WTSP論文  

創造的問題解決の諸方法論のウェブサイト :
世界カタログ集の開発(WTSPプロジェクト)

中川 徹 (大阪学院大学),
Darrell Mann (Systematic Innovation Network, 英),
Michael Orloff (Academy of Instrumental Modern TRIZ, 独),
Simon Dewulf (AULIVE & Innovation Logic , 豪),
Simon Litvin (GEN TRIZ, LLC., 米),
Valeri Souchkov (ICG Training & Consulting, 蘭)

初出:『TRIZホームページ』 2021年 5月31日

掲載:  2021. 5.31

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  編集ノート (中川 徹、2021年 5月29日)

本論文は、2017年12月以来、3年余をかけて行ってきました、世界TRIZ関連サイトプロジェクト(WTSP)の活動、成果、今後の方向を、きちんと体系的に記述したものです。日本TRIZ協会のTRIZシンポジウムや、欧州TRIZ協会の国際会議では毎年発表し、論文にもしてきましたが、日本創造学会での発表や論文投稿は初めてでした。そこで、プロジェクトの最初からの経過も含め、また、TRIZよりも広い範囲を意図していることを含めて、記述しています。TRIZおよび(便宜的にAround-TRIZと呼んでいる)「創造的問題解決の諸方法論」に関する、「世界のWebサイトのカタログ集を創る」プロジェクトです。論文やWebページでなく、「Webサイト」を情報源の単位として選択したことが、新しいことです。上記のような広範な分野の、学術的・実践的な優れたWebサイトを、世界レベルで俯瞰し、きちんと紹介する「カタログ集」を創るのです。ボランティア活動であり、多くの人が趣旨には賛同するけれども、「ビジョンが大きすぎて到底できないだろう」と思って実際の活動になかなか参加しない、という状況で進んできました。それでも、3年間で、「世界WTSPカタログ集」のベータ版を作成公表し、しっかりした構造と、その作成方法を確立しました。今後、さらに拡張・充実させるやり方も明示しています。---ぜひ、読んでみてください。

本編は、昨年11月1日に日本創造学会の第42回研究大会(東京、オンライン)で発表(予稿集掲載)したものを拡張・推敲したものです。12月21日に日本創造学会論文誌に投稿し、さらに2021年2月9日に微修正して再提出しました。しかし、残念なことに、査読で不採録となり、査読報告が5月26日に初めて示されました(経過および理由などは、本ページ末尾の編集ノート後記に記します)。そこで、やむなく本『TRIZホームページ』に初出の論文として、2月9日に投稿したままの形で、ここに掲載いたします。

 

論文目次

創造的問題解決の諸方法論のウェブサイト:  世界カタログ集の開発(WTSPプロジェクト) 

要旨・英文Abstract 

1. はじめに: WTSPプロジェクトの目的  

WTSPプロジェクトの開始の意図    より広い範囲に: 「TRIZ周辺サイト」  カタログ集作成の基本プロセスとねらい

2.日本WTSPカタログの作成と成果  

日本におけるWTSPカタログの作成     WTSPカタログにおけるサイト評価の観点とレベル分け   世界WTSPカタログ(日本の部)

3.世界WTSPカタログ集の作成と成果  

世界TRIZサイトカタログの作成   世界TRIZ周辺サイトカタログの作成   世界WTSPカタログ集の体系    世界WTSPカタログ集の構造と使い方    世界WTSPカタログ集の構造の強み    WTSPプロジェクトと世界WTSPカタログ集の公表と最近の学会発表   カタログ集の基本要件から見たWTSPプロジェクトの中間総括

4. WTSPカタログの原稿作成法の詳細  

WTSP活動への参加と仲間づくり   関連サイトのリスト作り   サイトの簡易紹介記述(a)(第三者による簡易な紹介)   サイトの標準紹介記述(b)(サイト責任者による標準書式での記述、必須)    サイトの詳細紹介記述(c) (サイト責任者による自由書式記述、随意)   サイトを評価する(暫定と調整)

5.まとめ: 評価、困難点と今後の拡充  

ユーザの評価(例)   WTSPプロジェクトの困難点:賛同する人は多いが、活動する人が極めて少ない    今後の改良・拡充のために: 方策と依頼    日本創造学会の関連分野でのカタログ作成   おわりに

参考文献  

 

本ページの先頭

論文先頭

1. はじめに

2. 日本WTSPカタログ

3. 世界WTSPカタログ集

4. 原稿作成法

5. まとめ

参考文献

論文PDF

編集ノート後記

査読関連の付属資料ページ

創造学会研究大会発表

 


  

 論文     ==> PDF

 

創造的問題解決の諸方法論のウェブサイト
世界カタログ集の開発(WTSPプロジェクト)

Websites of Creative Problem Solving Methodologies
Development of World Catalogs (WTSP Project)

中川 徹 1 Darrell Mann 2 Michael Orloff 3 Simon Dewulf 4 
Simon Litvin 5 Valeri Souchkov 6

 

[要旨]

「世界TRIZ関連サイトプロジェクト(WTSP)」は、TRIZ(発明問題解決の理論)と「創造的な問題解決の諸方法論」を広くカバーした、世界のWebサイトカタログ集の構築を目指す。2017年末に提唱し、日本WTSPカタログ集を2018年に公表、世界WTSPカタログ集(β版)を2020年6月末に作成・公表した。各国でのチーム活動と世界を対象としたインターネット検索で、世界の優れたサイトを集め、全サイトの紹介を記述し、評価・分類したカタログ集を作っている。β版は、TRIZサイトを最重要◎23、重要〇39サイト、TRIZ周辺サイトは◎33.〇127サイトを収録している。調査者による3-10行程度の簡易サイト紹介に加えて、サイト責任者自身による標準記述(A4 1頁、必須)と詳細記述(A4 2-5頁程度(超過OK)、随意)を集めようとしている。しっかりした構造を持ち、信頼できる有用な情報源である。

