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編集ノート (中川 徹、2015年 9月11日)
本ページのシリーズを始める趣旨は、親ページ に記述しましたので、参照ください。
本ページは、つぎの文献をベースにしております。この本を二度精読したうえで、考察のベースにするのに適当と判断しました。
その本文を抜書き・要約しつつ書き出し、私自身が理解するところに従って、「札寄せ」ツール(片平彰裕作成)を用いて、図示(「見える化」)したものです。上記の本の詳細な読書ノートであると、ご理解下さい。記述の基本部分やその論理構成は原著者藤田孝典氏のものですが、全体の表現、特に図式化表現は私に責任があります。私自身の感想や意見は、原著者の記述とは区別して記述するようにいたします。『下流老人−一億総老後崩壊の衝撃』、藤田孝典著、朝日新書520、朝日新聞出版、2015年 6月30日刊、222頁
なお、同書には著者のプロフィルをつぎのように記述しています。
藤田孝典 (ふじた たかのり)
1982年生まれ。NPO法人ほっとプラス代表理事。聖学院大学人間福祉学部客員准教授。反貧困ネットワーク埼玉代表。ブラック企業対策プロジェクト共同代表。厚生労働省社会保障審議会特別部会委員。ソーシャルワーカーとして現場で活動する一方、生活保護や生活困窮者支援の在り方に関する提言を行う。著書に『ひとりも殺させない』(堀之内出版)など多数。編集ノート追記 (中川 徹、2015. 9.27) 『下流老人』の著者 藤田孝典さんへの中川の挨拶と、藤田さんからの返信(9.23)を後尾に記載します。
編集ノート追記 (中川 徹、2015.10.18) 第3章まで「見える化」が進み、蓄積が多くなりましたので、完成した図(要約版)だけを一式にまとめたPDFファイルを作りました。今後作ったものを後ろに追加してゆきます。
編集ノート追記 (中川 徹、2015.11.29) 本ページの英文ページを作り、簡単な紹介を掲載し始めました。(各章の独立ページは作っていません。)
編集ノート追記 (中川 徹、2016. 1. 7) 第7章まで「見える化」を行い、『下流老人』の本の「見える化」を完了しました。
本ページの末尾に、第7章が記述している著者の「政策の提言」を「見える化」した図の要約版、およびそれを中川が文章化したものを、掲載します。非常に適切な提言であると思います。また、このまとめが、私の半年間の「見える化」作業の成果でもあります。
編集ノート追記 (中川 徹、2016. 1.28) 全体をまとめ、「見える化」の図を微調整して、冊子(23頁)PDFにしました。
編集ノート追記 (中川 徹、2016. 3.30) 著者藤田孝典さんのメッセージをいただき、「見える化」の冊子(24頁) PDFを公開しています。この冊子の印刷版(非売品)をご希望の方は、中川までメールをください。
原著の構成と本ホームページでの図式化、関連記事の一覧 ==> 冊子版(23頁)PDF (2016. 1.28)
「見える化」図の一覧 PDF ==> 冊子版(23頁)PDF (2016. 1.28)
はじめに
第1章
第2章
第3章
第4章
第5章
第6章
第7章
本ページの先頭 | 日本社会の貧困(親ページ) | (0) はじめに 抜書き | 札作り | 見出し文つくり | 仕上げ(詳細版) | (0) はじめにPDF | 英文ページ |
『下流老人』(藤田孝典著) 「はじめに」 (「見える化」ノート、中川 徹)
本書に関する「見える化」ページの最初ですので、このノートを作成したやり方を分かるようにしておきます。
この「はじめに」の部分を「見える化」した PDF版 とExcel版 をも掲載しています。
(1) 抜書き・要約のテキスト作り
本を読みつつ、(論理を表現できるように注意して) 抜書きあるいは要約して、文をExcelファイルに書き出していく。(大きな)段落の区切りに、****の行を入れた。
[後略]
(2) ラベル化
書き出した文を、札寄せツールで、[一括して] 札(ラベル)に変換する。札の横幅を調節し、重ならないように並べる。順番は書き出したまま(すなわち、原著の記述のまま)。(大きな)段落の区切りでまとめ、付属説明の文はラベルを少し右にずらして分かりやすくしている。
(3) 見出し文とグループ構成
論点を明確にするように調整する。一つの論点をまとめてきちんと言っている文を選び(あるいはそのような文を作って)[赤色の札にし]、その論点での札寄せを集めてグループになるように配置する。本の記述が前後しているものなども集めて、整理し直す。
(4) 仕上げ(グループ化と全体構成)、詳細版の完成
論点の主文を示す赤色の札を、囲枠に変換し、その論点の札をグループとして表現する。全体の論理が明確になるように、グループ(囲枠) の相互配置を調整する。全体を再度見直して、(詳細版として) 仕上げる。
(5) 詳細を消し、論理の明確化。要約版の完成
論点を一層明確にするために、細部の札を省略して、「要約版」を作る。グループ単位で動かして、全体の論理を明確にし、矢印を使って論理関係を図示する。一部の札は、別のグループに移動させている。
この図を簡単に文章化すると、つぎのようです。
日本に「下流老人」が大量に生まれており、「一億総老後崩壊」tぽった状況を生み出す危険性が今の日本にある。本書では、「生活保護基準相当で暮らす高齢者及びその恐れがある高齢者」を「下流老人」という。その実態や背景は驚くほど知られていない。本書でその全体像を伝え、多くの読者とともにその解決策を考えていきたい。
この基本姿勢で以下に本文の各章を読み解き、「見える化」していきます。
著者 藤田孝典さんと 中川のコミュニケーション
中川 徹 ==> 藤田孝典さん 2015. 9.19 貴著『下流老人』に感銘を受け、問題の「見える化」に取り組み始めました。
NPO法人 ほっとプラス 藤田 孝典 様
2015. 9.19 中川 徹 (大阪学院大学 名誉教授)初めてメールを差し上げます。
7月下旬に貴著『下流老人..』を知り、二度精読させていただいて、大変感銘を受けました。
またその後、テレビ朝日のモーニングバードに藤田さんが出演しておられるのを拝見して、若くて、しっかり考え、活動しておられることに感服いたしました。私は、この18年近く、「創造的な問題解決の方法」、特に技術分野での発明や技術開発の技法を研究・教育・普及活動をつづけてきました。
2012年に定年退職しましたが、その後も『TRIZホームページ』というWebサイトを和文と英文の両方で、編集し普及活動を続けております。
今までは、技術分野で焦点を絞った問題解決をするアプローチを主にしてきましたが、もっと広い分野での大きな輻輳した問題をも扱えるようにする必要があると、考えてきました。そこで、このたび、貴著に触発されて、「日本社会の貧困を考える」というテーマで、勉強しつつ、問題解決を考える、そのための方法を考えることを始め、そのシリーズを『TRIZホームページ』に掲載し始めました。
まず問題をきちんととらえることが必要であると考え、貴著の内容を分かりやすく図式化する、ことから出発しております。
関連のWebページを昨日公開し、本日その更新案内のメルマガを国内1030名、海外630名に送ったところです。(1998年サイト創設)ご挨拶が遅れましたが、Web掲載内容と、更新メルマガとをお送りしますので、ご覧いただけますと幸いです。[本ページ掲載省略]
この図式化は、一読者の「読書ノート」であるとお考えいただけますと幸いです。もし不適切な点がありましたら、お知らせください。こんご、貴著の本体部分を同様に図的にまとめていくつもりです。
文章の方が、意図を詳細・正確に伝えられる点がありますが、全体の見通しがつきにくくなり、議論が十分かみ合わないことが出てきます。
図的表現によって、問題の関連を明確にでき、本末を抑えた議論ができるようになると思っております。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
以下は、『TRIZホームページ』の更新案内です(9月17日付、18日更新)。
トップページからいろいろなリンクを張っています。 http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/
また、英文ページもパラレルに掲載しています。 ただし、本件の詳細は英訳できそうにありません。
URL:http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/eTRIZ/藤田孝典さん ==> 中川 徹 2015. 9.23 返信
藤田です。 ホームページ拝見しました。 ありがとうございます。
大変わかりやすい内容で光栄です。
こちらこそ今後ともよろしくお願いいたします。特定非営利活動法人ほっとプラス 代表理事 藤田孝典(社会福祉士)。
聖学院大学人間福祉学部客員准教授
ほっとプラスのホームページ: http://www.hotplus.or.jp/
『下流老人』(藤田孝典著) 「第7章 一億総老後崩壊を防ぐために 」 (最終章) ==> HTMLページ,PDF
「見える化」ノート(要約版)、(7) 政策の検討と提言、中川 徹、2016年 1月 4日
全体図(要約版)
拡大図 (要約版) (上・中・下)
『下流老人』(藤田孝典著) 「第7章 一億総老後崩壊を防ぐために 」 (最終章)
「見える化」ノート、(7) 政策の検討と提言 (文章化したまとめ) 中川 徹、2016年 1月 5日
著者(藤田孝典氏)が本章に記述している提言(とその論理)をまとめて文章化すると、以下のようです。(「要約版」の図を見ながら、さらに簡単にしています。)
(1) いま、「下流老人」(生活保護基準相当で暮らす高齢者)が大量に生まれており、約6〜7百万人と推定される。また、若者の雇用や生活環境が急速に劣化し(非正規雇用やワーキングプアなど)、低所得化が進行している。下流老人の貧困だけでなく、若年層の貧困、子どもの貧困などが広く存在し、それらが連鎖して、日本社会全体の貧困が進んでいることが、問題なのである。これらの下流老人やワーキングプアの若者たちを生み出すのは、国であり、社会システムである(当人個人だけの問題ではない)。
==> 国や政府が、日本に貧困が広がり、進行しつつあることを認め、格差是正や貧困対策を本格的に打ち出すことが、何よりも必要である。
(2) 「健康で文化的な最低限度の生活」は、憲法が保証する基本的人権(の一つ)である。これが社会保障を進めるための基本認識である。この意味で、生活保護をはじめとする社会保障を受けることは、権利であるという認識を確立し、浸透させる必要がある。下流老人が多くいると同時に、富裕な老人も多くおり、資産家・高所得者もあって、貧富の格差が大きいのが実情である。これは、(税制による)所得の再分配機能を高めて、社会保障を手厚くしていくことが、必要であり、また、可能であることを意味する。課税のしかたについては、資産や所得を総合的に議論して、決めるべきことである。
==> 上記の基本理念のもとに、「貧困対策基本法」を法制化し、国民の貧困化を予防し、貧困から救済するための方策を、国家の重要戦略として建てるべきである。
(3) すでにある生活保護の制度を受けることに対して、国民に(権利ではなく)「恥ずかしいことだ」という意識が植えつけられている。上記(2)の理念に基づき、制度を分かりやすく、受けやすくすることが、まず最初に必要である。
==> 政府や自治体はまず、(下流老人に限らず)生活困窮者に対して、「生活保護で救済できる」ことをきちんと知らせ、保護申請に来るように誘導することを、するべきである。
(4) 現在の生活保護は、(困窮して、資産などをすべて使い果たしたのちに〉8種の扶助(生活、住宅、医療、教育、介護、葬祭、生業、出産)をセットで提供する「救貧制度」である。「貧しくなってから救ける」もので、「貧しくなることを防ぐ(防貧)」観点がないことが問題である。実際、生活相談に来る多くの人は、「生活保護のうちの一部でも補助してくれれば、生活がかなり改善し、生活保護を受けなくてもやっていける」と話す。
==> 生活保護制度を「扶助項目ごとに分解」して、社会手当の形で、もっと受給しやすくする。これによって、(旧来の)生活保護の一部分を扶助することにより、生活を成り立たせ、資産のすべてを失わなくてもよいようにする。
(5) 下流老人には住宅費の負担が想像以上に重い。また、若者たちも住宅ローンを組んで高額な住宅を買うことはできなくなっている。ところがいままで、(住宅購入の支援制度はあるが)低所得者が民間賃貸住宅を借りるための支援制度がない。住宅政策を改め、低所得でも誰もが住まいを失わないですむようにするべきである。
==> 家賃の(一部)補助を進める(これは上記(4)の扶助の一例である)。高齢者や低所得者が楽になり、若者が家庭を持ちやすい環境を作ることができる。これは、少子化対策などに有効であり、ヨーロッパ各国で成功事例がある。
(6) 若者の雇用や生活環境の悪化のため、厚生年金に加入できず、国民年金の未納者が約4割ある。また、仮に40年間国民年金を掛け続けても、将来得られる年金は約6.6万円で、生活保護の生活扶助費と同程度しかない。これらのことは、国民年金制度が、破綻しつつあることを示している。この状況では、給与が低くて苦しい生活をしている若者に、国民年金の掛け金を無理に払わせないのが良い(生活を維持する方が大事)。
==> 国民年金保険料の減免措置があることを告知し、(無届の未納ではなく) 減免申請を薦めるべきだ。
(7) 上記(1)(6)の状況で、現在の若者の多くは、高齢になると下流老人と化す (これは、現状では避けようがない)。いまの国民年金制度は破たんしつつあるから、これに代わる社会保障制度を構築して、若者たちの老後を保障するようにしなければならない。そうでないと、将来に大きなコスト増が生じ、社会不安が起こる。
==> 国民年金制度に代わる新しい制度を構築し、老後の生活を最低限(すなわち、憲法が定める「健康で文化的な最低限度の生活」)保証するようにしなればならない。それは、現役時代の報酬に関係なく、(低収入だった人も含めて)すべての人に保障するものでなければならない。
(8) 上記(7)を実現するためには、税金を投入して、すべての人の最低限度の生活を保障することを考えざるをえない。
==> それは結局、生活保護制度の生活扶助に相当する。それならいっそ、国民年金制度を廃止し、(上記(4)で述べたような新しい) 生活保護制度の生活扶助に一元化するとよいのでないか。
(9) 上記の(1)(6)(7)で言っているのは、「今、日本社会の貧富の格差が大きくなり、貧困が拡大して、一部の富裕層を除いて、「一億総老後崩壊」の状況になる危険が大きい」ことである。上記に提案しているすべての対策案は、税金で賄って国から支出することを含意している。税金によって、富の再分配を図る、富んでいる所・人から徴収して、貧しい所・人に分配する。このような徴収・分配・利用のやり方を決めるのは政治であり、その意思決定を促すのはわたしたち国民である。
==> 真に住みやすい社会を構築するために、何を選択し、何を訴えていくべきか?国民がともに考え、行動していくことが必要である。
所感 (中川 徹、2016年1月7日)
この藤田孝典さんの本は、素晴らしい本だと、改めて思います。繰り返し読んで「見える化」したことにより、そこに記述されていることが、私自身にもより明確に分かるようになりました。きっと皆さんにも、ご理解いただけるものと思います。著者の藤田孝典さんと、「札寄せツール」を活用させていただいた片平彰裕さんに、感謝いたします。
この「見える化」の図をできるだけ多くの方に見ていただけるようにしたいと考えております(とりあえずは、要約版PDF(全16頁)を参照ください)。そして、高齢者の貧困に限らず、日本の貧困問題の解決のために、日本社会全体をよくするために、みなさんが使っていただければよいと思います。
編集後記 (中川 徹、2016年1月28日) ==>
「見える化」の図の全体を調整しなおして、冊子にしました。
また、「「日本社会の貧困」を可視化しながら考える」という新しいページのシリーズを始めました。社会問題に関心を持って、新しく本ホームページに入って来て下さった読者のためのページで、技術面や、方法論の面に触れないようにしたものです。
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最終更新日 : 2016. 4.29 連絡先: 中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp