編集ノート (中川 徹、2013年 1月28日)
USIT (Unified Structured Inventive Thinking、統合的構造化発明思考法) の開発者 Ed Sickafus 博士の ニュースレター(NL) の和訳掲載を 9年ぶりに再開いたします。2004年に NL 1号〜10号の和訳を 古謝秀明さんと中川徹で行いました。Sickafus博士の著作リストなどは、そのときの親ページを参照下さい。現在の段階で以下の点を追記しておきます。
(1) Sickafus 博士のニュースレターは、2003年11月〜2009年 3月に断続的に発行され、(最盛期は2006年5月までで、ほぼ毎週) 79号までになっています。各号 3〜4ページで、PDF 版です。
(2) 今回の和訳再開に際して Sickafus 博士に、和訳とともに英文原文の本ホームページ掲載の許可を願い出て、同博士より全面的な掲載許可をいただきました。深く感謝いたします。
You have my permission to translate, and post on the web, all of the U-SIT and Think Newsletters both past and future and their English PDF versions. Ed Sickafus Jan. 21, 2013
(3) 今後、ニュースレターの和訳掲載と並行して、英文でも掲載いたします。和訳は数号をまとめてひとつのページにするつもりです。
(4) USITの教科書 (1997年) の他に、 eBook 『USIT の概要』 (Ed Sickafus、2005年) があり、川面恵司・越水重臣・中川徹で和訳し、本『TRIZホームページ』に掲載しています
。氏名とメールアドレスを登録いただき、 ダウンロード(無料)が可能です。
(5) ご質問、ご感想などありましたら、お寄せ下さい。Sickafus 博士も喜んで返答くださるものと思います。
[追記: 中川 2013. 4. 6] なお、和訳にはできるだけ原文に忠実になるよう努力しています。訳文での表記のしかたについて、節立て、強調、フォントの色、原注と訳注、訳での補筆などの場合を下記に記しておきます。
・ 章・節の見出しは原文に従っています。章を大フォント赤字、節を通常サイズの太字・赤字で表記。必要に応じ小見出しを黒の太字で立てる。
・ 段落は原文に従っていますが、原文段落がやや長いところがあり、分割することがあります。
・ 強調に関して、原文の太字は太字に、下線および斜体はフォントの色を((濃)青色に)変えています。また、論理の明確化のために、中川の判断で訳文で太字 (黒) にしている部分があります。
・ 他者のコメント、質問などの引用部分は、濃青色のフォントにしました。緑色のフォント部分は中川の挿入・補筆です。
・ 訳文中の ( ) は原文のまま、あるいは和訳で分かりやすくするためです。訳文中の [ ] は、訳者が挿入した補筆です。
・ 原注を (注*) などで、また訳注を [訳注] などで区別して表記しています。
![]() |
USIT Website: http://www.u-sit.net/
Dr. Ed Sickafus: Email: NTELLECK@u-sit.net |
(11) ユニークネス分析 (空間・時間特性分析) 。機能と効果を「空間」(紙・インク・空気) で位置づける。また、機能と効果を「時間」 で位置づける (インクをローラにつけてから、紙に転写し、切断・収納し、ユーザが使うまで)。これに応じて、さまざまな解決策コンセプトを思いつくことができる。
(12) 質疑応答: 問題の設定など (中川徹の質問) 。パズルの問題で、考察のプロセスと事後の(数学的)理解とは異なること。(技術の問題の) 問題設定においては、マネジャの観点 (特に、問題選択のビジネス的観点) と技術者の観点 (取り上げる問題をきちんと定式化する) が通常全く違うものだ。
(13) 解決策生成技法 - 複数化法 (乗法) 。われわれの脳は、問題定義の段階でも分析の段階でも、解決策をどんどん出してくる。それを抑制せずに書き留めよ。その後に解決策生成の技法を使ってさらに多く出す。複数化法はオブジェクト (構成要素) に焦点を絞って考える。オブジェクトをまず多数化する (乗法)。
(14) 同 - 複数化法 (除法) 。複数化法には、前回の「乗法 (多数化)」とともに、今回の「除法 (分割)」が含まれる。オブジェクトを分割し、部分を多数にする。具体的なものだけでなく、より抽象化したもの (インクの代わりに液体、紙の代わりに固体) で考察すると、さらにアイデアが広がる。
(15) 同 - 次元法 。オブジェクトの属性に焦点をあてる方法である。いままでに認識している属性を列挙し、それを非活性化することを考える。さらにいままで考えてきていない属性を列挙し、それらを使うことを考える。例えば、液体 (流体) の剪断速度、あるいはインクの電気的性質など。
(16) 同 - 機能配置法 。現在のシステムで意図している機能を、閉世界中の (他の) オブジェクトによりうまく担わせることを考える。いままで、紙がインクを「局所化させる」(場所ごとに固定する) を一般化して、固体が液体を局所化させる種々のやり方を考えるとよい。さらに「気体が液体を局所化させる」方法も考えられる。
(17) 同 - 連結法 (Transduction) 。機能 (効果)は、二つのオブジェクトが接触して、それらの各属性が働いて、相手または第3のオブジェクトの属性を変更 (または維持) する。いま、もう一つの機能を連結して、この(まだ望ましくなっていない) 第3の属性に働いて、新しい属性をつくりだすように考える。(例えば、インクのセル間の強度が増す方法を考える。)
(18) 同 - 一般化法 。いままで得られた解決策コンセプト (本例では、すでに43件) に対して、そのアイデアを一般化して (それがどんな原理でどのように働くか) 考察し、さらにアイデアを出す。例えば、印刷に際して「紙を加熱する」という初期アイデアでは、本当に加熱したいのは紙に印刷された薄いインクの層であることに気がつく。そこで、その薄いインク層だけを有効に加熱し、乾燥を促進する方法をつくりだす。
(19) 「原因=効果 ?」 。著者は本号で、根本原因の分析に必要な概念/用語について論じている。彼の根底のモデルは、「二つのオブジェクトが接触するとき、それぞれ一つの属性を介して相互作用し、第三の属性に効果を及ぼす」。その「効果」が望ましいときを「機能」と呼び、そうでないときは「望ましない効果」という。根本原因の分析においては、「望ましくない効果」を最上段に置き、その原因 (複数可)を下段に、また原因 (を効果とみてそれ) の原因を下に書いていく。この連鎖が止まるのは、原因 (となる効果) を相互作用する属性で記述したときである。-- 混乱しやすい概念を明快に説明している。当時、TRIZ Journal にも掲載された。
(20) 「 USIT--工学-設計問題を解決するための一つの方法」 。著者は本号から、発明となるような 製品を作るための方法、としてのUSITを論じようとしている。まず、手始めに「バーをはしごする問題」という数学的なパズルを出している。そのようなパズルを解くためのヒューリスティックな方法にも、単純化する、逆に考えるなどの一般化できる方法があるのだ、という。
(21) 「 USIT--工学-設計問題を解決するための一つの方法 : 発明の方法」 。発明をしようとするには、それを考え出していくための「戦略」が必要であると著者はいう。その戦略の土台に、著者は「技術者のチームに関する、問題解決の3つの公理」を置く。すなわち「(1)一つの問題をテーブルに置けば、・・・。(2) 一つの解決策を提出すると、・・・。(3) 上記(2)が不成功だと、・・・」の3つである。そして「アイデアがアイデアを閃かせる、だからアイデアを生成せよ」と薦める。
(22) 「 USIT--工学-設計問題を解決するための一つの方法 : 発明の方法 (続き)」 。上記のスローガンを補足して、「アイデアがアイデアを閃かせる、そして分析もアイデアを閃かせる、だから分析してアイデアを生成せよ」という。著者は例題として、7月にシチリアで行なった演習を再現・発展させている。「ありふれたもの」として、教室にあったプラスチックのコップを取り上げ、それを改良して発明を創り出すことを課題にする。まず、スケッチを描き、いろいろな属性 (すなわち性質のカテゴリ) を書き出させた。
(23) 「同上 (続き): 飲むための容器の問題」 。教室にあったプラスチックコップを「プロトタイプ」として、その次世代製品を考える。まず、そのプロトタイプが持っている属性をできるだけ多く洗い出す。そして、各属性が意図している (実現しようとしている) 「機能」 (プラス面) と、その属性がもたらしている「望ましくない効果」(マイナス面) とを記述する。これらを、特性-属性-機能の「CAFテーブル」という一覧表に示す。--このテーブルは著者の新しい試みであるが、私は非常に有用だと感じる。
(24) 「同上 (続き): 飲むための容器の問題」 。前号のCAFテーブルを使い、一つ一つの属性を手がかりにして、改良するとよいアイデアをどんどん思いついて、「解決策コンセプト」として書き出している。どの属性からでも、どの機能からでもよいから、順番にとらわれずに、思いつくままに発展させ、記録せよ、と薦めている。
(25) 「同上 (続き)」 。読者 (Matt Smith) から、CAFテーブルにおける「特性」というのが適当でないとの批判あり。趣旨を議論。「上位レベルの属性」 (いろいろな属性をまとめた表現) というのが著者の趣旨。(次号で「クラス (Class)」という語に変更された。)
(26) 「同上 (続き)」 。「飲むための容器の問題」での解決策コンセプト作りを継続。中川徹よりの質問(その1): 解決策を体系化して示す方法がないか? 著者は、CAFテーブルの第4欄に簡略に記載し、「CAFSテーブル」を示す。「飲むための容器の問題」でのいままでの案12件を例示した。
(27) 「同上 (続き)」 。中川徹よりの質問(その2): 解決策の評価・選択をどのようにするのか? 著者は、「問題解決者(チーム)」 の他に、「問題のオーナー」(問題を解決する/させる責任を負う人) と 「マネジメント」 (問題解決に関するビジネスとしての処置の意思決定権者) とを区別している。解決策の評価・選択は、USITの後に、問題解決者(チーム) と問題のオーナーとが共同で行なうべきことである。問題のオーナーにUSITプロセスに参加させることが望ましい。「マネジメント」は、問題解決のプロジェクトの開始そのものに (事前に) コミットし、解決策 (複数可) が選択・提示された後に、意思決定の責任を持つ。このため、プロジェクトの進行が知らされているべきである。
(28) 「同上 (続き)」 。中川徹よりの質問(その3): USITプロセスの全体としてのエッセンスは何か? 著者回答: USITの標準の戦略は、フローチャートに記述され、「問題を定義する → 分析する → 解決する」である。各段階でヒューリスティックな方法を、ワークシートとして使う。フローチャートを理解し、身につけて、その上で拘らないのがよい。もっと自由に、問題の定義・分析・解決を行き来し、無意識を働かせ、問題解決を反復・深化させるのがよい。「欠陥改善」型の問題と「発明」型の問題が区別されることが多いが、USIT では両方とも基本的に同じアプローチでできる。
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最終更新日 : 2013. 4. 6 連絡先: 中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp