TRIZフォーラム: 
イランにおけるTRIZの導入・普及活動

Mahmoud Karimi (Iranian Inst. of Innovation & Technological Studies (IIITS)、イラン)
2009年12月 8日

和訳: 中川 徹(大阪学院大学)、2010年 2月18日

写真アルバム追加:  2010年 3月13日

掲載:2010. 2.22; 3.13; 3.14; 3.19; 3.24

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編集者より (中川 徹、2010年 2月18日)

この記事は、Mahmoud Karimi (イラン、IIITS) から 昨年12月8日に送ってきてくれたものです。イランではTRIZが社会的に広く浸透してきているとのことで、非常に興味深い記事です。英文で示すと共に、ここに和訳して掲載します。

私は、2008年11月のETRIA国際会議 (オランダ、Twente大学)の際に、Karimi夫妻に会い、宿舎が同じだったこともあって親しくなりました。彼は、昨年のTRIZシンポジウムに参加したいと言ってきたのですが、中川の大学のメールサーバのスパム処理に遭ってメールが途切れ、ビザが間に合いませんでした。昨年12月にスパム処理を解除でき、メール通信が再開しました。この記事は、彼が昨年のTRIZシンポジウムのために用意した原稿概要を、今回微修正したものだそうです。

追記 (中川 徹、2010年 3月13日; 3月14日)

Karimi氏から昨日届きました写真のうちの 7枚を、本ページの最後に追加します。テレビ画面のビデオ/DVDから取ったものもあります。
この写真に出ています宮西さん親子のアメンポ研究と、中川の写真の解題として、2006年11月の イランでのPSST国際会議のために送った中川のビデオ発表のスライドを別ページに掲載しました。

追記 (中川 徹、2010. 3.24 )

Karimi氏から、活動のしかたを「物語」として書いた原稿 (「活動(2)」) が届きました。大急ぎで掲載しています。

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イランにおけるTRIZの導入・普及活動

Mahmoud Karimi  (マーモウド・カリミ)

IIITS (イラン革新・技術研究所) 副所長
ETRIA(欧州TRIZ協会) イラン代表
体系的革新ネットワーク (SIN)メンバ

karimi@iiits.org
Tel. +98 (21) 22242656 Fax: +98 (21) 22247474 Mobile: +98 912 1546782

教育を受けた多くのイランの人々にとって、TRIZは「知っている言葉」になってきている。1999年以来故Hosein Salimi 教授と その博士課程大学院生の一人は、QFDを研究するに際してこのTRIZという略号に何回か遭遇し、TRIZについて沢山の疑問がでてきて、その答えを求めて辿っていった。

それから10年、この分野で仕事が行われ、いまや [イランでは]、多くの人々がTRIZに関心をもち、TRIZとその応用について学ぼうとしている。Google Trendsのツールを使うと、TRIZについてインターネット検索を最も多く行っているのがイランだ、ということが分かる。

本稿では、イランにおけるTRIZの活動の全体像を振り返ってまとめる。

IIIE (イラン産業工学研究所) の活発で若いマネジャたちのグループが、Salimi 教授と共同して、IIITS (Iranian Institute of Innovation & Technological Studies、イラン革新・技術研究所) を創立した。これは、創造的問題解決の方法論を研究する、学術、非営利、非政府の研究所であり、創立は2001年である。IIITSは当初、TRIZとVE (バリューエンジニアリング) とを主要トピックスとして、その公的な活動を始めた。この研究所はイランにおいて、よく知られ、パイオニアの役割を果たしている。その活動の多くは、研究、研修、および工業とサービスセクタへのコンサルタント活動という範疇にある。また、推進・普及、学会 (コミュニティ)、および製品  [本やソフトなど] も、やはり重要である。

研究においては、[IIITSと] AmirKabir 大学 (テヘラン工科大学) との共同プロジェクトで、TRIZのより深い理解のための研究が行われた。その支援によって、学部生および大学院生が輩出し、学位論文、プロジェクト、論文、その他の学術活動が行われ、新しいサービスが (大抵の場合無償で) 提供された。また、特定領域での研究が顧客の要求に基づいて行われ、新しいコンセプトやテーマを探すことも行われた。例えば、シックスシグマ、リーン工学 [トヨタ方式]、創造技法101選、そしてそれらの互いの関係などが、しばらくの間のテーマとして研究された。

研修に関しては、公募制および組織内での、研修プログラム、セミナー、ワークショップ、コースなどがいろいろある。IIITSはTRIZ資格を3レベル (初級、上級、応用) で認証している。

イランのTRIZチームがいままで訓練を受けたのは、Prof. Dr. Miloslava Zinovkina (TRIZ マスター) と Dr. Rifkat Gareev (二人は NFTM-TRIZ Center と ロシアの Ruthenia Interstate University)、Darrell Mann (Creax (IFRに移る前))、Hongyul Yoon (韓国TRIZ Centre) である。また、Valeri Souchkov、Nikolai Khomenko (TRIZ マスター)、およびその他の活発なTRIZ関係者でETRIA国際会議で出会った人たちと、緊密に連絡を取っている。

普及・推進もまた重要であり、マスメディアの効率性はイランのTRIZリーダたちにとって明瞭であった。TRIZ紹介のテレビ番組 5回シリーズ(各回30分) を2006年に制作し、2008年9月から 3度放映した。二つの人気があるTV トークショウ (朝の番組と夜の番組) が、ゲストとして、イランから、および Valeri Souchkov とNikolai Khomenko (彼らが研修実施のためにイラン滞在中に) とを招き、TRIZについて話をさせた。このテレビトークショウの生番組に、活発にTRIZをやっている人たちが出席し、体系的革新とTRIZについて討論しインタービューをした。彼らはまた、ラジオ番組でその知識や経験を共有・提供し、非常に人気がある新聞に執筆し(例えば、『Innovation Elixir』紙の毎週掲載のコラムやその他の記事)、雑誌に書いており (論文、インタビュー、座談会、応用可能性など)、また、Webサイトを創っている (例えば、www.triz.irwww.iiits.org、そしてその後 www.problemsolving.ir など) 。(ただし、これらの情報のほとんどはまだペルシャ語である)。諸大学および諸学校での活動状況 (初期から現在まで) の全体的なレビューを、現在進めているところである。

TRIZは学界でも取り上げられ始めた。経営、マッーケッティング、産業工学などの国際会議でのワークショップやその他の国内の会合でもTRIZについて発表された。

さらに、トップマネジャのための会合や打ち合わせが行われ、ETRIA (欧州TRIZ協会) に会員参加、国内および国際的な協力関係と共同活動、そしてイランのRASA出版社とのサイエンス・パートナシップなどを実現してきた。

IIITS のチームは、Amirkabir 大学およびいくつかの他の組織と共同して、2006年11月26-27日 [2007年は誤り、訂正] にテヘランで、PSST (問題解決戦略と技法) 国際会議を開催した。この行事には1000人近くの参加者が出席した。

新しい知識ベースの話題をよりよく理解するために、具体的なモノやソフトウェアを求める人が多かった。そこで、複数の書籍 (翻訳、著作、および支援のものを含む) が出版された。その中には、[アルトシュラーの] 『Innovation Algorithm』 (2001年)、『40の発明原理: 技術革新のためのTRIZの鍵』(2006年版、2008年版、2009年版)がある。また、『TRIZコンパニオン』と『Innovation Elxir』が2010年出版に向けて進行中であり、『Simified TRIZ 』と『Step by Step Systematic Innovation』のワークブックを将来出版する計画である。この他にもいくつかの本や全国的な行事の中に、TRIZをそのセクションやトピックスとして含んでいるものがある。 

子どもたちと親のTRIZ教育に従った、TRIZの教材 (本、ツール、おもちゃ、など) が、イランにおけるTRIZ活動の現在のプログラムの中にある。Nikolai Khomenko が、この分野でのイランのチームを支援している。

Creax と IFR のソフトウェアツールが、潜在ユーザに対するデモが行われ、その結果、彼らの要求に応じて近い将来に、そのペルシャ語版がIIITS との共同事業としてマーケットに出される予定である。

顧客たち、例えば、自動車産業、学術組織や協会 (大学、インキュベーションセンタ、研究センタ、R&Dセンタなど)、学校、石油・ガス・石油化学産業、電力、鉱業、農業などの業界などが、TRIZのトレーニングやサービスを要請している。サービスセクタにおいて、地方自治体、監査・検査機関などが、TRIZとCIDを利用したいと考えている。警察は2008年からすでに実際の事例にTRIZを適用している。

イランにおけるTRIZベースの活動として最も重要なことの一つが、国の教育省でなされた。すなわち、Sara (Salimi 教授の娘で、現在のIIITS所長)が招かれて、教育大臣の創造性・革新アドバイザに任命されたことである。国家の文書およびイノベーションシステムが、TRIZの教えるところに従って、計画され、改善された。

われわれはTRIZのやり方を保ち、さまざまな領域でTRIZの効果、影響、応用を見ていきたいと思う。一つの反省として、(広い範囲と視野とに対置する意味で) いくつかの狭い領域のより深い活動に焦点を当てることを、検討中である。


編集ノート後記 (中川 徹、2010年2月20日):

別掲のように、第6回日本TRIZシンポ2010では、Mahmoud Karimi 氏を基調講演者の一人として招待しました (2010年9月9-11日、神奈川工科大学にて開催予定)。同氏から直接に、本稿に関連して、ビジュアルでいきいきした発表をお聞きできるものと期待しております。

[注: 上記の記事中で、太文字による強調は、より理解しやすくするために、中川がつけたものである。私はまた、上記の記事に挿入するとよいいくつかの写真や図を送ってきて欲しいと、Karimi 氏に要請している。]


写真アルバム (提供: Mahmoud Karimi、2010年 3月12日; 追記: 中川 徹、2010年 3月13日)

 

Professor Dr. Mohammad Hosein Salimi,

TRIZ のテレビ教材より

 

Professor Dr. Mohammad Hosein Salimi

と Ms. Sara Salmi 

TRIZ のテレビ教材より

[Ms. Sara Salimi は 教授の娘であり、現在 IIITS のPresident である。]

 

 

Mr. Mahmoud Karimi (右),

テレビ チャンネル2 
朝のトークショウ にて

宮西さん親子のアメンポウの研究 (2008年TRIZシンポジウム発表) について紹介している

 

Mr. Mahmoud Karimi

テレビ チャンネル2 
朝のトークショウ にて

中川 と 日本でのTRIZの活動について紹介している。

中川の写真は、2006年11月にPSST国際会議のために送ったもの (大阪学院大学のキャンパス内で撮影)。==> 別ページ参照 (2009. 3.14)

 

 

Mr. Nikolai Khomenko (左) と

Mr. Mahmoud Karimi (右)

テレビ チャンネル4
夜のトークショウ にて

 

Mr. Nikolai Khomenko (右から3人目)

と IIITS 研究所のチーム

(左端が Karimi氏)

[後ろの画面はロシアでの子ども向けTRIZ教育のもの]

 

 

 

Mr. Valeri Souchkov (オランダ) (左)

Mr. Mahmoud Karimi (右)

テレビ チャンネル2

朝のトークショウにて

 

 

 

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最終更新日 : 2010. 4.18.     連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp