「6箱方式」紹介: 


6 箱方式  
Six-Box Scheme

中川 徹 (大阪学院大学 名誉教授)

『デザイン科学事典』、日本デザイン学会編、編集委員長 松岡由幸、丸善出版、2019年10月刊、pp. 274-277

掲載:  2019.11.23 

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  編集ノート (中川 徹、2019年11月20日)

本稿は、 表記のように、『デザイン科学事典』中の1項目として、つい最近(10月29日)出版されたものです。3年前の2016年7月に分担執筆の依頼を受け、同年8月に原稿を提出しました。刷り上がり4頁のコンパクトな紹介です。「創造的な問題解決のための、一般的で基本的な方式」として、お読みいただけますと幸いです。

実は、同事典編集幹事の村上存先生(東京大学大学院工学研究科教授)から、分担執筆の依頼を受けましたのは、「トゥリーズ(TRIZ)」(第4章 発想法)(A5見開き4頁)とのことでした。『デザイン科学事典』の編集趣旨を読ませていただき、その意義の重要さを知りました。そこでぜひ、TRIZとその後の発展を書かせていただきたいと思い、「TRIZ」(4頁余)と同時に、本件の「6箱方式」(4頁)とを執筆して、提出しました。その結果、「TRIZ」には図を追加するため6頁を割り当てていただき、また、「6箱方式」を第2章デザイン方法論の新規追加項目として採用いただきました。この「6箱方式」を採用いただきましたのは、開発者として誠に光栄なことです。編集委員の先生方に改めて深く感謝いたします。

「6箱方式」というのは、私がTRIZとUSITを共に吸収・発展させる過程で、(膨大な)TRIZを(簡潔な)USITに統合していった結果、それが創造的な問題解決の「新しいパラダイム」を成すことに気がついたものです。この事典の言葉でいえば、「6箱方式」は「デザイン科学」に基本的な枠組み/骨格を与えるものだ、と私は考えています。

本稿は、丸善出版社から許可を得て、ここに掲載します。PDF版 とともに、HTMLページを作り、本サイト内の参考ページへのリンクを追加しました。
別ページに掲載しました「TRIZの紹介」(『デザイン科学事典』掲載)もお読みください。
また、来月出版予定の日本創造学会編『実践事例から学ぶ―実践発想法』に執筆しました、「TRIZ/USIT法」には1件の適用事例を分かりやすく説明しておりますので、ご参考にしてください。(近日掲載予定) 

本稿の最後に書いていますように、「創造的な問題解決の諸方法」(すなわち「デザイン科学の諸方法」)を、この「6箱方式」を用いて統合する/統一的に理解することを進めたいと考えます。それが、ともすればバラバラに主張され推進されている関連諸方法の力をまとめ、さまざまな課題・場面での実践を容易にするものと考えます。

 

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紹介記事の先頭

6箱方式の基本 従来の4箱方式 実践プロセスUSIT 創造性技法・問題解決技法・デザイン科学技法の体系化 開発の経過   引用文献  

『デザイン科学事典』紹介

「トリーズ(TRIZ)」紹介

TRIZ PDF

「6箱方式」紹介

6箱方式 PDF

『実践発想法』紹介

TRIZ/USIT 紹介・事例

TRIZ/USIT PDF

 

 


  

 『デザイン科学事典』 pp. 274-277                   ==> PDF (4頁)

 

6 箱方式  
Six-Box Scheme

 

ここで創造的な問題解決とは,現在の問題を克服して創造的な新しい解決策を実現する行為の全過程をいう.その全過程を導くパラダイム(paradigm:枠組み,基本方式)として,「6 箱方式(six-box scheme)」が中川徹によって新たに開発・提唱されている(中川,2016).(参考: 中川 徹「USIT: 6箱方式をパラダイムとする 創造的な問題解決のための簡潔なプロセス−USITマニュアルとUSIT適用事例−」、中川 徹 「創造的な問題解決のための一般的な方法論CrePS: TRIZを越えて:なに?なぜ?いかに?」

それは「問題の認識→問題の定義→現在の問題の分析→理想のイメージづくり→新しいシステムのためのアイデアの生成→解決策案の構築→解決策の実現」という段階を踏む.

従来の科学技術のパラダイム,すなわち,「問題を一般化(抽象化)し,一般的に得られた解決策をヒントにして,具体化せよ」という「抽象化の4 箱方式(four-box scheme of abstraction)」の曖昧さを克服したものである.

それは技術分野から,ビジネス,社会,人間などのあらゆる分野に跨って適用できる基本枠組みである.従来のさまざまな問題解決の方法,創造性技法,デザイン科学の諸方法などを統合的に位置づける体系として,CrePS(クレプス,創造的な問題解決のための一般的方法論:general methodology of Creative Problem Solving) が構想されている.

この6 箱方式を実践する,汎用で簡潔な一貫プロセスとしてUSIT(ユーシット,統合的構造化発明思考法:Unified Structured Inventive Thinking) がすでに開発され,実用されている.デザイン科学の諸方法の中にCrePS/USIT を取り入れることもできる.

  

●  6 箱方式の基本 

6 箱方式はデータフロー図(dataflow diagram)で定義される(図1).(参考: 中川 徹「USIT: 6箱方式をパラダイムとする 創造的な問題解決のための簡潔なプロセス」) 

 

6 つの箱(長方形)は各段階で獲得するべき情報を示し,これらの情報の流れが本方式の主要な定義である.箱間の矢印は基本的な過程経路を示し,実践においては,戻り,跳び,複数パス,螺旋経路など,目的・状況に応じた適用が行われる.

図の上下を区分するのも6 箱方式の重要な概念である.下半分は「現実の世界(real world)」に属しており,実際の(企業などの)活動の現場である.何らかの問題を解決したいと考え(図1 左下部),(それに対する解決策案を得た後に)その解決策の実現を図る(図1 右下部)のであるが,それらの際に,(その企業としての)技術・ビジネス・社会などの状況判断(価値判断)が主導する.

一方,上半分は「思考の世界(thinking world)」に属し,考え出す作業の世界である.できるだけ広い視野で問題の根本を考え,創造的なアイデアを得,有効な解決策を考え出すことが要請される.そのために適切なメンバーを選び,思考に適した環境と時間を作り,技法(問題解決の方法)の主導の下で考察を進める.ただし,問題の分析にもアイデアの評価にも解決策の構築にも,当該の問題とその関連分野の知識・見識が必要である.  

まず,現実の世界で問題を認識することが必要であり,問題状況に関する具体的な情報を集める(第1 箱).ついで問題状況を整理して,何を本当に解決する必要があるのか焦点を絞る(第2 箱).そして適切なチームを編成して,問題解決の思考作業を担当させる.  

思考チームは,まず何が問題なのかを再確認する(第2 箱).そして問題を分析し,問題のある現在のシステムを空間・時間の特徴,機能と性質の面,システムと問題のメカニズムなどに関して明確にする.また,望ましい理想のシステムのイメージを得る(第3 箱).

ついで新しいシステムのためのアイデアを多数考える.これらのアイデアは第3 箱の情報を獲得する過程で自然に出てくるのが特徴であるが,いろいろな技法や知識ベースを用いて補強することもできる(第4 箱).それらのアイデアを核にして,概念的な解決策(有効に機能するはずだという案)を(できるだけ複数)作り出す(第5 箱).  

現実世界では思考チームの報告を受け,概念的な解決策(第5 箱)を実現する方策を現場の立場から検討する.設計,試作・検討,製造,マーケティングなど通常多くの過程を経て具体的解決策が初めて実現する(第6 箱).この実現と商業的成功のためには,通常(企業などの)全面的な活動が必要である.

  

● 従来のパラダイム4 箱方式の欠陥の克服 

科学技術が広く採用してきた従来のパラダイムは図2 のように表せる.(参考:) 

 

その典型は数学の(例えば)2 次方程式の根の公式の適用であり,中学校以来教え込まれている.与えられた応用問題(第1 箱)から,2 次方程式を立て(第2 箱),根の公式(第3 箱)で計算し,問題の解答を進める(第4 箱).同様の考え方で,科学技術のあらゆる分野で理論(図でいうモデル)が作られ,事例が集められて,知識ベースが構築されてきた.

しかし,この方式での「一般化した問題/一般化した解決策」がどういうものかはモデルごとに異なり,この言葉以上に一般的に説明することができない.そのため,抽象化が単にモデル中の問題パターンへのあてはめに過ぎない場合が多い.また,一般化した解決策は,あらかじめ知識ベースが用意しておいた解決策の提示に過ぎないことが多い.その提示をヒントにして,自分の実際の問題を解決するための具体化はすべてユーザーの力量に依存する.  

なお,TRIZ(==> 「トリーズ(TRIZ)」)が,技術分野の垣根を越えて利用できる複数モデルの膨大な知識ベースを作り,大きな寄与をした.ただ,問題の抽象化をモデル別に部分的側面で行うために,一貫した全体プロセスを作ることが困難であった.  

このような従来の4 箱方式の欠陥を克服したのが6 箱方式(図1)である.

  

●  6 箱方式の簡潔な実践プロセスUSIT 

6 箱方式は理論が先行したのではなく,実践プロセスの開発・適用が先行した.それはUSIT で,1985 年にアメリカのエド・シカフス(Ed Sickafus,1930-2018)が,TRIZ を簡略化した問題解決の一貫プロセスとして作り,1999 年以降中川徹らが日本で改良してきた.日本の企業や大学などでの実践例がある.(参考: 中川 徹「日本におけるTRIZ/USITの適用の実践」

そのUSIT のプロセスを(フローチャートでなく)データフロー図で表現して得たのが,6 箱方式とその理論である.詳細なUSIT マニュアルとUSIT 適用事例集が(和文・英文で)公表されている(中川,2015).(参考: 中川 徹「USIT: 6箱方式をパラダイムとする 創造的な問題解決のための簡潔なプロセス−USITマニュアルとUSIT適用事例−」 、中川 徹 「USIT プロセスの全体資料(索引) USIT: 「6箱方式」による創造的な問題解決の一貫プロセス」

  

● 創造性技法・問題解決技法・デザイン科学技法の体系化: CrePS 

従来から創造的なアイデアを出すための技法,問題解決の技法は数多く知られており,本書もそれらを収録・整理することが大きな目的である.しかし諸方法の集合体ではなく,わかりやすく統合され,使いやすい1 つの体系にならなければ,産業界にも社会にも教育にも十分に普及しない.

今までは体系化する基本の骨組みがなく,4 箱方式が不十分であった.その体系化を6 箱方式で行おうと提唱しているのが,CrePS である(中川,2016). (参考:中川 徹 「創造的な問題解決のための一般的な方法論CrePS: TRIZを越えて: なに?なぜ?いかに?」

この統合のためのやり方の概念を図3 に示す.

    

従来の種々の方法をそのアプローチで分類し(図3 左部),その目的と適用場面(問題領域,(6 箱方式での)段階など)に応じて,6 箱方式の枠組みに位置づける(図3 左から右への矢印).  

この図3 でデザイン科学の位置づけを大まかに見よう.本書の「第4 章発想法」の部分は,図3 の(d)アイデア発想の支援や(e)メンタル面の重視に対応し,6 箱方式では思考の世界の基本姿勢とアイデア生成段階を支援する.本書「第3 章分析法」は,図3 の(c)問題・課題を整理・分析に対応し,6 箱方式では現実世界での問題定義と思考世界での問題分析を支援する.特に「構造分析法」がデザイン科学の専門領域といえよう.

本書の「第1 章デザイン理論」と「第2 章デザイン方法論」がデザイン科学の本領であり,上図(f)アイデアを具体化に主として関係し,6 箱方式での解決策の構築と実現の過程(すなわち,具体化の全過程)をリードする.この具体化の過程は,問題解決の(一般的な)技法より以上に,解決策の属する領域での専門性が必要であり,デザイン科学が大きく寄与する.  

なお,もう1 つの見方は,デザイン科学の各方法において,問題解決の方法(例えばUSIT)を利用することである.

  

●  6 箱方式の開発の経過 

6 箱方式は中川が開発提唱してきたものであり,90 年代末に導入したTRIZ およびUSIT を土台にして,その研究と実践を続けてきた.
2004年にUSIT の全体構造を整理して6 箱方式の概念を導き,それが新しいパラダイムであると認識した.(参考: 中川 徹「TRIZにおける解決策生成のための USIT オペレータ: 問題解決 のより明確な道案内」、中川 徹「TRIZ/USITに おける創造的問題解決のためのデータフ ローの全体構造」 
2012 年になって諸方法を統合して,創造的な問題解決の一般的な方法論(CrePS)として体系化することを提唱した(参考: 中川 徹「創造的な問題解決・課題達成のための一般的な方法論を確立しよう」 (中川,2016).(参考: 中川 徹 「創造的な問題解決のための一般的な方法論CrePS: TRIZを越えて: なに?なぜ?いかに?」
『TRIZ ホームページ』(中川,2018)に掲載している諸論文を参照されたい.(参考: 中川 徹編「『TRIZホームページ』 総合目次(C) Papers」

[中川 徹]      

      

引用文献

中川徹,創造的な問題解決のための一般的な方法論CrePS:TRIZ を越えて:なに?なぜ?いかに? (2016),TRIZCON2016 論文;『TRIZ ホームページ』掲載.

中川徹,USIT:6 箱方式をパラダイムとする創造的な問題解決のための簡潔なプロセス− USIT マニュアルとUSIT 適用事例(2015),日本創造学会論文誌第19 巻,pp.64-84;『TRIZ ホームページ』 掲載(2016).

中川徹編集:TRIZホームページ,( online), available from <http://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/>( 参照日2019年5月26日).

 

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最終更新日 : 2020. 4. 5     連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp