子どものための教材: 子どものためのCIDコース (第1分冊)


子どものためのCIDコース:
新しいことを思い描く力をつける

1年生 前期 「おとぎ話の学校」

原著 (ロシア語): ナタリア・V・ルービナ (1999年)

英訳版:  イリーナ・ドーリナ 訳 (2000- 2001年)
   『TRIZホームページ』(中川 徹)掲載 (2000- 2002年)

日本語版: 高原利生、福田ちはる、中川 徹 訳 (2019年2月20日)
 『TRIZホームページ』(中川 徹)掲載 (2019年2月23日)
   
発行者:  クレプス研究所 中川 徹 2019年2月20
  © 2019 Toru Nakagawa

掲載:  2019.2.23

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  編集ノート (中川 徹、2019年 2月23日)

これは、CIDコースの第1分冊です。

2013年2月に高原利生さんが、第1分冊の指導の手引きとワークブックの全章を和訳し、中川に提出下さいました。ただ、私が多忙にしており、その仕上げをできないままで、立ち消えになり、申し訳ないことをしました。

2018年10月に、福田ちはるさんが、改めて本体部の全章を和訳くださいました。言葉遊びなど、言語に依存する項目を、日本の子どもたちに合うように書きなおしてくださっています。

これらをベースに、中川が全章の細部まで訳の見直しをし、スタイルを統一・編集して、ようやく仕上げたところです。

指導の手引き、ワークブックとも、1学期分をひとつのPDFファイルにしています。PDFには、しおり機能をつかって目次を作っていますので、パソコン上では便利に参照できます。また、Adobe Readerまたは Adobe Acrobatを使い、(あるいは通常のプリンターソフトで)「小冊子印刷」機能を使うと、A5版数十頁の「小冊子」を簡単に自作できます。そのやり方は、例えば https://helpx.adobe.com/jp/acrobat/kb/cpsid_91498.html を参照ください。

本HTMLページには、表紙、著者の序(おとぎ話への招待)、シンボルマークの一覧、本体部の目次と重要概念、を掲載しておきます。また、著者が(指導の原理とワークブックの両方で)囲み枠内で強調している重要概念の定義(を日本語版で一部かきかえたもの)を掲載しておきます。ただ、このような定義を直接教えようとしているのではなく、いろいろな話、なぞなぞ、お絵かき、ゲーム、劇などをとおして、理解できるように工夫しています。具体的には、指導の手引きとワークブックを読んでみてください

ミスプリなどを修正して、少し安定してから、製本版を作ることを考えるつもりです。

読んでみると、面白さがわかりますし、子どもたちに話したり、教えたりすると、もっともっとその奥深さが分かることでしょう。読んで、使ってみてくださる方が多いことを願っています。

本ページの先頭

指導の手引き PDF 

ワークブック PDF  表紙 シンボルマーク 目次と重要概念

CIDコース 親ページ

  英文ページ

  

 表紙  指導の手引き と ワークブック

   

 


  

 おとぎ話への招待 (序に代えて) 

想像は偉大な力を持っている。
自然の言葉を
精神が魂のために翻訳することを
想像は助けてくれる。

(テオフラストゥス・フォン・ホーエンハイム: 
パラケルススという名で知られる)

CIDのクラスの準備をするときいつも、私はなにか普通でない新しい経験を、教えるそれぞれのクラスやグループから期待しています。そしてその期待は裏切られたことがありません。新しいなぞなぞ、ことわざ、お話、奇妙な問いかけ、など−これらのすべてが不思議の世界との小さな遭遇のように見えます。この不思議の世界はどのようにして生まれたのでしょうか?なにからできているのでしょうか?

私がこの仕事を6年前に始めましたとき、私は新しい謎の世界を発見したパイオニアであるかのように感じました。そこでは、いままでの経験、教育、授業のスキルなどのすべてが、子どもたちとのコミュニケーション、そして子どもたちと一緒の創造性の世界への旅、という一つの体系に組み上げられていくのを感じました。

このシステムの最初の一歩は、「小学生のための創造的想像力の開発(CID)のコースのプログラム」でした(1994−1995学年度)。この本では1年生から3年生のためのCIDコースが作られています。CIDコースの主たる目標と傾向を記しておきます。

「プログラム」は私たちが旅する道筋です。旅にはよい装備が必要です。そこでクラスでの演習のために、ワークブックを作り上げました。「おとぎ話の学校」が1年生用、「不思議な都市」が2年生用、そして、「未解決の謎の惑星」が3年生用です(1997-1998学年度)。ワークブックは一種の日記帳であり、一人一人の生徒が、先生とワークブックのキャラクタたちと一緒に、不思議な世界を旅しながら、書いていくものです。

CIDクラスの先生には困難な任務があります。創造性の世界への信頼できる案内者でなければなりませんし、オリジナルな創造的なアイデアを出さなければなりませんし、創造的な問題を見つけて解決することが生徒たちにとって毎日必要なことになるように、しなければなりません。人生での活動的な姿勢、戦う者の姿勢、創造的な人格を、CIDコースの授業で作り上げていくことが、コース全体の最も大事な目標です。

CIDコースの方法論的指導の手引き』(あなたが今手に持っているのがその第一分冊)には、CIDのクラスを実施するにあたってお薦めすることを詳しく書いています。同様の6分冊があり、各学年に前期と後期の2分冊になっています。あなたの授業経験に伴って、あなたはきっと各レッスンにあなた自身の風味を付け加えることでしょう。

CIDクラスの特別な魅力は、一つ一つの授業がまったく同じ繰り返しになることが決してないこと、授業は一つとして他のものと同じようになることがない、という事実です。CIDのクラスにおいては、あなたの趣味や生徒たちの興味が反映されることでしょう。どんな演習、ゲーム、心理的なぞなぞでも、あなたが自分で創り拡張すると、一層面白いものになるでしょう。子どもたちと一緒に創り出すとよいのです。

私は自分の経験から、授業を準備するにあたって、授業パターンがどれだけ重要かを知っています。パターン自身は大変単純ですが、それが完全であればあるほど、何も漏らさないで済みます。

CIDクラスの一つの可能なパターンをここに示します。

1. 準備:

− リズムとパターによる協調活動
− 指とパターの活動
− 注意集中の活動 
− 両立しないものの組合わせ

[訳注] パター(patter)は、パタパタという音、動き、おしゃべりなどを意味するようです。足踏み(?)。

2. 宿題のチェック

3. レッスンの導入(「はい/いいえ」ゲーム、トリック、なぞなぞ、など)

4.  新しいトピック (筋書きのあるゲーム) 

5.  心理学的ゲーム

6. 言語表現スキルを発達させ、創造的な作品を作る練習

7. まとめ

もちろん、パターンどおりにすることがいつもできるわけではありません。ときには子どもたちの空想がどんな枠組みからもはみ出してしまうことがあります。しかしそれでも、パターンに従ったレッスンのモデルを作ることは、あなたの仕事をより面白くし、同時に準備を楽にします。

この作品は、創造性への招待であり、あなたがクラスの授業を行い、あなた自身のコースを創り出すための招待です。創造的な活動が組みこまれていれば、どんな授業も一層面白くなります。そのため、CIDコースの独立した授業を実施するだけでなく、このコースで提供されていますいろいろな活動を、他のどんな授業の中で使ってもよいのです。

しかし、方法論的なトレンドにはつぎの二つが同時に存在します。創造的な能力を発展させるトレンド、および、ある一つの主題についてのデータを揃えるトレンドです。後者の場合には、先生にとって困難さが増します。

著者は、I. N. Murashkowska, A. A. Nesterenko, M. S. Gafitulin, M. S. Rubin, I. L. Vikentyev, N. N. Khomenko, V. I. Timohov, S. V. Sychov、その他のTRIZエキスパートたちに厚く感謝します。それらの人たちの仕事がこのCIDコースを創り出すのに大変役に立ちました。そして、もちろん、ペトロザボーツク第17学校の1年生から3年生の生徒たちの助けが非常に貴重でありました。私の小さな魔術師たち、ありがとう。

このCIDコースのワークブックと方法論的手引きについての、感想、提案、および購入のご注文は、下記のアドレスにお送りください。

N. V. Rubina,  tds-2015@yandex.ru  

[訳注] 現在はサンクト・ペテルスブルグ に在住。電子メールが有効。

 


  

 方法論的指導の手引きでのシンボルマーク一覧

認識しやすくするために、方法論的指導の手引きではつぎのようなシンボルマークを使いました。

− 問題: 1年生に対しては、「はい/いいえ」の答えを要求する単純な問題を使いました。問題を解決する方法についての主要な概念は、2年生または3年生の時に学びます。ですから、創造的な問題を解決する最も単純で適当な形式は「はい/いいえ」ゲームです。ゲームのルールは簡単です。一つの問題が導入されるとすぐに、子どもたちは答えを求めて質問を始めますが、それに対して先生は「はい」または「いいえ」だけの返答をします。ゲームのねらいは、子どもたちができるだけ多くの質問をして、自分で答えを見つけることです。

−活動: ここでの活動で大事なのは、学んだいろいろな概念が、問題を解決したり、新しいアイデアを得たりするために、どのように使えるのかを、子どもたちが理解することです。

−心理学的ゲーム: これは授業の中の特別な部分です。子どもたちは少しリラックスして、自分の内面の世界、こどもの空想の世界に向かいます。あなたのクラスという小さなコミュニティで、信頼と仲良しの雰囲気がいかに大切かは、言うまでもありません。

− 言語表現スキルを発達させる活動: みんなよく知っているように、面白い質問をしてくれる人と話すのはやさしく楽しいことです。CIDのクラスは対話形式で構成されていますから、どの課題も実は話すスキルを発達させる演習になります。単に「一つの文」を話すという練習ではありません。子どもたちは、自分でなぞなぞや諺や物語を考案することによって、自分の考えをまとめて、自分が理解されるように、自分の機知やユーモアを分かって貰えるように、話すスキルを発達させているのです。さまざまなシステムを記述し、ありきたりでない問題を解決しながら、こどもたちはいつもその語彙を一層豊かにしているのです。

− 創造的な作品のデザイン: このやや大げさな用語に混乱しないでください。「創造的な作品」というのは、学んだ方法の助けを得て、子どもたちが仕上げたり、デザインしたりしたもののことです。(なぞなぞ、諺、おもちゃのモデル、自然のものに関する説明、その他なんでもよいのです。)

− 絵を描く課題: CIDのクラスでは、「絵を描こう」という課題が沢山でてきます。なぜなら、新しい創造的なアイデアはしばしばイメージとして具体化されます。子どもたちの場合は特に、強く視覚的に表現されたものになるからです。絵を描く課題の大部分は、心理学者や熱心な保護者にとってユニークに役立ちます。そのような絵には子どもの内面の世界が、あたかも鏡の中のように、写し出されているからです。

 


  

 本体部の目次、 囲み中の重要概念     [注 ワークブックでは、同じ言葉遣いだが、漢字は易しいものだけを使っている。]

はじめに  (クラスでの導入:主題について学ぶ)   1時間×2

「創造性」(新しいことを考え出し、作り出す力)は、
今までなかったものを思い描く人間の力です。

どこかで見たものを思い出して、それに似たもの(そして少し変えたもの)を、
考えたり、絵に描いたり、作ったりすることは、あまり難しくありません。

だけど、誰も見たことのないような、何か新しいものを、考えたり、絵に描いたり、作ったりすることは、もっと難しいことです

トピック1. あれやこれは何からできている? (システムは、部分からできている全体)  1時間×2

いくつかの部分(部品)でできている一つのものを、システムと言います。

部分(部品)がばらばらだと、うまく働きませんが、
部分(部品)をきちんと組み立てて、目的のはたらきができるようにしたものが、
システムなのです。

システムの部分(部品)も、もっと詳しくみると、
さらに細かな部分(部品)からできていて、部分ごとのはたらきをしています。

そこで、システムの部分(部品)のことを、
そのシステムの「下のシステム(下のレベルのシステム)」と、いいます。

トピック2. あれやこれはどこにある? (システムは上のシステムの部分)  1時間×2

一つのもの(システム)の周りを見ると、
他のもの(システム)と組み合わさって、もっと大きなはたらきをしていることが分かります。

この大きなはたらきをしているもの(システム)を、
「上のシステム(上のレベルのシステム)」と言います。

どんなシステムも、自分の「上のシステム」の部分(部品)です。

トピック3. あれやこれはどう感じる? あれやこれはどう見える? (システムの諸性質)  1時間×2

「性質」はシステムの特徴のことで、それは変えることができます。

一つのシステムは、その性質の違いで、他のシステムと区別できます。

例えば、色、形、大きさ、温度など、いろいろな種類の性質があります。

すべてのシステムは「部分に分かれる」という性質も持っています。

トピック4. どうやって見つける? (感じるところ)  1時間×2

 

トピック5. 人は何ができるか? そしてどう やって? (システムのはたらき (機能))  1時間×2

システムを使ってしようとしていること (システムをはたらかせる目的)を、そのシステムの「機能」と言います。「はたらき」とも言います。

システムがうまくはたらくには(「機能」を果たすには)、いくつもの部分(部品)がちょうどよい性質を持っていて、きちんと組み立てられていることが、必要です。

システムの部分(部品)の性質を変えたり、違う性質を使ったり、違う組み合わせ方をしたりすると、同じシステムでも違う「はたらき」ができます。

トピック6. 過去に何があったか? そして未来には何があるだろうか? (時間とともに変化するシステムたち) 1時間×2

 

トピック7. ガラスの都市 (前期のまとめ) 1時間×1

 

 

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最終更新日 : 2019.2.24       連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp