TRIZフォーラム

「日本社会の貧困」を可視化しながら考える
       [A] 高齢者の貧困化

[1] 藤田孝典著『下流老人』の可視化とまとめ

中川 徹、2016年 1月26日; 3月25日
「札寄せ」しながら考える(13)〜日本社会の貧困を考える [A] 高齢者の貧困化 (8) 『下流老人』全体のまとめ

掲載:2016. 1.28; 更新: 2016. 3. 6; 3.30; 4.21; 4.29

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  編集ノート (中川 徹、2016年 1月26日; 3月25日)

ここに、「「日本社会の貧困」を可視化しながら考える」という、新しいシリーズを始めます。 英文ページ: (2016. 3.30)

これは、社会的な問題を第一の関心事としている読者の皆さんのためのページにします。

 [A] 高齢者の貧困化 [1] 藤田孝典著『下流老人』の可視化とまとめ (中川 徹): 親ページ(本ページ): 冊子の表紙、はじめに、提言(文章化)、原著者メッセージ (2016. 1.28; 3.30)

 「[A] 高齢者の貧困化: 藤田孝典著『下流老人』の可視化とまとめ」 (中川 徹)の冊子PDF 版(無償ダウンロード可、24頁、1.8 MB) (2016. 1. 9; 3.30)

 『下流老人』(藤田著)の Amazon サイトへのカストマーレビューの投稿(中川) と 関連の考察のページ (2016. 3.30)

 「自由」 vs. 「愛」: 人類文化を貫く主要矛盾 ― 『下流老人』に対する人々の議論を踏まえ、その根底を考える― (中川 徹) (2016. 4.21)  (2016. 4.29)

(注) なお、従来の本ホームページは、トリーズ(TRIZ)という、科学技術分野を中心とした「創造的な問題解決の方法」を主題としています。その方法を社会や人間の分野にまで広げることを意図して(2015年9月に〉出発したのが、「「札寄せ」しながら考える〜日本社会の貧困を考える [A] 高齢者の貧困化」というシリーズです。その旧来シリーズの中のサブシリーズとして、社会的な問題を主題としたものだけを、この新シリーズとしてカウントすることにします。
なお、本ホームページは著作権を保持して、公開しているものです。本ホームページの運用方針はに記述しています。

 

  編集ノート [『TRIZホームページ』の読者の皆さんに」(中川 徹、2016年 1月26日) (追記*: 中川 徹、2016. 3.25)

藤田孝典さんの著書『下流老人』(2015年6月刊)の全体を、図的に「見える化」した資料を作成しました。

資料は、PDFファイル(A4サイズ、24頁*、1.8MB*)です。無償公開していますので、ダウンロードしてお読みください。[* 著者からのメッセージを得て、24頁の冊子の形態にしました。PDF版は随時更新しています(3. 6; 3.30)。印刷した冊子は非売品です、積極的にお使いいただける方はメールでご連絡下さい。]

本ページには、その一部分(表紙、目次、この資料の趣旨「はじめに」の図著者の最終章の提言のまとめ(文章化)、および冊子版の完成にあたっていただいた著者からのメッセージ*)を、ブラウザで直接読めるようにしています。「見える化」がどんなやり方をしているのか、藤田さんの本が何を言おうとしているのか、をご理解いただけるものと思います。

 

本ページの先頭 日本社会の貧困(親ページ)

高齢者の貧困(親ページ)

標題 この資料の趣旨 「はじめに」の図 提言 原著者メッセージと冊子裏表紙 高齢者の貧困 全体PDF Amazonカストマーレビュー(中川) 「自由」 vs. 「愛」: 人類文化を貫く主要矛盾(中川)   英文ページ

 


 「日本社会の貧困」を可視化しながら考える [A] 高齢者の貧困化 

 

 

主題: 日本社会の貧困を考える  [A] 高齢者の貧困化

 

原典: 藤田孝典著  『下流老人:一億総老後崩壊の衝撃』

朝日新書520、朝日新聞出版、2015年 6月30日刊、222頁

 

論点の可視化(図示) とまとめ:  中川 徹 (大阪学院大学 名誉教授) 2016. 1.25

 

 

ホームページ掲載: 『TRIZホームページ』(編集者: 中川 徹) 2015. 9.17 〜 2016. 1. 9
   URL: http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/jforum/2015Forum/Naka-Elderly2015/Naka-Elderly-0-150911.html

可視化ツール: 「札寄せ用具」 作成・配布 片平 彰裕 URL: http://members3.jcom.home.ne.jp/dai1kousha/zukou2.html

 

原著 (藤田孝典) 目次

可視化版 (中川 徹) 目次

本資料

PDF
  標題、目次、この資料の趣旨 p. 1

はじめに

(0) はじめに

p. 2

1章: 下流老人とは何か

(1) 下流老人とは何か

p. 3-4

2章: 下流老人の現実

(2) 下流老人の現実 

p. 5-6

3章: 誰もがなり得る下流老人
−「普通」から「下流」への典型パターン

(3) 誰もがなり得る下流老人
    −下流化のパターン

p. 7-11

4章: 「努力論」「自己責任論」があなたを殺す日

(4) 「努力論」「自己責任論」があなたを
殺す日 −意識と理解の問題 

p. 12-15

5章: 制度疲労と無策が生む下流老人
−個人に依存する政府

(5) 制度疲労と無策が生む下流老人
−制度と政策の問題点 

p. 16-19

6章: 自分でできる自己防衛策
    −どうすれば安らかな老後を迎えられるのか

(6) 自分でできる自己防衛策
−対策と予防

p. 20

7章: 一億総老後崩壊を防ぐために

(7) 政策の検討と提言 
*** 提言のまとめ (文章化)

p.21
p.22-23


おわりに      

 

この資料の趣旨: 

    私(中川 徹)は、「創造的な問題解決の方法」の研究・教育・普及をしてきました。TRIZ(トリーズ)は、技術分野で開発された、そのような方法の重要なものです。問題をきちんと捉え、現状を分析し、理想を考え、変革のアイデアを得、新しい解決策を構想し、その実現を目指す、という基本的なやり方をする科学的な方法です。それは、技術以外の分野にも発展しつつあります。私自身も科学技術の分野から社会や人間の分野にこの考え方を拡張することを試みようとしています。

    ただ、社会的な分野は、技術分野よりも、ずっと問題が輻輳しており、この分野に素人の私が取り掛かることは容易でありません。そのときに目についたのが、「札寄せツール」という図示のツールでした。Excel上で札に書いたものを自由に動かしながら、論理関係を見えるようにし、考えるためのツールです。このような「見える化」には80年代からQC運動の中で馴れていましたから、社会的な問題を理解する取り掛かりとして、最適と判断しました。

    2015年6月30日の老人による新幹線焼身自殺放火事件はショックでした。それが引き金になって、藤田孝典さんの『下流老人』の本を読みました。二度精読して、この本を「見える化」しようと決めました。各章ごとに札寄せツールで「見える化」し、ホームページに連載して、1月初めに完成させました。その一連の図をまとめたのが本資料です。本に文章として書かれていることを、文意に沿って、図にしたものです。図は大局的に見ることも、詳細に見ることも可能にし、論理関係を明瞭にします。論点が明確になりますから、自分で考えるにも、また、数人あるいは多数で議論する場合にも、考えを整理する土台になります。

    「日本社会の貧困」というのは、いまの日本、そして、将来の日本にとっての、非常に大きな問題だと、改めて認識しました。老後の貧困、現役世代・若者世代の貧困、そして子供たちの貧困、これらがいま広く広がり、連鎖しながら急速に拡大しつつあります。見かけは華やかな日本社会が確実に壊れつつある、というのが、「見える化」作業を始めて、認識したことです。これを止めるのにどうしたらよいのか、貧困を救済し、予防するのに、政治をどのようにすればよいのか、私たち国民みんなが考えねばなりません。この資料が、皆さまの理解と議論のお役に立てることを願っています。

 


原典: 藤田孝典著『下流老人』  「はじめに」  pp. 3 - 8

論点の可視化(「札寄せツール」による図示)   (中川徹)

(0) はじめに

 


原典: 『下流老人』(藤田孝典著) 「第7章 一億総老後崩壊を防ぐために 」 (最終章) 

「見える化」ノート、(7) 政策の検討と提言 (文章化したまとめ) 中川 徹、2016年 1月 5日

 著者(藤田孝典氏)が本書最終章に記述している提言(とその論理)をまとめて文章化すると、以下のようです。(「要約版」の図を見ながら、さらに簡単にしています。「状況・考察==>提言」の形式で表現しました。)

(1) いま、「下流老人」(生活保護基準相当で暮らす高齢者)が大量に生まれており、約6〜7百万人と推定される。また、若者の雇用や生活環境が急速に劣化し(非正規雇用やワーキングプアなど)、低所得化が進行している。下流老人の貧困だけでなく、若年層の貧困、子どもの貧困などが広く存在し、それらが連鎖して、日本社会全体の貧困が進んでいることが、問題なのである。これらの下流老人やワーキングプアの若者たちを生み出すのは、国であり、社会システムである(当人個人だけの問題ではない)。

==> 国や政府が、日本に貧困が広がり、進行しつつあることを認め、格差是正や貧困対策を本格的に打ち出すことが、何よりも必要である。

(2) 「健康で文化的な最低限度の生活」は、憲法が保証する基本的人権(の一つ)である。これが社会保障を進めるための基本認識である。この意味で、生活保護をはじめとする社会保障を受けることは、権利であるという認識を確立し、浸透させる必要がある。下流老人が多くいると同時に、富裕な老人も多くおり、資産家・高所得者もあって、貧富の格差が大きいのが実情である。これは、(税制による)所得の再分配機能を高めて、社会保障を手厚くしていくことが、必要であり、また、可能であることを意味する。課税のしかたについては、資産や所得を総合的に議論して、決めるべきことである。

==> 上記の基本理念のもとに、「貧困対策基本法」を法制化し、国民の貧困化を予防し、貧困から救済するための方策を、国家の重要戦略として建てるべきである。

(3) すでにある生活保護の制度を受けることに対して、国民に(権利ではなく)「恥ずかしいことだ」という意識が植えつけられている。上記(2)の理念に基づき、制度を分かりやすく、受けやすくすることが、まず最初に必要である。

==> 政府や自治体はまず、(下流老人に限らず)生活困窮者に対して、「生活保護で救済できる」ことをきちんと知らせ、保護申請に来るように誘導することを、するべきである。

(4) 現在の生活保護は、(困窮して、資産などをすべて使い果たしたのちに〉8種の扶助(生活、住宅、医療、教育、介護、葬祭、生業、出産)をセットで提供する「救貧制度」である。「貧しくなってから救ける」もので、「貧しくなることを防ぐ(防貧)」観点がないことが問題である。実際、生活相談に来る多くの人は、「生活保護のうちの一部でも補助してくれれば、生活がかなり改善し、生活保護を受けなくてもやっていける」と話す。

==> 生活保護制度を「扶助項目ごとに分解」して、社会手当の形で、もっと受給しやすくする。これによって、(旧来の)生活保護の一部分を扶助することにより、生活を成り立たせ、資産のすべてを失わなくてもよいようにする。

(5) 下流老人には住宅費の負担が想像以上に重い。また、若者たちも住宅ローンを組んで高額な住宅を買うことはできなくなっている。ところがいままで、(住宅購入の支援制度はあるが)低所得者が民間賃貸住宅を借りるための支援制度がない。住宅政策を改め、低所得でも誰もが住まいを失わないですむようにするべきである。

==> 家賃の(一部)補助を進める(これは上記(4)の扶助の一例である)。高齢者や低所得者が楽になり、若者が家庭を持ちやすい環境を作ることができる。これは、少子化対策などに有効であり、ヨーロッパ各国で成功事例がある。

(6) 若者の雇用や生活環境の悪化のため、厚生年金に加入できず、国民年金の未納者が約4割ある。また、仮に40年間国民年金を掛け続けても、将来得られる年金は約6.6万円で、生活保護の生活扶助費と同程度しかない。これらのことは、国民年金制度が、破綻しつつあることを示している。この状況では、給与が低くて苦しい生活をしている若者に、国民年金の掛け金を無理に払わせないのが良い(生活を維持する方が大事)。

==> 国民年金保険料の減免措置があることを告知し、(無届の未納ではなく) 減免申請を薦めるべきだ。

(7) 上記(1)(6)の状況で、現在の若者の多くは、高齢になると下流老人と化す (これは、現状では避けようがない)。いまの国民年金制度は破たんしつつあるから、これに代わる社会保障制度を構築して、若者たちの老後を保障するようにしなければならない。そうでないと、将来に大きなコスト増が生じ、社会不安が起こる。

==> 国民年金制度に代わる新しい制度を構築し、老後の生活を最低限(すなわち、憲法が定める「健康で文化的な最低限度の生活」)保証するようにしなればならない。それは、現役時代の報酬に関係なく、(低収入だった人も含めて)すべての人に保障するものでなければならない。

(8) 上記(7)を実現するためには、税金を投入して、すべての人の最低限度の生活を保障することを考えざるをえない。

==> それは結局、生活保護制度の生活扶助に相当する。それならいっそ、国民年金制度を廃止し、(上記(4)で述べたような新しい) 生活保護制度の生活扶助に一元化するとよいのでないか。

(9) 上記の(1)(6)(7)で言っているのは、「今、日本社会の貧富の格差が大きくなり、貧困が拡大して、一部の富裕層を除いて、「一億総老後崩壊」の状況になる危険が大きい」ことである。上記に提案しているすべての対策案は、税金で賄って国から支出することを含意している。税金によって、富の再分配を図る、富んでいる所・人から徴収して、貧しい所・人に分配する。このような徴収・分配・利用のやり方を決めるのは政治であり、その意思決定を促すのはわたしたち国民である。

==> 真に住みやすい社会を構築するために、何を選択し、何を訴えていくべきか?国民がともに考え、行動していくことが必要である。

以上

 


  原著者メッセージと冊子裏表紙 (中川 徹、2016年 3月25日)

原著者の藤田孝典さんから、本件の「見える化」資料についてメッセージをいただきました(3月 8日)。感謝して冊子裏表紙に掲載させていただきました。

いままでのPDF資料をまとめて、24頁の冊子(A4サイズ、カラー)を作成しました。3月15日付で500部印刷しました。(私の編集ミスで、最終章の提言を文章化したものが、p. 2-3に入りました。少しびっくりですが、ご容赦ください。)非売品です。積極的に活用くださる方は中川までメールでご連絡下さい、お送りします。なお、PDF版では乱丁を訂正し、原著の本の表紙画像を裏表紙に入れました。裏表紙を下記に掲載します。

 

 


  編集ノート後記 (中川 徹、2016年1月26日)

本ページに掲載しましたPDFファイルの「見える化」図は、従来のものを調整しました。すべてをA4縦置きの図にし、文字を大きくして読みやすくしました。(文字が少し小さい図は、大事な図で一覧性を優先したものです。)

本資料を作成しましたやり方、経過、各章のより詳細の図、中川の所感、などは、親ページ:「「札寄せ」しながら考える(13)〜日本社会の貧困を考える [A] 高齢者の貧困化 (0) はじめに AND 索引」から参照ください。

ご感想、ご意見、ご提案、ご寄稿などをいただけますと幸いです。不定期ですが、2-4週間ごとに更新しており、(当方で判断の上)適宜掲載させていただきます。宛先: nakagawa@ogu.ac.jp (誌上匿名/ニックネーム可ですが、投稿は実名でお願いします。)

 

本ページの先頭 日本社会の貧困(親ページ)

高齢者の貧困(親ページ)

標題 この資料の趣旨 「はじめに」の図 提言 原著者メッセージと冊子裏表紙 高齢者の貧困 全体PDF Amazonカストマーレビュー(中川) 「自由」 vs. 「愛」: 人類文化を貫く主要矛盾(中川)   英文ページ

 

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最終更新日 : 2016. 4.29   連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp