識せずに考えていた時は、これをやると意外なことに気づくこともあります。

3) 説明できる類似性

分類するというよりも似ていると思う札同士を、それらが何故似ているかを言葉に表して確認しながら近くに配置します。

1)のように表面的な共通点で分類枠を決めてしまうのではなく、機能の類似のような見えにくい類似性に着目して寄せるので意外なことに気づくこともあります。 説明できる類似性で寄せるので、何人かで話し合いながらできます。

4) 説明できない類似性

何となく近いと思う札同士を近くに置く方法です。3)と似ているのですが、なぜ近いと思うのかをあえて考えずに、感覚的に寄せてしまいます。集まった集団に名前を付ける段階で、集まっている理由を考えて、その理由がわかるように名前を付けます。  

札同士を寄せるときに理由を説明できないので、他の人と相談しながら進めることはできません。そのため一人でやる時にしか使っていません。しかし自分で気づいていない心の奥にある情報も使っているはずだという事で、よく使います。  

札寄せ法は、やっている間に答えが思い浮かべば、そこで並べ替えをやめますが、それまでの段階で答えが思い浮かばないときは、以上のように札の並べ方を変えてみます。

(4)札寄せ中に気づいたことを札に記入する

この一連の手順を行っている最中に答えにつながることに気づくことがあります。 気づいたアイデアや気づきを忘れてしまわないために必ず札に記入して、他の札と同じように扱います。

(5) 集まった集団を枠で囲み名前をつける

あーだこうだと札を動かしていると、札の集団ができてきます。この集団を枠で囲って、一つの集団として妥当か確認します。しっくりこなければ、集団を再編成します。  

できた集団には名前をつけるのですが、集団も一枚の札のように扱って札寄せを続けるので、集団の名前は他の札と同じ表現方法にします。

(6) ひとつの集団を一枚の札の様に扱って札寄せを続ける

集団が出来ても、集団の名前を一枚の札とみなして、札寄せを続けます。 この時は集団内の一枚一枚の札に書かれている言葉は無視します。  

札寄せを続けていると、集団と集団からなる集団や、集団と札からなる集団を作ることがあります。これも一つの集団として名前を付けます。集団内に集団があっても良いという事です。 またそれとは逆に、どの集団にも入らない札も、あり得ます。

(7) 7枚くらいになったら、札同士の関係を読み取って、文章にする

一番外側の集団を一つの集団と考えれば、何重にも集団を作ることで、札寄せに使う札と集団の数が減ってきます。

それは沢山あった札の内容が、少ない数の言葉に集約できたことになります。  

認知心理学では作業記憶のマジックナンバー7と言って、人間は7個くらいの事であれば、同時に覚えていられるのだそうです。したがって札と集団が7枚くらいになったら終了して、そこから全体像を読み取るようにしています。

――― 以上で札寄せ法の一連の手順を終えたことになります ―――  

なお個人用の場合は、結果が残るのは頭の中であって、札寄せをした図に結果が現れるわけではありません。  

一連の手順の中のどこかをやっている時に、「別の観点で並べた方が良さそうだ」という思いが浮かぶことがあります。

この思いがそれほど強いものでなければ、そのまま最後まで続けて行い、その時に求めるような考えが浮かんでいなければ、別の観点で「(3)札を並べ替える」ところからやって見ます。

もし手順の最中に浮かんだ「別の観点で並べた方が良さそうだ」という思いが強ければ、その手順を打ち切って、別の観点で「(3)札を並べ替える」ところからやってみます。

一連の手順の中のどこかをやっている時に、「別の観点で並べた方が良さそうだ」という思いが浮かばなかったけれども、最後まで、そこで求めるような考えが浮かばなければ、観点を変えて「(3)札を並べ替える」ところからやってみます。 続けてやる場合もあれば、一旦別のことをしてからやることもあります。日を改めてということもあります。

このように札寄せ法を繰り返していると、札を動かしている最中や、札寄せ法を終えて別のことをしているときに、頭に問題の解決策が浮かんだり、分からなかったことが理解できたりすることがよくあります。

残念ながら、札寄せ法を終えると同時に、頭に自動的に解決策が浮かんだり理解できているということは、あまりありません。

札寄せ法が思いつきや気づきを促進する理由は、
頭の中の色々な情報や考えを「言葉で書き出す」こと、
それらを一面に並べるので絵や図の様に「視覚も利用して脳を刺激する」ということ、そして、
それらの札を動かして並べ替えるという「動的な刺激を脳に与える」
という三つの要素が大きく影響していると考えています。  

これらに対応する考式は、「思いついた事は書き出す」「図や絵で分かりやすくする」「焦点を絞って考える」「考える視点を変えてみる」「複雑な情報を分類してみる」「手を使って情報を動かす」です。

▼ 4.3.3  会議用の札寄せ法

会議での発言を札に書き留めて、各発言同士の関連がわかるように札を並べながら会議を進める方法です。

会議で札寄せ法を使うと、互いの意見が分かり易くなる理由は、 発言を書出すことによって発言を全員が「同じ言葉で共有する」ということが挙げられます。これはホワイトボードなどに発言を書出すことと同じ効果です。  

 

しかし札寄せ法の場合は、発言を記入した札の位置を他の発言との兼ね合いで動かすことによって、「複数の発言の関係を全員で共有できる」という点が大きく影響していると考えています。

 

会議では、全員に見えるように画面に映して、各出席者の認識の違いを話し合いで修正しながら文言と札の配置を決めていくことがポイントです。これにより、視点の統一と認識の統一が容易になります。  

私はパソコンの画面をプロジェクターで映していますが、大きな模造紙に札を貼り付ける方法でも同じことです。

 

(1) 会議の「テーマ」を真ん中に書き出す

 明記することで何について議論しているのかの共通認識を持つことが出来ます。

(2) 発言を札に記入する

 会議が始まったら参加者の発言を要約して札に記入して、テーマの周りに置きます。

(3) 決めた観点で札を配置する

最初の札は、どこに置いても構いません。2番目以降は、既に置かれている札との内容の近さを考慮して置きます。  

札寄せをする観点は、例えば、時系列、因果関係、共通性、類似性などです。

(4) 集団を囲み、名前をつける

発言が一段落したら全体を見渡して、札が集団のように集まっている場合は、その集団全体を線で囲みます。  

その集団全体として何を表しているのかを話し合って表題をつけます。この表題によって札同士が集まった理由を皆で再確認できます。  

複数の集団が、大きな集団として考えられるときは、元の集団を解消せずに、札や集団が含まれた複合集団として扱います。

 

(5) ひとつの集団は一枚の札の様に扱って、札や集団同士の配置を決める

(6) 共通認識の書き出し

会議が終了したら、画面に現されている全体像を皆で読み取って共通認識として全体の表題を画面に記入します。

(7) 会議用の札寄せをやって得られる事

情報交換や議論を行う会議で、発言の促進と議論集約の促進をすることができます。  

会議では、参加者の発言を表示しないで議論を進めたり、表示しても箇条書きで書かれていると、それぞれの発言同士の関連を把握しにくいことがあります。  

札寄せ法では、発言同士の関連を札の配置で表現するので、個別の発言だけでなく議論の全体像を視覚的に把握しやすくなります。  

また札の配置を決めるために札に書かれている内容を理解しなければならないので、参加者が必然的にアイデアやデータの意味をよく吟味することになります。このため、発言に対する誤解が減って、誤解による無駄な論争を避けることができ、新しい意見が出やすくなります。  

札を動かすときは、「○○さんの発言」というよりは、「札に書かれている内容」で動かすという感覚になるので、発言者の地位の上下関係などを切り離して、個々の発言を平等に扱いやすくなります。  

札の配置を決める観点を変更して、札を並べ替えると新たな発見をすることがあります。  

発言した時点では、他の参加者から賛同を得られない発言も、いろいろな発言が増えてきて発言間の関連が見えてくると評価が変わり、脚光を浴びる発言もあります。

 

▼ 4.3.4  KJ法と札寄せ法の違い

KJ法では「データをして語らしめる」と言う川喜田先生の有名な言葉が、やり方の本質を表しています。一方、札寄せ法は「とりあえず動かしたいように札を動かしてみる」方法です。  

私の解釈では、KJ法はラベルに書かれているデータの本質を十分に吟味して、「近づきたがっているラベル同士」を近づけるというやり方をします。  

これに対して、札寄せ法は先ず動かしてみて、その結果をヒントに考える。動かす観点は、「同じような内容」の札同士を近づけるでもいいし、「時間的に近い」札を近づけるでも構いません。「こんな理由で似ている」というのでもいいし、「特に理由はないけど何となく似ている」というのでもかましません。ともかくこう動かしたいと思ったら、動かしてみるが基本です。動かしてみた結果、何も思いつかなければ、別の観点で動かしてみるということを繰り返します。  

KJ法ではラベルを動かして最終的に出来上がった図(A型図解)を作品と呼んで大切にしますが、個人用の札寄せ法では、札寄せの結果できた図は、ただのメモにすぎません。図が成果ではなく、頭に浮かんだ思いや考えが成果だと考えているからです。


5.  「研究室とは」

 ここには考作について模索中のことを書きます。

▼ 考える仕組み

考作の原理探求として、人の体の中で何がどうなるから考えが浮かぶ、つまり思いつくのか

▼ アイデアが出にくい原因

▼ 考え間違いの原因

人が間違って考えるのは何故か。

▼ 考え易くする工夫

人が何かを考える時に答えを思いつきやすくするには、どうすれば良いのか  

今までに先人が提案した様々な思考法は、なぜその方法で考えると答えを思いつきやすくなるのか

5.1  考える仕組み

▼ 案を考えるのは無意識

他の人も同じかどうかはわかりませんが、私の場合は、考作の主要部である「頭の中で考えを作り出す過程」を意識して行うことが出来ません。

つまり、課題を意識すると、後は無意識のうちに頭の中で考えが作り上げられて、その結果が自分の考えとしてフッと浮かんで来たかのように意識できるようになるのです。  

 課題を意識すると、頭の中で考えを作り出す過程では、多分次のようなことが無意識のうちに行われているのではないかと推測しています。

* 先ず、その課題に関連する記憶が複数引き出されます。
* また、どんな考えを求めているのかという目標も作られるようです。
* そして引き出された記憶を組み合わせて、課題に対する考えを作ります。
* この組み合わせは、引き出された記憶を手当たり次第に組み合わせているのではないかと思います。
* 次に、作った考えが目標を満足するものなのかを評価します。
* 作った考えが満足いくものでなければ、また記憶を引き出して別の考えを作り評価します
* 満足いかなかった考えは、意識できないので存在しなかったことになります
* 頭の中では何度も作り直しているのかもしれませんが、作った考えに満足すると、作った考えと満足度の両方を意識出来るようになります。  

こうして意識上に考えが浮かんでくると、この考えは満足のいくものなのかを意識的に評価しようという意識が働きます。

ここでは、考えを評価するという課題を意識することになるのです。 そして評価するという課題に対して、無意識のうちに考えが作り出されることになります。  

このときの意識的に評価しようというときと、意識できるようになる前に無意識的に考えを評価するときでは、評価基準が違うようです。

そのため考えを作ったときには満足する考えだと評価して意識できるようになったのに、意識的に評価しようとしたときには、この考えは満足するものではないという評価が無意識のうちに作られて、それが意識上に浮かんでくることもしばしばあります。  

このように、「頭の中で考えを作り出す過程」については、意識してできることではないので、そのやり方を意識的に直接修正することが出来ません。

したがって、意識的にできるのは、「課題を工夫すること」、「考えるための予備知識を工夫すること」、そして「出てきた考えをどのように扱うかを工夫すること」になります。


 

 以上

 

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最終更新日 : 2015. 1.20     連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp