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コンピュータによる創造性(Computational Creativity): |
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掲載: 2019.1.10 |
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編集ノート (中川 徹、2018年12月23日)
本件は、4年前のMATRIZ主催TRIZfest2014国際会議での、Dr. Valeri Tsourikovによる基調講演のスライドです。この国際会議のProceedingsは開催直後に公開されているのですが、基調講演は含まれていません。私は、この基調講演の内容をぜひ知りたいと思い、直後に、Dr. Tsourikovにスライドファイルを依頼しました。同博士から、(同社の機密などの関連で)一部修正したいところがあるので、少し待ってくれとの返信がありましたが、その後年月が経過しました。今年のETRIA TFC2018で同博士の基調講演があり、驚くべきものでした。同博士は、「4年前の約束は忘れていないよ」と言って下さり、11月初旬に、4年前の発表と今回の発表のスライドを、本『TRIZホームページ』に寄稿くださいました。私は、TRIZfest2014の方が、同博士の基本的な考え方を(私たちが)理解するのに適していると判断し、ここに掲載いたします。
Tsourikov博士の経歴は本ページのスライド#2をご覧ください。1980年代半ばにベラルーシのミンスクで「Invention Machine プロジェクト」を興し、TRIZ の知識ベースと方法をソフトウエアとして実装することを始めました。1990年代はじめに、ボストンに移り、Invention Machine社として、そのソフトをTechOptimizer の名で作り上げ、90年代後半には米・欧・日本におけるTRIZの普及に大きな貢献をしました。同博士の本領は人工知能(AI)であり、特に自然言語の(SVO構造を鍵にした)意味解析を開発して、膨大な特許情報・科学技術情報をソフト中に蓄積し活用することを実用化しました。また、TechOptimizerの一つの発展として、「IM Phenomena」と呼ぶソフトを開発し、「発明を支援するソフト」として画期的な概念を創りそれを実装してみせました。
ところが、2001年にTsourikov博士が Invention Machine社を去ったというニュースを聞き、私たちはびっくりしました。同社での路線の違いがあったとのことで、同博士はIM社で開発した内容を今後一切使ってはならないという条件であったと聞きました。以後、2014年まで、同博士はTRIZコミュニティの表舞台に全く現れませんでした。ですから、プラハでの2014年の基調講演は非常に興味深かったのですが、その内容を私が知ったのは上記のようにTFC2018のときでした。TFC2018での、座長Prof. Cavallucci の Dr. Tsuorikovの紹介は、同博士のこのような経過を簡単に述べ、そのTRIZコミュニティへの復帰を歓迎するもので、わたしも同じ心でした。
Tsourikov博士の基調講演は、人工知能が確実に人間の脳を超えていく、それは必然であり、もうすぐはるかに超えるだろうというものです。実務的・定式化可能な仕事だけでなく、発明のような創造的な仕事でも、人間を越える人工知能の方法が出来てきている。「この20年間の研究開発で、私はそのプロトタイプを既に作った」と同博士は言います。その考え方は、4年前の基調講演の方が(私たちには)分かりやすいと思います。ともかく読んでみてください。
[注: 2000 年代半ばまでのTRIZ普及経過(その中でのTsuorikov博士の役割)、および同博士の「発明を支援するソフト」(1998年)について、本ページ末尾の編集ノート後記で補足しています。]
基調講演 (TRIZfest2014) 発表スライド PDF (22 スライド、 1.4 MB)
コンピュータによる創造性(Computational Creativity):未来の文明への道程
Valeri Tsourikov (人工知能主任アーキテクト、ミンスク(ベラルーシ))
www.truemachina.com
TRIZfest 2014国際会議、基調講演 2014年9月5日、プラハ(チェコ共和国)
和訳: 中川 徹 2018年12月21日
基調講演 発表スライド 目次 (目次作成: 中川)
5. AI の応用領域: その一例: コンピューターが描く美術
1. はじめに: コンピューターによる創造性とAI: 私の旅
2. 人工知能(AI)の発展
3. 新しいメガトレンド: コンピューターによる創造性
4. AI のアプローチ
5. AI の応用領域: その一例: コンピューターが描く美術
6. AI の挑戦: 文明の新しいフェーズ
7. 私の最近の活動: 研究開発と人材育成
編集ノート後記(中川 徹、2018年12月26日)
Tsuorikov博士の役割を理解するためにも、2000 年代半ばまでの世界におけるTRIZ普及の経過を、以下の記事で参照ください。
解説連載: 技術革新のための創造的問題解決技法!! TRIZ (全22回)(中川 徹) (『InterLab』誌、2006年)、『TRIZホームページ』掲載
第2回: TRIZの成立と普及 (1) 旧ソ連での成立と発展(2006. 2. 1)
第3回: TRIZの成立と普及 (2) 米国と欧州での展開(2006. 3. 6)
第4回: TRIZの成立と普及 (3) 日本と韓国での受容と普及(2006. 4. 4)
Tsourikov 博士の「発明を支援するソフト」という考え方を、中川は1998年につぎの二つの記事で解説しています。
解説&マニュアル: TRIZソフトツールの仕組みと使い方・学び方 (TechOptimizer 2.5) (中川 徹) 『TRIZホームページ』掲載
(1998.11. 2) -- TRIZの方法、TRIZの使い方を学ぶのに、いまでも有効な解説記事だろうと思っています。
”発明”を支援するソフト登場 (Invention Magic試用評価) (中川 徹) (日経メカニカル 1998年11月) 『TRIZホームページ』掲載
(1998.12.12) -- これはTsuorikov博士の「人工知能による発明」のアプローチの原点です。
もぅ一つ私が注目するのは、Tsourikov博士の人材育成です。「ベラルーシ」はロシアとポーランドの間にあり、首都はミンスクです。ミンスク出身のTRIZ専門家たちには、故Nikolai Khomenko, Valeri Souchkov, Dmitry Kucharavy, Nikolai Shpakovsky, (そしてInvention Machine社の人たち)他がいますが、Tsuorikov博士がリーダーとして育てたグループです。上掲の最後のスライドにある「AI Creates」クラブからは、きっとまったく新しいセンスと才能をもった多数の若い人材が育っているのだろうと、私は思います。
最終更新日 : 2019.1.10 連絡先: 中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp