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今後の受信機普及予測

 2011年に向けてのデジタル受信機普及スピードを知るため、筆者らはデジタルテレビ受信機出荷数の予測をおこなった。そのために「Bassモデル」と呼ばれる、新規製品普及の予測に使われる経営学上の標準モデルを2003年以降のデジタル受信機出荷数にあてはめて推計し、これを延長して2024年までの出荷数を予測した。

 まず停波が実施されない(アナログ放送が半永久的に続く)と仮定した場合の普及スピードを予測し、その上で特定の時点(現在の予定は2011年7月)にアナログ停波が実施された場合の結果を考えるという方法を採用した。

 図3、4はその結果を示している。図4に示すように、2011年半ばではテレビ保有総数1.24億台のうち、デジタル受信機が6,800万台(55%)、アナログ受信機の残存数が5,600万台(45%)になるものと推定された。



 なお、総務省の「地上デジタル放送推進に関する検討委員会(PDF)」の資料では、地上デジタル放送対応受信機の普及台数が2011年に1億台を突破するという予想が示されている 。しかし、その数字にはテレビだけでなく、DVDレコーダーや、ケーブルテレビのセットトップボックスなども含まれている。本稿での分析は、あくまで生活必需品としての性格が強いテレビに限ったものだ。

 デジタル受信機の年間出荷数は、図3から分かるように、2008年に1,200万台近くにまで増加してテレビ受信機の平均年間買換数の水準を突き抜け、同年以降さらに増加して2010年ごろに1,600万台弱のピークに達し、以後は波を打ちながらテレビ機年間買換数の1,000万台水準に近づくであろうと予測されている。停波を予定している2011年7月の時点は、全部で1億台強のアナログテレビ機をデジタル機に買換えるサイクルの中間点(最盛期)近くに位置しており、そこから数年経過した後にアナログ機の買換が一巡し、受信機のデジタル化が完了に近づくのである。

 次に、停波が2011年7月に実施された場合を考える。同時点に残存するアナログ受信機を活用して停波後のデジタル視聴を可能にする、すなわち「テレビ視聴環境を維持」するためにすべての残存アナログ機について「(デジタル)チューナー」を供給するとすれば、そのための必要チューナー数は残存アナログ機数(5,600万台)に等しい。筆者らはこの場合のチューナー購入費用合計の推計も試みた。推定作業に使った生産費用関数等についての説明は省略するが、2011年7月停波の場合のチューナー購入費用は、大量生産による価格低下を考慮に入れても計3,200億円程度に及ぶという結果が得られた。

 次に同じ推計方法を使って、停波時点を変更した場合の結果を求めてみた。図5および図6は、停波時点を2010年末~2020年に選んだ場合に必要なチューナー供給数と供給費用をそれぞれ示している。いま仮に2014年末まで停波を延期した場合には、デジタル機への自発的な買換が進行するため、同時点でのアナログ機残存数は2,200万台に、またチューナー購入費用は1,600億円程度にまで減少する。さらにこれを2017年末まで延期すると、アナログ機残存数は100万台に、チューナー費用は50億円にまで大きく減少する。



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Hajime Oniki
ECON, OGU
6/8/2008
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