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編集ノート (中川 徹、2021年 12月30日)
本ページは、高原利生さんの現段階での主著である 『永久に未完成の哲学ノート』 (B5版 17版)の、第1部の第2章と第3章です。著者が創り直してきた「新しい論理学(=新しい弁証法論理学)」の基本的な構造を論述しています。第3章で展開している「矛盾モデル(運動モデル)」という定式化が、著者が18年余をかけて創り上げてきた新しい概念です。読者の皆さんは著者の用語に馴染むのに困難を感じられることと思いますが、ご辛抱のうえ、意のあるところをお汲み取りください。
親ページとしては、「第6集 索引ページ」、[62] 「永久に未完成の哲学ノート 索引ページ」、および [62A] 「永久に未完成の哲学ノート 前書き&後書き部」、を参照ください。
本ページに掲載部分の目次は以下のようです。
未完成の哲学ノート 第一部: 論理学、世界観、生き方
3.1 矛盾(モデル)とは何か
3.2 矛盾の構造の発展
3.3 小さな問題の認識と変更
3.4 大きな問題の認識と変更
3.5 矛盾の運動領域、矛盾の原動力
3.6 矛盾の種類(まとめ)
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[62G] 第二部 ポスト資本主義 | [62] PDF |
高原利生論文集(第6集) [62C] Book B5 V17 2021. 8
『永久に未完成の哲学ノート』 Part C. 第一部 2.章、 3.章
2.弁証法論理: 矛盾モデルと論理的網羅思考 [FIT2010-16] [TS2012] [THPJ2015/01]
2.1 目的と定式化
宇宙、地球が生まれ、事実が歴史的に変化、発展していく。生命、人が誕生し、事実から観念が生まれ、ともに発展していく。認識と操作の論理の分かる事実が扱える対象である。故にまず論理がある。2021.03.19
事実の変化から思考が生まれ、事実の歴史的変化から論理ができていく。思考、対話の内容は、その思考、対話の要素間の関係である。この関係が論理である。
形式論理、文法はある。命題論理や一階述語論理など数理論理やそれより広い形式論理は、小さな細かい粒度では正しい。形式論理と文法の中間の粒度の、認識と変更双方の近似モデルである弁証法論理学を作る。
新しい論理学を作る要件は、
1 形式論理より広い、今必要な完全な全員の論理学、
2 少ない概念、原理、要素で、ゼロベースでできるかぎりシンプルに作ること、
3 歴史を反映した論理学であること、
4 価値を扱え、生き方につながること、
である。2020.10.13, 12.18, 2021.06.19事実に対する対象的な態度を分類すると三通りがある[FIT2016]。
1 ゼロベースで物事を考え新たに作り運用する。
2 既存の物事を作り替え運用する。
3 既存の物事を変えないで運用する。
この三つで網羅されている。近似である。
この他に一体的態度がある。
1 は理想であり、実際には、2 または3 がある。 「作る」と「運用する」の区分も曖昧である。
一般的、理想的には、1 の「ゼロベースで物事を考え、新たに」理想像を作り、その実現はこの理想像に現実的に近づけるような2 または3 がよい。
要するに、常に理想像を考え実現は、当然既存の現実や資源を活かしながら現実的に行う。価値を具体化する目的は、新しい機能を作ること、不具合の解消、理想化のいずれかである。これらは相対的でどれでも目的にすることができる[TS2009,10,11]。これは網羅され、全てダブっている分類の例である。
論理学を作る今の場合も「新しい機能を作ること」が適切である。
論理学を作ることは、全ての対象についての全ての論理の体系的網羅という新しい機能を持つ構造を作ることである。
この論理学は今ないのでゼロベースで作る。
ゼロベースに二つある。
1 論理のゼロベース;分からない時はゼロから考え直しゼロから論理的に網羅し直す。
2 事実のゼロベース;今の事実である現実は、宇宙誕生以来今までの歴史の網羅的総括である。今をゼロとし細部までそのまま認め、これからの変化、過程を重要視する。
この二つは両立する。2019.09.04,10.25, 12.21, 2020.03.01新しい論理学は、形式論理と文法の中間の、今、必要な、完全でシンプルな全員の論理学であり、そのため少ない概念と少ない原理によりゼロベースで作られ、歴史を反映した論理学である。この論理学だけが、生き方につながる。2020.10.13, 2021.02.24
全体が最も単純になるように、事実についての概念整理と問題分割を行い二つの要件に分ける。
(1) 対象の要件:事実から、扱う対象を漏れなく正確に特定できる。
(2) 論理の要件:事実の認識,変更とこれに関わる全てを、漏れなく単純に正確に扱える。
解決を二段階で行う。矛盾の発展の歴史から学び、システムと運動の二つに分けて作る。
2.2 対象の解
存在と関係(運動)が独立している場合を前提として、(1章)、まず、システムを考える。
(1) 一案は、「もの」(例:道具)をシステム、その利用,運用を運動とする。
これは一見分かり易い。しかしこれではシステムが世界を網羅できない。一案は扱う世界が限定される。あるものの運用だけ、単純なものの運用だけに適用できるだけで上の要件を満たさない。(2) 二案はオブジェクトをシステムとする。
(3) 三案は、矛盾(運動)モデルをシステムとする。
一案と三案の中間が二案である。
第二の意味の事実を考えているので、二案、三案のどちらでも世界は網羅される。一オブジェクトでなく現象や問題に着目するため、オブジェクトより一段上の矛盾モデル(運動モデル)である三案とする(ただし、存在と運動が別々にある場合)。
矛盾(運動)モデルが世界の近似単位であり矛盾モデルの合成で、世界のあらゆる事象を表せる。(存在命題、属性命題を表せない欠点がある。後で触れる。2019.09)
三案は、オブジェクト間の関係を表す「オブジェクト1−関係−オブジェクト2」という矛盾モデル(運動モデル);(必要に応じて3項以上に広げる)をシステムとして使う。オブジェクトは、最初は存在だったが矛盾の集合でもよい。運動のモデルをシステムにするということは一見奇妙に見える。
2.3 論理の解
この運動は、オブジェクトについての操作の全てである。
この場合の運動の目的は、新しい像を作る本来の思考、議論を作ることである。運動の
一つは抽象化による矛盾(または関係命題)の粒度特定(問題定式化)、
二つめはそれから新しい認識像、行動像を作る矛盾の求解(推論)、
三つめがその結果の具体化、
さらに周辺にある論理である。
矛盾の解を出す、または関係命題の変更を行うのが推論である2020.07.24改。
後で述べるが「関係命題−推論」と「矛盾−矛盾の解」は同じである。推論の要素は、帰納、演繹、仮説設定である。
矛盾の解は仮説設定について求めれば十分である。これも後で述べる。
「全てが関係している」ので、論理は、単に認識と変更だけでなく、これらに関連するあらゆる周辺の論理を含んだ論理学でなければならない。
この推論は、抽象化具体化の粒度と論理的網羅が正しい限り正しい推論である。論理的網羅は粒度に依存し粒度の客観性は様々であり、比較的に固定的なもの、そうでないものが混在している。
抽象化と推論(仮説設定)の二つは、実際には同時決定過程に近い。この抽象化具体化と推論、これらに関する全てを、論理的網羅思考(今まで、根源的網羅思考と言ってきた。改める2021.08.18)をあわせて弁証法論理学ができあがる。ということにする。
思考、議論における、自分の今の観念と、過去の観念や相手の観念をともに活かした統一は、論理である論理的網羅思考だけが可能にする。
これで思考、議論ができるようになる。論理(=論理的網羅思考)とその単位である矛盾モデルとをあわせ、弁証法論理学ができあがる。
2.4 論理学
論理の生成と歴史の全体が、論理学である。[FIT2019]
本書の殆ど全てが論理学に関する。
論理学の体系があるか?あると便利だろうと思う。あるとすればそれは、事実、思考と矛盾の生成と歴史と体系の全体で、特に以下を含む。
1.事実とはなにか: 1章1.1節
2.思考の歴史: 1章1.4節
3.論理学の生成: 2章、4章(論理的網羅思考)
4.人間と論理の歴史 論理的に: 3章(矛盾)
5.人間と論理の歴史 歴史的に: 5章(矛盾の歴史、抽象化・具体化(粒度決定)の歴史、推論の歴史などがある)
6.できあがる論理の体系: 3.6節、4章(論理的網羅思考)、5章
今必要な、矛盾の歴史的発展をすべて含み、今までより、豊かな弁証法論理学を、分かっている範囲で本書に述べた。弁証法論理学が殆ど世界観に等しい。
3.矛盾(モデル) [FIT2006-16] [TS2006-12] [THPJ2012] [THPJ2015/01, 02, 03]
人にとって、知覚でき、認識と働きかけ方の思考の論理の分かる事実が対象である。
人の、何かへの向き合い方は、
対象のとらえ方・世界観と、
それに対する思考における認識と変更の方法・論理、
それらを支える概念 からなる。
世界は、全ての要素が関係し合い、両立し、変化している。
哲学を、世界観と論理(方法)ととらえる。
哲学が、人の価値観、潜在意識、態度、感情に作用し生き方を作る。
人は、生き方により対象を認識し働きかける。
3.1 矛盾(モデル)とは何か
1)カントとマルクス
オブジェクトとは何かの答えを得るのに2年かかった(高原利生論文集(4) 解題 抜粋)。
オブジェクトとは何かを考えていた時に出会ったのが、二人の言葉だった。[TS2005]一人はカントである。
「相互作用或いは相互性の法則に従う同時的存在の原則:およそ一切の実体は空間において同時的に存在するものとして知覚される限り完全な相互作用をなしている」[KNT p. 286]
カントは地球と月を例にしてこの原理の証明に数ページを使っている。
これは第一の「実体の不変性の原則」、第二の「因果律の原則」に次ぐ、第三の原則である。[KNT pp. 286-294]
ヘーゲルはこの同じ3項目を、別の順で扱う。もう一人はマルクスである。
「太陽は植物の対象であり、植物には不可欠の、植物の生命を保証する対象である。同様にまた植物は、太陽のもつ生命をよびさます力の発現、太陽の対象的な本質力の発現として、太陽の対象なのである」「それ自身が第三者にとって対象でない存在は、いかなる存在をも自分の対象として持たない」[EPM 岩波文庫p.223]
二人とも「もの」に限定し、また二つのものの相互作用、関係を扱っている。これを、オブジェクト(「対象」でなく「事実からある粒度で切り取った今扱う情報」)に拡張し、オブジェクトとその関係は矛盾としてとらえるのが良いと考えた。[TS2005]
2)思考の単位としての矛盾、矛盾モデルの生成
弁証法論理は形式論理と異なり、空間的に関連しつつ時間の中で発展する物事を扱う。
関係(命題)に限る思考(後述)の単位だけなら話は単純である。
関係(命題)、矛盾(運動)は、事実を扱う情報単位で、値のAと非Aの2項の両立である変化・変更か、属性A、Bの2項の両立を表すことができる2021.01.09。
矛盾モデル(運動モデル)が、あらゆるものが関係しあっている世界の最少近似単位であり、矛盾モデルの合成で、世界のあらゆる事象を表せることから、思考の単位を、オブジェクトから作る矛盾モデル(運動モデル)とする。
矛盾モデル(運動モデル)は観念である。矛盾と略す場合がある。矛盾の両立に、事実に関する両立と、その前提となる概念の両立がある。ある物事の生成とその後の運動を合わせて運動ということがある。
矛盾は全く運動に等しい。矛盾(モデル)とは二項の関係の生成と運動である。
矛盾と運動は、どちらも二項間の関係である。項はオブジェクトであり、考察のはじめには存在だったが、関係(運動)でも矛盾でも矛盾の集合でもよい。運動という言葉は既に普及して多くの意味を持っているので、矛盾を運動と言い換えるのはためらわれた。意味を特定した二項間関係を、変化,変更と両立矛盾(一体型矛盾)とし合わせて矛盾と括る理由を[THPJ2012]で書いた。当面「矛盾モデル」「運動モデル」という複合語を使うことにし、将来「運動モデル」と言い換えた方がいいかもしれない。(と書いたが、矛盾モデルは、存在と関係が分離している条件に限定したモデルであることに注意。2020.11.21)
3)矛盾の発生
事実に、変化・変更と両立の運動、過程がある。
「存在」は、その両立の結果として二次的に出てきた。この「存在」もミクロにみると運動している矛盾の一部ととらえることはできる。2020.11.27世界も人の行動も運動、過程の集合体である [エンゲルス, F]。
あらゆる事象は関連し変化しているというのはそれ自体近似モデルによる。その近似モデルが矛盾モデルである。
この矛盾(モデル)は、単純に、「相互関係を有し変化する何か」である。大雑把に言うと矛盾モデルは「オブジェクト1−関係−オブジェクト2」の生成と運動を表す[THPJ2012] ;基本はオブジェクト1,2の関係だが必要に応じて3項以上に広げる。矛盾もオブジェクト、オブジェクトの複合体もオブジェクトである。オブジェクトをどうとらえるかということと、矛盾をどうとらえるかは、ほぼ同じ問題である。矛盾は、TRIZを含め従来の弁証法論理に使われてきた。論理である論理的網羅思考が矛盾モデルを管理し、二つを併せて弁証法論理ができる。これが方法になる。
中川徹先生によるTRIZの本質の説明「TRIZのエッセンス−50語による表現」(英文で50語)が[Naka-2001]にある。これは矛盾の説明とも(生き方の説明とも)とらえられる。
「[技術]システムが, 理想性の増大に向かって, 大抵, リソースの最小限の導入により, 矛盾を克服しつつ進化する」 ことの認識。そこで, 創造的問題解決のために, TRIZは弁証法的な思考, すなわち, 問題をシステムとして理解し, 理想解を最初にイメージし, 矛盾を解決することを薦める。」[Naka-2001](和訳)
但しこれは技術に限定して述べられている。この「TRIZのエッセンス」は、生きる全領域に拡張して適用できる優れたエッセンスである[TRIZ2015/01]。上の引用から、[技術]、[technical]を取り一般化して理解しても正しい。
4)矛盾と世界
宇宙、地球、生命、人の始まりがあり、今の多様な自然と社会がある。この歴史と現在を統一的に認識し変更していく、客観と主観の差を考慮した統一理論、方法,論理ができる。客観世界は、エネルギーを別にするとそのモデルは「ある粒度での差異が生じ運動が行われる」。これだけである。
エネルギーが矛盾という運動を始める(ダークエネルギーは扱わない)。理想の前提はいかなる空間時間でも使えるエネルギーである[CGK2016]。矛盾モデルを、どういう空間時間粒度で作るかによって、この差異とエネルギーが、外部の力なのか内部の力なのかは、相対的で矛盾の粒度によって変わる。これについて昔、無駄の多い「論争」が続いていた。[牧野広義「弁証法的矛盾の論理構造」文理閣, 1992.]
矛盾モデルは観念であり、世界の近似モデルの最小単位として用いられる。
矛盾は、
客観領域においては、二項が作る「運動」、
人の領域では、あるべき価値の姿と現実の差である「問題」とその解決=差異解消である。
客観領域における二項が作る「運動」も、擬人的に「問題」の差異解消とする。この二つの領域で、矛盾と論理的網羅思考を統合して自由に扱うことができる。
客観世界の近似モデルは、客観世界自体にはない。人による認識モデルがあるだけである。今、語られている宇宙や太陽系や地球の生成の歴史は、差異により運動が起動されて起こった「結果」か、複数の物事の両立の「結果」だけである。
結果を見る粒度は後から分かる、というのは、おそらく人の意識的努力の矛盾が始まり、その矛盾の変化形式が理解されたのち、客観的な自然における矛盾が理解されるようになるからである。矛盾の歴史があり、矛盾を理解する時間順序があり、今の矛盾の体系がある。
以下、客観的な自然における矛盾の形式が始めからあったように述べる。矛盾は、自然世界の運動と人を含む生命世界の問題を扱える。
運動を直接観測できない観念について、変化、変更が観測できれば、運動の結果と理解することによって、思考や感情の運動を扱う。
自然のどの領域においても、運動は、エネルギーが最小になるように行われる。
生命の領域においても、長い目で見れば、近似的にエネルギー最小になっている(仮説:この粒度で、論理と歴史が一致している)が、生命は意志によってエネルギー最少を実現しない行動をとることがある。
論理である論理的網羅思考による行動は、意図的に高度な価値実現を、エネルギー最少で行うことを目指す(と書いたが、分からなくなった。人類の統一理論の章で触れる2021.02)。
自然世界と人を含む生命世界に共通に、内容と形式(機能と構造の矛盾)がある。
5) 他の人の矛盾
ギリシャ哲学、ヘーゲル、マルクス主義、プラグマティズム[CSP1] [CSP2] [UEYM1] [UEYM2]、西田哲学など様々な哲学、哲学者が弁証法を扱った。
資本論第一巻第一章に表れているマルクスの矛盾の欠点は、ヘーゲルの矛盾の欠点そのままである。この矛盾の欠点の「原因」は、何かを始める運動の分析ができないことと、外部の運動の作用を分析できないことにある。資本論第一巻第一章で、「商品ありき」で分析を始めてしまったことは、前者をもたらし、商品流通を効率的に行いたいという「外部」からの要請の無視は、後者をもたらした。[THPJ2012に、資本論第一巻第一章数十ページの代わりを、数ページで書いている。付1]
TRIZの創始者アルトシュラーは、当時、旧ソ連で教えられていたマルクス、エンゲルスの矛盾概念を拡張した。アルトシュラーはまた、二変数の生成も両立と同じく矛盾ととらえ、属性の矛盾と値の矛盾を区別して扱った。
ここでの矛盾概念は、さらに、このアルトシュラーのものを拡張した。[THPJ2012] アルトシュラーの矛盾も、本稿の矛盾も、プラグマティズムの立場の矛盾[THPJ 2012]と言えるかもしれない。彼らの矛盾概念を、より大きく「網羅」することを目指して拡張してきたと気づく。
マルクスやアルトシュラーの概念についてだけでなく、他の概念を再定義する場合は、粒度を別にすれば、従来の意味を含み一般化するように行っている。これも意味の限定である。
後述の一体型矛盾は、西田哲学の徒、三木清の「人生論ノート」[MIKI1947]の「混合の弁証法」の意図と似ている点はあるが異なる。三木清もアルトシュラーも従来の矛盾ではだめと気付いていた。
6) 矛盾の種類:変化変更矛盾、両立矛盾、一体型矛盾
矛盾とは、二項の関係の生成とその運動であり、様々な分類がある。[THPJ2012] [THPJ2015/1]
カントはカテゴリーを三項に分ける。それは、第一のカテゴリー、第二のカテゴリーとその結合による第三のカテゴリーである。[KNT pp. 149-159]
その例は、純粋理性批判にいくつか挙げられている。
例:性質(実存性、否定性、制限性)、様態(可能性、現実存在、必然性)矛盾は二分を使う。理由は、次のとおり:
1 二項は、あるべきものと現実とか、過去の思考結果と新しい思考内容や、相手の言っている内容と自分の思考内容など容易に思いつく。
2 二分は、必要なら三分には容易に拡張できる。また三分は二分に簡単に縮退できる。
3 より大きな全体は、二分モデルの合成によって作り表示することができる。[TS2006に図] [THPJ2015/1に図]矛盾モデルは、客観世界と人間に共通である。世界を「項1−関係−項2」という矛盾モデルの集合体で近似する。
事実の矛盾、解の矛盾(後述)ともに、変化変更矛盾と普通の両立矛盾に分かれる。
1.変化変更矛盾
(差異解消矛盾を改め、変化変更矛盾にする。単に変化変更と言えばよさそうに見えるが、全体の矛盾の運動の一種だと意識するためにこうする2021.05.31)
変化変更矛盾は、通常の変化、変更である。一つのものの運動を「ある状態とない状態」の二項の同時「両立」ととらえる。次の両立矛盾の一種ととらえることもできる。
一つのものの変化、変更、運動のようにみえるものは「オブジェクト1−関係(運動)−オブジェクト2」という(両立)矛盾モデルで表せる。
例: 自動車の運動は「自動車−関係−土地」のように自動車と土地の関係。
これで変化または変更を分解でき、運動の各項を改善することができるようになる。変化、変更は「ある値を持ち同時にその値でない値を持つ」こと、Aであり同時に非Aととらえることだった。変化変更矛盾の二項は、値に関するAと非Aである。実用上、運動しているかどうかの認識は、通常は、変化、変更を観測できるかどうかによっている。その上で、運動を、ある状態にあり、同時にある状態にないという矛盾として理解する。
2.両立矛盾
Aと(非Aでない)Bの二項が、両立している、あるいは両立を目指す運動は、弁証法の意味の通常の矛盾で、両立矛盾、または単に矛盾という。
両立矛盾も広義の差異解消と呼べる。両立矛盾は、両立していないある差異を解消し両立の状態に至るからである。同じことだが両立のために常に変化、変更が行われている。その意味で、両立矛盾は広義の変化変更(矛盾)である。仮説だが、自然の場合、
1 お互いどうしの変化・変更の運動がまずランダムに起きる。
2 その運動の中から、自然の微細な差異によりいくつかの運動の空間時間の集約が起きていく。
例: 重力によりいくつかの場所に密度の高い所ができてくる。星ができる。
3 その集約の中から、最初はお互いの条件として作用し合うような2項がでてくる。
4 運動発展のために、矛盾を解消し両立の解が出てくる。
例: 2つの星が楕円運動 [TS2012、資本論] を始める。2020.12.17。
これらの把握は知的生命の観念の中にある客観世界についての情報による近似である。矛盾概念は観念であり仮説である。人の矛盾の場合も、
1 ランダムに見える人の事象が多い。
2 その中から価値実現のため変えたい事実が出てくる。
3 その事実の中から、最初はお互いの条件として作用し合うような2項が出てくる。
4 運動発展のために、2項から定式化した両立矛盾を解消し両立の解を作る。[TS2012] [DI] 2020.12.17。
両立ができた。21.両立を目指す運動過程を見る粒度と両立してしまった結果を見る粒度が、従来は混在していた。
エンゲルスのいわゆる三つの法則のうち、
「対立物の統一」は「対立しながら統一、両立している」ので、本来は(対立と目指す両立の両面の)運動過程を見る粒度での表現、
「否定の否定」はその運動の結果が、たまたま矛盾の2項を「正−反−合」で高度に統一された結果での表現、
「質量転化」は運動の一部の結果についての表現である。[FIT2009]22.運動過程を見る粒度で、概念変更を除く矛盾2021.06.01は、
1 認識については、
11 自然の擬人的な機能と構造発見、
12 人世界の機能と構造発見 (例:物々交換という制度の開始)と、
2 操作変更については、
21 自然の変更における機能と構造生成、
22 生き方における価値実現における機能と構造生成、
である。2021.07.01
概念を変更する矛盾は、機能と構造の矛盾ではなく、その概念とその真の反対概念を統一する両立矛盾である。3.一体型矛盾の本質と生成
一体型矛盾の歴史は古く、雌雄のように、もともと一体である単性生殖が分かれて発展し、もう一度、二つの性が一体という全体の要素として両性生殖に発展する進化の歴史のような場合である。
生命と人類の長い歴史の中で、もともと一つだったものが、二つのオブジェクトに、二つの思考に、または二つの態度に分かれていく。そして、分かれたそれぞれは独自の発展を始める。ある時から、その二つは再統合の運動を始める。二項がお互いに発展させ続けることができるようになった。
人はもともと、原始的一体化状態にあり、自分、相手、外界は区別されていない状態にあった。おそらく「原始的一体化状態→ 発展のため分離→ 再一体化」というのが、歴史的順番であろう。
歴史には「(原始的)一体化→ 分離」と「 分離→ 一体化」の二つが含まれている。歴史的に一体型矛盾は、もともと一つであったものが、両立矛盾である機能と構造の矛盾によって発展した変形である。両立矛盾の解が質的構造変化を生起しないまま、お互いに両項の向上をもたらす続ける場合と考えれば、新しい型の矛盾ととらえられる。[TS2011] [FIT2015]
機能という概念は、何らかの価値を前提にしているので、擬人的に見える。ここでの価値はエネルギー最少である。生命はエネルギー最少で環境変化等を生き延びた。2020.11.28, 12.04
機能と構造の矛盾には、一回きりの設計の中の機能と構造の矛盾と、生命進化などの中の機能と構造の矛盾があり、後者が一体型矛盾である。生産力と生産構造の矛盾(生産の機能と構造の矛盾)は、普通は一体型矛盾であるが、今の生産力に対応する生産構造を検討する時は普通の両立矛盾である。
次のいずれかの条件があると、次のような永続する一体型矛盾ができる。
(1) 条件: 外部に永続する強制力があること。
例1:種の進化における機能と構造の矛盾では、生き残るという基準が矛盾を永続させる。生き残っている種では、矛盾が永続している。
例2:生産の機能と構造の矛盾の場合も、うまくいかないと会社などは、つぶれてしまう。生き残っている会社では、矛盾が永続している。この2例は、いずれも項の「存続」に関わっている。一般化できるか?
仮説:項の存続に関する強制力が永続すると一体型矛盾ができる。2021.06.07
(2) 条件: 矛盾に、永続性を内蔵する入れ子 注があること。
お互いに、
1 各項が、他項を自らの発展の条件としているか、
例 :システムと運用
2 または各項が、他項を、自らの情報のサブ要素として取り込んでいる
例:雄と雌
と、永続性内蔵の入れ子ができる。[TS2011] [FIT2016] [FIT2017](1) ものまたは情報のどういうものが、片方の中に入ると入れ子なのか、明確でない。
(2) ものまたは情報のどういうものが、片方の中に入ると、各項がお互いを変化させ合うことができるのか、明確でない。片方の条件だけある場合と両方の条件がある場合の違い、両者の条件の関係、内外の境界を変えてみる必要性の検討も今後の課題である。
この場合の矛盾の内容は、何らかの粒度で全体を構成する2項からなる。粒度に、全体を表す概念の場合や態度、行動の場合がある。(後述)(5章)
「--- 注 -------
注 入れ子: ものか情報が、もう片方の中に入ること。お互いに入れ子になり合うのが双方向入れ子である。以下[THPJ2015/2]からほとんどそのまま引用する。
一方向入れ子
入れ子は、もともと、ロシア人形のように、同じ形のものが物理的にもう片方の中に入っていることを指していた。これを、
1.何か同じものまたは同じ形式のものがもう片方の中に入ること、と拡張し、さらに、
2.入れ子の対象を、ものから、もの、情報に拡張する。つまり、同じか同じ形式の、もの、情報が、もう片方の中に入ることを入れ子というように広げる。これで一方向の入れ子が定式化できた。対象が、もの、情報の場合の差異の検討が課題である。
例: フィードバック、引用(引用されたものが自分の中に入る)、再帰性(再帰的な定義は、定義の中に定義されるものを含んでいること。「存在とは、他の存在と関係するものである」というのは再帰的な定義)、教育、洗脳、スパイ、寄生虫、相思相愛。
文の例:寺沢恒信は、変化、変更の起こる構造を次のように述べている。「発展は、その内容に関しては現実性と可能性のカテゴリーによってとらえられ、その形式に関しては内容と形式のカテゴリーによってとらえられる。」[TRSW p.157 これは間違いだと思う。現実性と可能性は発展の起動力、内容と形式が発展の実現手段であり、どちらも発展の内容である 2021.08.13,31]双方向入れ子
入れ子の拡張として、お互いに入れ子になり合う形式がある。対象が、もの、観念(情報)の場合の差異の検討が課題である。
例:客観と主観、客観的世界と主観的世界。
例:手段としての双方向入れ子として、二重スパイ。
観念を中心とする主観的世界は、初期にはものを中心とする客観的世界の像であったが、次第に客観的世界は主観的世界を含むようになり、お互いを何重にも含み合う何重にもなった入れ子ができている。一体型矛盾は双方向入れ子の形式と考えることができる。一体型矛盾を自覚すると解を早く得られる。よりよい解にするためには永遠に努力を続けなければならない。将来は、よりよい一体型矛盾を作り続けることが人生になるかもしれない2021.07.04。
矛盾を決めるのは、粒度(抽象化具体化の程度)であり、矛盾を解決するのも粒度である。両者は入れ子になっている。粒度を決めるのも、粒度と網羅の矛盾の解であるという入れ子もある。世界の近似単位としての矛盾特定,解と、粒度の管理のための論理的網羅思考が、双方向入れ子になっている。[THPJ2015/2改]
理想的な労働、教育、技術,制度、相思相愛は、自分と対象と相手を向上させ合う双方向入れ子である。過去に世界や相手、対象があるから自分がありその逆もある。一体型矛盾の解の連鎖による。
入れ子を2次元で表現するのは難しい。入れ子を表現する数学的形式はよく分からない。ハイパーキューブはその候補で、入れ子、再帰構造を表現する数学的形式である。[松本明子,岡本秀輔,曽和将容, "拡張ハイパーキューブについての研究", 情報処理学会計算機アーキテクチャ研究会117-12, 1996.3.6. これは、コンピュータ内通信ネットワークに関するものだが一般的な内容がある]
------ 注 ------」
4.一体型矛盾の機能と構造、課題
41.一体型矛盾の機能
一体型矛盾は、持続的に外部と自分を変化または変更し続ける([FIT2016]では「発展」としていたのを「変化または変更」に訂正する)。
お互いの価値を増す好循環の一体型矛盾、値を減らす悪循環の一体型矛盾、どちらでもないものがある。どれに該当するかは、扱う主体に依存する価値による。
したがって両立矛盾から一体型矛盾に変えていくことが、常に良いかどうか一概には言えないが、適切な一体型矛盾を作ることは、理想の解の一つである。(4章)価値が、主体によって異なる、良いことまたはその基準であるのは、対象化を前提条件にしていると気づく。一体化が加わると大きく価値のとらえ方が変わる。2020.03.11
一体型矛盾の2項は、お互いを変えていく。
42.一体型矛盾の仮説と課題
人の世界で外部への機能が発展し続ける運動は一体型矛盾である、という仮説を作る。[FIT2016]
さらに仮説を作る:「人の世界で『ある項とその反対項が両立する一体型矛盾は真の発展をもたらす』という条件を満たす項、一体型矛盾がある」。
これから、発展する一体型矛盾を作る論理は、論理の方法原理になる。
生き方における「対象化と一体化」だけでなく、哲学の「論理学と世界観」も一体型矛盾である。2021.04.13
ここで、「発展」は人の価値に依存するので、人の世界に当てはまり、客観世界には当てはまらない。2021.04.131章で、何事にも、全体は何か、全体の機能と構造(要素とその間の関係)は何か、要素は何か、という両方向の全体に続いていく三つの課題がある、と書いた。
ここでの機能を擬人的に使うことにすると、これは客観世界にもあてはまるかもしれない。
この両方向に続くトポロジーは直並列と木構造を何となく思い浮かべるが、実は双方向入れ子かもしれない。
発展を続ける宇宙の構造は、双方向入れ子構造が本質的で、部分的に直並列、木構造なのかもしれない。さらに超弦理論は、宇宙と素粒子を統合できる理論である。2021.04.05, 13, 17入れ子を構成する一体型矛盾の二項は、相互作用し、発散するか、収束するか、その中間である。
もし、哲学や生き方に一体型矛盾が含まれているとすれば、それは収束と発散の二つ; 収束する形式と、発散,発展する内容を持たないといけない。
日常の思考も、収束する形式と、発散,発展する内容を持たないといけない。
こうすると二項は、発散する場合以外は、双方向入れ子のため次第に同じようになり一体に近づく。2020.12.18,2021.09.02
3.2 矛盾の構造の発展
以下の順に、後の高度な矛盾が前のより基本的矛盾の上に積み重なりながら発展する。
1) 外力による変化変更矛盾と両立矛盾
宇宙誕生の原動力については、よく知らない。
宇宙誕生の原動力により、客観的な自然における変化変更矛盾が始まる。変化変更矛盾によって、両立矛盾も始まり、解の安定状態が作られる。解は、おそらくエネルギー最少原理が作る2020.03.13。太陽と各惑星の運動は、楕円運動という重力と遠心力の両立矛盾の集合で近似される。
2) 無意識の両立矛盾(機能と構造の矛盾)、一体型矛盾
自律運動をする生命が誕生する。これを可能にしたのは偶然(か自然2020.03.09)の進化である。
進化は、個体又は種の存続という機能を実現するために、構造を変え得たものが生き残った結果である。
つまり、生命は、無意識の機能と構造の矛盾、その解の連鎖である進化と、個体の生の持続という基準が永続しているために発生しそして続いた。
3) 意図的変化変更矛盾: 技術のもとの誕生
次いで、普通の意図的変更、意図的変化変更矛盾を始めることができるようになる。
意図的変更、つまり意図的変化変更矛盾は、おそらく最初は、偶然、何かを操作して、有意な結果を得られたことに始まる。これが繰り返され、意図が加わるようになる。模倣も広まっていく。
「原因―結果」であるとは最初は分からない。次第に「原因―結果」であると知るようになる。
偶然の「原因―結果」から意図的な「原因―結果」を作るのに、生命は数十億年を要した。
この意図的変化変更矛盾は、例えば、石の道具をより尖るように変える。
4) 意図的両立矛盾(機能と構造の矛盾): 技術の本格化と制度の誕生
必要性と可能性の矛盾は、人の意識的行動の基本でもある。
人に必要なものは問題として意識でき努力すればいつか可能になりそうになる。人はいつか可能になりそうなものを「問題」として意識することができる。
次いで、可能性と現実性の矛盾がある[TRSW]。可能性と現実性の矛盾は、あるべき価値と現実の差である問題を意識する段階である。2021.06.01必要性と可能性の矛盾、可能性と現実性の矛盾が起こすのが、機能と構造の矛盾(内容と形式の矛盾にほぼ等しい)である[TRSW]。
技術上の、機能と構造の矛盾の初期形態は、道具の利用、製作以来、数百万年の歴史がある。
機能と構造の矛盾は、実用上の最も大きな問題で、いつ始まったかも重要である。
道具と共同観念による間接化によって、それぞれ技術と制度が分離する[TJ2003Jun]。技術は、個と対象の関係である。制度は、個と共同体の関係である。この二つの分離自体、機能と構造の矛盾の解による。
おそらく四千年前、文化・文明の始まった時、技術上の機能と構造の矛盾が本格化し、二千年遅れて、最初の制度上の機能と構造の矛盾ができる。例1:機能と構造の矛盾の例:エンジンの大出力と軽量の両立。
この例の場合、「項1−関係−項2」は、1 「望ましい重さ(軽さ)」が項1、「今の重さ(軽さ)」が項2という値についての「TRIZの物理的矛盾」、
2 「あるべき大出力と軽量」の全体が項1、今のそれが項2という属性についての「TRIZの技術的矛盾」、
3 「大出力(機能の属性)」が項1、「軽量(構造の属性。なぜこれが構造の属性かというと、構造は「要素と、要素間の関係の二つ」だから)」が項2という「機能と構造の矛盾」、
4 「大出力(機能)」が項1、「軽量でない(反機能)」が項2という「機能と反機能の矛盾」、という言い方、粒度がある。
実際は最後の反機能、副作用の克服に進むとらえ方が多い。2020.12.24例2:[FIT2016] [FIT2017]には、矛盾に関する多くの例を挙げている。
二人以上が関係する制度上の両立矛盾の開始は難しい。必要なのは、次の条件である。
1 始めるために必要な、外部条件、
2 人の前提条件(物々交換の場合、所有意識)、
3 始める矛盾の生成とその矛盾の解の同時実現(5章)[THPJ2012]。3 は、必要性と可能性の矛盾、可能性と現実性の矛盾でもある。
物々交換も、一種の機能と構造の矛盾の解である。物々交換については、5章で詳しく述べる。
5) 意図的両立矛盾(機能と構造の矛盾)の分割・媒介化による展開
技術と制度、それぞれがさらに媒介化と分割を続け人類の歴史ができる。
これらは機能と構造の矛盾の連続である。技術と制度は、それぞれ、道具と共同観念による媒介化に始まり、オブジェクト分割と統合の繰り返しによって進展してきた。
分割しても発展するかどうかは、論理的に事前に分からない。歴史は、どう媒介、分割、統合するかの失敗と成功の連続だった。2020.12.14これは一体型矛盾につながり、人は次第に「大きな問題」を解くようになり、目的と手段が複雑化していく。
6) 一体型矛盾
1. 一般的一体型矛盾: 二項の継続する弁証法的止揚による高度化
分かれたそれぞれが、全体の一部として一体となる再統合の運動を始める。
二項の場合、弁証法的止揚を行い、単純な全否定でなくより高度の新しい段階を作ることは易しい。これは普通の意味の矛盾を解けばよい。
一項しかないものについて、根本的に一段高めるのは難しい。
(仮説)その方法は、何かの本質(正)とその反対の本質(反)の弁証法的止揚(合)である。
そのために、ある概念とその反対概念の統一が新しい段階に行くような、「ある概念とその単純否定でない反対概念」の定義をする。定義: 全体がAと、単なる非AではないBで網羅されているとき、その全体に関して、Aの真の反対はBであるということにする [IEICE2018]。
仮説: Aと、単なる非AではないBの弁証法的止揚が全体を根本的に一段高める。
11. 同じ次元の領域の二つのオブジェクトの一体型矛盾 2021.06.18変更
例(二つの客観的オブジェクト、人システム): 男と女。
例(二つの客観的オブジェクト、二つの運動): 労働、交換、保管、消費 (多くの動物では分離していない)。態度と認識・行動。技術と制度。
例(二つの客観的オブジェクト、固定的なものと運動): システムと運用。矛盾モデルと論理的網羅思考。
例(客観的オブジェクトと思考): 客観と主観。認識と行動。歴史と論理。感情と論理。
例(二つの思考): 思考と学習。受容と思考と表現。思考と議論。多様化と単一化1。 粒度と網羅と矛盾。科学と芸術。リアリズムとロマンティシズム。
例(複数の態度):謙虚さと批判。多様化と単一化2。
12. 異なる次元の領域に作用する一体型矛盾 2021.06.18追加
驚くべきことであるが、ある一体型矛盾が、異なる次元の領域に作用する場合がある。
個人の主観の中の抽象的な客観と主観の一体型矛盾は、一瞬毎の、具体的な対象化と一体化の一体型矛盾の解で解決でき、一人一人の一瞬毎の努力が、世界、宇宙に貢献し、かつ自分の幸せ、喜びになるようにすることができることが分かった。2021.04.15, 06.13。
抽象的な主観と客観の統一は、具体的な個人の労働と生活の中での具体的な対象化と一体化の統一で可能になる。この解決過程が進み人の廃棄物ゼロ,省エネルギーなどの条件を満たすと、長い時間をかけて、もともとの客観と主観自体がお互いを高め合う地球と人類全体の客観的一体型矛盾に成長していく。
こうして将来は、二つの一体型矛盾、「対象化と一体化」と「客観と主観」の矛盾が並行し同時に進んでいくようになる。前者は一人一人の主観的生き方を作り、後者は、最初は、抽象的な主観と客観の統一だったが、今は、客観的になった。(5章)新しい論理学を作ること、自分の生き方を作ること、新しい社会を作ることの同時過程も、異なる次元の領域に作用する一体型矛盾の例である。2021.08.05
2. 特に対象化と一体化の一体型矛盾
21.世界と態度の網羅
(1) 自分とオブジェクトからなる世界に、自分というオブジェクトと、それ以外の他のオブジェクトがある。これを略して「自分と他のオブジェクト」と言う。「自分と他のオブジェクト」からなる世界に、無限の態度、行動がある。しかし、論理的に種類や型を網羅することはできる。
(2) 態度(と行動)は、自分がオブジェクトをオブジェクトとして扱う対象化の態度(と行動)の型と自分とオブジェクトを一体化して扱う態度(と行動)の型として網羅される。
自分もオブジェクトとして扱う。対象化に自分の対象化と他オブジェクトの対象化がある。オブジェクトを、客観的に高めることは、自分を高めること、オブジェクトを高めること、自分と他オブジェクトの関係を高めること、その組み合わせで網羅される。
対象化とは、(自分の体、心を含める)オブジェクトを自分のために良くしようとして、操作対象として見る姿勢、態度と行動である。
この場合、オブジェクトを自分のために良くする対象化の価値を、対象を変更する能力である自由としている。
この自由は自分だけの価値である。通常のように自由を制限すべきととらえない2020.03.04。自由は常にプラスの価値であり、別の価値、一体化、愛と統一すべき価値である。一体化とは、対象を、自分と一体として見る態度と行動である。
一体化の価値が「愛」=自分とオブジェクトを一体として扱いこの両方を良くする態度と行動の広さと強さである。
「愛とは、私と他者が一体であるという意識」と言ったヘーゲルに倣い、一体化を愛ということもある。ただここで、ヘーゲルは愛の対象を人に限定しているように取れる。地球人が、
1 人の種の存続、
2 これに従属する個体の生を価値とし、
3 やっと自由と愛、対象化と一体化の統合も、それに次ぐ価値としようとしている。これに対し、他の星の宇宙人は全く別の価値実現のために生きているかもしれない。
ここの自由と愛は、少し常識を拡張している。(5章の自由と愛)本稿には、「歴史と論理は同じ」という定理(か仮説)が底流にある。
この歴史は、全歴史である。哺乳類は胎内で進化の歴史を再現する。対象化に自己対象化が含まれる当然のことに2018年に気づいた。ほとんどの人の「問題」は自己対象化が足りないことが原因だという気がしてくる。
一体化と対象化の矛盾は、自分とオブジェクトからなる世界を扱う矛盾の一種である。
一体化と対象化の矛盾以外に、自分とオブジェクトからなる世界を扱う矛盾があるか?2020.12.15
はじめは、一体化と対象化の矛盾は、必ず一体型矛盾であると思っていた。しかし個別の一回かぎりの場合がある。つまり、普通の両立矛盾の場合がある。例えば、ただ一回の一体化をして対象化の対象が増しそれが解に繋がることがあり得る。
どちらも、機能と構造などの矛盾より一つ次元が上の矛盾である。どちらも網羅が済んでいない。
22.対象化と、一方向と双方向一体化の一体型矛盾: 歴史の例を5章に示す
価値を増やすのは、自分を含めた対象を変更する行為による。[原文重複のため、削除。中川 2021.10.21]
仮にこれを労働と言っておく。この労働は、賃労働に限らず、対象を変更する一切の行為である。コミュニケーションや議論を含む。
対象化の意味は変わっていく。価値を増やすのは、自分を含めた対象を変更する行為による。
仮にこれを労働と言っておく。この労働は、賃労働に限らず、対象を変更する一切の行為である。コミュニケーションや議論を含む。大きな変化は、6千年ほど前に、対象化が初期の一方向一体化である一体化、「所有」と「帰属」を生んだことである。(5章)
ある時、対象化の反対概念である一体化の原型、一方向一体化が発見され、次いで特別で重要な一体型矛盾として、対象化と双方向一体化の一体型矛盾が生まれる。(5章)
一体化と対象化は非対称な項である。
1. はじめに一体であるものがあり、それからが対象化が生まれ、さらに一体化が、高度に復活する。
2. 一体化は対象の粒度を広げ、必ず対象化に貢献するが、対象化は必ずしも一体化に貢献しない。良き対象化だけが一体化に貢献する。対象化と一体化、自由と愛はこの限り網羅されており、一体型矛盾の二項でお互いを変化させる。
「自分と他のオブジェクト」は、自分にとって最小の世界であり、かつ全世界の最小モデルととらえた。これが本質(正)とその反対の本質(反)である。
「自分と他のオブジェクト」以外にも、本質(正)とその反対の本質(反)はある。本稿の最も重要な矛盾が、対象化と一体化の矛盾(自由と愛の矛盾)[TS2011]である。
3. 特に多様性と単一性の一体型矛盾
高度化していき多様になると、単一的に管理する必要がでてくる。
多様性に、空間的な属性の多様性、時間的な属性の多様性がある。さらに以下のように形式(構造)、内容(機能)、方法の粒度がある。
(1) 多様性と単一性の形式として、分散と集中。展開と集中。拡大と集中。
(2) 多様性と単一性の機能として、豊饒性と単純性。複雑性と単一性。
(3) 多様性と単一性の方法として、分析と合成。
3.3 小さな問題の認識と変更
あらゆる事象は、矛盾の集合体で近似でき、関連しながら運動し結果として変化していく。
問題とは認識された現実とあるべき価値の差である。
全ての「問題」は価値を具体化した目的の実現手段を作ることで解決する。
機能と構造の矛盾を解くことと言っても、目的と手段の矛盾と言っても良い。問題(事実と価値による目的の差異解消をする矛盾)は、次のいずれかにより、区分できる。[IPSJ2017]
1 目的が、具体的なある状態の達成であるか、運動,過程であるか、
2 目的が、短期か、長期か、
3 問題が、一つの矛盾か、複数の矛盾か。この三つにより「小さな問題」「大きな問題」に分ける。
「小さな問題」は、目的が1 状態、2 短期、3問題が一つの場合である。
これは、解決のために既存の態度行動を一回変えればいい問題である。
多くの場合、次の2段階からなる。第1に、
(1) エンジンの出力を2倍にする場合、出力2倍という機能を実現する構造を作ればよい。
これは機能と構造の矛盾を解けばよい。これら自体機能と構造の矛盾である。
重さが増すという副作用が生じる。
(2) 或いは、気温が低いので上げる(ための手段ができている場合)変化変更をする。湿度が下がるという副作用が生じる。
多くの場合、案の「副作用」が機能に悪影響を及ぼす。第2に、この悪影響除去と本来の目的を両立する機能と構造の矛盾ができる。
[FIT2015] [THPJ2015/1, 2] は中川徹の「六箱方式」[Naka-2005, 2019]と内容は同様のもので、その別表現になっている。
そしてこれは大きな問題の場合の基礎となる。
「小さな問題」の場合も、「副作用」が他に悪影響を及ぼすことまでは、定式化されているので、かなりの範囲の問題が解ける。
3.4 大きな問題の認識と変更 [IPSJ2017]
歴史が進んで行くと、目的が小さな機能から大きな機能に、短期の一つの目的実現から長期の複数の大きな目的の同時実現に、拡張されていき「大きな問題」ができる。
矛盾モデルは単位であるから、これ自体は「大きな問題」を表現できない場合が生ずる。
これに対処するには、
1 今の矛盾の形式のまま内容を豊かにしていくか、変形していくか、
2 複数の矛盾をそのまま扱う方法を作るか、
3 矛盾を合成をするか、
あるいはその組み合わせをする。矛盾の合成で、世界を近似的に表現できる。合成の表示方法も提案している。
合成は、項か運動(関係)か、その属性を介して行われる。[FIT2005/1表示法] [TS2006] [TS2008、同スライド]
[THPJ2015/1]には合成の例や図がある。典型的な大きな問題に次の二つがある。
「大きな問題1」: 目的が1 状態、2 短期、3 問題が複数の場合、
「大きな問題2」: 目的が1 運動,過程、2 長期、3 問題が複数の場合。「大きな問題1」は、日常のほとんどの「問題」である。
これを、技術の問題を中心に
[DC Denis Cavallucci, "How TRIZ can contribute to a paradigm change in R&D practices?", 2012年第8回TRIZシンポジウム] と
[LB L. Ball,「階層化TRIZアルゴリズム」] が扱っている。
但し、後者は、全体像が本で述べられていて明確であるが、前者はこの論文だけでは全体像は明確にならない。
両者は、いずれもTRIZの個々の要素を統合して問題を分析し、取り組むべき矛盾を絞っていき、「物理的矛盾」を重視する点が共通した統合理論である。
特に[LB]は、ゼロからあらゆる分野の全ての段階の「システム設計」をする態度と行動の指針になり得る。TRIZの個々の理論を制度に適用するように改良すること、矛盾モデルと論理である論理的網羅思考により、制度の統合理論の整理をすることが課題である。
これらに共通に、
1 全ての認識や矛盾の両立を可能にする概念、用語の(再)設定、
2 命題群、個々のオブジェクトの各階層の両立
が必要である。
つまり、概念・用語の問題、大きなオブジェクト、個々の小さなオブジェクトの両立が同時に必要である。
例:後に出てくるマルクスの「必要労働」をめぐる検討。2020.09.22. 23「大きな問題2」[IPSJ2017] の典型例が、本稿の
論理的網羅思考という論理学をつくる問題、
世界観を作る問題、
生き方を作る問題 である。人は、「大きな問題1」の目の前の課題を解決しながら、同時に「大きな問題2」である世界と人の事実を認識し、より大事な価値を求めその価値実現のため努力してきた。これが人類の歴史だった。
「大きな問題2」の解にいくつか可能性がある。
(1) 自明である1 種の存続、2 個の生物的生以外の、新しい3 生の属性(の何か)を実現する。
(2) 自明である1 種の存続、2 個の生物的生を超える価値の探求を行う。
(3) 共有価値以外の多様な個の中から生まれる新しい価値を見付ける。
価値が、主体によって異なる「良いことまたはその基準」であるのは、対象化を前提条件にしている。一体化が普遍の価値への道を拓く。
論理、世界観、生き方が、順次分かれて行った歴史がある。
これらから、概念を変える問題、論理学を作る問題、世界観を作る問題、主観と客観が一致する生き方を作る問題は、同時に解くべき「大きな問題2」の要素と推測する。
3.5 矛盾の運動領域、矛盾の原動力
1.変化変更矛盾の開始の原動力は一般に運動の原動力と同じである。
変化変更矛盾の開始の原動力、運動の原動力には、
a 自律的力(二項間に働く力)、
b 二項の外部からの力
がある。
b 二項の外部からの力には、
b1 人が介入しない自然の客観的力、
b2 人の価値に規定された意図的力、
b3 人の価値に規定された力が働いているが長い時間、広い空間で人の意図が隠れ客観的力のように見えるもの、
b4 それらの複合体
がある。
重力などの純粋なa とb3 の差は相対的である。
b4 それらの複合体には、a−b3 までの力の副作用とそれを修正しようとする力が含まれる。
要するに、原動力は、自然の客観的力、人の価値に規定された意図的力、それらの副作用と修正作用である。[THPJ2012]主観世界の運動領域の分類を図に示す。
事実の認識と変更、技術と制度、事実の矛盾と解の矛盾が、それぞれ、領域の全部を覆っている。図3.1 主観世界の、事実の認識と変更、技術と制度、事実の矛盾と解の矛盾
2.制度の場合、両立矛盾を始める時は、始めるための両立矛盾の条件と矛盾の解を同時に求めないといけない。
3. 一体型矛盾の原動力は、客観矛盾の場合は、外部の永続する強制力(例:進化)が矛盾を永続させる。いずれもエネルギーが前提である。
3.6 矛盾の種類(まとめ)
地球では、論理の歴史的結果が、今の矛盾モデル(または関係命題)に固定化されて行き、順に、後の高度な矛盾が、前のより基本的矛盾の上に積み重なりながら歴史的に発展する構造ができた。
(宇宙創成後)外力による変化・変更と(擬人的に言うと)機能と構造の矛盾。
→ (生命誕生後)無意識の一体型矛盾(例:進化)。
→(知的生命誕生後)意図的変化・変更。
→(技術開始後)意図的な可能性と現実性の矛盾(可能な機能が現実になるかもしれないと意識する運動)、意図的な機能と構造の矛盾(機能を実現する構造を意識的に作る運動)。
→(農業革命、物々交換、制度・技術の文化・文明開始後)矛盾の発展した変形として、矛盾の二項の向上をもたらし続ける一体型矛盾として、意図的な対象化と(間違った所有と帰属の)一方向一体化の一体型矛盾(が機能と構造の矛盾と併存)。
→(今後)意図的な対象化と双方向一体化の一体型矛盾(が機能と構造の矛盾と併存)。この歴史、エッセンスが論理学になる。
矛盾を分類することができるようになった。
矛盾の様々な分類について [THPJ2012] [THPJ2015/1] に書いている。
おそらく不十分であると思う。なお、論理的に考えた矛盾と歴史を総括した矛盾は少し違っている。
同じオブジェクトに二つの運動がある。
1 変化変更矛盾(変数1)と
2 両立矛盾(変数2)
は独立した運動をするように見えるが、現実は無数の1, 2 の運動の複合体である。下記が今のところ、運動の構造を網羅していると考えている。
しかし、矛盾の形式的網羅もまだ不十分である。今の時点での完全でない網羅である。
エンゲルスの三つの法則は全く的外れでもない。1) 変化変更矛盾
1.量的変化を起こす(値)
2に移行することがある。
2.量的変化と内部構造変化が属性変化を起こす(値、属性)
エンゲルスの「質量転化の法則」に近い。
例:水の沸騰、蒸気の液体化。以後1の運動を続ける。2) 両立矛盾
両立を目指す運動過程を見る粒度と両立してしまった結果を見る粒度がある。
エンゲルスの三つの法則のうち、対立物の統一は運動過程を見る粒度での表現、
否定の否定はその運動の結果が、たまたま矛盾の2項を「正−反−合」で高度に統一された粒度での表現である。3) 一体型矛盾 [TS2011]、対象化と一体化の矛盾のまとめ 2020.12.01
宇宙開闢当初は存在と運動、空間と時間は分離しておらず一体だった。
その後、これらが分離し、自律的に発展し続ける矛盾ができる。
その後の、一体だったものが分化していく矛盾の原型である。対象化と一体化に関して、細かく言うと次のような項目がある。
1 対象化の矛盾: 変化変更矛盾と両立矛盾
両立矛盾に、必要性と可能性の矛盾、機能と構造の矛盾がある。
機能と構造の矛盾は次第に複雑になる。
機能実現の副作用解消も、多様性と単一性の矛盾も、機能と構造の矛盾である。2 一体化に関する矛盾
進化のような無意識の一体型矛盾と思考と学習、システムと運用のような意識的一体型矛盾がある。
今までの意図的な対象化と(間違った所有と帰属の)一方向一体化の一体型矛盾が、
今後の、対象化と双方向一体化、自由と愛の一体型矛盾に変わっていく。
いずれも、自分とオブジェクトからなる世界を扱う一体型矛盾である。
十分な対象化がないと多様な個は広がらない。個の多様性の開花には、可能性だけでなく社会的必要性が要る(5.4, 5.6節参照)。多様性が、双方向一体化を作る。
一体型矛盾、特に対象化と双方向一体化の一体型矛盾には、分からない点が多い。2020.11.28
各矛盾の属性、値との対比は[TS2011]にやや詳しく述べてある。
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[62G] 第二部 ポスト資本主義 | [62] PDF |
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最終更新日: 2022.1.14 連絡先: 中川 徹 nakagawa@ogu.ac.jp