[Abstract]

World TRIZ-related Sites Project (WTSP) aims at building Catalogs of Websites in the world in the fields of TRIZ (Theory of Inventive Problem Solving) and various methodologies for creative problem solving.  We started the voluntary project in Dec. 2017, built Japan WTSP Catalog in 2018, and built World WTSP Catalogs (βEdition) in Jun. 2019.  By country-team activities and internet surveys, we collect good websites in the world, write introductions of them, and evaluate and categorize them, to show in the Catalogs.  TheβEdition records 23 Most important ◎ sites and 39 Important 〇 sites in TRIZ, and 33 ◎ sites and 127 〇 sites around TRIZ.  In addition to brief site introductions (3-10 lines) by surveyors, standard description (1 page in A4, mandatory) and closer introduction (2-5 pages, optional) by site owners themselves are to be recorded.  WTSP Catalogs are reliable and useful information source with scalable structure.

キーワード:  イノベーション, 創造性技法, WTSPプロジェクト, WTSPカタログ
Keywords:    Innovation, Creativity methods, WTSP Project, WTSP Catalogs

 

  

1. はじめに:  WTSPプロジェクトの目的

1.1 WTSPプロジェクトの開始の意図

WTSPプロジェクト(World TRIZ-related Sites Project)は、2017年12月に中川徹が世界のTRIZコミュニティに呼び掛けて開始したボランティアベースのプロジェクトである [1, 2, 3]

TRIZ(発明問題解決の理論)[4] は、1950年代からG.S.Altshullerが旧ソ連で開発・樹立し、90年代に米・欧・日・韓などに広がり大きな関心がもたれた。現在世界中で使われているが、TRIZへの関心は近年漸減している。その状況は、多様な「創造性技法」がブームと減衰(そして消滅あるいは持続)を経てきたのと同様ともいえる。しかし、現在の問題は、世界中で「イノベーションの必要」が叫ばれている中で、「イノベーションのための方法論」(TRIZをはじめ、種々の創造性技法の総体)の学習と実践が軽視されている(総体的に関心が減衰している)ことである。

この状況に対するTRIZコミュニティの反省点は、世界中でTRIZの研究開発と実践による知識と技術・ノウハウの膨大な蓄積があるのに共有されていないこと、関係者(特に、コンサルタントたち)が分立・競合し合っていることである。

本プロジェクトは、上記2点の問題を解決する方法として、TRIZの多様な関係者・組織のウェブサイトを一覧できる「カタログ」を作ることを提唱した。(TRIZの)関係者(研究者、コンサルタント、協会など)はその活動や知識・技術を、それぞれ何らかのウェブサイトで(少なくともその概要を)公表している。互いに競合しているからこそ、(宣伝のために)ウェブサイトの充実を図っている。それらをカタログという共通の場で周知できるようにすれば、(競争しつつも)連携することができる[3]

なお、一覧を可能にする同様な方法には、論文や記事を単位にするもの(論文索引、インターネット検索)、論文・記事の集合を単位にするもの(学術誌、学会予稿集)、本を単位にするもの、組織を単位にするもの、などがある。単位の大きさ、(関係のある)情報の密度とまとまり、入手の容易さ(公開、無料など)、情報の新規性・更新頻度、将来の継続性などの観点から、ウェブサイトを単位にすることが最適であると判断した。

1.2  より広い範囲に:  「TRIZ周辺サイト」

TRIZという方法論自身もいろいろに発展拡張されており、「古典的TRIZ」に対して、「現代化TRIZ」と呼ばれる場合や、「USIT」などの派生方法もあり、さらに総括的に「体系的イノベーション」と呼ばれることもある。これら「古典的TRIZ」を源流とするもののすべてを包括して、本プロジェクトでは「TRIZ」として扱い、その連携を目指す。

さらに、世界の至るところで、永年の伝統を持つ、あるいは新しく開発された、技法や方法論があり、TRIZと同様のさらに広範な目的に用いられている。それらには問題解決や課題達成の方法、問題把握と分析の方法、創造性を高める方法(創造性技法)、品質向上・管理の方法、発明と特許の方法、イノベーションのための方法、プロジェクトマネジメントやビジネスマネジメント、などがあり、さまざまな局面のためのさまざまな方法・アプローチになっている。(TRIZはこれらの中の一つである。) (参考文献としては、日本創造学会監修の『実例で学ぶ創造技法』[5]、日本デザイン学会編の『デザイン科学事典』[6]が興味深い。)

ただ、これらの方法/アプローチ/分野の全体を指す適当な言葉がない。本論文では、「創造的問題解決の諸方法論」と呼ぶ。また、本プロジェクトでは、「TRIZ」に対して、「TRIZ周辺(分野)」また「TRIZ(とその)関連(分野)」と呼ぶ。

TRIZを学び活用しようとする者は、TRIZの周辺のこれらの諸方法を吸収し、連携・統合した運用をする/心がけることが望まれる。同様に、「TRIZ周辺」の方法を学び活用する者も、(TRIZを含めた)これらの全体を吸収・連携するとよい。この意味で、本プロジェクトは「TRIZサイトカタログ」と「TRIZ周辺サイトカタログ」の2本柱を持つ。

