講義ノート: 創造的問題解決の方法論  (Top)
創造的問題解決の方法論 (全13回) 
− 大阪学院大学情報学部 2年次「科学情報方法論」講義ノート (完)
  中川  徹 (大阪学院大学) , 
  2001年 10月 4日〜2002年 1月17日
   [掲載開始: 2002. 2. 4, 最終更新日: 2002. 7.15 (完)] 

   掲載済の講義: (1) (2) (3) (4) (5) (6) (7) (8) (9) (10) (11) (12) (13)  (完) 

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 まえがき (『TRIZホームページ』への掲載にあたって,  中川  徹, 2002年 2月 4日)

   ここに連載するのは, 小生が大阪学院大学情報学部の 2年次生に対して行った授業「科学情報方法論」の講義資料である。この科目は, 情報学部の基礎科目の一つであり, 2年次後期 (10月〜1月) に配当されており, 選択科目である。本年度の 2年次生 (本情報学部の1期生) 約115名のうち, 70名が履修登録し, レポートを提出して単位を取得したのは50名余である。講義は90分授業で, 木曜日の 1講時 (9:00-10:30) に行い, 全部で13回の講義をした (国際会議のために別に1回を休講)。

  本科目の「目的および概要」について, 『講義要項』には以下のように記述した。

  学問分野でも, 技術開発でも, 日常生活でも, われわれが新しい状況や困難などに立ち向かい,新しいものを創造していくためには, その問題を認識し,分析し,解決方法を考え,それを具体的な解決策として実現していく必要がある。その際に扱う対象や問題の内容は個々の問題ごとに異なるが, 「情報」を処理していくという大まかな方法としては,共通するものが多い。それは,研究したり,レポートをまとめる方法でもある。そこで,本講義では,研究や問題解決の基本的なプロセスに沿って, 「情報」の扱い方・考え方 (すなわち,最も深い意味での「情報の処理」)を説明する。このような「情報の処理」の方法論は,科学・技術・[実務・]日常生活にとって大事なことであり, 本科目はそれをまとめて講義する新しい試みである。専門科目を勉強する前にぜひ履修することを薦める。
  この授業は全く初めての試みであったため, 実際の授業は手探り状態であり, 授業全体の構成も講義しながら徐々に固めていく状態であった。毎週毎週期日に追われながら, 研究レポートを書いているような感じであった。これまでこの『TRIZホームページ』にいろいろと書いてきたことが有効であったが, 企業の技術者でなく, 情報学部の学部 2年生に話すには, ずっとずっとやさしく, 分かりやすくすることが必要であった。学生たちは, (情報技術の入門以外は) まだ科学技術の本格的な教育を受けていず, 企業や社会での実地問題に対する経験も持っていないのだから。 また, TRIZだけでなく, より広い視野から見た内容にする必要があった。いま, 授業をやり終えて, このような必要に答える形で新しく書き下ろしたことが, 自分にとっても大変有益であったと思う。

  実際に講義した内容は, 以下の一覧のようである。
 

(回)
 月日
 主題  内容 掲載日
(1)
 2001.
   10. 4
導入: 
    科学・技術の研究と 
       学習の方法
     -- 経験と原理
本講義について (趣旨, 概要,留意点)
日常生活から科学・技術へ (「額縁掛け問題」のデモ)
科学と技術のアプローチの概要
観察→経験的知識→仮説→実験検証のアプローチ
2002. 
   2. 4
(2)
    10.11
レポートの書き方 
  (本科目のレポート課題)

  (レポートの書き方)

本講義の成績評価のレポートについて
レポートの書き方    はじめに (重要性) 
    レポートの目的を明確にする 
    レポートの中身を作るための調査・研究
   執筆の準備と執筆活動
    レポートの形式と記述すべき項目
   文章の書き方の要点, まとめ, 参考文献
2002. 
 2. 4

(3)
   10.18
 (続) 科学・技術の研究と
           学習の方法
            - 経験と原理
情報の収集
      (その1: 学術情報の
          図書・雑誌による収集)
原理・理論→科学的推論→応用のアプローチ
問題→分析→解決策→応用のアプローチ
-----------------------------
情報の収集 -- 書誌情報とインターネット
学術情報の図書・雑誌による情報収集
論文などにおける文献の記載形式
2002.
 2. 4 

-----
2002.
   3.28 
(4)
   10.25
情報の収集
    (その2: インターネットを
         利用した情報の収集)
WWWのしくみ
リンク集を用いたインターネット情報の収集
検索エンジンを用いたインターネット情報の収集
      (キーワード検索)
インターネットによる情報収集のためのリンク集
 2002.
   3.28 

リンク集
(5)
   11.  1
問題を見つけて絞り込む  はじめに
 「人生の大事な問題」についての捉え方
問題を捉えるための一つのヒント (プロジェクトX)
技術の世界で問題を捉えた種々の事例
問題を適切に捉えるための諸観点
問題の設定のしかた
問題の明確化のプロセス (USIT法の問題定義)
 2002.
   3.28 
(6)
    11.15
 「発想」とは何だろう?: 
     試行錯誤とひらめきと
     創造性
はじめに:  「発想」とは何だろう?
「ひらめき」: 種々の逸話とその教訓
試行錯誤による実験
自由奔放に発想を促す技法: ブレインストーミング
「心理的惰性」: 創造を阻む自分の内面の要因
野口悠起雄の『「超」発想法』とその批判
 2002.
   5.16 
(7)
    11.22
「システム」とは: 
   構成要素とその関係, 
   階層性, 技術システム
 「システム」という言葉
 「システム」の階層性
 「システム」として捉えた簡単な例
 「ブラックボックス」としての
      システムの働き (機能) の表現
技術的システムの考え方
 「技術システムの完全性の法則」 という考え方
 2002.
   5.16 
(8)
   11.29
問題の分析 (1)
    問題 (困ること) の
      「原因」をつきとめる
問題の分析のはじめに: 
    何が「問題 (困ること)」なのか?
 「問題 (困ること)」が起こる原因は何なのか?
技術システムにおける原因分析の例
原因-結果のネットワークによる表現とその利用法
 2002.
   6. 6 
(9)
    12. 6
問題の分析 (2) 
    技術システムの
    機能と属性の分析
 「メカニズム」の理解, 専門領域の知識とその限界
システムの機能分析  (1) 簡単な記述ルールの表現法
    (2) 有益/有害な機能を区別する表現法
 「オブジェクト-属性-機能」による分析 (USIT法)
 2002.
   6. 6 
(10) 
    12.13
 問題の分析 (3) 
    空間と時間の特性,
    理想解からイメージする
空間と時間による特性の分析
 「理想」の認識と技術システムの「理想性」
      (TRIZにおける概念)
理想をイメージして問題解決する具体的技法
      (USITのParticles法)
 2002.
   6.20 
(11)
   12.20
解決策の生成法 (1)
     知識ベースの活用
はじめに
問題解決の基本モデル
問題解決のための種々の「知識ベース」の枠組み
     (TRIZの全体像)
 「技術システムの進化のトレンド」とその利用
技術の逆引き: 目標機能から実現手段を求める
TRIZの「40の発明の原理」
 「アルトシュラーの矛盾マトリクス」
TRIZの「76の発明の標準解」
 2002.
   6.20 
(12)
 2002.
     1.10
解決策の生成法 (2)
    「壁」を破る方法 
       (ブレイクスルー)
 「矛盾」の克服: TRIZの「分離原理」の考え方
「発明的解決策であるための二つの条件」: 
     イスラエルのASIT法
USITの解決策生成技法 (その1) 
 2002.
   7.15 
(13)
    1.17
解決策の生成法 (3)
    解決策の体系化

      および
講義のまとめ

USITの解決策の生成技法 (その2) 
USIT法の全体像 (フローチャートと適用法)
TRIZの全体像と学び方
創造的問題解決の意義: 技術開発と社会への応用
本講義のまとめ
 2002.
   7.15 

  この講義内容は, 『TRIZホームページ』の読者の皆さんにもきっと有益なことがあろうと思い, ここに順次掲載することにした。もともとはMS Wordのファイルであるが, 本ホームページ内のいろいろな記事との連携を容易にするために, HTMLに変換した。本来は特定の学生たちに向けた講義だから, 学外の人たちには分かりにくい部分もあろうが, なまじ修正し始めると収集がつかなくなるので, 講義資料のままで掲載する。字下げや改行を使った形式に書いているのは, 授業をする側にも聞く側にも分かりやすくするためである。[固定ピッチのフォントで見て下さい。そうでないと字下げの間隔がずれます。] 毎回 8〜14頁のプリントを渡した。読者の皆さんのご意見を頂ければ幸いである。

  なお, 小生の別の講義のうち, 「総合科目 (1)」 での講義内容は, 2000年6月に 本ホームページに「創造的な問題解決の思考法 −大学生活で何をしようとするのか?」として掲載した。2000年 4月に発足した情報学部も, 1期生たちがこの 4月から 3年次になり, いよいよ専門科目の講義やゼミなどが本式にスタートする。しっかりした教育をしたいと思っている。また, 今回この授業で提出されたレポートを読みながら, 学生たちが育ってきていることを感じることができ, これからが楽しみである。

  なお, 本学の概要については, 大阪学院大学の公式ホームページ (http://www.osaka-gu.ac.jp/) を参照下さい。
 

   編集ノート(中川 徹, 2002年 7月15日)

   この13回講義の連載を今回で完了することができた。読者の皆さんのお役に立てれば幸いである。
   この機会に, 本件のまえがきの部分 (目次一覧を含む) を英訳して, 英文ページに掲載した。機会を得て (少し手直しのうえ) 全文を英訳することができればよいと思っている。
 
 
講義ノートトップ 1. 導入: 経験と原理 2. レポートの書き方 3. 情報収集(1) 書誌情報 4. 情報収集(2) インタネット 5. 問題を見つけて絞り込む 6. 発想とは
7. システムとは 8. 問題分析(1) 困ることの原因 9. 問題分析 (2) 機能・属性分析 10. 問題分析(3) 空間時間特性と理想解 11. 解決策生成(1) 知識ベース 12. 解決策生成 (2) ブレークスルー 13. 解決策生成(3) 解決策の体系化

 
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最終更新日 : 2002. 7.15.   連絡先: 中川 徹  nakagawa@utc.osaka-gu.ac.jp