大阪学院大学 外国語学部ホームページ
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I. はじめに

今から30年ほど前、筆者がアメリカ留学を志していた頃には、留学は少数の人だけが享受できる「特権」でした。1973年に世界の主要通貨が変動相場制に移行していたものの、1ドルが200円台という「円安」で、海外留学は経済的負担が大きかったのです。そんな事情もあり、アメリカ留学に必要な語学テストTOEFLの受験機会も少なく、関西の試験場は神戸の六甲にあったカナディアン・アカデミーだけでした。それが現在では大阪府だけで試験場は9カ所に増えています。願書にドル建ての送金小切手を同封して、ニュージャージー州のプリンストンにあるETSへ送るという煩わしさも現在は解消され、インターネット経由で出願し、受験料もクレジット・カードで支払うことができるようになっています。過去30年の間にTOEFLの受験者数が増えたのは、受験が容易になったためであるのは間違いありません。2003-2004年の一年の受験者数は8万3,093人で、韓国を1,000人ほど下回りますが、世界で二番目です。

それでもまだ正規の留学が易しくなったというわけではありません。TOEFLスコアの国際比較では、日本は世界の下位です。このことを取り上げて、日本の英語教育の不毛や欠陥を指摘する人がいますが、これは間違いです。日本では留学の裾野が広がっているのに対して、多くの国ではまだまだごく一部の人たちのものであり、「知的エリート」のみがTOEFLを受験するので、当然スコアも高くなるのです。裾野の広い山はたいてい標高も高くなりますが、TOEFLのスコアに関しては、それが当てはまらないようです。1990年代に日本のTOEFL受験者数は世界一を誇っていましたが、同時に試験に遅刻する人が増えたそうです。受験票に記されているReporting timeを「集合時間」と誤解する人がいたのもその原因ですが、受験者の多くが試し受験者で、あまり真剣ではなかったからという理由も挙げられています。

増大したTOEFL受験者の中には「語学留学」を希望する人たちが多数含まれています。しかし、正規の留学と「語学留学」とでは雲泥の差があります。ここでは、外国の大学で学びたい、アメリカの、あるいはイギリスの大学のキャンパスで、英語で授業を受けてみたいと考えている皆さんが、自分で大学を探し、そこに願書を出し、入学許可をもらうまでのプロセスを分かりやすく解説しています。ただし、ここで扱っているのは正規の留学です。「語学留学」と呼ばれている英語学習は対象にしていません。というのは、大学の英語学科に在籍している人には正規の留学を目指してもらいたいからです。また、皆さんにはその可能性が充分あると信じているからです。(参考例として挙げる大学は、少数の例を除いてアメリカの場合には州立大学で、比較的治安のよい小都市に位置しています。特に入学が難しいというわけではありませんので、たくさん勉強をして、入学を目指してください。)

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