1.3 カタログ集作成の基本プロセスとねらい

TRIZ関連サイトのカタログ集を作成するにあたって、各国ごとのカタログを(まず自国語で、ついで英語で)作り、それらを統合して世界のカタログを(まず英語で、後に(必要に応じて)各国語で)作る。個別のサイトの適切な紹介をつけ、有用で重要な諸サイトを適切に選択し、初心者から専門家までが使えるものにする。TRIZとその関連諸方法の分野で、理論・適用・活動などについての信頼される情報源にする。また、継続的に更新・維持する。

世界のTRIZ(および関連分野の)コミュニティの協力によるボランティアベースのプロジェクトとし、TRIZと関連諸方法を世界で普及させるのに役立てる。[7]

 

  

2.日本WTSPカタログの作成と成果

2.1 日本におけるWTSPカタログの作成

パイロットプロジェトとして中川が実施した。

まず、検索エンジンとしてYahoo!Japanを選び、TRIZをキ−ワードにして、各サイトの代表的な1ページだけを出力するオプションを使い、インターネット検索をした。400サイトがヒットし、その一つ一つを調査して、内70サイトが有用と判断し、3〜10行程度の紹介を書いた。また、TRIZ周辺サイトとして20件を背景知識と検索により追加した。

この結果、全92サイト(内精選サイト24)の日本WTSPカタログを日本語及び英語で作成し、公表した(2018年4月)[8]。後に、世界カタログの評価基準に合わせて微調整し、2.3節の結果を得た。

2.2  WTSPカタログにおけるサイト評価の観点とレベル分け

 上例のように、インターネット検索では、多数の関連サイトが検出されるが、その情報はノイズが非常に大きく、良質な情報を確実・能率的に得ることはできない。この点を克服しようとしているWTSPカタログでは、得られたサイトを評価し、その質に応じてレベル分けをし、精選表示することが必須である。WTSPにおけるサイト評価の観点、およびレベル分けの基準とレベル表示を図1のようにした。

図1: WTSPカタログにおけるサイト評価の観点と5段階表示 [9, 15]

多様なユーザの多様な要求に応えるように、5つの主たる観点を立て、その内部にも広がりを持たせている。評価のレベルとしては、世界カタログのレベル(世界の人々に知ってもらうとよい)か、各国カタログレベル(各国内の人々に知ってもらうとよい)かが大きな違いである。英文表示でなくても世界に知ってもらうとよいものは多くある。また、各国の少なくとも一つのサイトを世界カタログに掲載する。世界カタログでは、トップ30程度を最重要、トップ100程度を重要として、特記する。これらの諸観点も段階分けも、定性的な規定であり、各評価者に判断は任されている。サイト紹介の当初から暫定的にせよ評価することが必要である(そうしないと作業が進まない)。WTSPが多くのサイトを紹介する段階になってから、必要に応じて評価を調整することを考える。

2.3 世界WTSPカタログ(日本の部)

 世界WTSPカタログ集に収録している日本のサイトを、「 TRIZサイト」と「 TRIZ周辺サイト」に区分して示すと、図2のようである [8]。各サイトの頭のマークは世界基準での(暫定)評価レベルを示す。

 

図2: 世界WTSPカタログ中の日本のサイト [8]

この図の他に、△国内レベルの66サイトが日本WTSPカタログに記載・紹介されている。

 

  

3.世界WTSPカタログ集の作成と成果

3.1 世界TRIZサイトカタログの作成

世界各国のTRIZ関係者に参加を呼びかけ、2018年10月には30か国の約80名のメンバーを得た。しかし、各国での実際の活動はなかなか進まなかった。2019年6月の時点で、マレーシア、中国、ロシア語圏(ロシア、ベラルーシ、ウクライナなど)から、TRIZサイトのリストが提出されただけであった。

そこで、トップダウンサーベイの方針に切り替え、世界のTRIZサイト、米国のTRIZサイトのインターネット検索を行った。これらの結果を統合し、また、世界TRIZサイトカタログの構成法を作りあげて、2019年10月に欧州TRIZ協会国際会議で発表した。[9]

3.2 世界TRIZ周辺サイトカタログの作成

2019年3月に中川が世界のTRIZ周辺サイトのインターネット検索を開始した。1.2節の趣旨に沿って、表1のようなキーワードを用いて、6種の検索をした。その結果合計約1000サイトを得、それらを一つ一つ調査して、世界TRIZ周辺サイトカタログを作りあげ、上記学会で発表した。[9]

表1:世界のTRIZ周辺サイトのサーベイ [9]

3.3 世界WTSPカタログ集の体系

2019年10月に暫定初版を公表し、さらに、(データそのものの増加はわずかであるが)ユーザに使いやすく改良して、2020年6月末にβ版を公表した[10]。その主要4種のカタログを表2に示す。

表2:世界WTSPカタログ集の主要4カタログ [10]

この中の、(A1) 世界TRIZサイトトップカタログに掲載した最重要◎23サイトを図3に示す。上部中央に示したのは、TRIZの創始者G.S. Altshullerの遺族が管理している基金の公式サイトであり、Altshuller の著作・記事・通信などが露文と一部英文で多数収録されている。図の左欄はロシア語サイト、中央の2列は西側諸国でのサイト、右欄はTRIZの諸協会である。記述のように、多数の国が原稿未提出であり、優れたTRIZサイトで未掲載のものが多数ある。

図3: 世界のTRIZ最重要23サイト [9]

また、(B1)世界TRIZ周辺サイトトップカタログに掲載した最重要◎33サイトを図4に示す。中央下部の水色がTRIZサイト群、左上の黄色がTRIZ周辺の諸方法論のサイト、右側赤色はすべての分野をカバーする汎用のサイト群である。

図4:TRIZ周辺の最重要33サイト [9]

3.4 世界WTSPカタログ集の構造と使い方

図5にユーザ視点での世界WTSPカタログ集の構造を示す。

図5.世界WTSPカタログ集の構造(ユーザ視点)[15]

WTSPサイト内のカタログ集トップページに入ると、多様なカタログ(各国の部、インターネット検索の各ケース、世界カタログの4種など)のインデクス部にアクセスできる。そのインデクス中の任意のサイトをクリックすると、サイト記述のページに行く。このサイト記述のページはカタログの原稿として提出された(例えば日本の)ページがそのままで使われている。

なお、4種の世界カタログ(A1)(A2)(B1)(B2)は、上記の「インデクス版」の他に「印刷用版」を持っている。後者は、インデクスに記載している各サイトのサイト記述をコピーして持ってきている。ユーザはこの「印刷用版」のPDFファイルを無償でダウンロードでき、そのままカタログの冊子として印刷使用するとともに、ユーザのPC上で(WTSPサイト上と全く同様に)インタラクティブに活用できる。「印刷用版」はWTSPプロジェクトが著作権を保有し、非営利を条件にユーザの個人利用と他者への転送ができる。

3.5 世界WTSPカタログ集の構造の強み

図5に示したように、多様な世界インデクスが作られているが、サイト記述のページは(各国や検索結果からの)原稿提出時のままで保持されている。これを可能にしているのは、原稿がインデクスページとサイト記述ページとからなる小ウェブサイトの形に作られ、そのページ間にサイトごとのハイパーリンクが張られていたからである。世界カタログのインデクス作成の際には、(別の作業フォルダで)多数の原稿のインデクス部が集められ、大きなインデクステーブルを作り、Excelを使って多様な分類・並べ替えをして、世界インデクスを作る。ハイパーリンクが並べ替えの自由度を保証している。

この構造は、拡張性、柔軟性、保守性、統合容易性、(出力カタログの)多様性、など多くの強みを生み出している。

3.6  WTSPプロジェクトと世界WTSPカタログ集の公表と最近の学会発表

 WTSPプロジェクトは、その発足以来一貫して、『TRIZホームページ』[1] 上にその活動と成果を公表し、内外のTRIZ関連学会で発表してきた。とくに、2020年秋には新型コロナウイルス禍の中で、すべての関連学会が通常の集会を開催できず、オンライン開催に切り替えたので、本プロジェクトはこれを好機に表3のように、4つの国際会議と1つの国内学会で発表した [11 – 15](注:日本TRIZ協会はシンポジウムを中止)。発表の主題は共通であるが、世界各地域の人々の関心に応じて、タイトルや重点や形態を調整している。オンラインでの発表ビデオを作成・公開したので、今後とも大きな効果があるものと考える。

表3:  2020年秋の学会発表の一覧 [11 – 15]

3.7 カタログ集の基本要件から見たWTSPプロジェクトの中間総括

上記の学会発表にあたって、現在のWTSPカタログ集の状況を、「カタログ」一般に対するユーザの基本要件の観点から、中間総括を行った。種々のカタログ(例えば、「世界の優良レストランカタログ」、「世界観光地カタログ」など)を考えると、一般に次の3基本要件がある。これらに照らして、現在の世界WTSPカタログ集の状況と今後の方向を考えると以下のようである。

要件1: 優れた項目(本件:ウェブサイト)を広く収集し、評価を加えて選択し、分類して表示する。

--- われわれは、この観点で努力しているが、実績は「途半ば」にある。関係する諸分野/各国の多数のユーザと専門家の協力を得ることが必須である。優先度大。

要件2: 個々の項目について、適切かつ公正に、簡潔あるいは詳細に紹介し、読者・ユーザをその項目に案内する。

--- われわれの項目紹介は、(単純なリンク集の段階を超えて)大部分が調査者による3〜10行程度の紹介の段階にある。各サイトの責任者に対して、A4 1頁の標準書式による記述(必須)、そして自由書式によるさらに丁寧な紹介(随意)を要請しているが、まだほとんど進んでいない。諸サイトの先行事例を集め、すべてのサイト責任者の協力を得ていくことが必要である。優先度最大。

要件3: ユーザの現在の関心/必要に合致する(一つまたは多数の)項目を、カタログ内からユーザが容易に見つけ出せること。

--- われわれは、サイト記述の標準書式中に、ユーザが注目する客観的諸観点について、階層的に用意した選択肢から複数回答する仕組みを作っている。その観点の例が「サイトの役割」と「サイトの評価」であり、世界WTSPカタログ集はこの2観点で分類表示している。さらに、「適用フェーズ」「適用分野」「方法」の観点をも組み込んでいるが、要件2のサイト紹介が整うことが、要件3を満たす前提である。

 

  

4. WTSPカタログの原稿作成法の詳細

前節のように、本WTSPプロジェクトは、世界WTSPカタログ集を作成し、その全体の骨格構造と基本事例を明確に示した [11-15]。しかし、1.3節に記したプロジェクトのねらいと作成プロセスに対比すると、多くの不備がある。特に、各国での活動がほとんど行われず、その結果、サイトの収集と選択が不十分であり、サイトの紹介も極めて不十分である。そこで本節に、各国・各分野でのWTSPカタログ原稿の作成法のガイドラインを改めて記述し、WTSPカタログ集の中身の改良・充実の指針にする。[16, 17]

4.1 WTSP活動への参加と仲間づくり

WTSPプロジェクトは、ボランティアベースであり、WTSPカタログ集の有用性を認めて少しでもよくしたいと思う人なら、誰でも参加・寄与できる。正式なメンバー登録が望ましいが、なくてもかまわない。個人で活動してもよいが、仲間とグループをつくること、また誰かがコーディネータとなってチーム的活動ができればより望ましい。各国内でのカタログの作成・改良を意図する場合と、国にはとらわれずに何らかの(TRIZやTRIZ周辺の)分野/アプローチでカタログ内容の作成・改良を意図する場合があるだろう。前者を各国チーム、後者を各SIGグループと呼ぶ。

4.2 関連サイトのリスト作り

まず、自分(たち)が関心を持つ範囲の、有用で優れていると思うサイトのリストを作り、仲間や関係者(特に各サイトの責任者)に見せ、増強するのがよい。自分たちの背景知識でかなりの網羅ができるだろうが、既公表のWTSPカタログをチェックし、またインターネット検索で補強するとよい。

4.3 サイトの簡易紹介記述(a)(第三者による簡易な紹介)

つぎに、各サイトの紹介を記述する。いくつかの基本項目(次項参照)の他に、自由書式で3〜10行程度の紹介を書く。実際にサイトを訪問し、トップページ、'About Us'ページ、その他の主要ページを(簡単に)見た/読んだ上で、そのサイトの目的・性格・構成・主要内容などを、(サイトのページの抜粋なども活用して)記述する。図6はその記述の一例で、自由書式の部分のみを示した。

図6:サイト紹介(a)の記述例:(記述者:中川、2018年3月)[8]

4.4 サイトの標準紹介記述(b)(サイト責任者による標準書式での記述、必須)

前節の第三者紹介をきちんとするには、予想以上に労力がかかる。それよりも、サイトの責任者自身に依頼して記述して貰う方が、ずっとよい。A4で1頁の標準書式を用意しており[16]、図7に記述例を示す。

図7:標準書式によるサイト紹介(b)の記述例 [18]

この書式の上7項目(「1行紹介」まで)が、カタログのインデクス部に記述される基本情報である。特に、「サイトの役割」の項は、カタログ中でのサイトの分類・並べ替えに用いており、(別途用意している階層化した)コード表から、該当するものをサイトごとの重点に応じて(複数順序付けて)記述する(なお上例中に、「(献身的/特化した)」と表現しているのは、英語の「dedicated」の訳で、より良い訳を探している)。その下の適用フェーズ、適用分野、方法の3項目も、階層化したコード表から複数選択し順序付けて記述する。これら3項目は、将来ユーザがサイトの検索をするときに使いたい項目である。階層化した分類コードの意図が伝わりにくい点があり、整合性のあるデータを得るための運用が難しい。

4.5 サイトの詳細紹介記述(c) (サイト責任者による自由書式記述、随意)

前項の標準書式では、サイトの特長を表現できる自由書式の項目は5〜10行程度である。これでは短すぎて、ユーザが魅力や重要性をよく判断できず、また、サイトの作成・運用者にも不満が残る。そこで、詳細紹介のために、自由書式(A4で2〜5頁程度、越えてもOK)のファイルの随意提出を受け付けることにした。図8に中川自身のサイトの詳細紹介の事例 [18] の概要を示す。

図8:サイトの詳細紹介記述(c) の記述例 [18](概要)

この記述例の中の前半はいろいろなタイプのサイトで共通に使えると考えるが、後半はサイトに応じてさまざまなスタイルを選択する必要がある。当サイトは、和文記事約1400編、英文記事約1100編を持つので、それらを時代とテーマに応じて整理し、精選記事160編に言及し説明している。

4.6 サイトを評価する(暫定と調整)

 サイトを評価し選択することは、よいカタログの最終目標としても、その作成作業のためにも必須のことであり、気は重いが実施しなければならない。評価の観点および評価の5段階表示の考え方はすでに2.2節に説明している。まず暫定的に行い、後日多数のサイトが出揃ってくるにつれて、多くの人々の目を通して調整していくものと考える。評価にあたり、多様性を尊重することを一つの基本方針とする。

4.7 各国、各SIGでのカタログ原稿の作成

以上の準備のもとに、各国チームあるいは各SIGグループで作成するべきカタログ原稿を図9に説明する [16]

図9:各国、各SIGで作るカタログ原稿 [16]

図の左上は、インデクス部の原稿であり、(通常)Excelの表で、4.4節で説明した各サイトの基本情報の一覧である。図の右上は、(多数の)各サイトの紹介記述(a)(4.3節)と標準記述(b) (4.4節)の(通常)Wordのドキュメント(複数分散可)である。サイトの詳細紹介記述(c)(4.5節)は分離したファイルにして、(b)からハイパーリンクを張る。

これらを図の下段のように一対のHTMLページに変換する。インデクスのページ(左下)の各サイトにはハイパーリンクを付け、サイト記述ページ(右下)の当該サイトの頭につけたアンカー位置を参照するようにする。出来上がったものは、結局、各国あるいは各SIGの「WTSPカタログ」のウェブサイトである。ハイパーリンクの柔軟性のおかげで、3.5節に記した強みがある。自国語で国内レベルまでを網羅したもの(◎〜△)は国内ユーザに有用であり、その後、世界レベルに絞って(◎〜□)英文にするとよい。

この世界レベルのサイトの原稿は、WTSPプロジェクトのリーダに提出され、3.5節の統合作業を経て、世界WTSPカタログ集が出来上がる。

 

  

5.まとめ:評価、困難点と今後の拡充

5.1 ユーザの評価(例)

ユーザから頂いたメッセージの一つを図10に掲載する。

図10:ユーザからのメッセージの一例 [19]

本メッセージは、WTSPプロジェクトの真髄を述べており、開発者として深く感謝する。

5.2 WTSPプロジェクトの困難点:賛同する人は多いが、活動する人が極めて少ない

今まで述べてきたように、WTSPプロジェクトは3年間の活動で、世界WTSPカタログ集のベータ版を作り上げ(3節)、その構造や作成法を確立してきた(3節、4節)。しかし、その活動は、発足当初から現在まで一貫した困難を抱えている。すなわち、「WTSPプロジェクトに賛同する人は多いが、実際に活動する人が極めて少ない」という点である。3.1節に述べたように、TRIZサイトのリストを提出したのは、4か国だけであり、他の30〜40か国は現在もなお提出していない。提出した4か国さえ(日本も含めて)、リーダの一人がまとめたものであり、数名のチームができてサイト責任者たちの協力のもとにできたのではなかった。

「賛同するが、活動しない」多数の人たちの状況と理由を考え、それを克服するための対策を以下にまとめる。

「賛同するが、活動しない」第1の理由は、「(TRIZ関連の)仕事やビジネスに超多忙だから」であり、世界レベルで有能な人たちばかりだから、ある意味で当然である。WTSPの対策は、カタログ集の構造を明確に分割し、メンバーや各サイトの責任者にしてもらうべき仕事を、明確な小さな単位にし、同時並行処理を可能にした。

第2の理由は、「WTSPカタログ集のビジョンが大きすぎて、到底実現できそうにないから」である。2020年6月末のベータ版は、プロジェクトが構想してきた世界カタログ集の姿を明確に作って見せ、これを拡充すればよいことを示した。

第3の理由は、「国内に音頭取りをする人(コーディネータ)がいない。大変だから自分もいやだ」である。カタログ集作りの仕事を細分化したのだから、ボランティアたちがばらばらに仕事をするだけではうまくいかず、誰かがそれらの仕事の分担を調整し、成果を取りまとめる役をしなければならない。それをするのが、音頭取り、コーディネータであり、リーダである。その役割を引き受けるリーダがもうすぐ世界各国に出てくることを著者たちは願う。

第4の理由は、「一般ユーザの立場では、寄与できることがないから」である。そうではない。推奨する国内サイトのリストを作り、仲間やリーダたちに見せて拡充してもらうとよい。国内WTSPカタログ集のインデクス部の原稿が出来上がる。

第5の理由は、「自分のサイトの紹介をWTSPカタログ集に載せる意義を見出せないから」である。サイトを作り、学術やビジネスに役立てるために、情報を発信しようとしているサイト責任者の言葉とは思えない。世界のカタログ集に優れたサイトとして掲載されるのは、喜びであろう。自分のサイトを最もよく知り、きちんと紹介できるのは自分のはずである。

第6の理由は、「考えを異にする競合他社と同じカタログに載せたくない」である。WTSPカタログ集は「創造的な問題解決の方法を提供する」という目的の諸サイトを掲載しようとしている。具体的な方法の違いがあり、ビジネスの競合関係にあっても、それは細部のことである。一つの目的を持つ大きな分野の中での多様性を認め、選択はユーザに任せることを、本プロジェクトの基本方針の一つとする。

第7の理由は、「WTSPカタログ集など有名でない。他の人たちも紹介を書いていない」である。一つの学術・技術分野の世界のWebサイトのカタログ集というものが、まだ新しい(他には作られていない)。その有効性はもうすぐに明らかになるだろう。新しいものの意義を認識することは、イノベーションの土台であろう。

第8の理由は、「WTSPカタログ集はまだほとんどユーザがいない」である。本プロジェクトは、良いカタログ集を速やかに作って、沢山のユーザに使ってもらえるように、最善の努力をしていきたい。

5.3 今後の改良・拡充のために: 方策と依頼

本プロジェクトの方向、実践のガイドライン、ゴールなどを、上述のように明確にできた。いままで、多忙などのために活動に参加しなかった多くの関係者に、細分化した課題での実践協力をお願いしたい [17]。特に、日本創造学会の(TRIZ/非TRIZ分野の)多くの方のご協力をお願いしたい。

サイト責任者の皆さんに:  自分のサイトの紹介を記述ください(4.4節、4.5節)。

ユーザ・実践者の皆さんに: 自分の国や分野での推奨するサイトのリストを作り、仲間と共有下さい(4.2節)。

国/分野のリーダの皆さんに: 自分の国や分野でのいろいろな人の活動をコーディネータとして、調整・方向づけください(4.1、4.4、4.6、4.7節)。

これらの課題の一つ一つは大きなものではなく、個別に、並列的に実践できます。ただ、国/分野のコーディネーションはかなり大きな役割ですから、複数メンバーで協力できるとよいでしょう。そのような協力体制を作ることが、本プロジェクト一つの目標です(1.1節)。なお、4.1〜4.7節のようなチーム/グループの活動を基本形態としていますが、4.4、4.5節のサイト記述は個別原稿として、プロジェクトリーダも直接に受け付けます。

5.4  日本創造学会の関連分野でのカタログ作成

 日本創造学会が対象としている分野や技法は多様です。文献[5]はもちろん、文献[6]はもっといろいろ網羅しています。それらの分野や技法で注目・推奨される日本および世界のウェブサイトを分野ごとにリストアップすると、お互いにも、一般にも有益でないでしょうか? いくつものSIGグループができるとよいと思います。

5.5 おわりに

今後1-2年で、「世界WTSPカタログ集」を、多くのユーザに使われ愛されるものにして行きます。
多くのボランティアの皆さんの寄与がこれらのユーザに有益なものとなり、それと同時にご自分自身に実りのあるものになると信じています。
ぜひ、一緒に、連携して、働いて行きましょう!!

 

  

参考文献

[1] 中川徹編(1998 -)『TRIZホームページ』, https://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/ (J) [以下, THPJ と略記する]  https://www.osaka-gu.ac.jp/php/nakagawa/TRIZ/eTRIZ/ (E) [以下, eTHPJ と略記]

[2] 中川徹編(2017 -)WTSP (世界TRIZ関連サイトプロジェクト), THPJ/WTSP/ (J), eTHPJ/eWTSP/ (E)

[3] 中川徹他(2018)WTSP アピール:世界のTRIZリーダ/実践者の皆さんへ  全世界のTRIZ関連サイトのカタログを作ろう,  THPJ/WTSP/WTSP-B2-News2018/WTSP-News2018-Appeal-180625.html

[4] 中川徹(2019)トリーズ(TRIZ)、デザイン科学事典(丸善出版)、pp.550-555; THPJ /jpapers/2019Papers/Naka-DesignEncyclo-2019/Naka-Encyclo-TRIZ-191119.html

[5] 高橋誠編著、日本創造学会監修 (2020) 実例で学ぶ創造技法、日科技連

[6] 日本デザイン学会編(2019)デザイン科学事典、丸善出版

[7] 中川徹、D. Mann、M. Orloff、S. Dewulf、S. Litvin,、V. Souchkov (2018) 世界TRIZサイトプロジェクト (WTSP):全世界のTRIZ 関連サイトのカタログを作成し維持しよう、欧州TRIZ国際会議2018; THPJ/jpapers/2018Papers/Naka-WTSP-TFC2018/Naka-WTSP-TFC2018-181110.html

[8] 中川徹 (2018) 日本国内TRIZ関連サイトカタログ、THPJ/WTSP/Japan-TRIZSites/WTSP-jp-JapanTRIZSites.html

[9] 中川徹、D. Mann、M. Orloff、S. Dewulf、S. Litvin,、V. Souchkov (2019) World TRIZ Sites Project (WTSP) (2): To Build World WTSP Catalogs of TRIZ-related Sites in the World、欧州TRIZ国際会議2019; eTHPJ/epapers/e2019Papers/eNaka-WTSP2-ETRIATFC2019/eNaka-WTSP2-ETRIATFC2019-191016.html

[10] 中川徹(2020)世界TRIZ関連サイトカタログ集(世界WTSPカタログ集)、THPJ/WTSP/WTSP-WorldCatalogs/WTSP-World%20Catalogs-World/WorldCatalog-TopPage.html (J); eTHPJ/eWTSP/eWTSP-WorldCatalog/eWTSP-World%20Catalog-World/World-Catalog-TopPage.html

[11] 中川徹、D. Mann、M. Orloff、S. Dewulf、S. Litvin,、V. Souchkov(2020)Catalogs of TRIZ-related Sites in the World Built by the Voluntary WTSP Project、MATRIZ Online Forum 2020発表、ロシア(モスクワ)、2020. 9.24-27、[1]収録。

[12] 中川徹、他(2020)World Catalogs of TRIZ Sites and Around-TRIZ Sites Built by the Voluntary WTSP Project、Altshuller Inst. TRIZCON2020発表、米国(ボストン)、2020.10. 6-7、[1]収録 。

[13] 中川徹、他(2020)World TRIZ-related Sites Project (WTSP)(3): World WTSP Catalogs of TRIZ and Around-TRIZ Sites: First Edition (2019) and Its Further Enhancement、ETRIA TRIZ Future Conf. 2020発表、ルーマニア、2020.10.14-16、[1]収録。

[14] 中川徹、他(2020)World WTSP Catalogs of TRIZ Sites and Around-TRIZ Sites: We Can Learn A Lot through These Active Information Sources、I-SIM Intern'l Conf. Systematic Innovation (ICSI) 2020発表、台湾、2020.10.23-24、[1]収録。

[15] 中川徹、他(2020)創造的問題解決の諸方法論のウェブサイト:世界カタログ集の開発(WTSPプロジェクト)、日本創造学会第42回研究大会発表、東京、2020.10.31 - 11. 1、[1]収録

[16] 中川徹 (2020) Guidelines for Building World WTSP Catalogs, eTHPJ/eWTSP/eWTSP-A4-Guidelines.html

[17] 中川徹 (2020) Some More Final Steps for Enhancing the World WTSP Catalogs, eTHPJ/eWTSP/eWTSP-B4-News2020/eWTSP-News2020-SomeMoreSteps-201122.html

[18] 中川徹(2020)サイト紹介『TRIZホームページ』(特徴と主要記事), THPJ/jEditorial/2020Editorial/Naka-THPJ-SiteIntroduction-200204.html

[19] Bill Fowlkes (2019) Significance of the WTSP Project and its WTSP Catalogs: eTHPJ/eWTSP/eWTSP-B3-News2019/eWTSP-News2019-Letters-BillFowlkes-191102.html 

 

1 大阪学院大学 名誉教授 千葉県柏市永楽台3-1-13 Osaka Gakuin University 3-1-13 Eirakudai, Kashiwa, Chiba 277-0086, Japan

2 Systematic Innovation Network, Bideford, UK (イギリス)

3 Academy of Instrumental Modern TRIZ, Berlin, Germany(ドイツ)

4 AULIVE, Glen Elgin, Australia (オーストラリア)

5 GEN TRIZ, LLC., Newton, MA, USA (アメリカ)

6 ICG Training & Consulting, Enschede, Netherlands (オランダ)

 


  

 編集ノート後記 (中川 徹、2021年 5月30日): 査読過程の概要と著者の申立て書

 ここに、査読審査の経過の概要を記述します。その内容に関しては長文になりますので、別ページにいたします。

(1) 2020年12月21日に、本論文の原稿を日本創造学会の論文誌に投稿しました。
     昨年11月1日の日本創造学会研究大会の発表の予稿集論文(8頁)を、16頁に拡張したものです。
     ダブルブラインド方式ですが、断り書きをしてマスキングなしの原稿を提出しました。

(2) 2021年2月5日朝に、編集委員長より「本誌の規定に照らして、形式・内容とも、掲載できない」との通知がありました。査読意見は提示されず、それ以上の説明は一切なく、規定のどの項目に関しているかも不明でした。
   私は、論文誌の規定を読み返して、同日夜に、別紙のような、異議申立て書を編集委員長に送りました。
自分で考えた論点は、既発表のものからの新規性、新しい内容を含む研究成果報告であること、他者の従来研究の参照と比較、ダブルブラインド査読のマスキング原稿の提出、の4項目です。

(3) 少しのやり取りの後、2月7日に、編集委員長から、「マスキング論文も提出すること、過去の国際学会や論文誌の論文、公開著述等との差分が30%以上あることを明示すること」の指示がありました。
   私は、その指示に従い、2月10日に、微修正原稿、マスキング論文、再提出説明書(別ページに掲載)を提出しました。編集委員長の判断で、これらが論文誌の査読プロセスに乗せられました。

(4)  3月末に、論文誌はJ-STAGE上で公開されました。私の論文は掲載されていませんでした。
   不採録の通知も、査読結果も何も連絡がありませんでした。

(5)  5月26日に、(私の要請に応じて)編集委員長から、査読結果が知らされました。査読者が3人とも「不採録」と判定しており、最終的に不採録になったとのことです。ここにそのまま掲載させていただきます。

査読者A   判定: 「不採録」   著者へのコメント:

挑戦と努力に敬服しますが、一般にウェブ情報の集約は人海戦術では限界があり、AIでの自動作成が大きな流れではないでしょうか? インターネット検索以外に、論文分析に使われるAIの応用の限界を打破するポイントは見つかったのでしょうか? 拝見する限り、ご提案のウェブ情報集約方法の有益性の評価ができず論文として要件を満たしていないと考えます。
しかし、専門分野の情報集約は貴重なテーマであり、完成したカタログの紹介中心に別の機会に投稿されることをお勧めします。将来、論文集約の有効な方法が見つかり、AIで実装されることを期待しています。

査読者B   判定: 「不採録」   著者へのコメント:

本稿は、TRIZと創造的問題解決方法論をカバーし、世界のWebサイトカタログ集構築を試みる意欲的な文章だと思います。
しかし、本稿はそれらのβ版設計過程または討議した結果を記した内容であり、Web上で客観的に検証した結果がありません。 本学会誌は学術論文なので新たな知見、或いは客観的検証結果とそのプロセスがないと学術論文として評価のしようがありません。明確な検証結果が出てから投稿してください

査読者C   判定: 「不採録」   著者へのコメント :

本投稿は論文ではなく、報告書かマニュアルであると思います。 残念ながら、通せませんでした。

(6) 私は、上記の査読意見のいくつかの論点について、論文本文でも、2月の申立て書でも論じているつもりです。ただ、学問や研究のあり方、学会のあり方、論文のあり方などの、基本的な目的意識が、査読意見とは違っている部分があるように思います。5月27日に、私は次のメール(部分)を編集委員長に出しました。

各査読者の判断はもっともな点もありますが、 全体としてこれでは、日本創造学会が、何を目的とした「学会」 なのか、大変疑問に思います。  

「創造性」を涵養すること、「創造性教育」を進めること、「創造性」を生かして産業や社会に寄与すること、それらのために科学的にも実践的にも信頼のおける概念や方法を確立すること、などの大きな目的を見失っているのでないか?  
「検証」より以前に、概念や方法を提案し、試行・実践することが大事であると思います。  

今回報告しているWTSPプロジェクトは、学術とその応用を広めるための一つの「運動」です。現在、(そして今後10年程度は)AIよりも人間の専門家(具体的にはサイトオーナー)の方が、ずっと良くWebサイトの特長を紹介できるだろうと思っています。また、カタログ集というモノだけでなく、それを作る協働作業に意義があるのです。  

日本創造学会が、狭義の「論文」だけでなく、もっと広い有益な記事・活動も扱い、社会に寄与できることを願います。

編集委員長が大学での重要・多忙な職務の他に、学会誌の編集の仕事をして下さっており、本件についても誠意ある対応をしていただいたことに、私は厚く感謝いたしております。

本件の経過を踏まえて、日本創造学会にいくつかの提案を改めて提出したいと考えております。 どれも、編集委員会の体制強化が必要なものばかりですが。

(7) 上記の判定をうけ、本論文を『TRIZホームページ』の初出論文としてここに掲載することにしました。

 

本ページの先頭

論文先頭

1. はじめに

2. 日本WTSPカタログ

3. 世界WTSPカタログ集

4. 原稿作成法

5. まとめ

参考文献

論文PDF

編集ノート後記

査読関連の付属資料ページ

創造学会研究大会発表

 

 

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最終更新日 : 2021. 5.31    連絡先: 中川 徹  nakagawa@ogu.ac.jp