TRIZフォーラム: 
イランにおけるTRIZの導入・普及活動 (2)
TRIZを適用してTRIZを推進する

Mahmoud Karimi (Iranian Inst. of Innovation & Technological Studies (IIITS)、イラン)
2010年 3月24日

和訳: 中川 徹(大阪学院大学)、2010年 3月24日

掲載:2010. 3.24

Press the button for going back to the English top page.

編集者より (中川 徹、2010年 3月24日)

この記事は今日の午後届いたばかりのものです。前稿の「イランにおけるTRIZの導入・普及活動」 (Mahmoud Karimi、イラン) (掲載: 2010. 2.22) は、イランにおけるTRIZ導入活動の歴史と全貌を述べていて、われわれ日本のTRIZ関係者、そして世界中のTRIZ関係者がびっくりした素晴らしいものでした。

前稿を昨年12月に貰ったときから、私はKarimi氏に一つの要請をしていました。それは、もう少しくだけた形で、彼自身の活動のしかたを書いてもらえないだろうか、とういうことでした。前稿ではKarimi 氏が非常に公式の、節度正しい書き方をしていて、彼自身の活動が随分あるはずなのに、彼の名前や姿が一度も本文に現れていないからです。その要請に答えて、今回彼が書いてきてくれたものは、非常に分かりやすい、楽しいものです。

Karimi 氏のこの記事は、今年の9月のTRIZシンポジウムでの基調講演のための準備として作ってもらい、本ホームページに掲載するものです。それは、「講演者にとっての準備」より以上に、「われわれ聴衆にとっての準備」であると思っています。いままでほとんど知らなかったイランでのTRIZとその若いリーダKarimi氏を迎えるにあたって、どんな人なのか、どんな活動をしてきたのかを、予め知っておきたいと思うからです。どうぞ、読んでみて下さい。 

 

このページの先頭 TRIZを学ぶ 新聞で推進 活動の親ページ 写真アルバム TRIZシンポ基調講演紹介 TRIZシンポ2010 フォーラム:読者の声2010 英文のページ

イランにおけるTRIZの導入・普及活動:
(2)  TRIZを適用してTRIZを推進する

「第6回日本TRIZシンポジウム2010」 のために

Mahmoud Karimi  (マーモウド・カリミ)

IIITS (イラン革新・技術研究所) 副所長
ETRIA(欧州TRIZ協会) イラン代表
体系的革新ネットワーク (SIN)メンバ

karimi@iiits.org
Tel. +98 (21) 22242656 Fax: +98 (21) 22247474 Mobile: +98 912 1546782

 

私が初めてTRIZを知ってから、TRIZと一緒に過ごしてきた間のいくつかの物語を思い出しています。あなたが一つの聞いたことがない言葉を初めて聞いたと思って下さい。それについてまったく何の予備知識もなく、それがどこからきたものかさえ推測できないものです。いまなお私は沢山の人が「TRIZってなに?」と聞くのに出会います。もしその人たちが私のことや私の経験分野について聞いたことがある人なら、それはきっと創造性に関係するものなのだろうとか、あるいはときには、バリュエンジニアリングと比べられるものなのだろうとかと、推測するでしょう。

2000年頃、故 M. Hosein Salimi 教授とその博士課程学生 Hosein Iranmanesh とが、論文の中にTRIZという用語を見つけました。ちょうど同じ頃、Iranian Institute of Industrial Engineering (イラン産業工学協会、IIIE.ir) において、私たちは研修委員会のため新しいテーマについて考えていました。

さて、私は、イランにおけるTRIZの物語に戻り、TRIZを使ってTRIZを推進するために何をしたのかを振り返ってみましょう。あるいは、もっと素直にいうと、TRIZアプローチを進めて行くために、私たちがTRIZ思考のアプローチをどのように使っていったのかを、話しましょう。マスメディアを使うことが、このようにして私たちが発見したアイデアの中の一つだったのです。今回の記事には、これに関連したいくつかの話を簡単に説明しましょう。

 

(1) TRIZを学ぶ

初期の段階で最初にしたことは、TRIZについての知識をそれなりの量集めることでした。Web で私たちが見つけたものは、TRIZの知識体系を理解したり、その応用の一部始終を理解したりするには、まったく不十分でした。文献には、さまざまに違う方法論が、世界の東西の多くの著者によって導入されていました。それらの文献の内容について、類似点と相違点を考えていった結果は、さらに疑問が増大していきました。いろいろなツール、さまざまなバージョンのアプローチ、そしてさまざま略号が、日々、疑問項目リストに増えて行きました。どうしたら、答えを適切に見つけることができるのだろうか?

海外のTRIZコースに参加することが、もちろん一つの標準的な解決策として考えられました。しかし、新しく設立したばかりの、非営利の学術的組織で、何も資金がなく、他にも沢山のテーマがある中で、このような要求に対して理事会からの許可を一体どうしたら得られるのだろう? また、海外の諸大学にも、十分な学術的なリソースはありませんでした。誰一人として、(最高の大学でPhD を取った新しい人たちでさえ)  TRIZについて知っていませんでした。だから、IIIEでのトレーニングのための科目体系からは、TRIZが落ちるのが当たり前でした。しかし、私たちはTRIZについて学びたいと思いました。

解決策:  リソース

何かよい解決策がないだろうか? どうしたら見つけられるだろうか? どんな条件を満たせば、理事会はTRIZコースを開くという私たちの提案を了承するだろうか? もし、私たちが「IIIEのTRIZコースの定員は、もうすでに企業からの参加者で全部予約されている」といえば、どうなるだろうか? きっと彼らも同意するだろう、特に理事長 (Salimi教授) は関心を持っているから、理事会の席できっとこの解決策を弁護してくれるだろう。

私たちは、TRIZのアプローチを使って、[この場合の] リソースについて考えました。この場合について、私たちはどんなリソースを知っているか、持っているか? 私たちが提供する新しいトレーニング科目について、だれが信頼を寄せるだろうか? イノベーションを求めているのはだれだろうか? 研究開発に多くの注意を払っているのはどの会社だろうか? だれがイノベーション関連のことにより多く投資しようとするだろうか? 私たちは、可能性のあるクライアントのリストを作りました。5W1H (なぜ、何を、だれが、いつ、どこで、どのようにして) の質問に基づいた情報を集めてパンフレットにして、私たちは「空席なし」を目指して (企業の人たちとの) 交渉を開始しました。このようにして、第1回のTRIZコースを、ロシアから 招いた Miloslava Zinovkina 教授と Rifkat Gareev 教授を講師に実施したのです。[テヘランにて、2001年] [写真参照]

TRIZ Workshop-Tehran-2001
Middle: Prof. Dr. Miloslava Zinovkina and top of her: Dr. Rifkat Gareev
Top row, seated, 2nd one from left: Mahmoud Karimi
Ladies row, from right, 2nd one: Nona Mirkhani (my wife), 3rd one: Sara Salimi

このワークショップの質と量、そして、ロシア語でのトレーニング資料とプレゼンテーションの問題、また、実施上の問題などは、それぞれに別の物語があります。

私たちは、TRIZのコースを開催して、私たち自身もまた参加できるように、何人かの人たちをリソースとして確保する必要があると考えました。翌年に、そのような人たちのグループを得て、レベルIIのTRIZワークショップと、第2回レベルI のTRIZワークショップを開きました。

この物語は、G. アルトシュラーの強制収容所での「学生一人の大学」の話と少し似ています。ここの私たちの物語では、TRIZコースのための多数の登録学生を見つけることを試み、一方私たち自身は少数者だったのです。「入れ子」の発明原理が適用でき、私たちがTRIZについてもっと学ぶための解決策を見つけたのです。

その後、この学習プロセスは、Darrell Lee Mann をはじめ、その他の著名なTRIZ専門家の招待へと続いていったのです。

 

(2) 新聞でのTRIZの推進

[当時の私の] 月報を見てみますと、私たちは大部分の時間を、似たような会合に出席して、会社のマネジャや専門家たちに「TRIZとは何か」について話しています。彼らはWeb上の情報をさっと検索しただけで、明確な処理を済ませた情報を持っていませんから、私たちはいつも彼らの初歩的な質問に答えなければなりませんでした。

通常、「もっと多くの情報がなければTRIZを信用できない」と彼らはいいました。私たちは彼らに、彼ら自身のビジネス分野での例やケーススタディを要求されました。彼らは、TRIZとその他の問題解決方法論と違いについての説明を求めました。TRIZの効率性の説明、イラン国内でTRIZを適用した成功事例、などなどを私たちに求めたのです。

私たちは、このような会合とTRIZについての人々の知識レベルとを、一つの問題と考えました。なんとかして、TRIZを知っているとよいと私たちが思う、マネジャや専門家やスタッフやその他の人々の、TRIZに関する情報のレベルを向上させる解決策がないだろうか? それも、(個別の) 会合で時間を費やさないでよいような...。 全部の人々、私たちが知っていない人たちまでも含むような多くの人々のための一つの会合を設定できないだろうか? TRIZのような方法論を探している人々は沢山いるに違いない。しかし、彼らはその方法論が何かを知らない。どのようにしたら、彼らとTRIZとが出会うことができるのだろう?

そのような問題を考えていて、私たちはつぎのように自問自答しました。「もしTRIZが問題解決の方法なら、私たちは私たちの新しい問題をも解決すべきであり、私たちが私たち自身でどのようにTRIZを適用したのかを人々に見てもらうべきである。」

まず私たちはいくつかの標準的な解決策を生成しました。もしわたしたちが新しいものを人々に知らせたいなら、チラシとかパンフレットとかの印刷物を作成してその人たちに知らせることができる。あるいは、最も人気のある新聞の紙上で何らかの広告を (お金を払って) 出すこともできる。私は理想性について考え、最も望ましい解決策を定式化しました。コスト、「Hamshahri」紙や「Jam-e-Jam」紙 などの新聞の毎日の発行部数、各広告の情報の量、広告に対する人々の信用度、その他の問題について議論しました。

私は、TRIZについての情報をできるだけ多く公表し、人々に、なぜ、何を、だれが、いつ、どこで、どのようにして、TRIZが役立つのかを知らせたいと思いました。TRIZの効用と利点を知って欲しきと思いました。しかし、私はそれを無料でやりたいのです。新聞のページを見て、広告でなくても、人々が無料の通常のものをどのように受け入れるのかを見てみました。そして、私たちが発見した解決策が「コラム」だったのです。もし、TRIZに関する毎週連載のコラムを持てば、私たちは理想性にずっと近づくだろうと考えました。

再び、リソース

TRIZについてのコラム [を開始する] 許可を得るには、いったいだれを引き込むべきだろうか? Paretoの法則が教えるように、20%の努力で80%の結果を得ることができるはずだ、と私は思いました。会合、会合で多くの時間を費やす代わりに、最も人気のある新聞の一つの編集者に、このコラムを発表するように、話をしなければならないと考えました。そこで私は新聞関係でのリソースを探し、「Jam-e-Jam」紙の科学ページの編集者がIIIEでの私の以前の同僚であることを見つけました。彼女は私を信用し、そのテーマに興味を持ってくれました。私たちは会合を持ち、多数のアイデアを出した後に、「Innovation Elixir (イノベーションの妙薬)」という名前を、この新生のコラムに選びました。2004年のことです。私はテーマをTRIZだけに限定せず、問題解決の技法、諸ツール、例、ケース、そして創造性などについても書きました。

「Innovation Elixir」の毎週のコラムには、通常、いろいろなコンセプト (例えば、機能、理想性、矛盾、そして40の発明原理のいくつかなど) の一つについて簡単に説明し、それからその一つの例を説明して分析しました。 (例の一つは、札幌ドーム (日本の屋内サッカー場兼野球場) です。[新聞記事を参照ください。])

Issue 1341 - Volume 5 - 20 January 2005- Jam-e-Jam newspaper - Page 10
Innovation Elixir Column (Left)
Title: Unique Stadium - by Mahmoud Karimi

このコラムは2年間続きました。そして、私たちは、最も人気があるIT週刊誌『Click』に移りました。ここでは私は通常、『Click』の毎週の特集について書き、それについて9画面法と進化のトレンドを用いて分析しました。この週間誌では、雑誌の真中にいままでより大きなコラムのスペースを与えてくれました。私は普通その記事の最後に、そこで取り扱った内容でのSF (サイエンスフィクション) を書きました。もし、われわれがシステム、スーパーシステム、あるいはサブシステムを変更したら、将来いったいどんなことが起こるだろうか? あるいは、もしわれわれがこの進化のトレンドに従っていけば、どうなるだろうか?などを書いたのです。[写真参照]

Issue 147 - 14 July 2007 -“Click” IT Weekly appendix of Jam-e-Jam newspaper - Page 08 and 09
Looking from the 9 Windows (Left)
Case: Mobile Phone - by Mahmoud Karimi & S. Nona Mirkhani

新聞社の出版部は、「Innovation Elixir」コラムの推敲版を、本として出版する計画を立てました。それはいま進行中です。

 

 

このページの先頭 TRIZを学ぶ 新聞で推進 活動の親ページ 写真アルバム TRIZシンポ基調講演紹介 TRIZシンポ2010 フォーラム:読者の声2010 英文のページ

 

総合目次  新着情報 TRIZ紹介 参 考文献・関連文献 リンク集 ニュー ス・活動 ソ フトツール 論 文・技術報告集 教材・講義ノート フォー ラム Generla Index 
ホー ムページ 新 着情報 TRIZ 紹介 参 考文献・関連文献 リ ンク集 ニュー ス・活動 ソ フトツール 論文・技 術報告集 教材・講義 ノート フォー ラム Home Page

最終更新日 : 2010. 3.24    連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp