講義ノート: 創造的問題解決の方法論(3)
 情報の収集 (その1: 学術情報の図書・雑誌による収集)
  創造的問題解決の方法論
− 大阪学院大学情報学部 2年次「科学情報方法論」講義ノート (第3回講義)
  中川  徹 (大阪学院大学) , 2001年 10月18日
   [掲載: 2002. 3.28]   [ 注: 固定ピッチのフォントで読んで下さい]
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講義「科学情報方法論」(情報学部2年次)  第3回  講義資料
                                             2001年10月18日   中川  徹

  (続) 科学・技術の研究と学習の方法 〜 経験と原理
  + 情報の収集 (その1: 学術情報の図書・雑誌による収集)
 

目標:  科学技術における 原理・理論に基づくアプローチと問題解決のアプローチを理解
       し, 学術情報を収集する伝統的な方法を学ぶ。
 
 前回:  「レポートの書き方」

  目標:  学習・研究の「成果」は,「レポート」(論文, 提案書など) である。
        この「レポート」の作り方・書き方を学び, 本講義の具体的な課題を把握する。

  要点:  本講義の成績評価は, つぎのような「レポート」の提出によって行う。
         テーマは (本講義に関連するものを) 各自が選定する。
        「感想文」ではない, 正規の「報告書/論文/提案書」としての文書。
          12月3日「アウトライン」提出, 学期末 「レポート」提出。6〜15頁。
          書き方の一般的な注意は「レポートの書き方」を読み, 身につけること。
 

★ 第1回講義資料 の後半を参照のこと。

     [第1回の講義 (10月4日)資料のうちの 4.節〜6.節をまず説明した。]
 

情報の収集 〜 書誌情報とインタネット
   (その1: 学術情報の図書・雑誌による収集)
 

1.  はじめに

  情報の収集は, 学習・実務・研究のすべてにとって, 最初にすべきこと。
       書籍・(学術) 雑誌による方法をマスターすると同時に,
       インタネットによる情報収集・情報検索の方法を習得・活用すること。

  近年, われわれが簡単に収集できる情報の量と質は飛躍的に向上した。
    その主な要因は, 情報通信技術の向上,
                     特に, インタネットの爆発的な普及にある。

  従来のメディア:  書籍, 雑誌, 新聞, 放送 (テレビ), データベース, ...
  新しいメディア:  インタネットによる情報流通 (特に, WWW情報)
                       通信の多様化・高度化

  従来のメディアも新しい情報通信技術を使うことにより, 迅速・便利になっている。
  それでも, 従来のメディアが消失することはないと予想される。
      特に, 紙ベースの図書・書類の良さが, 改めて認識されているから。

  よって, 従来の図書を基本とした情報収集と
          新しいインタネットを基本とした情報収集の  両方をマスターする必要がある。

  「情報の洪水」に溺れない・流されないような心構えと方法を身につけること。

  以下には, これらの特長を認識して, つぎの二つの側面をまとめる。
     (1) 学術情報を中心とした, 図書・(学術) 雑誌による情報収集法    → 今回
     (2) (広範なテーマでの) インタネットによる情報収集法   → 次回

 

2.  学術情報の図書・雑誌による情報収集

2.1  学術上の情報の一次資料

(a) 学術雑誌掲載の論文

  学術上の情報で最も権威がある (信頼が置かれている)。
    学会が編集するものと, 出版社や有志の編集者が出版するものがある。
      編集委員会が構成されており, 同分野の専門家による「査読 (さどく)」 がある。
      学術的な権威/信頼は, 出版内容の実績によって徐々に作られていくもの。

    具体的にどんな学術雑誌があるか (権威があるか) は, 専門家/先生に尋ねるとよい。
    審査は厳しく, 論文投稿から出版までに 6ヶ月〜1年余 掛かることが多い。

(b) 学術上の国際会議, 国内学会, ワークショップなどの発表報文集 (Proceedings)

    国際会議などでは, 投稿論文が多く, 審査・厳選して発表させている。→ 信頼のもと。
      分野ごと/テーマごとに, 毎年1回定例的に開催されるものが多い。
      国内の学会の「年会」「研究会」などでは, 審査なし (拒絶されない) ものも多い。

    論文投稿から発表までは, 3ヶ月〜9ヶ月程度。
       (論文誌に比べて) 速報性があり, 発表者との直接の質疑ができることが貴重。
    発表報文集 (Proceedings) は, 部数が少なく, 所在・配布が確立していないため,
        学術雑誌の論文ほどには権威が認められていない。

(c) 学会の「会誌」, 商業誌などの記事

     これらは, 「解説」「読み物」「啓蒙」などとして大事である。
       しかし, 「学術論文」とは認められないことが多い。

(d) 学会と論文誌などの例

    情報処理学会    情報処理学会論文誌/  会誌『情報処理』/ 全国大会/ 研究会など
    電子通信情報学会  論文誌(A,B,C,D)/  会誌    / 全国大会/ 研究会など多数。
    ACM (Association for Computing Machinery) (米国)
    IEEE (Institute for Electric and Electronic Engineers) (米国)

(e) 特許

     学術論文ではないが, 工学など応用分野では重要な文献である。

2.2  2次資料・3次資料

(f) レビュー誌

      テーマごとに専門家が (最近の) 一次資料をまとめて, 研究動向などを報告する。
          権威のあるレビュー誌においては, やはり査読が行われる。

(g) 抄録誌

    分野ごとに, 学術的な価値のある一次資料を網羅し, その概要を記載したもの。
      一次資料としては, その分野の学術雑誌を (さらに厳選して) 取り上げる。
      書誌情報 (論文タイトル, 著者, 所属, 掲載雑誌名, 巻・号・頁, 発表年月, 概要)
        ここに記載される「概要」は, 著者が書いたもの/抄録委員が書いたもの。

    抄録誌は, 各専門分野での研究動向を調べ,
             自分の研究に取り込む, また, 自分の研究の新規性を確かめるのに大事。
      しかし, 論文が発表されてから抄録誌に載るのに1年程度掛かる。
                (その論文が投稿されてから, 少なくとも 2年程度遅れる。)

(h) データベース

    各分野の専門家たちが協力して, 重要な知見・事実・データなどを収集整理する。
      分野やテーマに応じてさまざまなデータベースが作成されている。

(i) 著書・教科書

    専門家が, 新しい分野/テーマ/切り口で, 知見を体系化し, 解説したもの。
      第一線の研究者による著書は, 著者の新しい観点を明確に体系的に述べており貴重。
        一つの分野, 新しいテーマを学ぶには, 最も分かりやすい資料。

(j) ハンドブック, 事典/辞典など

    各分野で, 専門家たちが協力して, その分野を体系的に広く紹介しようとするもの。
      確立された理論・技術・事実・用語などを整理して示す。
        研究の最前線とは 3〜10年の遅れがある。

(k) 図書目録/出版目録など

      分野別などにした図書館の蔵書目録, 日本/世界の出版目録など。
      タイトル, キーワード, 著者, 出版社などによる索引を備えているものも多い。

2.3  学術情報の図書・雑誌による情報収集の実際

  上記に記載したのとは基本的に逆の順番で辿っていく。
    その分野の初心者 (初学生) であれば, まずやさしい教科書を (複数) 読むと良い。
    問題・関心がはっきりしてから, だんだん特定テーマの論文に進む。

  図書館での閲覧/検索には, 分野の分類法を知っておくことが大事。
    「日本十進分類法」が多くの場合に採用されている。(本学の図書館も)

    「日本十進分類法」では, 情報学に関連した分野はつぎのように分類されている。

 
000 総記
  007   情報科学   (情報科学一般およびソフトウェア) 
   007.6   データ処理・情報処理
    007.63    コンピュータ  システム. ソフトウェア
      007.64    コンピュータ  プログラミング 

400 自然科学
500 工学
  547   通信工学. 電気通信
  548   情報工学   (ここには工学的な取り扱いに関するもののみ) 
   548. 2  電子計算機: ディジタル計算機, アナログ計算機
  549   電子工学

2.4  論文などにおける文献の記載形式

  参考文献/引用文献を記載するには, 「書誌情報」をきちんと書く。
    詳細の形式は論文を掲載する学術雑誌などの規定に従う。
 

例: 電子通信情報学会和文論文誌における文献の記載形式 (投稿規定の抜粋)

 文献は以下の形式により作成すること.著者が複数の場合も,全著者の氏名(英語の場合は氏名
とイニシャル)を記入すること.論文標題中の単語については,文頭以外は小文字を使用すること.
雑誌名は,付録Gの「学術雑誌略語表」に従って略語で記すこと.

・雑誌
  [1] 著者名,“標題,”雑誌名,巻,号,pp.を付けて始め−終りのページ,月(英語)年.
  [1] 山上一郎,山下二郎,“パラメトリック増幅器,”信学論(B), vol.J62-B, no.1, pp.20-27, Jan. 1979.
  [1] W. Rice, A. C. Wine, and B. D. Grain, "Diffusion of impurities during epitaxy," Proc. IEEE,
      vol.52, no.3, pp.284-290, March 1964.

・著書,編書
  [2] 著者名,書名,編者名、発行所,発行都市名,発行年.
  [2] 山田太郎,移動通信,木村次郎(編),pp.21-41, (社)電子情報通信学会,東京,1989.
  [2] H. Tong, Nonlinear Time Series: A Dynamical System Approach, J. B. Elsner, ed., Oxford
      University Press, Oxford, 1990.

・著書の一部を引用する場合
  [3] 著者名,“標題,”書名,編者名,章番号またはpp.を付けて始め−終りのページ,発行所,
      発行都市名,発行年.
  [3] 山田太郎,“周波数の有効利用,”移動通信,木村次郎(編),pp.21-41,(社)電子情報通信学会,
      1989.
  [3] H. K. Hartline, A. B. Smith, and F. Ratlliff, "Inhibitory interaction in the retina," in
      Handbook of Sensory Physiology, ed. M. G. F. Fuortes, pp.381-390, Springer-Verlag, Berlin,
      1972.

・国際会議
   [4] 著者名,“標題,”会議名,no.を付けて論文番号,pp.を付けて始め−終りのページ,都市名,
       国名,月(英語)年.
   [4] Y. Yamamoto, S. Machida, and K. Igeta, "Micro-cavity semiconductors with enhanced
      spontaneous emission," Proc. 16th European Conf. on Opt. Commun., no.MoF4.6, pp.3-13,
      Amsterdam, The Netherlands, Sept. 1990.

・国内大会,研究会論文集
   [5] 著者名,“標題,”学会論文集名,分冊または号,no.を付けて論文番号,pp.を付けて始め−終り
       のページ,月(英語)年.
   [5] 川上三郎,川口四郎,“紫外域半導体レーザ,”1995信学全大,分冊2, no.SB2-1, pp.20-21,
       Sept. 1995.


  これらの記述には, 参考にした文献の記録をいつもきちんとしている必要がある。
 
 
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講義ノートトップ 1. 導入: 経験と原理 2. レポートの書き方 3. 情報収集(1) 書誌情報 4. 情報収集(2) インタネット 5. 問題を見つけて絞り込む 6. 発想とは
7. システムとは 8. 問題分析(1) 困ることの原因 9. 問題分析 (2) 機能・属性分析 10. 問題分析(3) 空間時間特性と理想解 11. 解決策生成(1) 知識ベース 12. 解決策生成 (2) ブレークスルー 13. 解決策生成(3) 解決策の体系化

 
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最終更新日 : 2002. 7.15   連絡先: 中川 徹  nakagawa@utc.osaka-gu.ac.jp